ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150413378

作品紹介・あらすじ

おれを力いっぱい殴ってくれ、とタイラーは言った。事の始まりはぼくの慢性不眠症だ。ちっぽけな仕事と欲しくもない家具の収集に人生を奪われかけていたからだ。ぼくらはファイト・クラブで体を殴り合い、命の痛みを確かめる。タイラーは社会に倦んだ男たちを集め、全米に広がる組織はやがて巨大な騒乱計画へと驀進する-人が生きることの病いを高らかに哄笑し、アメリカ中を熱狂させた二十世紀最強のカルト・ロマンス。

感想・レビュー・書評

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  • これはすごい。
    一世を風靡した”ファイト・クラブ”。
    当時映画は観た記憶はある。
    とんでもなくかっこいいブラッド・ピット、激しい暴力性のイメージが強烈なまでの印象を残している。
    が、それ以外の物語の部分となるとほぼ忘却の彼方。
    原作を本で読んだこともなかったし、チャック・パラニュークの名すら意識したこともなかった。

    最近、『ファイト・クラブ』の作者が長い空白の時を経て新作を出したと聞き、この機会に読んでみるかと手に取った一冊。
    まず、度肝を抜かれるのがその文体。
    最初は何を言っているのかほぼ頭に入ってこない。
    何やら精神に異常をきたしているのか、薬でトリップしてしまっているかのような支離滅裂さと急速な場面転換。
    ただ、注意深く、というかちゃんと言葉を沁み込ませて読んでいくとギリギリ理解できる。
    理解できてくると、そのぶっ飛び具合が逆にかっこいいとさえ思え、クセになる。
    なんとも不思議な文体だ。

    デイヴィット・ピースとかジェイムズ・エルロイなんかを彷彿とさせるが、彼らともまた一味違う。
    著者あとがきを読むと完全に狙った結果のようにコメントしており、ものすごい技術だと感じた。
    そして、この文体を新訳で見事に表現しているのが池田真紀子さん。
    最高です。

    物語性としても、これはこの世界観に憧れ、かぶれる輩が多く出てくるだろうと思うような中毒性のある陶酔感が半端ない。
    不眠症に悩みながらサラリーマン生活を送り、そこそこの暮らしをしているものの今ひとつ生きている実感が薄い主人公。
    迫り来る死と向き合うことでその空虚さを埋めることが出来ると気付き、病を詐称し、様々な病気の互助グループ通いをするが、そこで出会ったマーラ・シンガー。
    彼女も自分と同じ詐病と確信する。
    なぜなら、自分と同じく複数の互助グループで見かけるから。
    彼女が居ると見透かされているようで互助グループの活動に没入できない。
    何とかマーラと話を着けようと近づくが、あえなく交渉決裂。

    そんな中、出会ったタイラー・ダーデンというカリスマ男。
    最初はウェイター業の中で行うちょっと過激ないたずら(と言うには悪意ありすぎだが)と少人数での”ファイト・クラブ”の開催を共に行い、やや歪んだ方法で人生の彩りを取り戻して行くのだが、次第にエスカレートし、コントロールが効かなくなって行く。。。

    ”生”を実感するために繰り返す、正気とは思えない暴力、悪事の数々、狂乱。
    ともすると、足を踏み入れてしまいそうになる危うさを牽引力とするカルト的でパンクな唯一無二の物語。

  • ファイトクラブと結婚は似ている
    久しぶりに読むの苦しくて、解説を途中で読んでしまった。そして解説で触れてるテーマと、それ以外の部分なのかなにかの隠喩なのかわからない部分なのか判断する読み方になってしまった。

    話は予想していた通りの話で、テーマは解説で理解していた…ページ数も少ないが
    長く感じた。
    この長編の元になった短編版の方が読んでみたい。

    解説を先に読んで後悔、読み終えたのにその説明以上のことを感じ取れてない気がしてる。

    ファイトクラブと結婚は似ている。

  • 介護施設で働いていると利用者の理不尽な暴力に曝されることがあり、自分も首を締められたことがある。肉体がわりと元気な方だったので苦しかったけども、そのときとても脳内はクリアだった。本書を読んでそのときの澄み渡った感覚は、自分の命が自由で期限のあるものであることを実感したからだと思った。
    本作は慢性不眠症を患う主人公にタイラーという人物が「おれを力いっぱいに殴ってくれ」と頼むところから大きく動きだす。2人の殴り合いはやがてファイト・クラブという互助グループとなり、規模を大きくし全米を揺るがす騒乱計画となっていく。
    主人公は周囲がそうするように学校を卒業し、就職してメディアの勧める品を消費するようないわば普通の人。そんな主人公は物語が進むに連れて死という逃れられないものに向き合っていき、ファイト・クラブによってそれまで手にしていた普通を捨てていくことになる。この過程が自分の経験した命の危機にも通じるものがあるなと感じた。それと同時に、正解のない人生をいかに生きるのかという哲学的な問いに気付かされた。自分は本書からこの問へのアンサーとして、どんな生き方をしても自分は自分でしかないのだからもっと自分の力を信じて好きに生きてみたら?というメッセージがあるように感じた。

