日本/権力構造の謎 上 文庫新版 (ハヤカワ文庫 NF 177)

  • 早川書房
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  • / ISBN・EAN: 9784150501778

作品紹介・あらすじ

われわれ日本人は自分自身について、自分たちの国についていったい何を知っているのか?在日30年のジャーナリストが冷徹な眼でえぐり出したこの国の真の姿に、われわれは慄然とせずにはいられない。日本における権力の行使のされ方に焦点をあて、政治、ビジネス、教育等あらゆる側面からこの国を動かす特異な力学を徹底的に分析した、衝撃の日本社会論。本書に匹敵しうる日本論を、日本人自身はついに書き得なかった。

感想・レビュー・書評

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  • 原題 "The Enigma of Japanese Power: People and Politics in a Stateless Nation"

  • 【要約】


    【ノート】
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  • WK1a

  • ◆日本の「システム」から独立し自律した外国人ゆえに書けたのは、日本の官僚システム・権力機構の暗部。膨大な事実を積み上げ、日本システムが理想・理念とは程遠い様を白日に晒す硬質ノンフィクション◆

    1994年(底本1990年、原本1989年)刊。
    著者は蘭ハンデルスブラッド紙極東特派員。

     外国人から見た日本の戦後民主主義。そして権力作用のメカニズム。これらには不可解な点が多い。かような見地に立つ著者が、日本の権力作用のあり方を『システム』と称し、その内実につき、史的淵源と諸外国との比較の視点を交え検討する書。上下巻中の上巻である。

     非常に広範囲かつ重厚な議論を展開するが、上巻では
    ① 問題の所在(日本的権力構造の特徴)、
    ② 概論としての、一神教的神の不在と責任所在の不明確さ。
    ③ 戦後以降の『システム』増殖過程。
    ④ 『システム』の奉仕者。具体的には教育関連、新聞他のマスコミ、暴力団他右翼系組織。
    ⑤ アドミンストレイター(管理者)。政官財トライアングル構図の内実と自民党。
    ⑥ 羊の如き従順かつ隷属的な存在・中産階級(≒給与所得者)。
    ⑦ 飴と鞭の家父長的権威・権力主義に彩られる日本的法治と法の運用。そして強権的に排除されるシステム批判者、放置されるのはシステム維持・増殖に無益と看做された人々。
    ⑧ アドミンストレーター及び「システム」しか維持しない法。そのための三権での司法の極小化
    などが叙述される。

     確かに、刊行時より多少の変化はある。

     例えば、⑥の亢進により、暴力的な反体制運動が激減し、反体制運動とすら呼べない微温的な改革運動が精々散見されるだけ。その点で暴力団系右派の役割が変化した点。
     また、小選挙区制の採用で自民党内での対抗関係が極小化し、政官財トライアングルの構図から自民党の派閥間の対抗・合従連衡関係が減じた点。
     さらに格差社会の拡大・世襲議員の横行に代表されるようにアドミンストレイターの新陳代謝が減じ、固定化傾向が拡大した点に、多少の変化はある。

     しかし、それらはあくまでも「システム」内の修正でしかなく、基本的には何にも変わらない。その意味で、今、本書を読んでも、現代日本の権力機構の構図を見てとることは十分可能である。
     しかも、新聞やテレビなど、これらの状況を本来ならば暴き得る存在にすら、醒めた目線で、当該『システム』における彼らの問題点をも指摘するので、新聞などでは到底書くことが出来ないだろうなぁと思われることも、本書は容赦なく暴く。
     そういう意味でも読む価値は全く減じていない。そんな読後感である。

  • この本を読んでちょっと官僚目指せばよかったと思いました。面白い体験ができそうです。

  • 「秘すれば華あり」という世阿弥の言葉を想起させられた。オランダ人で外国人ジャーナリストの団体の代表を務めたウォルフレンによる書。本書は、主に外国人が日本の政治や権力関係を理解するために執筆されたが、日本人にとってもその意義は大きい。なぜなら、著者が述べる様に日本の権力構造は意図的に隠蔽され続け、日本人さえも知ることが難しかったからである。特記すべき内容としては、前半部分の日本の権力構造は官僚などによって隠され、彼らはその蜘蛛のような権力構造を十二分に活用して来た事実やその権力構造の根源はその隠蔽さにあること、そしてその隠蔽さを追究する司法が彼らの手中にあり、全く機能していないことなどである。その他はやや週刊誌などで見られる様な分析が多く、多少冗長であった。ただ、著者が述べるように権力関係や意思決定がこのような非公式な論理などで決まるという前提に立つならば、この分析は欠かせないものであろう。評者としては、この権力システムという言葉に惹かれた。というのは、日本の権力構造は捉えどころがない一方で、ある一定の柔軟性を備えていると思うからである。各機関の「調整」という名の下に、多くの意思決定は「改善」され、そして多面的になってきた一面もある。その意味では、このシステムは頸動脈がなく毛細血管のように日本社会に溶け込み、日本を支えてきたと言える。しかしながら、このシステムは急激な変化には対応しづらく、ただただ衰えるのを待つだけである。

  • 1131夜

  • 「日本で一番権力のある人、組織って、何だと思う?」20代半ば、当時の同僚からそう問われた。

    「はて。総理大臣かな?でもあれだけ短期間で交替する(させられる)なら対した権力の行使もできないしなぁ。そういわれて見ると、誰が日本を動かしているのかって、結構曖昧かもしれないね。」

    著者は、日本の権力構造は先端のないピラミッドだという。一部の省庁の高官、政治家(自民党)、経団連を中心とする財界人を含むグループに、農協、警察、マスコミ、暴力団などの準グループなどで構成される。これらの構成要素がもたれあい、お互いが強大な権力を手にしないよう影響しあい、半自律的な<システム>として権力構造を構成しているという。これら構成要素すべてを統率して牛耳るいかなる中央機関も存在せず、究極的な政策決定権をもつ最高機関が存在しないのが日本だと言うのだ。この本が書かれた1990年当時から、その強固なシステムはいくらかのほころびを見せつつあるが、依然として日本の権力構造の基本の枠組みとして理解しておくと、いろいろなことが腑に落ちる。まさに目からウロコの衝撃の一冊。

  •  日本の言論界は眠っていた。ジャーナリストは前もって折ったペンで記事を綴っていた。ところが、カレル・ヴァン・ウォルフレンが投じた一石の音に慌てふためき、やっと目が覚めた。そう言ってもいいだろう。責任者のいない日本の権力構造を「システム」と名づけたのもこの人だった。

     <a href="http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20081217/p1" target="_blank">http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20081217/p1</a>

  • 下巻併せて。この数年の『チルドレン』な政治家の登場で変わったのか新たな上層の出現なのか、『隔世遺伝』と『無党派』のあいまいな混在から所在不明な中、読み返したい1冊。著者の視点に魅力。

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