エンドロール (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 415
感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311445

作品紹介・あらすじ

映画監督志望の青年は、孤独死した老人の部屋でフィルムを見つけ、その軌跡を辿り……

感想・レビュー・書評

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  • 涙の良作の一冊。

    孤独死した老人の遺品を手にした青年が彼の人生を紐解いていく物語。

    また一つ知る戦争という負の歴史。"伏龍"特攻隊。

    なんて愚かな作戦か…。実験、任務を遂行しようとする特攻隊の心中はいかほどのものか…文字を追う度、心に打ち寄せるのは涙の大波。

    そしてその時代を生きた人にしかわからない想いがあることを終盤に教えられた、見つめることができた良作だった。

    亡き人の真の心はわからないけれど、散りゆく誰ものあの瞬間が幸せだけを感じる終幕だったことを信じたい。

    そして平和の尊さを教えてくれたことに敬意を払いたい。

  • 主人公は門川。
    映画監督を目指し田舎を飛び出した青年。挫折を味わい、アルバイト生活に追われていた。
    マンションの管理人業務の際に、帯屋老人の死に出会すことになる。部屋の整理を任された門川は、8ミリフィルムや映写機を発見する。そこに映された映像に強く心惹かれ、物語は動き出す。

    孤独死、無縁社会、限界集落。
    社会問題の渦中にいる人々の生き方や、戦争を体験した世代の価値観が交錯する。
    日本の戦争が終わっても、戦争を経験した人たちは終わらない何かを抱えて生きて、死んでいく。

    門川青年は帯屋老人の生涯を追ってドキュメンタリー映画の制作を決意する。
    8ミリフィルムから始まった物語は、決して孤独という言葉だけでは表現できない複雑なものとなった。

    門川青年の映画監督になるという夢は、最後に一筋の光に照らされることになる。

    老人は人生のエンドロールに沢山の人達の名前が載ることに誇りを抱いて逝った。決して孤独なんかじゃなかった。

    読了。

  • 映画が好きで、監督になり映画を撮る夢を抱きながらもアルバイトに追われ淡々と生きている主人公が、ある日アルバイト先のマンションで一人の老人の孤独死に立ち合う。そして、老人の遺した8ミリフィルムとノートに書かれた謎の文章から、その人生を顧みドキュメンタリーを撮る事になった。孤独死だった老人の過去を追ううちに、浮き彫りにされる戦争と人間関係。老人の死はやはり寂しく孤独なものだったのか…。
    孤独死、無縁社会が問題になっている現代だが、人との繋がりをより大切に想える作品だった。自分も大勢の人と出会い、生かされてきたなぁと。これからの出会いも大切にしたい。

    読み終わった時に思い出したのは、かなり世界観は違うが宝塚の『イーハトーブ 夢』のセリフ…「僕が生きていたことを君が覚えてくれさえすれば、僕はいつまでも永遠に星でいられるんだ。」鏑木さんの作品は先日宮澤賢治のものを読んだばかりだったので、また繋がりを感じてしみじみ。

  • 青年の主人公があるきっかけから一人の人生をたどる物語り。永遠の0もそうだけれど、
    世代のギャップや話したくない気持ち、話せない話し、忘れたいことを聞いてほしくない気持ち、だけど知りたい気持ち、とても伝わってきた。
    最後はそれぞれの真実になっているけれど
    未来に向けたエンドロール

  • 主人公、映画監督になることを夢見ながら、アパート管理のバイトをする青年。彼が管理を担当するアパートで独居老人の孤独死が起きる。遺品の中には8ミリ・フィルムがあり、その中の映像に主人公は心惹かれる。
    そして、亡くなった老人の人生を探っていくうち、太平洋戦争末期のある〝秘密〟にたどりつく。
    ……と、いうような話。

    独りぼっちで亡くなっていったように見えた老人の生涯に、じつは多くの人との豊かな絆があり、熱い思いがあった。それを静かに浮き彫りにすることによって、作者は行間に秘める形で生命賛歌を謳い上げる。

  • 映画のノベライズのようなイメージ。言いたいことは分かるが、やや説明が過ぎる感も。

  • 「一人で生まれ、多くの方と縁を作り、そして一人で旅立つ」この作品を読むまでは、これが寂しいと感じていた。今は違う。完全に逆転こそしてはいないが、人生のエンドロールに連なる名を見たとき、その一人一人の優しさを思い浮かべ、感謝出来る。そんな人生をおくりたい。それが「繋がり」だとか「絆」であるのなら、これらの言葉をもっと大事にして行きたいもんだ。

  • ある人の人生が幸せなものか、そうではなかったかを評価するのに、ある一点をもってのみで、軽々しくなされてはいけない。そんなことを考えさせられます。
    同時に、主人公である映画監督に憧れるフリーター青年の成長も嬉しい。
    そして、田口幹人氏の解説にグッと来ます。

    ▲とにかく、人間の死を扱いたいのなら、地に足つけて生きることから始めるんだな。生き様が死に様なんだから▲

  • 映画と戦争と廃村。好きな要素。

  • 同様のテーマを扱っている「永遠の0」などより、ずっと良い。

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著者プロフィール

鏑木 蓮(かぶらき・れん)
1961年京都府生まれ。広告代理店などを経て、92年にコピーライターとして独立する。2004年に短編ミステリー「黒い鶴」で第1回立教・池袋ふくろう文芸賞を、06年に『東京ダモイ』で第52回江戸川乱歩賞を受賞。『時限』『炎罪』と続く「片岡真子」シリーズや『思い出探偵』『ねじれた過去』『沈黙の詩』と続く「京都思い出探偵ファイル」シリーズ、『ながれたりげにながれたり』『山ねこ裁判』と続く「イーハトーブ探偵 賢治の推理手帳」シリーズ、『見えない轍』『見えない階』と続く「診療内科医・本宮慶太郎の事件カルテ」シリーズの他、『白砂』『残心』『疑薬』『水葬』など著書多数。

「2022年 『見習医ワトソンの追究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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