マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫 JA ウ 1-8)

著者 :
  • 早川書房
3.96
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本棚登録 : 2298
感想 : 192
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310141

作品紹介・あらすじ

なぜ私なの?-賭博師シェルの奸計により少女娼婦バロットは爆炎にのまれた。瀕死の彼女を救ったのは、委任事件担当官にして万能兵器のネズミ、ウフコックだった。法的に禁止された科学技術の使用が許可されるスクランブル‐09。この緊急法令で蘇ったバロットはシェルの犯罪を追うが、そこに敵の担当官ボイルドが立ち塞がる。それはかつてウフコックを濫用し、殺戮の限りを尽くした男だった。代表作の完全改稿版、始動。

感想・レビュー・書評

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  • 名前だけ知っていた『マルドゥック・スクランブル』
    社会や人間関係の上下関係の構造が明確に描かれ、そうした構造が今後どのようにして揺らがされていくのかが楽しみになりました。

    個人的には身分格差といったマクロなレベルの表象としてのエアカーとガソリン車や、螺旋階段といったものよりもミクロなレベルの表象としてのバンダースナッチ•カンパニーのメンバーのフェティシズムなどのが面白かったです。男女格差とかのなかでもパブリックな側面じゃなくて、プライベートな側面が色濃くでていたなと思います。とくに、バロットの過去が語られる簡易法定やその後の戦闘での独白などは男性として色々と胸に問われるような気持ちで読んでいました。

    バロットたち登場人物の存在証明に対するスタンスも次の話からさらに深まっていくのかなと期待と、今後の展開はどうなるのか楽しみな気持ちの読了感でした!

  • 10年程前にオリジナル版を読んでいるので、半再読。
    しかし、記憶がほとんど失われおり完全版によって何が変わったのかは分からず。(私はシェルなのかもしれない)
    すごく端的に言えば、この小説は仮面ライダーの変奏である。悪の組織にいいように使われていた主人公が個人の復讐心と社会正義とを繋げて超パワーをふるって、悪をやっつける話である。
    戦争、資本主義の巨大な装置によって歪められた男達が敵であり、その歪みの生贄とされた娼婦バロットが彼らに復讐する話である。それ故に、彼女の相棒は人間ではない男、ネズミのウフコックである。
    1巻では、バロットが人間的な喜びを取り戻していくシーンが描かれている。次に期待大。

  • 漫画ミュージアムでたまたま開催されていた寺田克也原画展。マルドゥックシリーズの表紙は寺田氏が手がけている。

    少女娼婦のルーン・バロットはほぼ全ての指にブルーダイヤの指輪をはめたシェルという男の専属になった。

    ある時、シェルはバロットを車内に閉じ込めたまま爆発事故に見せかけて彼女を殺そうとする。…なんで私なの?問いながら意識を失うバロット…

    だがドクター・イースターとウフコックな彼女の意思を汲み取り、ぼろぼろになった破片から彼女を再生した。シェルという男の秘密を追うため。また今度こそ彼女を守るために。

    売買される少女たち、近親相姦、尊属殺人、少女の灰から造られたブルーダイヤ。被害者の乳房や指、眼球などに異常に執着するミディアムやミンチら畜産業者たち。なるほど、この世界観に寺田氏の作品はマッチしているなぁ…

    あまりにバロットの境遇がひどくて落ち込むけど、ウフコックが素敵でぐいぐい読んでしまいました。なんて男前な変幻自在な金色のネズミちゃん。

  • 近未来SFアクション。スーパーガールとして復活した娼婦の少女と、言葉を喋るネズミとのコンビが、少女を身請けし殺そうとした男の犯罪を追う。
    カジノにて少女が(男の犯した犯罪の記憶が記録された)チップをそこでのギャンブルに勝つことよって奪取するシーンには驚かされた。緻密な実況解説に著者の教養の深さを見せつけられた
    今作の痛快さは現実の自身の無力さを突きつける、と同時にそれと対峙する勇気をくれる
    まず課題に出会ったら、時間がかかっても解決策は自力で編み出そうと思う。気安く他人に訊ねるのでなく。

  • 映画が大変面白かったので原作にも手を出してみました。

    映画が1時間しかなかったのでてっきり省かれたところがいっぱいあるもんだと思っていたらかなり原作通りに作られていてびっくり。

    SFらしい近未来が舞台なのに未成年娼婦は普通にいるし当たり前のように男性社会で今の日本と変わらないなぁと苦い気持ちに。
    裁判のシーンなんてセカンドレイプそのものですよね……男性に襲われたらほとんどの女性は殺されるのが怖くて抵抗なんて出来ないと思います。
    ラストのバトルシーンでの「男の人ってこんな気持ちなんだ」と言いながら男達を嬲り殺すバレットの気持ちが少しわかってしまってまたつらい。

