兇天使 (ハヤカワ文庫 JA ノ 2-10)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 167
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (620ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150309169

感想・レビュー・書評

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  • こういうのが読みたいのよー。

    高校のときだったのかな。初めて野阿梓を読んだのは確か「花狩人」か「武装音楽祭」だった。たぶん「花狩人」のほう。めるへんめーかーさんの「眼狩都市」コミカライズを読んで、原作が気になって探して読んで。
    読みながら何だかよくわからない昂揚を感じた。
    いままで読んできた小説、漫画、その他接した物語。
    それを遥か遠くに置き去りにして、光速で新しい宇宙に強引に運ばれ放り出されたような、そんな昂揚感だった。新しい扉がひらけた気がした。

    「兇天使」は、「花狩人」「武装音楽祭」を読破後、3冊めの野阿梓として読んだ。

    絢爛で豪奢で、まばゆすぎて視界が白く灼かれたような、そんなに力強いのに繊細で息もできないような緊迫感があった。
    小説は、第一には描かれる内容だと思っていた私に、言葉の力を大いに思い知らせた。それほどに華美な言葉遣いで、なのに、言葉だけでもない。
    若かった自分には、カンフル剤とか薬とか、そんな範囲にとどまらない影響を与えた。劇薬だったと思う。

    いま改めて読んで、まぁ、あの頃私も若かったよね、そう振り返る。
    いまでも野阿梓の文体は陶酔感をもたらすくらいに輝かしい。
    それでも、そこに酔い痴れるほかできなかった頃と較べれば私もちょっとは成長しているようだった。

    いま世にある無数のファンタジーやSFの物語。
    その辺りと比較するなら、それでもいまなお野阿梓の物語に軍配をあげることが多いだろう、私個人の感想としては。

    「兇天使」で語られる世界の、幾重の入れ子構造。
    世界観のすべてを説明し尽くさない。そこにこそ魂が宿っているのだ、私はそう信じている。いま世にあふれる物語には、己れの築いた完璧な世界を「どうか見て見て!」とばかりに説明し尽くそうとする小説が、なんと多いことか。

    すべて見晴るかしてしまったら、舞台にかかっていた魔法が解けてしまう。世界には目も手も届かない、蔭があるから、そこに広さも真実味も宿るのだといまも私は信じている。

    「兇天使」、読み返してみれば時代を感じることもあった。
    心酔するだけだった私も、いくつか苦笑する程度には齢をとった。
    それでも、耽美で明晰で昏い、無二のSF小説だった。



    【佳境読みながらのメモ】
    532ページ最終行
    ちょいウィトゲンシュタインぽい。

    597ページ(引用)
    「神の御前に」(略)「いかなる邪悪も、また正義もありはしません。正邪は、その行為にではなく行為者の心に宿るのですから。そして地上であれ天界であれ、神の恩寵はなんのへだてもなく、あまねく注がれているんです」

    602ページ(引用)
    無化された因果律のなかで罪のつぐないではなく、罪のゆるしのためになされた、その巡礼に似た遠い旅。


    【読後の一言メモ】
    ハッピーエンドなんだかバッドエンドなんだか、あるいは最早マッドサマーエンドなんだかもわからないんだけど。

  • 読みかけですが、凄く面白い。電車の中とかで読んでると、目的地についたときに読むのをやめるのが大変。
    この方の本は初めてなんですが、迚も文章が端正だと感じます。多少表現が難しい部分があったり、物語の中の歴史・地理的背景が判らなくて困惑しますが、総じていい本を買ったように思います。

  • 超弩級に絢爛豪華なジュネ。文章自体はラノベ的でよみやすいけど、神話やら歴史やら引き出される知識と描写が濃密に耽美。厳ついバイクを超美形天使がふかしているのが圧倒的に耽美。最終美神戦役という造語がエキセントリックに耽美。耽美しか感想が出てこん・・・。天界と歴史と戯曲世界が歪んで絡まり合う展開が楽しみ。

  • ナンカ…壮大過ぎでシタ。
    天使とか。カエサルとか。ハムレットとか。シェイクスピアとか。

    宗教的?哲学的?SF?ファンタジー?
    結末も「ソークルノ!?」

    オチが全く読めなかった。

  • 熾天使セラフィの物語とホレイシォの物語が互いに語られ、やがて交差していく。JUNE的な表現あり。

  • 本格オカルト伝奇バロック耽美
    哲学ミステリ

  • 復刊されました。
    新装版の帯の宣伝がこれまた嘆美です。

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著者プロフィール

1954年福岡県生まれ。西南学院大学文学部卒。短篇「花狩人」が第5回ハヤカワ・SFコンテスト入選第1席を受賞してデビュー。主な作品に、『武装音楽祭』など美貌のテロリストを主人公とする『レモン・トロツキー』シリーズ、『バベルの薫り』『月光のイドラ』『ソドムの林檎』『伯林星列』などがある。

「2018年 『月夜見エクリプス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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