- Amazon.co.jp ・本 (626ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150309398
感想・レビュー・書評
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体内の臓器崩壊現象が頻発する未来社会。かつて人工臓器市場を独占していた巨大メーカー・ライトジーン社なき今、臓器をめぐる奇怪な現象や犯罪が続発していた。都会の片隅で自由に暮らし、本とウィスキーを愛する菊月虹は、ライトジーン社が遺した人造人間。虹は市警の新米刑事・タイスと共に臓器犯罪を次々と解決するが、やがて虹と彼の兄・MJの出生の秘密に関わる陰謀が彼を襲う。傑作ハードボイルドSFの決定版!
(1997年)
— 目次 —
アルカの腕
バトルウッドの心臓
セシルの眼
ダーマキスの皮膚
エグザントスの骨
ヤーンの声
ザインの卵
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人類が原因不明の「臓器崩壊」に見舞われている近未来を舞台にしたSFの連作短編集です。
人工臓器のメーカーであるライトジーン社が解体され、この会社によってつくり出された人造人間のコウこと菊月虹は、ライトジーン市警察中央署第四課の申大為の依頼で仕事を引き受けつつ、自由人としての生活を享受しています。彼らには、「サイファ」と呼ばれる、ひとの心を読んだり操ったりすることのできる能力があり、新米刑事のタイス・ヴィーや、コウとおなじくライトジーン社によって生み出されたもうひとりの人造人間であるMJらとかかわりながら、さまざまな事件を解決していきます。
ウィスキーをこよなく愛するコウの、カッコ悪くてカッコいい生きざまに魅かれました。 -
映画「ブレードランナー」の影響を色濃く残す作品。発表当時は朝日ソノラマだったせいかライトノベルを意識した表現方法などもありますが、ただのライトノベルでは終わらない神林作品。
臓器を変えていって長寿命化したでも脳も健康でいられないのではないかというのが現代的な不安になるかと思います。じゃあ、脳を少しづつ変えていったらどうなるのだろう?自分というものは維持できるのだろうか?などと思い巡らせてしまいます。 -
ライトジーンの遺産 (ハヤカワ文庫JA)
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ある日突然、四肢や臓器が崩壊する原因不明の奇病が蔓延する未来。
人類の危機を救うのは、人工臓器メーカー。しかしその人工の臓器さえ、奇妙な事件や奇怪な現象を巻き起こす。
臓器自体が、臓器を使っている何者かが、臓器を造るメーカーが。
かつて奇病の研究の中でライトジーン社に生み出された「人造人間」・コウは、自由人として気ままに生きることを望みながら、たいていいつも臓器がらみの事件の捜査に駆り出される。彼の兄・ユウ、彼を使う刑事・申大為、そして新米刑事・タイスによって。
特殊能力を持ちながら、「自分の手を使った方が早い」と嘯き、ウイスキーと紙の本をこよなく愛するコウ。記憶とか、魂とか、人生とかについて、それは一体なんなのだろうとじっくり考える連作短編集。 -
とても良かった。表紙絵の遠藤浩輝のマンガにしばらくハマってた。
主人公はウィスキー好きの自由を満喫している人造人間。
皆さんがおっしゃるように、とても読みやすかった。厚さの割に、あっという間に読み終わってしまった。
「自分の気の持ちようで世界はいかようにも変化する、というのは正しいかもしれないが、自分の気持ちというのは自分だけで独立しているものではないことに気づかない限り、気分は変えられないものだ。」
神林作品を読んでいると、その時その時に、自分が抱えている心の中のもやもやを、代弁してくれる表現を見つけることが多い。それで悩みが霧消するわけではないけれど、モヤモヤが言葉に変換されて目に見えるオブジェクトになるだけで、心が軽くなった気がするのは確か。歯医者で歯石を取ってもらった直後のように。(また時間が経つとモヤモヤに包まれるのだけれど。)
戦闘妖精雪風や敵は海賊でも同じような体験をした。 -
「本はうるさくなくていい」の一文が輝くハードボイルドSF。大変に大変におもしろかった。しかも「神林作品を初めて読む人にすすめやすい」と噂の通りの読みやすさ。どの章も好きだけど、対になる<エグザントスの骨>と<ヤーンの声>は良かった。各章の題名が社名と対応の人工臓器になっていて社名ABCDとんでXYZで並んでいるので、E〜W社のつくる臓器と<ライトジーン社の遺産たち>の物語もあるはずよね…と想像するのもまた楽しい。(<ザインの卵>で謎も残さず美しく終わってるので、間を続編として求めるのは野暮だというもの。)
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ある種の超能力をもった人造人間が主人公となり、人工臓器に絡んだ陰謀に関わっていく全7編の短篇集です。全編中々に味わい深い作品が揃っていますが、多くの謎が明らかにされる「ザインの卵」が特に良かったです。
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神林作品の中ではさらりと読める連作集ではないでしょうか。
思念を読み、思念を力に変える能力を持つ“サイファ”、その始まりの人造人間――のはずなのに、主人公はひどく人間くさい。否、人間社会を満喫している。
人工臓器を使うことを余儀なくされた都市での、酒と本を愛する気ままな男の事件簿のようである。
ライトノベル調に説明すると“四十路に入った俺の兄貴は17才の強気美女だが全然ときめかないぜ(俺は)”だった。
――間違いはないはずだ(笑)。
“だから友よ、生の本を読め”