日本SF短篇50 I (日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー)
- 早川書房 (2013年2月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150310981
作品紹介・あらすじ
日本SF作家クラブ五〇周年を記念し、一年一作五十作家で構成する究極のアンソロジー。第一巻にはクラブが発足した一九六三年から一九七二年までの十年間に発表された作品より、光瀬龍の"宇宙年代記"シリーズ「墓碑銘二〇〇七年」、詩情溢れる星新一の逸品「鍵」、IFを突きつめる筒井康隆SFの代表作「おれに関する噂」など全十篇を収録。今なお瑞々しい日本SF黎明期の傑作をSFの未来に紡ぐ。
感想・レビュー・書評
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日本SF作家クラブの選者による1963年から年に1編を選出してのアンソロジー。冒頭の「墓碑銘二000七年」、光瀬 龍ってこんなに面白いんだっけ?SFにのめり始めた中学生のころが思い出されてきて、なんだか胸が熱くなってくる。
戦中が舞台の「魔法使いの夏」の異様な迫力。福島正実のいやにシニカルな「過去への電話」、おちゃらけ話かとスルーしていた「およね平吉時穴道行」の以外な面白さ。懐かしの「ハイウェイ惑星」の頭からこびりついて離れないイメージ。
エネルギーに満ちていながら、どこか虚しさや哀しみをたたえた昭和の雰囲気が漂ってきます。ううう、猛烈に小松左京とか読みたくなってきた。昭和リバイバル!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本SF作家クラブ50周年を記念し、一年一作50作家で構成するアンソロジー。黎明期の傑作全10篇を収録。
【収録作品】
1963年 墓碑銘二〇〇七年 光瀬龍
1964年 退魔戦記 豊田有恒
1965年 ハイウェイ惑星 石原藤夫
1966年 魔法つかいの夏 石川喬司
1967年 鍵 星新一
1968年 過去への電話 福島正実
1969年 OH! WHEN THE MARTIANS GO MARCHIN' IN 野田昌宏
1970年 大いなる正午 荒巻義雄
1971年 およね平吉時穴道行 半村良
1972年 おれに関する噂 筒井康隆
自分は海外SFを中心に読んできたので、本書を手に取るにあたり、ちょっと身構えていた。SFは基本的に、独特だったり複雑だったりする世界観や設定を把握するために、特に序盤は読むのにエネルギーが必要、という認識があったからだ。日本のSF小説はほとんど読んでないので、黎明期の作品から履修するつもりで本書を読み始めたのだけど。いやはや、どれも読みやすいし面白くて驚いた。もしかすると自分の感性が古いだけなのかもしれないが、50~60年前の作品にもかかわらず古めかしさがあまりなく、いずれもどっぷりと楽しめた。特に光瀬龍さんの「墓碑銘二〇〇七年」など、最近のSF映画として映像化しても違和感がないだろうと思う。
この中では、先月鬼籍に入られた豊田有恒さんの「退魔戦記」、半村良さんの「およね平吉時穴道行」がお気に入り。タイムスリップのワクワク感は現在の作品でも変わらないが、この二作では、そこにまつわる切なさ、人間の感情の部分に切り込み、深い余韻を残すのが印象深いところだ。舞台が日本なので、やはり日本の歴史にまつわるあれこれと現代日本(といってもこの当時は昭和だが)のつながりは身近に感じられていっそう親しみがわく(とある作品では、天明八年から昭和四十六年にタイムスリップした人の話を令和五年に読むというオツな体験ができた)。いやーやっぱり日本のSFも読んでいかねばな、と思いましたとさ。さて、このあとの年代の作品はどう変化していくのか。続巻も読んでいく予定。 -
日本SF作家クラブ五十周年記念アンソロジーか。第一巻は1963年から10年間、一年一作で短編が選ばれている。実はウン十年前に全て読んでいるのだが、今、読み返すと何とも懐かしい。
あの頃はSFに夢中になっていた頃だ。光瀬龍、石原藤夫、星新一、筒井康隆なんて本当に懐かしい。特に星新一や筒井康隆は全作品を読んだのではないだろうか。
いずれも日本SFの古典ともいうべき秀作が収録されている。今、読んでも違和感が無い。
再び日本SFの古典が見直されているのだろうか。昔、徳間文庫から出ていた筒井康隆・編『60年代日本SFベスト集成』が、近々、ちくま文庫から復刊されるようだ。 -
11月に埼玉に2回行くことがあり、移動宙に読むために借りた。
表紙と文字の大きさと紙質で何となく選んだ本。
日本SF作家クラブの創立50周年を記念して編集された本。現代とは50年も違うので、思ったよりも物語に入り込んで想像するのが難しかった。
読み切る前に返したのがもったいない。
星新一さんと筒井康隆さんの作品も収録されている。
自分が生まれた後の作品集を選んで読みたいと思った。 -
「退魔戦記」だけは読んだことがあったかな?
