ソロモンの指環―動物行動学入門 (ハヤカワ文庫 NF 222)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150502225

作品紹介・あらすじ

生後まもないハイイロガンの雌のヒナは、こちらをじっとみつめていた。私のふと洩らした言葉に挨拶のひと鳴きを返した瞬間から、彼女は人間の私を母親と認め、よちよち歩きでどこへでもついてくるようになった…"刷り込み"などの理論で著名なノーベル賞受賞の動物行動学者ローレンツが、けものや鳥、魚たちの生態をユーモアとシンパシーあふれる筆致で描いた、永遠の名作。著者による「第2版へのまえがき」初収録。

感想・レビュー・書評

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  • ノーベル賞受賞ローレンツ氏による
    動物愛に溢れた動物行動学入門書

    と言っても全く堅苦しく無いご自身の動物達との経験談…いえ研究内容だ

    「居間に取り付けた檻の中で動物を飼っておく事は、知能の発達した高等動物の生活を正しくは知れない、全く自由な状態で飼うことを身上とする」
    という主義を貫いてさまざまな動物達と暮らすのだが、それに伴う家族の犠牲やご苦労、ご近所への損害はは計り知れない
    人ごとだからこちらは笑って読んでいられるが…

    例)
    ・家の中で放し飼いにしたネズミ
    そいつが家中勝手に走り回り、敷物の切れ端から巣を作る
    ・庭に干した洗濯物のボタンを片っ端から食いちぎってまわるオウム
    ・大型で相当に危険な動物たちを飼っていた頃は、庭に大きな檻を作ってその中へ入れた
    ーーー動物ではない、私たちの娘を
    ・子ガモの代理ママとして、庭を低くしゃがんだまま「ゲッゲッ」とわめきながら2時間の散歩
    草むらに囲まれた場所で肝心な子ガモの姿は外を通る観光客からは見えない(笑)



    ■興味深かった内容をピックアップ

    ・コクマルガラス(オス!)に惚れられた著者(念のためだが男性!)
    彼は自分が選り抜きの珍味だと思っている餌をしつこく私に食べさせようとする
    彼は人間の口がものを飲み込むところであることを理解している
    ・飼い犬シェパードのティート
    机の下で寝そべっている時でも、権威ぶった年配の紳士が私と討論中に「君はまだ若い」と言う態度をとったとき、ティートは必ずそういう人の尻に軽く、しかし断固として噛み付く
    その人物の顔や態度が見えるはずがないのに…
    ・ハイロガンの雛
    産まれてすぐ著者とハイロガン語であいさつをしたときから、親子の関係が始まる…
    「哀れな雛は声も枯れんばかりに泣きながら、けつまずいたり転んだりして私の後を追って走ってくる」
    昼間は2分ごとに、夜は1時間ごとに「まだそこにいる?」と言う問いかけを発する
    ・素晴らしく美しいメスのカタジロワシ
    苦労せずして舞い上がれるおあつらえ向きの上昇気流が庭の上空にあるときだけ飛ぶ!
    降りてこようとすると帰り道がわからなくなる
    ご近所から「どこそこの屋根の上にお宅のワシが止まっていますよ」と電話がかかってくるので迎えに行くが、いつもそこまで歩いて行かなくてはならない
    なぜならそのワシは自転車をやったら怖がるのだ
    ・ジャッカル系犬とオオカミ系犬の違い
    『ジャッカル系犬』
     シェパード
    ・従順
    ・誰とでも仲良くでき、事実誰がリードを引っ張っても喜んでついていってしまう

    『オオカミ系犬」
     エスキモー犬、チャウチャウ犬
    ・一度ある人に忠誠を誓ったら、彼はもはや永久にその人の犬である
    知らない人はしっぽすら振ってもらえない
    ・並外れた忠実さと愛着の深さにもかかわらず、決して従順ではない

    新旧石器時代ごろからの人間と犬との古い結びつきが、両者の自発意思に基づいて何の強制もなく契約されたと事実が心和む(通常の家畜は奴隷に等しいがイヌだけは友である)

