know (ハヤカワ文庫JA)

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著者 : 野崎まど
制作 : シライシ ユウコ 
  • 早川書房 (2013年7月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311216

know (ハヤカワ文庫JA)の感想・レビュー・書評

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  • 面白い映画を観終わったような心地よい感じが残るSF小説でした。

    超情報化対策として、人造の脳葉〈電子葉〉の移植が義務化された2081年の日本・京都。
    情報庁で働く官僚の御野・連レルは、情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。
    その“啓示"に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった...

    Ⅰ.birth から V. death 、そしてepilogueへとぐいぐいと物語を運んでいく。
    コレ映画にしたらきっと面白い。
    超情報化社会ビジョンが興味深い。ICT屋さんが考えている未来ビジョンよりも愉しいw
    ハリウッドが好む建築物的な未来造形ではない。
    見えている世界はあまり変化がない、しかし見えていない世界を感じ処理しようとする捉え方が面白い。
    情報爆発社会とかビッグデータとか今でも言っているけど、もっと精神世界へと踏み込んだ超情報化社会観。


    「哲学は自然科学の最前線だよ」

    知らないことを知ることは悦びです。
    知る対象は過去、現実の世界、そして異性だったり。
    本を読むことは知らないことを知るとても愉しい手段です。

    知らないを知り、知り得たことから未来を知ろうとする。
    うん、愉しい。
    御野・連レルと恩師・道終・常イチとのやりとりに惹き込まれた。

    『know』は小難しいSFオタク向けの物語ではなく、エンターテイメント性も盛りだくさんです。
    御野・連レルが出会った少女が魅力的。
    最初は全知全能のロボット?と思ったw
    後半に出てくる御野・連レルと少女のとあるシーンは必要ないかと思ったが...
    (そんな所は悪い意味で映画的に感じた)

    野崎まどさん、興味深い作家さんです。

  • 西暦2081年、極度に発達した情報化社会に対応するために子供の頃から「電子葉」を脳内に埋め込むことが義務化されている社会。情報庁のエリート・御野連レルは、かつての恩師・道終常イチが世界一の情報産業企業アルコーン社の機密情報を持って失踪したとの情報に接する。常イチからの特殊な暗号を読み取った連レルが向かった先で出会ったのは、常イチが手塩にかけて育ててきた「量子葉」を持つ少女・知ル。電子葉とは格段に異なる高度な情報処理能力を持つ量子葉を開発した常イチは、連レルに「この子を頼む」と言い残して自らの命を絶つ。それは、量子葉を狙う各勢力の追跡から逃れるための連レルと知ルの逃避行の始まりだった・・・。

    脳に機械を埋め込んで処理能力をアップさせ「超人」を生み出す、というアイディア自体は、従来からよくあるSFの超定番のひとつです。そんな使い古されたテーマではありますが、古い歴史と最新の情報技術が混在する未来の京都を舞台に疾走感溢れる現代的な文体でぐいぐいとストーリーを押し進め、なかなか読ませる作品になっています。
    登場するキャラクターの描き方が良くも悪くも「今風」で、かつ理屈抜きにイメージ先行で強引に展開する場面も目に付き、古いSF読みの鴨にとっては「おいおい」と突っ込みたくなる要素も満載なのですが、最終的なSF的アイディアの「オチ」が小松左京「ゴルディアスの結び目」を彷彿とさせるアバンギャルドさで、そう来たか!と膝を打ちました。

    鴨が印象的だったのは、SF小説としての「絵的」な展開。
    「SFとは絵である」、とはよく言われることですが、この作品から受けるヴィジュアルは当初から映像化を想定しているかのようなある意味「わかりやすい」派手さが感じられ、旧来のSF、即ち文体の特徴やリズムといったものから自律的に想起されるヴィジュアル(エリスンやディレイニーやティプトリーの作品に感じられるような)とは本質的に異なる何かを鴨は感じました。SFの「見せ方」が変わってきた、ということですかね。古いSF読みとして、ちょっと時代を感じましたなー。

  •  2081年、国民の脳に「電子葉」を移植することが義務付けられ様々な情報に瞬時にアクセルすることが可能になった日本。日本の情報庁で働く連レルは情報コードの中に恩師であり行方不明となった研究者道終の残した暗号を見つける。

     今まで読んできた野崎作品と比べるとギャグの部分はないものの、SFの世界観、設定としてはしっかりと作りこまれていると感じます。

     他の野崎作品と共通しているのは、主人公が天才に導かれて(振り回されて)今まで見たことのない世界の一端が垣間見えるように思えることではないでしょうか。凡人である自分も主人公大変だな、と思いつつも、天才と共に知らない世界に近づいていく主人公がうらやましくもあります。

     そしてオチのヒネリ具合がいいですね。道終から預かった少女の命令で連レルはお坊さんの話を聞きに行ったり、御所に潜入したりと、目的が見えないまま振り回されるですがその最終目的はとんでもないところに…やっぱり野崎さんは一筋縄ではいかないですね。

