あまいゆびさき (ハヤカワ文庫JA) (ハヤカワ文庫 JA ミ 15-2)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 381
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312497

感想・レビュー・書評

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  • 宮木あや子さんは『官能と少女』から。恋愛小説としてはわりと露骨な性描写が特徴で、後ろめたくもくすぐったい感じになります。本作はいわゆる百合的な展開が主となっていて、同じく宮木さんの『ヴィオレッタの尖骨』とともに気になっていた一冊です。しかしまぁ、「あまいゆびさき」…このタイトルは甘美で、それでいて厳かな儀式を想起させますよね。

    さて、冒頭主人公ふたりの幼少期(保育園児あるいは幼稚園児)から、チョコを口移ししたり触りっこをしたり結婚ごっこをしたりと、まあ見せつけてくれます…。「さすがここまでしないだろう!」とツッコミたくもなりますが、幼いふたりにとっては「楽園」を訪うがことき夢のじかん、読み進めていく上で鮮明にふたりの絆を象徴していく風景なので、導入としては納得させられるものがあります。このくらいがよい。正直この序盤の序盤こそ一番印象深かったような気がします。

    そこからの展開は良くも悪くも真っ直ぐな恋愛物語です。すれ違いがあり、ベッドシーンがあり、ハッピーエンドで締めくくられます。ここまで真っ直ぐだとは…。もうちょっと背徳的というか、照乃ちゃんのためになら罪をも犯す(チョコをあげるために万引きをする)みたいな展開が続くと思っていただけに、私が思っていたような展開になることはありませんでした。二人とも真っ直ぐでとてもいい子でした(笑)。登場人物も、やけに悪人っぽく書かれた大人たちを除けば、みんな芯のあるいい人たちです。

    ですから、本作は立派な成長譚あるいは青春小説としても読めるのではないでしょうか。特に後半のドラマチックな展開から緩やかに着地していくラストは良い余韻にひたれます。

    まとめると、想像していたような薄暗さはあまりなかったものの、「ほんとうに」人を思う気持ちが美事に結晶した綺麗な一作でした。(因みに、私は映画なら『小さな悪の華』っぽい少女の交流が好きです。)

    「大丈夫、ぜんぶ、ふたりで始めよう。何もなくてもきっと、一緒にいれば平気だから。これから怖いこともあるかもしれないけど、ふたりでいればきっと怖くないから」
    こんなに小さな手なのに。こんなに小さな身体なのに。大きな黒い瞳から発せられる希望に似た光は、私たちの未来だけを映す。(本書より)

  • 2019年、24冊目は宮木あや子。久々の一晩読了。

    過保護な母を持つ、真淳。ネグレクトされる母子家庭の照乃。団地の隅で出会い、互いに惹かれあった二人。しかし、幼すぎた二人は、すぐに引き離されてしまう。互いに忘れることの出来ない存在となったまま成長した、真淳と照乃。そして、二人は再会するのだが……。

    予備知識も情報もなく、官能コーナーで見つけて即買い。しかし、官能を期待すると、かなり面喰らう。官能要素もないではないが、二人の少女の成長譚であり、同性愛的恋愛小説である。

    真淳の母も、照乃の母もベクトルは違えど、ちょっと歪んでる。一方で、コチラも少々歪んでるが、奥井や、終盤大活躍のユリカのキャラ立ちは納得。

    コメディー的ドタバタ感さえあるクライマックスと、出来過ぎ感じるエンディングが、少し好みと違ったのが、個人的な評価の伸び悩み。

  • 途中の虐待描写が刺さる刺さる。
    容赦ないな、あいかわらず。
    ほんのちょっとしか出ないけどカリンちゃんママが格好いい。

    なんつーか、宮木さんのエグい方だわ――というお話でした。
    最後は明るい方みたいに、キラキラしてて、かわいかったけどね。

  • 性的マイノリティをもった少女の恋愛。
    心が強い女の子。

  • 幼い頃に出会った真淳と照乃、離れても忘れることができず、女性同士なのに、それはまさに運命の恋だった。境遇の違いや、すれ違う気持ちなど、これが異性との恋愛だったらベタな青春恋愛ものだけど、同性ということ、性的マイノリティの人や引きこもりのオカマが出てくるあたりが面白い。同性に惹かれる葛藤や、スクールカーストなど、もう少し深い方が好みだけど、ライトな分読みやすいとも言える。ただ、全体的にラノベっぽいのに宮木さんらしい艶っぽい表現があったりして、バランスの悪さを感じた。レーベル的にも女性同士の行為の描写なんて珍しいんじゃないかな?主人公2人より奥井が一番好きかも。

著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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