ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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制作 : Marvin Harris  鈴木 洋一 
  • 早川書房 (1997年5月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150502102

ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)の感想・レビュー・書評

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  • キッチン。深夜一時半。

    葉月は、残業帰りの足で蛹の家を訪ねた。勝手に上がり込んで冷蔵庫を開け、4枚入りのハムのパックを開けてつまみ始める。
    そして、2枚目を口に入れたところで、シンク横に無造作に置かれている本に気付いた。読み終わったところでぽいと置いて、それきり忘れていたのだろう。
    「カニバですか」
    「……カニバじゃなかった」
    キッチンの入り口に、家主である蛹が立っている。仕事から帰ってそのままベッドに潜り込んだという風の、シワだらけのシャツを着ていた。物音に気付いて、起き出してきたらしい。
    「起こしました?」
    「どうせ眠れないんだ、気にしなくていいよ」

    「で、これ、何の本なんですか?」
    「狩猟から農耕にシフトした理由、戦争の起源、産業革命と資本主義の起源、イスラム教が豚食を禁じヒンズー教が牛食を禁じたのはなぜか、ヨーロッパ人が人肉を食べずインカ帝国人が人肉を食べたのはなぜか、そんなとこ」
    「カニバじゃないですか」
    「そこだけ抜き出すの? いや、普通に面白かったけど」
    「食料と社会構造、みたいな話ですか?」
    だいたいそんなとこ、と蛹は答える。眠れないでいたところに、ちょうどいい話相手が来たと思っているのかもしれない。
    「人口が、それを養える食料生産力の限界を超過しようとしたときに、まず」
    「人を食べればいいんですね?」
    「そうなんだけどさ、ちょっと待って。あのさ、人口と食料の均衡をとる方法は2つあるだろ」
    「人口を抑制するか、食料生産を増やす」
    「そう。人口抑制は、簡単だ。人を生ませないという方法は昔はなかったから、生まれた人間を殺すしかない。そして人口増加率は女性の数によって決まる。若年において女子が明らかに男子よりも少なかった地域や時代は、意図的に女子を減らし人口の抑制を図っていた可能性が高い。その中には、18世紀のヨーロッパなんかも含まれる」
    「男尊女卑の起源も、そこにぶっこんじゃっていいですか」
    「そう言うと思った」
    蛹は苦笑し、続ける。
    「一方食料生産は、事情が少し複雑になる。たんぱく質源としての動物を育てるのに穀物を使えば、それだけ養える人間が減る。肉食を制限する文化の背景には、そういう事情があると筆者は指摘している」
    現に、先進国が家畜を養うのに使っているトウモロコシで途上国の何人が飢餓から救われるとか、救われないとか、そういう話はある。現実的かどうかはともかく。
    「で、カニバ?」
    「結果としてそういう方法を取った地域もある、という話だよ」
    「文化はタンパク質が作った、的な?」
    そうかもね、と蛹は適当に同意する。
    そして、あくびひとつ。
    「ねえ、居間のソファ使っていいから、そろそろ寝たらどうかな。俺もようやく眠れそうだから」

  • 食人の部分は1~2章ぐらいだが面白かった
    精神性というわけのわからんものではなくコストと利益で文化の形が決まったという観点はなるほどと思った

  • 読書録「ヒトはなぜヒトを食べたか」5

    著者 マーヴィン・ハリス
    訳 鈴木洋一
    出版 早川書房

    p298より引用
    “運と技とで結果が決まるすべてのゲームと
    同様、人生においても、歩の悪い状況への合
    理的な対応とは、もっと懸命にやってみるこ
    となのである。”

    目次から抜粋引用
    “文化と自然
     農耕の起源
     戦争の起源
     食人王国
     水力利用の落とし穴”

     人類学者である著者による、人類の文化と
    その発生について書かれた一冊。
     生産強化と資源枯渇についてから技術革新
    と生活水準向上についてまで、多くの文献を
    元に緻密に書かれています。

     上記の引用は、本文最後の一文。
    どんなに複雑な計画を立てても、最終的には
    目の前の出来事を1つずつしっかりとこなす
    のが、なによりも大切なのかもしれませんね。
    しかし、時々、目指す場所を確認しないと、
    間違った方向に進んでしまうかもしれません。
     翻訳書のため、参考文献や出典の多くが
    未訳の海外文献となっているので、語学が堪
    能な人でないと、ここからたどって文献を読
    み深めるのは難しそうです。
    この一冊だけでも、かなりギュウギュウに詰
    めて書かれているので、お腹いっぱいになる
    のではないかと思いますが。