    畜産業者の面々のキャラが立ってていいと思いました。絶対友達にはなりたくないけどなんだか嫌いになれない魅力があります。
    小説だと一人一人の生い立ちが語られるので読んでよかったなと。

    1番好きなキャラはボイルドなんですが最後どうなるか知っているので読み進めるのがつらいー‼︎

  • 王道のディストピアSF、かなあ
    娼婦として生きてきた少女と、喋るねずみ。なんか狙ってる感があるなあ…。けど、バロットが、手に入れた力を「濫用」してしまうところ、それによってウフコックを傷つけてしまい泣きながら戦う、最後のシーンを読んで、なるほどこれは少女とねずみだからいいのだな…と思った。
    大体読みやすくおもしろかった。
    ドクター好きですねえ…

  • 本屋大賞受賞で一気に知名度が上がり、ファフナー&マルドゥックの映画公開決定で今最も脂が乗ってる作家・冲方 丁。
    本書は数年前に発刊されたマルドゥック・スクランブルに大幅改稿をくわえた新装版。どんなもんだろーと最初の方だけぱらぱらめくり即購入決定、冒頭部分から文章に手が加えられてます。
    読点の不自然な多さが改善され大分読みやすくなった印象。
    氏も絶賛する漫画版に触発されたエピソードも盛り込まれお得な内容に。
    他にもバロットの心情部分が付け足されて、等身大の少女としての輪郭がより濃くなった(心身障害者駐車ペースでの行動など)
    バロットの兄関連でヴェロシティとのリンクもあり、マルドゥックシリーズを愛読してきた読者は「なるほど、こう来るか!」と唸るはず。
    世界観がよりわかりやすくなったぶん、バロット初診時におけるマルドック09の説明など説明臭くなってしまった箇所があるのがやや残念ですが、畜産業者のトラウマが掘り下げられているのは嬉しい。
    彼らが各々のパーツに執着するようになった背景が解剖され、よりその不気味な存在感と猟奇性が際立ちます。

  •  賭博士・シェルの手により殺されかけたバロットはシェルの犯罪を調べていたドクター・イースターと人の知能を持った万能兵器のネズミ・ウフコックの手によって救われる。
     そしてバロットは二人と共にシェルの犯罪を暴くため奔走するのだが……。

     バロットは家庭環境から娼婦に身を堕とし過酷な人生を歩んできた少女です。彼女の家庭環境の一端は小説内の裁判シーンでも触れられますが、それだけに彼女がウフコックやイースターといった信頼できる大人たち(ウフコックは大人とは違いますが)に出会えたことが、そして彼らを信頼しようとしている姿がとてもいいな、と思いました。

     終盤の戦闘場面の迫力もかなりのものです。バロットはシェルの手により瀕死の重傷を負いますが、マルドゥックスクランブル09という緊急法令により、禁止された科学技術を全身に施されることで生き延びます。その際バロットは特殊な力を手に入れ、兵器でもあるウフッコクの力も相成り自身の力に溺れます。その描写も凄まじいものがあります。

     そしてバロットたちを付け狙うボイルドという強大な敵の存在や、禁じられた科学技術によって生まれたが故のウフコックたちの存在意義の話など読みどころは多いです。文庫で全三巻の作品ですが、あっという間に読み終えてしまいそうな気がします。

    第24回日本SF大賞

  • 攻殻機動隊脚本の人、という世間とは逆の?知り方をした作家さん。

    瀕死の重症を負った後、圧倒的な力を手にした不安定な美少女が主人公のSF。
    ちょっとひどい言い方ですが、それ以上でもそれ以下でもないです。

  •  未来? だと思われる世界。
     少女娼婦のバロットはシェルという男の情人になったが、ある日シェルによって殺されそうになる。
     ギリギリのところでドクターとウフコックに助けられるが彼女の体はボロボロ。しかしドクターの技術で姿形も普通に蘇る。
     彼女はその折り特殊な能力(電子機器の制御を乗っ取り思いのままにする)をもった。

     シェルは悪徳企業のマネーロンダリングの担当者で、沢山の女性を殺していた。ドクターとウフコックはその全貌を明らかにし、追いつめるため、バロットを助けて裁判に挑もうとするが、相手側からの執拗な攻撃を受けることになる。。。


     まだ話の途中のようです。
     主人公が娼婦だと言うこともあり、性的な描写があるので、好きではない方もいるかもとは思いますが、かなり面白いです。グイグイ読めてしまいます。