流石にちょっと昔の話で、タイトルしか知らなかった話ばかりですね。
「ハイウェイ惑星」のいかにも SF って感じが楽しかったです。
「およね平吉〜」はタイトルは知っていたけど、こんな話だったんだ。割と意外。
全体的に結構古さを感じませんでしたが、これは編者の手柄かな? -
収録作品は以下のとおり。SF者として一度は読んでおかねば、と思える往年の名作揃いです。
「墓碑銘2007年」光瀬 龍
「退魔戦記」豊田 有恒
「ハイウェイ惑星」石原 藤夫
「魔法つかいの夏」石川 喬司
「鍵」星 新一
「過去への電話」福島 正実
「OH! WHEN THE MARTIANS GO MARCHIN' IN」野田 昌宏
「大いなる正午」荒巻 義雄
「およね平吉時穴道行」半村 良
「おれに関する噂」筒井 康隆
でも、「往年の名作」って、そのうち読もうと思いつつ結局読まなかったりするんですよね。こうしてアンソロジーとして刊行されて、読むきっかけを与えてもらえるのはありがたいです。
もぅ、冒頭の光瀬龍にノックアウトされましたよ。人類がまだ月へさえも到達していなかった50年前の作品とは思えない、鋭利な刃物のようにエッジの効いたドライな世界観と茫漠としたニヒリズム。氏の代表作「百億の昼と千億の夜」に通ずる独特の世界観を有する、この先もきっと古びない傑作だと思います。
半村良「およね平吉時穴道行」も良かったですね。いわゆるタイムスリップものですが、時間SFの売りであるタイム・パラドックスの解明であったり錯綜する時間理論であったりといった派手な演出は一切ありません。江戸時代の少女が現代にタイムスリップするに至った経緯を第三者の視点から丹念に描き出し、SFという手法を借りて当時の江戸の「時代の風」を描くことに挑戦した、地味ながらも端正な佳作です。時代小説家としても名を馳せた半村良らしい、いかにも日本的なSFです。
もう一つ、インパクトがあったのが荒巻義雄「大いなる正午」。ジャンル分け不能、鴨ごときの理解力では何が何だかほとんど判りません(^_^;が、描き出されたヴィジョンの鮮烈さ、ワケがわからないながらもとにかく前向きで力強いラストシーン、「読む」というよりも「感じる」と言った方が相応しいかもしれない快作もとい怪作。この時代でなければ、たぶん存在し得なかった作品ではないのかと。
何分にも古い作品ばかり集めているので、作品によっては正直今読むのは辛い作品もあります。が、この時代のSFの雰囲気を捉えるには必要充分ですね。-
ma-kamoさん、光瀬つながりのコメントありがとうございます!70年代くらいまでの熱い作品ってやっぱりいいですよね。
amazonとか楽...ma-kamoさん、光瀬つながりのコメントありがとうございます!70年代くらいまでの熱い作品ってやっぱりいいですよね。
amazonとか楽天などで結構出回ってました。ハチャメチャな値段がついているものもありましたが・・・ご健闘をお祈りしてます~2014/01/26
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SFに夢中になりだした頃を懐かしく思い出しました。偏った読み方だったので再読はあまりありませんでした。それでも4編は再読。すっかり忘れているので全部楽しめました。なんか若返った気がします。ほんと傑作揃い!荒巻義雄の作品はあまり読んでないのですが、これは凄いですね。架空戦記があまりに有名になりすぎててイメージが違ってました。初期の作品を読みたいです。福島正実も編集者としての顔が強すぎて、作品は印象なかったのですが、面白いです!勿論、他の名前をあげてないのも!!今後が楽しみ!
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日本SF作家クラブ50周年を記念し、一年一作50作家で構成する究極のアンソロジー。
第1巻にはクラブが発足した1963年から1972年までの10年間に発表された作品より、
光瀬龍の《宇宙年代記》シリーズ「墓碑銘二〇〇七年」、詩情溢れる星新一の逸品「鍵」、
IFを突きつめる筒井康隆SFの代表作「おれに関する噂」など全10篇を収録。
今なお瑞々しい日本SF黎明期の傑作をSFの未来に紡ぐ。(裏表紙)
『墓碑銘二〇〇七年』光瀬龍
『退魔戦記』豊田有恒
『ハイウェイ惑星』石原藤夫
『魔法つかいの夏』石川喬司
『鍵』星新一
『過去への電話』福島正美
『OH! WHEN THE MARTIANS GO MARCHIN"IN』野田昌宏
『大いなる正午』荒巻義雄
『およね平吉時穴道行』半村良
『おれに関する噂』筒井康隆
それほどSFに詳しくない私でも複数名の著者を知っている、大きな枠組みのSFアンソロジー本です。
すでに四〇年以上前の収録作品もありますが、今読んでも楽しめます。
お気に入りは『ハイウェイ惑星』。シリーズものだそうなので、探してみたいと思います。 -
記念碑的なアンソロジー。巻末のSF作家クラブの顔ぶれを眺めて、この中から五十人かあ、うーん、誰を選ぶかなあ、一人一作、一年一作という縛りはなかなかきついなあ、などとあれこれ考えるのが楽しい。SF作家クラブにモト様(萩尾望都)の名前があったり、山尾悠子さんは入ってないんだと知ったり、物故会員のところにある伊藤計劃さんの名前にしんみりしたり。
第一巻は1963年から1972年なので、さすがに古い。というより、あえて言うと古臭い。「日本SF全集」も第一巻はそうだった(第三巻がまもなく出るってほんと?)。SFにも不朽の名作はあるけれど、全体としては新しいものほど面白いというジャンルのように思う。特に「未来」を扱ったものはそうじゃないかな。 -
日本SFクラブ50周年を記念して、創立の1963年から1篇ずつ50作を選ぼうという面白い主旨の文庫本です。
表紙もかっこいい。
知っている作家、知らない作家あり、様々な短編は読み応えありました。
なかなかSFの短編、しかも日本の作家を読む機会がないので、こうやって粒ぞろいのアンソロジーは助かるなと。
しかし、他のアンソロジーを読んでる方は既読が多いのかもね…