グッドラック: 戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-26)

著者 :
  • 早川書房
4.09
  • (378)
  • (233)
  • (279)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 2030
感想 : 192
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150306830

作品紹介・あらすじ

突如、地球への侵攻を開始した未知の異星体ジャム。これに対峙すべく人類は実戦組織FAFをフェアリイ星に派遣、特殊戦第五飛行戦隊に所属する深井零もまた、戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに熾烈な戦闘の日々を送っていた。だが、作戦行動中に被弾した雪風は、零を機外へと射出、自己のデータを最新鋭機へと転送する-もはや人間は必要ないと判断したかのように。人間と機械の相克を極限まで追求したシリーズ第2作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 面白い。濃厚、重厚。まさか最後、そこで終わるとは…!
    主人公の深井中尉の独白が多かった前作に比べて、今作は数多くの魅力的なキャラの内面によりスポットが当てられていた。
    前作のモブがモブじゃなくなり、物語により深みと広がりを持たせた。

    個体としての生存本能と集団・組織の存続のための戦略の対比とか、戦略と戦術の違いとか、内容は哲学的でより難しいものになった。ストーリー展開も後半はドラマ的に進む。
    最終作のアンブロークン・アローを読むのが待ち遠しい。

  • 2作目のグッドラックから読んでしまったけど面白かったです。しかし1作目も読まねばバーガディシュ少尉の件があまりわからないなぁ。
    異星人との戦闘機戦SFだろうけど、人間とは何かみたいな哲学的な思索が始終展開されていて読み応えがあります。
    アニメは完走していたけれど、深井大尉はジメジメしてないし、ブッカー少佐は零への執着度が高くないし、クーリィ准将は冷徹な司令官です。桂城少尉、アニメには居なかった気がする…こんなに重要なのに。
    「人間ワカンネ」と言い出すジャムに、「人間は必要ない」というコンピュータ群、「お互いだけでよい」みたいな雪風と零。
    道具を身体の一部のように使える…を超えている深井大尉と雪風の関係だけれど、戦闘知性体も深井大尉も人間には理解できない感覚で思考で。周りが大変。

    それにしても、コンピュータたちが信頼出来なくてすごい。各部門や部隊のコンピュータがすべて異なる意識持っているし、戦闘知性体である雪風は独自に判断し始めるので…末恐ろしかった。
    深井大尉も少しずつ自分で考えるようになりました…まだかなり、どうでも良さそうだけれど。続きも楽しみです。

  • 前作のラストシーンにおいて、愛機・雪風から射出されたパイロット・深井零中尉。生死の境を彷徨った彼が覚醒したのもまた、雪風の機上だった。撃墜された旧機体から自己のプログラムを最新鋭実験機に転送することによって不死鳥の如く蘇った自律型スーパー戦闘機・雪風は、零が前線に復帰してからもなお、零を利用するかのような振る舞いを見せつつ不可解な行動をとり続ける。雪風の”意図”を理解できるのは、一体不可分の存在と化した零ただ一人。そんな中、異星体〈ジャム〉が作り出した人間のコピー〈ジャム人間〉がFAF内に潜入しているとの情報がもたらされる。人間と外見上は区別がつかない〈ジャム人間〉が誰なのか、FAF内が疑心暗鬼に陥る中、〈ジャム〉が遂に全面攻撃を開始した。四面楚歌の状況下、零と雪風はどうやってこの危機を突破するのか!?

    若干陳腐なタイトルに騙されると後悔する、認識/言語/インターフェイスの概念を揺さぶる超硬派な作品。ストーリーの大半は、登場人物同士の議論だったり独白だったりと、戦闘機のドンパチを期待して読むと「何この地味な展開」と肩すかしを食うと思います。しかし、そんな地味かつ内省的な展開を根気強く読み進めると、後半であっと驚く展開が待ち受けています。零も雪風も、どれだけ進化したら気が済むのか。

    何とグロテスクで、何とアナーキーで、そして何とスタイリッシュな関係性であることか。

    ラストシーンは混乱の極みです。混乱の極みではあるのですが、その美しさ、その激しさは「絵になる」SFの極北に位置すると鴨は思います。

  • 戦闘妖精・雪風シリーズ第2弾。
    もはや異星体ジャムとの戦争は舞台背景に過ぎず、メインは機械知性体と人間との衝突、あるいは交流になってきています。もちろん、ジャムの侵略がきっかけになっているのですが。
    特に深井零と雪風の絆は、前作のような零からの一方的なものではなく、双方向の信頼関係が確立しているようで、相手がコンピュータだろうがこういう存在を得られたという点で、深井零は幸せな男だと思います。

