霊応ゲーム (ハヤカワ文庫 NV レ 5-1)

  • 早川書房
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本棚登録 : 1229
感想 : 82
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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150413439

作品紹介・あらすじ

1954年、イギリスの名門パブリック・スクールで学ぶ14歳の気弱な少年ジョナサンは、同級生ばかりか教師にまでいじめられ、つらい日々を送っていた。しかしある時から、クラスで一目置かれる一匹狼のリチャードと仲良くなる。二人が親密になるにつれ、ジョナサンをいじめる悪童グループの仲間が一人、また一人と不可解な事件や事故に巻き込まれていく…彼らにいったい何が?少年たちの歪んだ心を巧みに描いた幻の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 1950年代に英国の全寮制パブリック・スクール、
    カークストン・アベイ学園を見舞った奇怪な事件について、
    真相を知ると称する者との面会が叶ったティム・ウェバー。
    長時間のインタビューを録音し、記事にして、
    ジャーナリストとして脚光を浴びたいと願うティムだったが……。

    ――ということで、
    枠内の物語=来訪者が語ったこと=が、
    三人称のあっちこっち移動しまくる視点で綴られた長編で、
    非常に読みにくかった。
    中身は20世紀半ばの厳格な規則に縛られた寄宿舎で起きた
    悪質ないじめに端を発した、いくつかの異様な出来事について。
    純真な被害者と、彼を庇う立場のクールな美少年が
    報復のためにウィジャ盤を持ち出す話で、
    タイトル The Wishing Game は、
    この西洋版こっくりさんに由来。
    それ自体は読みごたえがあるものの、
    超常現象と思われた事柄に
    後から科学的な説明が付されて解決するミステリかと思いきや、
    オカルトのまま終わってしまったので拍子抜け。
    また、繰り返しになるが、
    短いスパンで視点がコロコロ切り替わるので読みづらいし、
    セリフの末尾にも「!!」や「?!」が多くて、
    全然耽美的な雰囲気ではなかったため、
    期待を裏切られた気分。
    14~15歳の男子って、あんなに子供コドモしてましたっけ?

  • 戦後間もないイギリスのパブリックスクールでのお話。
    600ページ弱あるのですが一気に全部読んでしまいました。そのくらい引き込まれます。ブロマンス好きな方には特にオススメです。
    主人公格2人以外の登場人物の心理描写も事細かに描かれていて、この物語に登場する人物それぞれがなにか秘密を抱えていて、破滅していきます。誰が主人公になってもいいくらい内容が濃いです。
    あの日ニコラスが体調を崩していなければ、ジョナサンが教科書を忘れなければ、リチャードが答えを教えなければ、、といくらでもたらればが並べられるほど2人の関係はいくつもの偶然によって作り上げられたと思います。
    ただリチャードのジョナサンに対する常軌を逸した執着は最終的には拒否されてしまい、リチャードも執着していたのはジョナサン自身ではなくジョナサンを通してお母さんを見ていたのか、それともお母さんのような自分がいないとダメな人間、つまり自分を必要とする人間をリチャード自身が必要としていただけなのかなぁと切なくなってしまいました。
    救いのないお話ですが不思議と読後の後味の悪さはありません。

  • 復刊ドットコムで投票した者の一人です。めでたく復刊しました。多くの方に読んでもらえたらなと思います。ページ数・また文字数も多いですが、きっとはまりだしたらすいすい読めると思います。

  • ジョナサンはあのような結末を迎えることを分かっていてリチャードの元へ向かったのか。ニコラスとの最後のやりとりが心に残る。
    最期にジョナサンが笑みを浮かべたのは、毅然として迫害に立ち向かう、なりたかった自分になれたからではないだろうか。その姿は物語の初めに憧れていたリチャードの姿だったのではないか。
    オカルト要素をどこまで含めるか、多様な読み方ができそう。全てある登場人物によって語られたことに基づいていると考えると…

  • 面白かった。でもモヤモヤする。読んだ後の後味は良くない。そこも含めて面白いんだけど…

    題名の霊応ゲームは、この物語において重要な鍵になっているはずなんだけど、それについての深い言及がなかった。日本語に訳す前はThe wishing gameで、読んだ後はそっちのほうがしっくりくる。

    主役がだれか分からなくなるぐらい、登場人物全員が濃いキャラクターやバックグラウンドを持っていた。みんな、心に秘密や後ろめたい気持ちを隠していて、それを暴かれるのを恐れている。最後のあたり読んでてあれっこれってニコラスが主人公?ってなった。

    最後にジョナサンが願ったことって何だろう。
    私は2人の友情が偽りや勘違いじゃないって信じたい。

    私個人的にはリチャードとジョナサンがうまくいって欲しかったよ。実はこの話はニコラスの妄想って言うオチを期待したよ。リチャードやばいやつなのに、スーパーヤンデレマザコンサイコパスなのに、、、

  • イギリスの全寮制の男子校を舞台としたホラー。閉塞的な生活の中での鬱屈、不満、いじめ、その中で育まれる友情…この思春期の同性同士の限りなく恋愛感情に近い憧れとか嫉妬は、確かにあると思う。
    前半はいじめられっ子のジョナサンに孤高の美少年リチャードが手を差し伸べ、2人の仲が急接近していく。今まで自分がジョナサンの一番の親友だったのに…とやきもきするニコラスの気持ち、すごくわかる。ニコラスは最後の最後まで良い奴だった。リチャードがいじめっ子や意地悪な先生に一泡吹かせるシーンは胸のすく思いでした。しかし、後半になるにつれどんどん雲行きが怪しくなって行き、終盤破滅に向かって突き進んでいくリチャードが痛々しく、つらかった。どうにか救われてほしいと願ったけど、結局周りの大人たち含む全員が不幸になってしまった。これも、霊応ゲームで呼び寄せてしまった「何か」の呪いだったのだろうか。
    なんとも悲しい物語だったけど、面白かった。

  • リチャードとジョナサンは引き離してカウンセリングを受けさせよう。と台無しなことをついつい考えながら読んでしまった。ヤンデレBLて自分には向いてないかも?

  • 絶版を嘆き、本を求めて古本屋を訪ね歩き、復刊ドットコムに投票し、再販を待ち望んでいたうちの1人だが、今回約10年ぶりに読み、改めて打ちのめされた。というかこんなに救いのない物語でしたっけ…?こんなに悲しみに満ちた物語でしたっけ…?でも閉塞感の中で生まれ、育まれていく世界をとても愛しているので、パブリックスクールホラーの傑作として後世に読み継がれてほしい。来世わたしはパブリックスクールの柱に生まれ変わるから、リチャードは優しさに包まれた世界で愛と幸せを両手にもって生きてほしい…切に…切に。

  • 2000年に刊行されたサスペンス小説の文庫化。単行本刊行当時は一部で話題になったものの、ヒットとはならず、そのまま知る人ぞ知る作品になっていたようだ。
    一見すると心理描写をメインに据えたサスペンス小説だが、『霊応ゲーム』というタイトルからも解る通り、合理的な解決は成されない。閉鎖空間の人間関係と登場人物の心理描写に沿ってストーリーが展開されていくだけに、このオチは好き嫌いが別れそうだなぁ……。

  • 再販ありがとうございます!
    復刊ドットコムで投票し、いつかはいつかは、と首を長くして待っていたかいがありました。

    練り込まれたプロット、重々しくも狂気を孕んだ空気。それに蝕まれていく学園という閉鎖空間と校長夫妻。
    だれも幸せになれない結末には何度読んでも悲しくなりますが、何度も読み直してしまうだけの魅力ある作品です。

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