PSYCHO-PASS GENESIS 2 (ハヤカワ文庫 JA ヨ 4-7)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 404
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311957

作品紹介・あらすじ

潜在犯へと堕ちた征陸智己。隔離施設に収容された彼の元を訪れた人物とは? 征陸篇完結

感想・レビュー・書評

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  •  この本で感じたことは征陸のとっつぁんへの羨望でした。征陸のように自らの意志で善悪を判断し、その選択に責任を持つことが自分にはできてないからだと思います。
     もちろん征陸も最初からそれができていたというわけではなかった。家族のみをとれれば、ある意味で社会に順応できるかもしれない一方で、刑事としての自分を取りたいがために社会に順応できない。玉石混淆、あれもこれもを取りたいと駄々をこね、そしてそれを取りこぼし壊してしまった。取りこぼしていくなかでも絶対にとりこぼせないものに気付き、最後はそれを強く守った。
     ある意味で底付きすることで気付けたので、必要な犠牲だったのかもしれません。たぶん自分の人生だとあそこまで底に落ちていくことは難しいし、たとえ落ちたとしても征陸のように自分の大切にしているものに気付けるとは思えないです。だからある意味で征陸の人生は羨ましいし、考え方や意識が尊いものに感じられました。
     物語の人物で一番好きなキャラクターです。久しぶりにとっつぁんに会えて良かったです。

  • 八尋の事件後、征陸は隔離施設へ。
    そして巌永監視官の執行官として配属されることになる。
    征陸の父も刑事、そして息子・伸元も監視官(後に執行官)で脈々と受け継がれてます。
    最愛の冴慧・伸元との別れ、義体の左腕の理由も判明。
    何よりびっくりなのは巌永の正体ですよね。

  • 最近またPSYCHO-PASSの世界に魅せられています。ラストは意外の感がした。八尋さんイメージは完全にクゼですし、内容的に攻殻とPPと伊藤計劃ミックスした感じ、としか言いようがないのですが、読み応えは十分あったと思います。

  • 潜在犯として隔離された征陸が執行官となり八尋を殺すまでの話。
    予感はあったが妻の冴慧さんの精神が既に死んでいるのをホスピスで目の当たりにした後、守るという約束を破ったとして幼い伸元に突き飛ばされる征陸の心境を思うととても胸が痛い。
    それでも、最後は息子を守り抜いて死んだとっつぁんの生き様を見届けるために、もう一度本編を見返したくなった。
    創世記としては3、4巻をもって完結のようなので、4巻の発売を待って同時に読みたいと思う。

  • 「おれたちの脳味噌は、相手の行動が何であるかを理解する前に、いったん模倣する。その意図を理解するメカニズムがある。そいつは、おれたちのコミニュケーションを支えている。間違いはないか?」
    『あれが物事の道理ってやつを深く考えずに済まそうとした人間たちの末路さ。最初の一頭が有していた「排除の意図」は、飢餓を逃れるためだった。続く一頭は、仲間の生存を保全するためだ。両方とも意図に対する理由があった、しかし、この「排除の意図」だけが共感神経系を介し、自分で物事を考えられない阿呆な周囲のマカクたちに瞬く間に共有された。相手を排除しなければならないという目的の模倣だけが繰り返され、彼らを闘争に向かわせた。終りなき排除合戦だ。』

    『それに潜在犯とは、本質的に犯罪者でなかろうと、他者の排除に躊躇いがない人間があれば該当してしまうのかもしれない。』
    『潜在犯たちが無罪放免される未来が来るとしたら、正直、ぞっとする。~潜在犯は、犯罪行為とはまた別の脅威を抱えた人間であることは間違いないと思う。』
    考え方の一つとして。…うーん?どうして自分がそうなる可能性を全く考えないのだろう。犯罪係数はそんなに前後しないものなのか…?けどメンタルケアにも躍起になるんだよね?でもシビュラを信頼して認めてるからそれもそうなのか…。

    『真実の探求者であること、そして正義の体現者であることだ。それ以外に何もない』
    「与えられたすべてを無駄にしないために~あくまで裁かれる側が、理不尽に殺される最後の瞬間まで、自らの信仰を捨てずにいられるのであれば、ね。~しかし、公に仕えることを選んだ一部の人間は、確固とした理念を持たなければならない。特に人間の命を奪い去る〈法〉という正義の天秤となることを選択した者たちはね」
    「お嬢さんと話していると、自分が古い時代の人間だって思い知らされるねえ――だがね、それは持てる者の傲慢だよ。およそ、ほとんどの人間は持てず、そして餓えている。だから持つ者こそが、その役目を正しく果たさねばならないのだ」
    『だから、警察は自壊したのです。組織を支える脚、職務を遂行すべき腕。自らの正義について思考すべき頭――そのすべてを腐敗の温床に変えてしまった。そして全身が腐り落ちた。自らの犯してきた罪を省みなかったがゆえに。』