     エピローグはとても意味深。人類は果たしてそんな極致にたどり着けるのか。知りたいような知りたくないような…

  • いやあ、これはこれは!久々に「SF」を読んだなあという満足感でいっぱい。危うくパスするところだった。よくぞ読んだものだ。

    大森望さんの「萌え要素をちりばめながらそっち方面には行かない」という評がなかったら、この表紙ではまず手に取らなかっただろう。控えめではあるけれど、はっきりとラノベ的。おまけに冒頭部分があまりにも陳腐で、投げ出したくなったのを我慢して読んでいったら、だんだん引きこまれていった。大森氏の言う「ちりばめられる萌え要素」はまったく好きではないけれど、物語の行き着く先は堂々たるSFの大技だ。

    もっとはっきりちゃんとしたSFってわかるようにしてよね!と思いかけて、ふと気づく。いやこれは逆なんだな。「本格SF」じゃないなら読まないもん!なんて奴より、ラノベ風の看板にひかれて読んだら、あらまあこれってすごいんじゃない?って思う人の方がずっと多いってことだ。

    提示されるビジョンの大きさがとてもいい。想像力を駆使して、思いも寄らない景色を見せてくれるのがSFの醍醐味だろう。しかもそれが突飛なものという感じがないところが本作の優れているところだ。いやまあ、常識的には十分突飛なんだけど。

    あと、大森氏も書いていたが、京都で学生生活を送った身には、設定が感涙ものだ。2080年の未来にも京大がまだあって、それより何より、進々堂が創業150年を迎えているというんだから!確かに京都は(特にあの近辺は)少々の時の流れにはびくともしない感じがある。いろんな意味で楽しんで読みました。

  • 近未来情報社会はこうなっているのか?と考えるような作品でした。私たちは武力というと重火器や機械(ロボット)などを想像しがちですが、実際の世の中では情報を握っていることが強さになってきています。発電所などのインフラがクラッキングされた事例もありますし、これが核のボタンになる場合もあると思います。もしくは、ターミネータのような殺人系のロボットは情報技術の塊です。そう考えていくと、近い未来の戦争は物理的な能力ではなく、電子的な戦争になるような気がします。そんな近未来社会の1つの形を思わせられました。

    恋愛面もありますが、私にはそれはあくまでも1つの要素で、情報技術のあり方が一番のグッときました。

  • 「知る」をテーマにしたSF。
    Ⅰ.birthがやや退屈だが、そのあとは一気読み必至。
    ただし一読しただけでは、よく理解できなかった。


    (以下追記、ネタバレ注意)


    以下、ネットの解説を読んで、感心したことを追記しておく。


    唐突な濡れ場の意味。
    初めは―中盤のクラス*との戦いでも下品な言葉があったため―作者の趣味かと思ったが、しっかり意味があるようだ。

    その濡れ場の前にある「連レルが与えられるもの」について考えると、
    それは単純に「新たな生命(肉体)」であると思われ、すなわち「事象の地平線を超えて戻ってこられる宇宙船」のことだと考えられる。

    それは、子供でも知っているようになった死後を、人類で初めて「知った」知ルが復活した方法であり、つまり新たな肉体に量子葉を植え付けての復活だと推察される。


    という推察を読んで、とても筋が通っていると感じた。
    というかそうとしか思えなくなった。
    いろいろな謎や伏線がこれで解決できる。
    非現実的な世界をしっかりと現実的に着地させる、野﨑まどの筆致に感服した。

  • 知ることを突き詰めるとどうなるか。
    悟りを得るとどうなるか。

    この内容を1冊でまとめたことは凄いなと。
    攻殻機動隊的な世界かな。
    預言者ピッピにも近い。

    ただし、情報力はなんとなく...
    自己組織化されたかされていないか、秩序だっているかだっていないかは受け手の観測者の問題な気がする。

  • 情報インフラが脅威的に進化し,「電子葉」と呼ばれる補助コンピュータを脳内に移植することを義務づけされた近未来の日本。
    情報庁のエリート官僚が師と慕う天才博士(世界のインフラの基礎を作った人)の暗号を発見する。
    博士に託された天才少女と行動をともにする4日間は世界が変わる始まりだった・・・。
    まず驚かされたのが,緻密に作りこまれた世界観設定。最近読んだ伊藤計劃に勝るとも劣らない作り込み。強いて言えば,情報インフラの発展の前提となったエネルギィ革命みたいな薀蓄が欲しかった。
    (ちなみに世界観という意味では,森博嗣の百年シリーズが未だ最高だと個人的に思う。)
    いかにもライトノベル的なかませキャラとのどうでもいいバトルとかあったり,名前が皆やたら読み難い("松崎 茂ル"みたいな)とかは人によって拒否感があるかも。
    とはいえ電脳SFものが好きなら間違いなくオススメ出来る作品。

  • 知ルが可愛いんだな。舞台が京都というのも、街の狭さが効いていてよかった。
    中盤の雑魚キャラはなんとかならないかな。とある某作品かと思ったことよ。
    テーマ的にはもっと掘り下げられる内容で、3倍くらいのボリュームで展開したら楽しそうな。
    知ルがとにかく可愛いので市川春子の絵で読みたいなぁ。

  • 未来のイメージが感覚にベストマッチ。先生が再現されたところは鳥肌だったなー。死を知ろうとするという方向もセンチメンタルで魅力的だったけど、なんというか収束ではなく拡散していく物語がみたいなと思う。この話で言うとエピローグの先かな。でも来るべき世界の物語だし、僕には書けないので満足の☆5です。

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