  • おれを力いっぱい殴ってくれ、とタイラーは言った。
    事の始まりは、ぼくの慢性不眠症だ。
    ちっぽけな仕事と欲しくもない家具の収集に人生を奪われかけていたからだ。
    ぼくらはファイト・クラブで体を殴り合い、命の痛みを確かめる。
    タイラーは社会に倦んだ男たちを集め、全米に広がる組織はやがて巨大な騒乱計画へと驀進する――
    人が生きることの病いを高らかに哄笑し、アメリカ中を熱狂させた二十世紀最強のカルト・ロマンス。デヴィッド・フィンチャー監督×ブラッド・ピット&エドワード・ノートン主演の映画化以後、創作の原点をパラニューク自らが明かした衝撃の著者あとがきと、アメリカ文学研究者・都甲幸治氏の解説を新規収録。
    デヴィッド・フィンチャー監督作品とストーリーはほぼ同じだけど、ブランド品で心の隙間を埋め広告に踊らされるブランド志向や生きている実感を得にくい社会や男性の生き方のロールモデルがない彷徨える男性の迷走へのシニカルでユーモラスな風刺が散りばめられた原作のユーモラスな面白みが良い。
    「ファイトクラブ」の着想のきっかけが、ホスピスでのボランティアだったり、様々な細部の元ネタなどが判るあとがきも必読。

  • この本。最初から最後まで面白かったかと言えば、そうではなくて、どちらかといえば、後半から急速に面白くなってきたという具合でした。

    そのため、おそらく読む人を選ぶ作品であるだろうし、駄作と見られても仕方がない表現も一部あり、それらのデメリットを乗り越えた名作、という表現がこの作品について書ける、ネタバレなしの書評かな、と思います。


    実はこの作品、出会ったきっかけはMr.Childrenの『ファイトクラブ』という曲から始まり、実際にその映画があったことから映画を見て、原作を読んだ、という経緯を踏んでいます。

    大まかなあらすじと結末は、映画で既に知っているので、だからこそ、改めて読み切ることができたかもしれません。


    主人公の「ぼく」と、「ジョン・タイラー」。
    制度の中に生きる自分と、自由に生きる「タイラー」。
    タイトルである、「ファイトクラブ」はどのようにしてできて、そしてどのような結末を迎えるのか。


    世紀末の退廃感、主人公の不安を、ぐるぐる感じながら、刺激的な表現にちょっとクラっとしてしまいました。

    後半で明かされる、びっくり仰天な事実から加速する物語の面白さをぜひ。

  • 私の人生はどこに向かっても、この本はバイブルとしたい。

    ファイトクラブの映画のレビューで「かっけえ、これは男の映画だ」というレビューが割と多く、とても残念に思っていた。映像にするとタイラーが格好良すぎて、過激なシーンの本質がお洒落さに変わってしまうんだなあと、メッセージ性があるストーリーなだけに、残念に感じていた。でもそれは監督であるデヴィット・フィンチャーの力量が、あまりにも凄まじいが故の事象だとも思う。

    小説だとカルピスの原液くらい濃く、何を言いたいかが切実に鋭利に伝わってきて良い。

    原作者のチャック・パラニュークが何を思って書いたのか、詩的な文や直接的な皮肉が混じった言葉で、独特の世界観を通して視えるのが面白い。

    この小説を読んだから、私はなにかしら人生を変えようとは思わないけど、自己崩壊を投影させて、現実の自分を見直すのにはいいのかなって思う。

  • 賛否両論ある1冊。
    映画のままが好きなら映画だけをおすすめしたい。
    ファイトするというところと、狂人的な主人公だけが同じ。
    あとは違うんだけれど、少しシュルレアリスムっぽい狂人さというか、文章も遊んでる(?)、世界観表現の為にちょっと気持ち悪くなるくらい精神的に病んでいるのを強調しているので立て続けは苦しかったかもしれない。
    個人的に原作が映画と違うのに拒絶反応が無い為、これはこれで面白かったです。

  • 映画がもともとめちゃくちゃに好き。
    本1回目→映画→本2回目と進めた。

    本は1回目は場面が飛びすぎる文体についていけずで、最初からそれが狙いだとわかって読めばよかった。
    それを踏まえて改めて映画を改めて観ると納得の構成だし、そのあとで本を読むと小気味よくスッと入ってきて良い体験だった。
    本と映画で場面にいろいろ違いはあるけれど、その本質はズレてないのも良い。

    どちらも終わり方の解釈が死んだ死んでないで分かれるけれど、わたしは本も映画も死んでいないな〜と思う。
    死んでしまうとそれは本質ではない気がするし、場面もそう描かれているのでは(特に本)、と思うから。
    やはり映画はタイラーのカリスマ性がすごくて、本だとそれが薄いというか、カリスマよりミステリアスな印象が強かったな。

  • 僕たちはみんな、口に銃を突っ込まれてる状態で生きてるのと同じだ。

  • 映画は未見。ていうかよくこれ映画にできたなーどうやって映像化するんだよこれ

    現代人は、みんな心の奥底にタイラー・ダーデンを飼っているのかもしれない
    退屈な日常から引っ張り上げてくれる破天荒なカリスマというみんなの妄想が、実際に表出してしまったら……?
    みんなが「アイツの指令なら仕方ないよねー」って言いながらメチャクチャに暴れるための言い訳にできる存在がいたらどうなる……?
    っていうのが、この物語の本質だと思う

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