いま集合的無意識を、 (ハヤカワ文庫 JA カ 3-45)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 988
感想 : 107
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150310615

作品紹介・あらすじ

ベテラン作家が、伊藤計劃『ハーモニー』と3・11後のフィクションの可能性を考察する表題作、
深井零がパーソナルなコンピュータを追い求めた記憶を 語る《戦闘妖精・雪風》シリーズのスピンオフ「ぼくの、マシン」、
多世界解釈を巡る異色スペースオペラ「かくも無数の悲鳴」など、
変遷し続けるコミュニケーションの様相を切り取った全6篇を収録

感想・レビュー・書評

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  • 神林長平による、意識をテーマにした短編集。全6篇。

    国内SF作家の第一人者によるSF短編集。非常にわくわくしながら読んだ。

    果たして内訳は、2本傑作、3本佳作、1本微妙…w 各短編の詳細レビューについてはページ下部にて。

    総じて面白かった。意識とは、無意識とは。抽象的なテーマを様々なフレームから描いてみせる。サイバーサスペンスあり、人造人間あり、スペースオペラあり、そして自身を登場させたメタ小説ありw 作者の自由で際限のない発想に脱帽。

    読んで損はないと思う。特に傑作2本は是非読んでほしい。(「自・我・像」と「かくも無数の悲鳴」)


    (長くなってしまうので続きは書評ブログからどうぞ)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%A8SF%E3%82%92%E5%A5%BD%E3%81%8D%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B_%E3%81%84%E3%81%BE%E9%9B%86%E5%90%88%E7%9A%84%E7%84%A1%E6%84%8F%E8%AD%98%E3%82%92_%E7%A5%9E%E6%9E%97%E9%95%B7%E5%B9%B3

  • 希代の言葉遣い師・神林長平が贈る、言語/認識にまつわるハードな語り/騙りに酔いしれる短編集。
    鴨如きの貧弱な認識力では、正直よくわからないところも結構あります。でも、わからないなりにも不思議と説得力のある、情感を一切排したかのようなドライな世界観はこの作家ならではのワン・アンド・オンリー。

    神林長平氏の作品を読んでつらつら思うのは、「SFを書こう」としているのではなく、書きたいことを表現できるフォーマットがたまたまSFだったんじゃないか、ということ。知らない人には「子供だまし」と捉えられがちなSFというフォーマットが、如何に先鋭的な文学を体現できるのかということを如実に示してくれる作品集です。もう数年したら再読してみたいです。

  • 「ぼくの、マシン」
    雪風シリーズ短編。
    <世界>との戦いを描く。
    エディス視点からの解析が秀逸。
    「切り落とし」
    視点がくるくるする短編。仮想や現実、自分とは。
    「ウィスカー」
    精神感応可能な七胴落し短編。
    大人な子どもと子どもな大人。
    「自・我・像」
    ドゥウェル氏。
    これもまた仮想と現実の曖昧さを感じさせる。
    創作というのは、本音抜きでは成り立たない。
    「かくも無数の悲鳴」
    世界の解釈をめぐって
    「いま集合的無意識を、」
    <さえずり>と「伊藤計劃」

    フムン

  • ”意識”あるいは”自我”を共通のテーマとしながら、
    これだけ異なる設定・読み口の作品が集合しているのはすごい。

    サイバーミステリな『切り落とし』のような作品も楽しいけど、
    著者の『戦闘妖精』シリーズ作品からのスピンオフの『ぼくの、マシン』も好き。
    生身の人間とのコミュニケーションに諦念を抱く主人公が、コンピュータを真に”パーソナル”なマシンー自分専用の対話相手ーとしてネットワークからどうにか遮断しよう試みようとした少年期の記述。

  • ラブレターフロム神林長平ってかんじ

  • 今この本を読む人の多くは伊藤計劃よりも東浩紀を連想すると思う。SF的なテクノロジーの政治利用(あるいは軍事利用)が現実味を帯び始めた時、「いやそれ暴走して歯止め効かなくなるかもよ」と危惧する発言をするとへたれだと思われそうだけど、SFと現実の距離が縮まった現在からこそそういう想像力がSF作家には必要なのだと思う。集合的無意識の暴走もそうだが、あらゆるものが可視化されていく世の中で、逆に「私」だけが見えなくなってゆきそうで怖い。

  • 《目次》
    ・「ぼくの、マシン」
    ・「切り落とし」
    ・「ウィスカー」
    ・「自・我・像」
    ・「かくも無数の悲鳴」
    ・「いま集合的無意識を、」

  • 雪風のスピンオフ、「ぼくの、マシン」などを含む短編集。
    ファンでなければ、とっつきにくい一冊かと思われます。

  • …ぼくはいつだってそうなのだ、見も知らぬ相手に自分の生の声を発信することには興味がない。だれに読まれるのかわからないままに語るなんてことはぼくにはできない、誤読されたら訂正のしようがないではないか、「それは違う、ぼくが言っているのはそういう意味ではないのだ」と言えない、相手からの応答が得られない、そんな一方向性の言い方で自分の本音を語るつもりはぼくにはない。
     しかしフィクションなら、小説という<虚構>にすれば、それができる。意識的に嘘を語るというのではない。どのように読まれようがかまわないという覚悟で書かれるのがフィクションであり、小説というものだと、ぼくが言いたいのはそういうことだ。むろん本音を隠したままでも小説は書けるしメッセージを込める必要もないが、作者の思惑とは異なる読まれ方、すなわち誤読されてもなお作者の本音を伝えられる表現とはどういうものか、それに小説家は腐心するものだ。すべての小説家がそうしているとは言わないが、自分はそういうタイプの作家だと僕は思っている。ぼくがSFを書いているのは、その形式がぼくの本音を忍び込ませるのに合っているからだ。

  • 意識の所在とアイデンティティがテーマの短編集。
    SFとしての完成度はもちろんのこと、「切り落とし」のオチや「かくも無数の悲鳴」での宇宙人、並行世界の解釈などよくもまあこのような発想が出てくるなと。
    表題作はフィクションの形をした伊藤計劃論、書評かと思いきや「虚構の力を信じろ」と言うものすごく熱いメッセージが込められていて良かった。
    好きだなあ、好きだよ神林。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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