繊細な真実 (ハヤカワ文庫NV)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150413934

作品紹介・あらすじ

英国領で極秘に行われた対テロ作戦。国家の大義のもとに隠蔽された恐るべき真実とは?

感想・レビュー・書評

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  • イギリスの作家「ジョン・ル・カレ」のスパイ小説『繊細な真実(原題:A Delicate Truth)』を読みました。

    『寒い国から帰ってきたスパイ』、『誰よりも狙われた男』に続き、「ジョン・ル・カレ」作品です。

    -----story-------------
    英国領に極秘裏に設置された対テロリスト組織。
    その喧伝されてきた数々の成功は虚偽だったのか?
    真実を求める元外交官は、隠蔽の首謀者から命を狙われる!
    スパイ小説の巨匠の新たな代表作!

    「ポール・アンダースン」の偽名を与えられた外務省職員は、英領ジブラルタルのホテルの一室で苛立ちを露わにしていた。
    彼は閣外大臣「クイン」の代理として、テロリスト捕獲のための“ワイルドライフ作戦”に顧問として参加していた。
    だが、秘密任務に関わった経験は皆無で、なぜ自分が呼ばれたのか見当もつかない。
    やがて「ポール」は、作戦が成功裏に終了したとだけ告げられ、任を解かれる。
    一方、「クイン」の秘書官「トビー・ベル」は、大臣の不審な行動を監視していた。
    ジブラルタルでの作戦には胡散臭い民間防衛企業の男の影がちらついていたからだ。
    しかし、「トビー」の調査には隠蔽を謀る官僚たちの厚い壁が立ちはだかり…。
    “ワイルドライフ作戦”とは何だったのか?
    スパイ小説の巨匠が描く、世界の新たな闇。
    -----------------------

    2013年(平成25年)に出版された「ジョン・ル・カレ」の第23作、、、

    恐るべきは、テロか、国家か… 国家の秘密に運命を狂わされた人々を描いた物語でしたね。


    極秘のテロリスト捕獲作戦に参加することになった初老の外務省職員「クリストファー(キット)・プロビン」は、「ポール・アンダースン」の偽名を与えられ英領ジブラルタルでイギリス特殊部隊の「ジェブ」等とともに“ワイルドライフ作戦”に参加… 新任大臣「ファーガス・クイン」直々の命令だったが、不審な点は尽きない、、、

    篤実な官僚として生きてきた「キット」はこれまでそんな血なまぐさい任務についたことはなく、途惑うが、ともかく作戦は一応終了し、「キット」には作戦は大成功だったと告げられ任を解かれる… 実際、その功が報われてか、退職後の彼には爵位が授けられる。

    しかし、実際にはテロリストとは無関係な無垢な子どもと母親が犠牲になっていたのだ… 一方、「ファーガス・クイン」の秘書官「トビー・ベル」は、上司である大臣の行動を監視していた、、、

    この対テロ作戦の背後には怪しいアメリカの民間防衛企業<倫理的成果>の影がちらついていたのだ… だが、「トビー」の調査には官僚たちの厚い壁が立ちはだかる。

    「トビー」は、「キット」に何かを伝えようとしていた「ジェブ」と会おうとするが、彼は既に自殺していた… 遺書はなく、利き手とは逆の手で銃を持ち自殺しており、遺体解剖は行われず、火葬されていた、、、

    国益への配慮の美名のもとに隠蔽された恐るべき真実とは? 自らの不利益や安全を顧みず、真実を明かそうと行動する「ジェブ」や「キット」、「トビー」に感情移入しながら読めましたね。



    以下、主な登場人物です。

    「ポール・アンダースン」
     外務省職員

    「ファーガス・クイン」
     外務閣外大臣。下院議員

    「トビー・ベル」
     クインの秘書官。外交官

    「ジャイルズ・オークリー」
     トビーの上司。外交官

    「ジェイ・クリスピン」
     民間防衛企業<倫理的成果>の創設者

    「メイジー・スペンサー・ハーディ」
     民間防衛企業<倫理的成果>のCIO

    「エリオット」
     <ワイルドライフ作戦>の実行部隊員。民間防衛企業<倫理的成果>のメンバー

    「ジェブ」
     <ワイルドライフ作戦>の実行部隊員。元イギリス特殊部隊員

    「ショーティ」
     <ワイルドライフ作戦>の実行部隊員。元イギリス特殊部隊員

    「クリストファー(キット)・プロビン」
     引退した外交官

    「スザンナ(スキ)」
     キットの妻

    「エミリー(エム)」
     キットの娘。医師

  • 相変わらず前半部のローギア走行。途中で投げだしたくなるイマイチ感が続くのだが、それが大きな前フリとなり、加速度が増す中後半部。ルカレクオリティの組織構造物語。

  • イギリス領ジブラルタルで行われた犯罪者の捕獲作戦。急遽作戦に関わるよう命じられた外務省職員キットは、訳も分からず参加し、言われるがまま退散する。作戦は成功したと後に言われただけで、それっきりだった。だが3年後思わぬ場所で作戦の現場要員だった人物と再会し、事実を知ることになる。
    国の機密情報とされている事の裏側で何が行われているのか、それが正当なものなのか誰も知る術がない。その真の恐ろしさがひしひしと伝わってくる。キットや真実を公にしようとする一部の人の善意だけでは、とても抗えない。無力感を覚えるけど、知ろうとする意志は持ち続けなければいけないのだろう。読後感の悪さはいつものルカレならでは。

  • 初期作に比してつまらくなった。
    話のスケールも登場人物も小粒。

  • ジョンル・カレ「繊細な真実」読了。「共謀罪」「民営化」という日本でも大きな問題となりつつある全く異なる問題点を具体的に明確に示し、しかもエンターテイメントに仕上げた作品。絶品です。85才の巨匠がどんどん新境地を開拓!凄いぞ!文句なし!☆五つ!‥しかし、万人に受けるかどうか、わかりませぬ‥「是非、読んでみて!」とは‥言えませぬ‥

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