マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-8)
- 早川書房 (2010年10月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150310141
感想・レビュー・書評
-
以前から読もう読もうと思って読んでなかった、kindleを機にやっと購読。面白く引き込まれ一気に読了。早く次巻を読まねば!
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
万能兵器のネズミって本当にネズミなのか。
ウフコックが出てくるとなんでかコミカルな感じで楽しい。
バロッドのことはなんだか好きになれないが、これからウフコックとともにどう戦っていくのか楽しみ。 -
※上、中、下巻のレビューをここにまとめて書きます
※一部に暴力的、性的な表現が含まれる作品です
【内容】
未成年娼婦はとある賭博師に殺されかける。
緊急時に認められる先端技術を用られ、彼女は特殊能力を得つつ蘇る。
人格を持つ兵器鼠と医師研究者に支えられ、戦場、法廷、カジノにて闘う。
【類別】
小説。
SF(サイエンス・フィクション)の内、ハードSFに当てはまるかもしれません。
【書き表し方】
簡潔で充分な叙述であるように感じました。
内容自体はやや複雑であっても、表現は冗長ではありません。
ルビの付け方に特徴があり、『ニューロマンサー』黒丸訳を想起します。 -
改訂新版より面白い。
-
まずい…!
予想していたとおり、メチャメチャ面白い… -
「『それは、私を愛しているってこと?』
少女は反射的にそう訊いた。口調は挑発的で、しかし内心は哀れっぽかった。悪罵を受けたのとは違う、ひどく馬鹿げた冗談に傷つく思いがあった。失っていたものの多さを思い出させられたからだし、与えられるものの少なさを身をもって知っていたからだ。
男は微笑んだ。緑の目がきらきら光り、とても充実した人生の輝きを発していた。これほど輝くなら、自分も分け前にあずかれるのではと思わされる眼差しだった。」
「だが誰もいない所で呟くとき、それは無限の問いをふくむ別の呪文と化した。なぜ自分は何も持たないのか。なぜ多くの同じ年齢の少女たちがいる中で、自分はこのような人生を生きているのか。答えなどない。ただいっときの気だるい解放感を味わうための言葉。
ただしこのときはどちらでもなかった。単純な答えを欲する自分がふいに顔を出すのを少女は感じた。そのもう一人の自分は、必死になって親が子供に言うような答えをほしがっていた。愛しているからだと。男でも神様でも、運命でも何でもいい。本当に愛されれば、それが最後の最後でなぜ自分なのかという無数の問いへの答えになるという空恐ろしい期待を抱かせられた。そんなことは初めてだった。」
「『人間の女性の多くは、ネズミが嫌いだ……』
金色のネズミが、ちょっとうつむいた。」
「バロットの手の中に、銀色のリボルバー式の銃が出現していた。生まれて初めてそんなものを握り、これが答えなのかと思って、ひどい諦念に襲われた。」
「このときのバロットにはドクターの言葉の意味が理解できなかった。肩に乗ったウフコックと早く二人だけで話したかった。このネズミは、これまで誰も聞いてくれなかった自分の心を、信じられないくらいきちんと聞いてくれた。どんなカウンセラーでも適わない的確さで。まだまだ話したいことが沢山あった。理解してほしいことが無数にあった。今のバロットにはそれが全てだった。」
「『そうだ。09法案がなければ確実に処分されていた。俺は、社会的に有用であることを証明し続けることで、ようやく存在が許されている』
――だから、私を助けるの? 生きていていいって言ってもらうために?」
「――私の知ってる女の子たちみんな、それが手に入らずにクスリや男でぐちゃぐちゃになって生きてる。そんな目に合ってまで生きてる言い訳がほしいだけなのに。
バロットは目を閉じた。そして手袋姿のウフコックに強く干渉した。
――私を愛して、ウフコック。
『いや……なんだって?』
仰天するような声が返ってきた。バロットは左手も手袋にあて、強く干渉した。
――私に言い訳を与えて。あなたのためにしたいの。法廷にも立つし、やれと言われれば何でもする。だから、私を愛して。
『それは……家族みたいに?さっき君が話したプリンセスと支配人みたいな?』
――シェルは私を愛してると言った。だからあの人に従った。私、あなたみたいな人に愛されたい。
『ま……待て、待ってくれ。それは、解決になるのか? 君にとって?』
――私はあなたにとっていったい何なの?」
「『言葉にされることさえ嫌なんだ! なんというか、俺の人格を否定されたような気になる。今後、俺の尻尾についてはあらゆる面でほうっておいてくれ』」
「 これか、と思った。自分を支配する男たちが味わっていたものはこれだったのだ。
この胸の焼けるような甘い思い。これをどうして自分も味わってはいけないのか。
なぜ自分なのかという嘆きに満ちた問いが今こそ本当に裏返って答えをあらわしていた。そう。つまりは、これだったのだ。」
「こんな心のまま死にたくなかった。こんな自分のまま。だが声はそうなるべきだと告げていた。あのたわいない呪文さえ裏返ってバロットを呪縛した。死んだほうがいい。
ボイルドの指がためらいなく引き金を絞るのを感覚した。
次の瞬間、別の声がそれを止めていた。
『違うぞ、ボイルド――』」
私も金色のネズミに愛されたいです。 -
SFはほとんど読まないけので、比べ用がないけど良かったと思う。