     彼女は生きるためにウフコックを相棒に銃器を操り、敵と戦っていくのですがこれが迫力満点!
     ハリウッドで映画化されそうなくらいです(^_^;) 
     あまり戦闘シーンが長いのは好みではないのですが、この本はよかったです。ちょっと敵があっけない? 感じもしたけれど。

     とにかく続きを追って読んでみたいと思います。天地明察も積ん読になってるしwww(^^;
     早く進めなきゃ

     星は4つでつけましたが、厳密には★3.5 と言うところでしょうか。
     話がどうなっていくのか解らないので、ここで★を決めるのもどうかとは思いましたが、とりあえず。

  • 面白い! ハラハラする。いかにもSFな感じ。
    攻殻機動隊に似てるかな。アニメも見たくなっちゃう。

  • 漫画版の一巻だけ読んでいたから、割とすんなりと入り込めたけれど、そうじゃなかったら、印象が違うかもしれない。
    アースより成熟した印象は「完全版」であることも少なからず影響していると推定。それをさっぴいても、青臭さはなりを潜めた。かな。完全にいなくなったわけではないが。

    小説なのに映像的。派手なアクション。スピーディーな展開。エンターテインメイト性が高く、えぐるところもあり。モチーフがワンパターン。そんなあたりが、そこはかとなく、リュック・ベッソン臭い。(嫌いではないが)

  • 『天地明察』で好きになった作家さんだけれど、こちらの作品の方が活き活きしていた気がする。
    映像化とか、すごく大変なのだろうけれど映えるだろうな、と思っていたら、すでに作られていた&もうじき最終話が公開とのことで。

    主人公・バロットが少しずつ血を通わせていく様子が鮮やかだった。強い子。
    そして金色のネズミ・ウフコックのイケメンさには、ほとんどケチのつけようがない。
    カジノでの対戦相手のカッコよさにもほれぼれした。
    こんなに「ステキ!」「カッコいい!」なんて盛り上がれるような作品ではないはずなのだけれど。

    バロットの感じる海とか、その感覚は「天地明察」の境地なのかもな、なども思ったり。

    冲方丁のすごさを思い知った作品。
    もうじき発売の文庫『マルドゥック・ヴェロシティ』も楽しみだし、その後は『マルドゥック・フラグメンツ』ももちろん読むし、
    『マルドゥック・アノニマス』にも、とても期待している。
    マルドゥックの世界に、もうしばらく浸りたい。

    素晴らしい作品だった。

  • 完全版1冊目。
    大幅改稿とは言え、こんなに全然違うものになってるとは思ってなかった。
    通常版とは違う風に楽しめるように変わっていて、買って良かった。
    前のを持ってるからと言って買わないかもしれなかったのは大変危険だった。
    通常版よりも、みんなが人間だっていうことが強く感じられる気がしたし、読んでて辛くなる部分でもあった。
    早く3冊読み終わりたい。

  • リライト前に比べてちょっと緊迫感が減ったかも?でも読みやすくなった感じもする.本番は次巻

  • (1st~3rdまでを合わせた感想です)

    本作にはいくつかのバージョンがあるが、私が読んだのは2010年に刊行されたハヤカワ文庫JAの[完全版]。解説では全部読むのを勧められたけど、読むとしたらシリーズの続刊のほうが先だろうからちょっと無理かな・・・
    でも時間があれば読んでもいいかも、と思わせるくらいの面白さと魅力にあふれた作品でした。
    特に中盤のカジノシーンは、ディーラーとの頭脳戦の描写がスリリングかつ圧巻で、本作一番の読みどころだと思う。敵との戦闘シーンも、重力を無視して歩くとか、情景を想起しにくそうな場面が多いにもかかわらず、さほど気にせず読み進められたのは描写力と文章のリズムが良いからなのではなかろうか。
    この設定だとどうしても『攻殻機動隊』や『ブレードランナー』が想起されるんだけど、主人公の置かれた境遇とかが普通のSFだとまずやらないようなハードさで、先行作品とは一味違った新鮮さを感じた。
    それにしてもよくこの内容で映画化できたなあと思う。

  • 3.2

  • 少々過激な表現があるが、それを気にならない人ならば物語にグイグイ引き込まれていくはず。

  • アノニマス6巻の後で再読。ウフコックがSFど真ん中な存在でワクワクする。バロットの生い立ちの悲惨さが辛いが、自分の殻にこもりきりだったバロットがウフコックとドクターの助けを借りて少しずつ外に向かっていく様子が良い。「畜産業者」のメンバーがおぞましい(ただ、彼らなりに理屈があってやっていることだという描写にはリアリティがあって良かった)。終盤の戦闘シーンが迫力があって好き。

  • ラストで

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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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