公正的戦闘規範 (ハヤカワ文庫 JA フ 4-4)

著者 :
  • 早川書房
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150312909

作品紹介・あらすじ

デビュー長篇『Gene Mapper』の前日譚「コラボレーション」、近未来の皮肉な戦場を描く表題作、「第二内戦」ほか全5篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 5篇収録の短編集。どれも、めっちゃ面白かった!
    一つ目の「コラボレーション」を読んだ段階で、当たりを確信できた。この著者を追っていくしかないな!(確信

    テクノロジーを悪とせず、テクノロジーの生み出す変化を好意的に捉えているのが相性の良い理由なのかな?(良かった理由は、まだよくわかってない

  • そうそう、これこれ!
    現在の延長線上にあるちょっとした未来と、新技術がもたらす社会変化をポジティブに描いてくれる、藤井太洋ワールドが炸裂です。
    未来に希望が持てる作品です。

  • 他よりも取り扱う技術が新しいからなのか、求めるリアリティの水準が合っているからなのか、相変わらず藤井太洋の描くSFは面白い。
    物語がこれから膨らみ、盛り上がっていきそうなところで終わってしまう短編であることだけが残念。
    200215

  • 藤井太洋の送る技術特異点とその先の近未来を描いたSF短編集。量子コンピューターによる量子アルゴリズムとフリーズ・クランチ法という未来予測。クォイン・トスというゲームが彩るセブ島での一騒動を描いた「常夏の夜」が個人的に一番面白かった。近未来的なガジェットがてんこ盛りでありながら、ディストピアめいた悲観的な視野は一度もなく、量子ネイティブへの期待という人類の希望が詰まっている。因果逆転した記事を参考に、暴走するクラブマンからの攻撃をかいくぐる姿は良質なハリウッド映画を見たときのような興奮を味わうことができる。

    表題作である「公正的戦闘規範」もドローンにより人類不在になりつつある戦争に公正さを取り戻すという意欲作である。ORGANというオペレーターが直接戦場に立ち、火器や無人機を操作するというのが非常に面白く、殺意を戦場に閉じ込め、その戦う姿に物語を付随させるという結論には膝を打ってしまった。大切なのは誰が血を流し戦っているかであり、そこに物語があるか否かである。戦争の概念が変われば戦場は薄く広がっていき、テロが激化するため、あえて戦争を戦場に固定してしまい、裏を返せばORGANさえ倒せばそれが勝利条件になるため、戦争そのものがわかりやすくなる。この視点は非常に斬新であり、感銘を受けてしまった。人類同士の争いを超えた、人類vs無人機の戦争でもあるのだ。

    「第二内戦」はアメリカが二つに分断された話なのだが、アメリカの歴史や開拓者精神、自警団的な発想を考えれば一番ありそうな未来に思えた。古き良き時代のアメリカを取り戻し、マッチョ思考に彩られた白人だけが住む国。FSA「アメリカ自由領邦」という国名がとても良い。

    どの短編も、幕引きは常に人類の新たな挑戦と希望に満ち溢れている。本来の技術革新はこうしたワクワク感に溢れているものであり、SFといえばディストピアというイメージを持っている人にこの本書を読んでほしい。

  • 藤井太洋の短編集
    テーマはやっぱりセンスがいいけれど、できれば長編で読みたい

  • シンギラリティ―を、AIが意思を持って人類を排除するというような荒唐無稽な世界としてではなく、計算力や処理能力が飛躍的に上がることで起きる変化として描く。
    量子コンピューターや相互にやり取りするAIなどによって技術的には現在の延長のような世界でも劇的な変化をもたらすことを短編ならではの鮮やかな場面の切り取りで描いている。
    既存のインフラやその延長上の技術で十分に快適な生活を送れるということを倫理ではなくAI制御の側面からしっかりと示す。凄惨な話もあるが、どこかで技術への信頼や明るい展望が示される。

    いままでこの作者の登場人物にはいまいち優等生過ぎて共感できないとこがあったが、今作では全く気にならなかった。今後作者の作品がますます楽しみとなった。

  • SF短篇が5つ。カバーは表題作の山場、近未来の中国での対テロ戦です。テロリストを倒すのは未来兵器なのですが、戦闘への人の関わり方を考えたお話しです。戦闘能力を持ったドローンが大量生産されたら怖いですね。

  • 19.4.8読了

  • 読み終わってから少し経ってしまった。

    自分としては『ハローワールド』くらいの軽さが読みやすかったので、プログラミングとかメカニックな面では付いていけなかったかなー。

    ただ、表題作「公正的戦闘規範」の世界観は好き。
    利用された者の持つ恨みと復讐の繰り返し。
    そこに知恵と技術が集まれば、盤面をひっくり返すことなんて容易くて、けれどひっくり返された盤面が「勝ち」を現すとも限らない。
    民族衣装に身を包みながらロボットに騎乗して殺戮する彼女の姿は、倫理的な面を無視すれば否応なしに格好いい。
    そうして彼女が君臨するであろう世界を、また別の技術が乗っ取り、塗り替えてゆくであろう未来。

    まさに、諸行無常。

  • 藤井太洋氏の小説は、現在進行形のSFとも言えるもの。現在のほんの少し先を描いてみせるから、とても興味深い。

    今回も、現在既に実現している技術で考えられる、ほんの少し先の未来を描いてくれてて、次作が楽しみな作家さんだ。

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著者プロフィール

藤井大洋:1971年鹿児島県奄美大島生まれ。小説家、SF作家。国際基督教大学中退。第18代日本SF作家クラブ会長。同クラブの社団法人化を牽引、SF振興に役立つ事業の実現に燃える。処女作『Gene Mapper』をセルフパブリッシングし、注目を集める。その後、早川書房より代表作『Gene Mapper -full build-』『オービタル・クラウド』(日本SF大賞受賞)等を出版。

「2019年 『AIが書いた小説は面白い?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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