PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫 JA ヨ 4-4)
- 早川書房 (2014年9月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150311674
作品紹介・あらすじ
凄腕ハッカーのチェ・グソンは、いかにして槇島聖護と出会ったのか? 新鋭が描く人気アニメのスピンオフ第1弾。縢秀星篇も併録
感想・レビュー・書評
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寡聞にして吉上亮という作家を知らなかった。
サイコパスノベライズで初めて氏の作品に触れたのだが、これが本当に素晴らしい。
既にヒットしたビッグネームのノベライズというと、どうしてもその人気に頼って文章などもろもろお粗末になりがちなのだが、これは本当に文章力と構成力が高くてびっくり。
文体自体に魅力があって、槙島の登場シーンに顕著だが、特にキャラクター描写が秀逸。各キャラのファンなら納得するのではなかろうか。
そしてその安定した筆力が支える世界観もまた素晴らしい。
扱う事件もまたシビュラ管理社会が抱える歪みや欺瞞をよく描き出している。
本編では語られなかったグソンが主人公としてインスパイアされてるのは嬉しい。彼が好きな人は読んで損ない。残虐シーンが苦手なら正直勧められないが、アニメ本編を見てるなら耐性あるはずだ。
ただ矛盾点もあり、グソンや下巻にでてくるリナの性格が本編とやや食い違ってるように見受けられる。
特にリナは、六合塚との決別時に「思ってたのと違うな」とひとりごちた軽さからは想像できない悪女にして聖女に進化していて、作中の経緯を辿ってもはたしてこんなにキャラが変わるか……?と疑問符が付く。
おそらく作者の好みの入ったアレンジだろうが、それを補ってあまりある魅力を評価したい。
個人的にはグソンが一介のハッカーから本編でのシビュラの裏をかく凄腕クラッカーになるまでの経緯が知りたかったのだが、その部分は省かれて残念。
妹を疑似空間で満足させるために、そのあたりのスキルや知識を磨いたのかな……と仕方ないので自己完結。
槙島の登場は後半になるが、カリスマ性は健在。文章で描写されることでさらにミステリアスな魅力が増すので、ファンにはぜひ読んでほしい。
縢の話はおいしそうでお腹がすく!料理描写が凄く生き生きとステキで、夜中に読むのは危険な飯テロ。
征陸や宜野座、他の一係の面々もそれぞれいい味を出している。
事件そのものも、シビュラ社会でいかにもありそうな盲点を突いたもので、「なるほどこうくるか!」と唸らされた。
狡噛の意外な生い立ち(母子家庭だった)も語られてお得。
人は死んでも技術は生き続ける。
縢ハザードで色相が濁った人は、終盤のモノローグにだいぶ救われるはず。 -
アニメでは謎に包まれたままあまり紐解かれなかった槙島に与していた朝鮮人グソンのストーリーとがガリが料理に目覚めるきっかけとなったストーリーの二本立て。
グソンの話が想像を絶するバックグラウンドで、ここまでの背景がありながら、アニメではただ飄々と、槙島の右腕として動いていたのは逆に違和感かもしれない。アニメではもう少しグソンの底暗さを描いても良かったのでは、と思うくらいでした。
かがり君はやっぱり好きだ〜というかPSYCHO-PASS一期の一係好きだ〜となってしまう。 -
オススメは縢秀星の章。チェグソンも面白いのだけれど、食事中に読むのは決してオススメしない。朝から、というのも、あまりオススメしない。グロい、えぐい。。
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無窮花
チェ・グソンの過去の話。
終盤に少し出てきただけなのに、槙島の存在感はやはり真っ白に際立っていた。グソンが現実逃避のために作り出した幻だったらどうしようとさえ思った。
なぜ彼は、スソンを綺麗に保つことを放棄してしまったんだろう。醜い化け物になってくスソンから目を背ける方が、お人形を手入れするみたいに、動かなくなった妹の世話をし続けるより楽だったのか。彼にとって。
レストラン・ド・カンパーニュ
映像化してください。これは是非映像化するべき作品。
カガリハザードは遅効性のため、「そんな……なんで……じゃあカガリはなんのために……」という絶望的な気持ちが日常のふとした瞬間に襲ってくる。しかしこの作品のおかげで彼が短い青春を謳歌していたこと、彼にもこの世に遺したものがあることがわかったので、もうカガリハザードによる心理汚染の危険性はないものと思われる。
……でも、彼女がいつかまたカガリがハンバーグを食べに店に来ると信じていると思うと涙が出てしまう。
クライマックスの犯人を追い詰めるシーンは、あのBGMを聞きながら読むと2倍楽しめます。 -
もう色んな意味でやられた…チェ・グソンだけでこれだけ引っ張られると本当に物語り自体が重量を持つ感覚になる。作者の意図は見事にハマった。キャラ以上に世界が凄かった。
縢の話は、繰り返すけど朱ちゃん大好きで嬉しいです。好きな人と好きなものを共有できる幸せを。