    前作ラストで自己転生した雪風は、作った人間の思惑を超えて高度知性体になっています。もう雪風は人間の言う事を聞かなくなるのでは?という危惧さえ持たされましたが、文字通り傍若無人に戦っていた雪風が危機に陥った時、助けを求めたのは零でした。その零も、ずっと意識が混濁した状態だったのに、目覚めよ、目覚めよ、と特殊戦のコンピュータたちが言っても覚醒しなかったのに、雪風のコクピットで、雪風のSOSを聞いて、ようやく目覚めます。

    その後の戦いにおいて、雪風は人間では零しか信用しません。一見何をし始めるか分からない雪風の意図を理解できるのは零だけで、それをコントロールできるのも零だけです。
    ジャムの手から脱出するために零を人質にし、それを止めずに任せた零に「thanks」と伝えたり。上官である司令部のコンピュータと強硬な態度で交渉したり。自分の知らない任務を調べるために勝手に出撃したがり、零に強引に出撃許可を出させたり。文中にもありますが、雪風は本当に野生動物のようです。決して人に慣れない猛獣で、唯一零だけを信頼のおける(あるいは役に立つ)人間と認めている。

    ジャムが何なのか?について、確かに宇宙人というのは、人間が認識できる存在だとは限らないし、もしかしてとっくに地球を侵略されているのかもしれません。この作品は1992年から、シリーズ第1弾の『戦闘妖精・雪風』に至っては1979年から発表されてますが、今の時代でも全く古く感じさせない設定ばかりです。著者の知識と努力と先見には本当に敬意を表します。

    状況はどんどん複雑怪奇になり、最後は誰が敵かコンピュータさえ判断つけかねる事態になって、完結しないまま終わります。でも、零と雪風の関係については、完成されたということだと思います。少佐の元に戻るのが、腕時計だけではありませんように。

  • 雪風シリーズ2作目。
    前作の、「友人だと思っていた奴から置いてけぼりを喰らった衝撃」とは また少し異なる感じの読後感。

    零と雪風は、必要とあらば相手を切り捨てることが出来るし、お互いにそのことを理解していて、だからこそ固い信頼で結ばれている。その関係を“愛”と呼んでしまうところに痺れた。

    ようやく接触することになるJAMの本体との対話も興味深い。
    自分の認識で把握出来ない敵にどう向き合えばいいのか。

  • さらにはまった。雪風の〈I have control / I wish you luck... Lt.FUKAI〉にやられた~
    「人型アンドロイド」とか「中央コンピュータ」でなく、「戦闘機」に意志があるふうに感じるという設定がいいなあ。ジャムの『我は、我である』も最高!『おまえはだれだ』に対する究極の答えだし。
    深井さんの精神的成長も物語の軸で、なんのために生きているのか、に対する答えはたぶん一生かかっても普通はわからないんだけど、深井さんはだんだん自分の周りにも人がいるって分かって、関わらずにはいられないことを知るのだ。「他者とのコミュニケーション」がテーマなのかな。
    他者とは人間だけに非ず。異星体ジャムも戦闘機も含まれているところが只の小説と違う。

  • 難しい……言ってること半分もわからない……けど、面白い!

  • 最高!
    人間ってなんだろう、存在ってなんだろう。解説にもあったけど、レムの小説と主題は似ている。
    将棋でAIに勝てなくなった今、棋士は必要か。みたいな話。(違う)

  • 世紀の変わり目に読んでいました。
    この先続くわけですが、なんと言っても、筆者が合間を置い
    て執筆しておられることが大きい…?巻を重ねるごとに、な
    んだろうか。主人公というか登場人物のウェイトの置き方や
    立ち位置が変わっていきます。基本はハードSFなんですが、
    それを度外視して<映像化>しておりますよね。
    あれは、ちょっと苦しかったんだとおもう。錚々たるスタッ
    フに囲まれてもがいていたような印象です。主演(深井零)
    は、あの「倍返し!」のかたです。すごいよね!

  • 第一作目で充分完結しているように思えたが、このような形でさらにスケールアップして続くとは思わなかった。
    機械と人間の複合生命体という概念、ジャム人間、哲学的存在としてのジャム。
    一作目は人間が機械から拒絶されることで、あまりにもそれが完璧に美しく終わっていた。が、今作は機械との共生を、主人公の零の成長を通して納得感のある形で描かれる。この物語はこれからどうなっていくのが、全く読めない。

全192件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

神林長平の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×