    ーーーーー

  •  本書は、世界史上の特徴的な文化の変遷を経済的下部構造と結びつけて鮮やかに説明する。時代も旧石器時代から資本主義まで、地域もユーラシアにとどまらず新大陸についても幅広く取り上げており、理論の適用範囲の広さをこれでもかと見せつけられる。本当に鮮やかすぎて、かえって疑わしいくらいだ。
     そして、著者は周到に、ありうべき批判に対して事前に答えている。例えば、文化は下部構造のみによって規定されるとは限らず、文化それ自体が文化に規定されて自己目的化して行くことを認めているし、法則は絶対不変のものではなく、反対に法則を見出すことでその法則に反する変化を生じさせることができると強力に主張している。人間の歴史が暴力と飢餓と差別と腐敗に満ちているとはいえ、その全てが下部構造の直接的影響によるものとは断言せず、そして正しい認識と意志によって変革は可能であると信じているのである。
     そこで疑問となるのが、著者は実際に人々がどこまで損益計算を行った上で行動していると想定しているのかということである。本書では、国家の形成において、人々はその本質的な変化に気づいていないとの記述があるが、それ以外では文化の担い手である人々の主観が見えてこない。意識的に行動する合理的人間と無意識に行動する人間の両方が存在して織り成される社会の複雑さには、本書の理論は立ち入ることができないのであろうか。そもそもそうしたことは問題とならず、社会法則を客観的に見出すという方法論なのかもしれず、そのことは著者にとって自明であったために明確な立場の表明がなされなかったのかもしれない。したがって、この点は著者に対する批判とはならない。
     本書の提示する理論は非常に簡潔でいて、しかもその導く帰結はあまりに強固である。人間の活動の拡大とそれによる資源の枯渇、生産性の向上による対処と食料確保による人口増加による社会的軋轢、人口を減少させるための戦争と消極的な嬰児殺し、男性優位の社会、対外的拡大のための一時的な母系社会と男系社会の復活、治水社会と封建社会の発展と衰退、資本主義による再生産圧力の解消、そして別系との文化としての人食社会の成立。全てが綺麗につながる。さて、こうした法則が見出された今、我々は資源を枯渇させて緩やかな衰退を迎えるのであろうか。著者の信頼はとても厚いが、どうも暗い将来ばかりがちらつく。

  • カニバリズムおよび犯罪の本かと思って間違えて買いましたすいません。でも、人類学ってそもそもこういうものだったのか〜と再発見があってよかったです。学生のころから、ただの西洋人による異文化蒐集趣味学問、みたいな余計な先入観があったので…勘違いでもなければ読まなかったろうなと。
    俯瞰してみるとカニバリズムについても理解の深まった一冊でした。歴史・歴史以前・民俗学を通じ、要因が外的にもあることにはっとさせられたり。ほんと、勉強不足がことが世の中にはたくさんありすぎて、読書くらいが関の山です。はい。

  • 難しくてあんまり覚えてない。タイトルから食文化とか儀礼の話を想像してたんだけど、もっと根源的な人間の文化とはなんぞや、というお話だった、ような。頭よくなったらまた読みたいけど、ちょっと読むタイミングが早かった。

  • 文化人類学視点からカニバリズムを解説、と思いきや意外にまじめに人類淘汰などの話を書いてます。まぁ小難しい話はなしにして、ジャケット買いです。

  • これまで抱いていた常識をことごとく裏切る数数の論に目から鱗ぼろぼろ。

  •  アステカの太陽神への人身供物儀式の後のカニバリズムの理由として、人身の統治システムやタンパク質源の不十分な供給を結びつけた理論は非常に興味深いものだった。
     ただ、カニバリズムを生態学の観点にたって解説した本だとは紹介はされているものの、カニバリズムそのものに対して割いている紙面は少なく、書いてある事は学術的で分かり辛い。
     カニバリズムそのものへの興味で読む本を探しているなら、お薦めはしない。
     

  • 狩猟時代と農耕時代に移行する際に起こった社会的変化を常に頭に置いて読めば大変読みやすい。戦争の原因についての考え方、コスト・ベネフィットからできた風習、そして人肉。

    誰もが目を通して欲しい。

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ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)の作品紹介

ヒトがヒトを生贄として殺し、食べる-中米アステカ族に伝わった凄惨な食人儀礼は、初めてそれを目撃した16世紀の西欧人はおろか、現代人にとっても衝撃的で謎めいた行動以外の何物でもない。だがこんな文化様式ができあがったわけは、生態学の観点に立てば明快に説明することができるのだ…米国人類学の奇才が、食人儀礼、食物タブー、男性優位思想など広範な人類学的主題を鮮やかに読み解く、知的刺激あふれる名著。

ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)はこんな本です

ヒトはなぜヒトを食べたか―生態人類学から見た文化の起源 (ハヤカワ文庫―ハヤカワ・ノンフィクション文庫)の単行本

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