    「金子の狸爺は、そのために捨て石になることを了承したのさ」
    『さて、革命とは、大衆の幸福のために自己犠牲を厭わない「捨て石」の精神こそが寛容であり、我々は、この決起を通して自らの命を惜しまぬ覚悟でございました。しかし、ひょっとすると、あなたがた善良なる市民は、他者がどれほど命を落とそうと気になさらないのではございますまいか。~それでは、私たちの訴えもご理解できないのかもしれません。』

    「そういうものなのか?」
    『犯罪係数とは、つまるところ、自分がいつ死ぬべきかについて、〈シビュラ〉の言う通りにするということだ。』

    『自分が生まれる前の時代は、今よりよかっただろうか。~何一つとして、そんなことはなかった。』

    「わたしは孤児でした。発見されたとき、死に瀕していました。世界はなんて残酷なんだろうと思って、憎み、そして絶望していました。けれど、赤の他人に過ぎないわたしを愛し、育ててくれたひとたちがいました。この社会は、わたしに生存の可能性を与えてくれた。だから、今度は私の番なんです。かつてのわたしのような人間をひとりでも多く救うこと。そのために、わたしは今、ここにいる」

    「あんたはなぜ、殺す……」
    『きっと、あなたは、こんなことをしなくても、望みを果たす方法がいくらでもあったはずだ。あなたには、いくらでも可能性があった。あなたは、誰よりも正しい願いを信仰していた。しかし、決定的に、選択を誤った。』

    「社稷治ってものがある~物理的に人間同士の距離を置くんだよ~人とシステムを直接につなげる。~小規模集落」…殷周?

    二巻で特に印象が残ったのは金子さんの生き様で…かっこいい…。かっこいいなあ!かっこいいです。(強調)一巻で八尋さんにキャーキャー言ってたのに浮気をした。いや、かっこよさのベクトルがちがうから…八尋さんはこうコムスメの気持ちで後ろにキラッキラした乙女フィルターがかかってテンションが上がるそういうかっこよさで、金子さんはじわっと気づいた時に黙るような格好よさだから!!胸が熱くなる格好よさだから…!!と楽しく読みました。(きもちわるい)金子さんみたいなキャラがいる警察小説読みたいな…!!合いそう…!と思いながら読んで、あと厳永ちゃんシビュラを拾ったのシスターだったら個人的にときめくなあ、と…。

  • シビュラができるまでの物語でしたが、ほとんど征陸さん物語でした。ほんと…壮絶な人生が苦しくてつらくて悲しくて、読むのがつらかったです。とくに冴慧さんが…伸元が…あのシーンは泣いてしまいました。悲しすぎる。アニメだけではわからなかった潜在犯の扱いや設定が細かくわかってとてもよかったです。そして義手になる経緯もわかってよかったです…征陸さんらしい終わり方だったなぁと思いました。真面目でまっすぐで旧い時代の男の生き様はかっこよくて、とても切なかった…また終わり方が気になる感じで、次も早く読みたいです。次は誰目線でしょうか。サイコパスを深く知るうえで、スピンオフは欠かせませんね。

  • 人間同士のいざこざはよくわからないまま話が進んだ。私はシビュラが好き。

  • この世界、きっと未来の話。

  • 警視庁・特命捜査対策室の征陸智己と八尋和爾は、懸命な捜査の末“ノナタワー落成式襲撃事件”の首謀者アブラム・ベッカムの元へと辿り着く。だが、アブラムは厚生省が派遣した制圧無人機により殺害され、八尋は責任をとるかたちで警視庁を去った。そして2091年、警察は解体され、新たに厚生省公安局刑事課所属となった征陸は、いまだ正義の在り処を追い求めていたのだが――スピンオフノベライズシリーズ、征陸篇完結。

    色相が濁りそうな描写もあるが、深見さん高羽さんノベライズより吉上版が何よりサイコパスらしいと感じる。旧世界と新世界の狭間に生まれ、どちらにも染まりきれない征陸が社会を受け止める視線は、読者の視点そのものともいえる。かつての親爺・八尋を追い捜査を続ける中で、シビュラシステムそのものについて、社会のありかたについて考え自身の行動や信念を今一度考えることになる征陸。八尋の考えを完全に理解できる人物であり似た境遇に立たされても、家族を守るために異なる選択をするというのは、宜野座の過去を知る側からすると意外でもあった。あくまで刑事として、執行官として生きる理由に家族があったとは。最期の瞬間まで彼が自分の心に従い生きていたことが分かって涙が止まらない。

  • 2016.11.14

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