リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)

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著者 : 上田早夕里
制作 : 中村 豪志 
  • 早川書房 (2011年12月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310530

リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)の感想・レビュー・書評

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  • 人間の身体。
    人間の精神。
    人間と機械、人間と技術。

    「こういうものだ」と現在考えられていることは、決して固定されたものではない。
    100年で日本人の平均身長は10センチ以上伸び、平均寿命は2倍近くになり、
    DNAが解析されるようになり、でも他方でうつ病が蔓延するようになり。
    コンピューターが発明され、インターネットで世界中がつながり、
    ES細胞を用いた再生医療も、近々本当に実現するかもしれなくて…
    ここ100年を見ただけでも、人間社会は劇的に変わっている。
    それならば。
    こういう未来もあるのかもしれない。
    そう思わされるSFの世界だった。

    表題作の「リリエンタールの末裔」は、筆者の代表作『華竜の宮』と同じ世界を舞台にした作品。
    背中に鉤腕を持つ一族の少年が、激しい差別に遭いながら、空を飛ぶ夢を追い続ける。
    出稼ぎ先の都市では、富裕層にだけ許された娯楽のハングライダー。
    少年の抱く夢の純粋さ、そのひたむきさが切ない。
    これを読んだ後に表紙を見ると、空から眺めたような、全く違う景色に見える。

    一番好きだったのは、最後の「幻のクロノメーター」
    これだけ趣が違い、未来ではなく過去のイギリスを舞台にしている。
    主人公は、天才時計職人のもとで住み込みの家政婦をする少女エリー。
    時計に興味があり、自らも時計の制作にかかわるようになる。
    さまざまな圧力にも負けず、より狂いのない時計を目指して奮闘する、時計職人たちの人生をかけたクロノメーター。
    ひとつひとつの技術は、こうやって生まれてきたんだなぁと。
    個人が創った技術が社会を変える。
    その積み重ねで今があるのだと思った。

    SF好きにも、そうでない人にもお勧めできる一冊だった。

  • 久しぶりにSFを読みました。かつ、上田さんの作品は初めてです。

    裏表紙の解説に載っているように、人間と科学技術の関係性、在り方について書かれた短編集で、考えさせられました。どの作品も論理的に組み立てられていて読みやすかったです。登場人物も、技術やモノづくりに熱心に関わっており、興味深く面白い作品集でした。

    次は表題作「リリエンタールの末裔」の舞台となった長編『華竜の宮』を読んでみたいと思います。

  • 異形物と独特の世界観が融合してる、作者の持っている一つの世界がここにある感じ。真似のできない独創性という言葉がとても似合う

  • リリエンタールの末裔ってタイトルがかっこいい。夢を叶えるために、理不尽な差別を受けながらも、自分の生活を強い意志でやり通して行く姿は勇気をくれる。けど、この差別や暴力のシーンこそが本を飛び出て最もリアリティがあって苦しい。考えさせられる。短編で終わってしまうのがもったいないな。この先チャムはどうなるの?知りたい。他の短編も突飛な設定ながら、人間の心の深いところをくすぐる内容。華竜の宮のハラハラドキドキ感に比べると、ちょっと物足りなかった。

  • 収録の短編4本、どれも面白かった。
    冒頭から3篇はキーワード、とは違うけれど、花のモチーフが印象的なところで出てきたように思った。睡蓮の形の水上都市、心の動きを視覚化させる磁力の花、脳の中に開く記憶という名の一輪の花。どれも儚く、それ故に美しい。
    最後の「幻のクロノメーター」だけ少し毛色が違うように感じたのは、これだけが書き下ろしの新作だったからなのか。
    前に『華竜の宮』を読んだ時にも思ったけれど、作者の“人という生き物”に対する視線が愛情があるところがとても好きだと思う。

  • 短編集。『リリエンタールの末裔』が一番好きでした。『華竜の宮』が面白かったので購入。やはり、良質なSFです!

  • ―――彼は空への憧れを決して忘れなかった。
    長篇『華竜の宮』の世界の片隅で夢を叶えようとした少年の信念と勇気を描く表題作ほか
    18世紀ロンドンにて航海用時計の開発に挑むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議を描く書き下ろし中篇「幻のクロノメーター」など
    人間と技術の関係を問い直す傑作SF4篇。


    長編SF「華龍の宮」を書いた上田 早夕里の短編集

    表題作の爽やかな雰囲気好きやなー読んでて澄みきった空気吸ってるような感じやった。

    人の心を「見る」装置にまつわる「マグネフィオ」は一転切ない雰囲気やったな。
    白乙一が好きな人にはいい感じやと思う。話の構成とかアイデアが似てる。

    人と機械が深くつながる未来を描いた「ナイト・ブルーの記録」は描写が詩的で非常に鮮やかやった。

    伝記のようなSFのような「幻のクロノメーター」もなかなか素敵。
    実在の人物を取り入れつつ、仕掛けもうまく機能してる




    世界全体が降ってくるんです。私の上に。

  • 大規模海面上昇以後、リ・クリティシャス。睡蓮の花が水面の上でまるで咲いているように構築された海上都市、ノトゥン・フル。その上空を風を探し、上空気流に乗り、グライダーで自由を摑んだ鳥のように大空に向かい両翼を広げ滑空する様は、青年チャムの信念と勇気がどこまでもどこまでも続いている青という青の中で尊厳であり美麗である。
    大空に憧れを抱く者、大空に思いを馳せる者、全てリリエンタールの末裔である

  • 華竜の宮の世界観の短編とあって、大事に読みたいと随分時間をかけてしまった。

    やはり好きな世界「リリエンタールの末裔」。
    19世紀ロンドンを舞台の時計職人の話「幻のクロノメーター」も好き。他二編もじんわりとくるSF良品。

    ※H4の美しさは必見ですね!→http://ueda.asablo.jp/blog/2012/05/11/6442698

  • 短編集。何より美しい表紙に釣られた。
    表題作の前向きさが眩しく、再度表紙を見返すことに。
    短編集として作品ごとに星をつけたいくらいですが、表紙と表題作だけなら確実に五つ星です。

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リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)の作品紹介

彼は空への憧れを決して忘れなかった-長篇『華竜の宮』の世界の片隅で夢を叶えようとした少年の信念と勇気を描く表題作ほか、人の心の動きを装置で可視化する「マグネフィオ」、海洋無人探査機にまつわる逸話を語る「ナイト・ブルーの記録」、18世紀ロンドンにて航海用時計の開発に挑むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議を描く書き下ろし中篇「幻のクロノメーター」など、人間と技術の関係を問い直す傑作SF4篇。

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