    〜犬でも他の動物でも、人に従順かどうか…
    でつい判断してしまう
    それって失礼しちゃうよなぁ
    少しズレるが、飼ったことのある紀州犬とヨークシャテリアを思い出す
    紀州犬は本当に手こずった
    父以外の家族を自分より下に見ていた
    プライドが高く、子供がとても嫌い
    人相の悪い人や不審者に遠慮なく吠える
    脱走はもちろん、散歩中に首輪から抜けて自由に走り回り、気が済むまで戻らない
    それに引き換え、ヨークシャテリアはもう可愛くて仕方なかった
    自分が居ないとダメなのね君は…
    完全に小型犬の典型
    何かあると膝の上に飛び乗り、上目遣い
    散歩中に他の犬を撫でるとヤキモチを焼きキャンキャンアピール
    どうしてもヨークシャが可愛くなってしまった
    でもこの比較は間違っているよなぁ
    ある意味紀州犬は誇り高くて賢く、とても美しかった
    ふとそんなことを思い出した

    本当はもっと重要で興味深い動物の発見や研究内容が多々あるのだが、どうしても面白ネタが印象に残ってしまった

    動物と人間の心が通う奇跡的で心に暖まるストーリーがユーモア交え展開し、とても読みやすい

    生物や生態系って本当に不思議で神秘的であると改めて認識できる良書である

  • 『はだかになり野生に帰って、野生のガンたちの群れの社会に溶け込み、ドナウの堤であるきまわったり泳いだりするのが、私の研究の本質的な部分を占めていた。なんと幸福な科学だろう』(P170)

    著者のコンラート・ローレンツは、オーストリアの動物行動学者。
    動物とともに生活し、刷り込みなどの研究を行い、ノーベル生理学・医学賞を受賞する。近代動物行動学を学問としての基礎を築いた。

    題名である「ソロモンの指輪」は、旧約聖書のソロモン王が「魔法の指輪をもち、獣、魚、鳥たちと語った」と(※これは誤訳で、正しくは「大変な博識で、獣、魚、鳥たちについて語った」なのだが)いう記述からとっている。
    読んでいる印象でのコンラート・ローレンツは、動物になると周りの目を気にしないし、挿絵も文章もユーモラスな印象。しかし写真のコンラート・ローレンツはまさにゲルマン紳士という外見なので、この紳士博士が鳥に警戒されないために毛むくじゃらの悪魔の着ぐるみで鳥小屋に入ったり、カモの母親代わりとして奇声を挙げながら屈み込み歩きをしていたり、という姿とのギャップにちょっと頭がついていけない(笑)
    研究内容もさながら文章能力が非常に素晴らしく、読みながら唸ったり声を上げて笑ったり感動したり…と非常に楽しめた。
    挿絵も面白く、カラスが餌を持ってきて食べさせてくれようとするんだけど、草と虫を唾液でグチャグチャにさせたものを口や耳に突っ込まれて「ゾワワワ〜〜」となっている姿などは思い浮かんで笑ってしまう。

    最終章で、動物による攻撃から、「人間は今後相手を完膚無きまでに叩きのめす方向になるのか、力の差を認識試合紳士的な降参と許容が行われるのか、どちらだろう?」と問いかけている。

    以下自己索引用に各章メモ
    『動物たちへの憤懣』
    幼い頃から動物に対して尋常ならざる愛情を持っていたコンラートが送るローレンツ家の日常生活。家中で動物たちが放し飼いになっているため、絨毯が糞だらけになったり、自分たちの子供を檻に入れて動物たちの爪から守ったりのでした。

    『被害を与えぬものーアクアリウム』
    動物を描いたいけれど、↑のように家中を汚されたくない、人間に被害を与えない飼育として、アクアリウムの紹介。きちんとした環境を整えれば、川の生態系と同じ物が作れる!

    『水槽の中の二人の殺人犯』
    そんなアクアリウムに入れてないけない殺人者(殺魚者だけど)、ゲンゴウロウの幼虫とトンボの幼虫(ヤゴ)について。その食事の仕方の違いとか。

    『魚の血』
    魚の闘い方、結婚や子育てのこと。魚も互いを個体として判別しているのか?の実験では、夫婦を取り替えてみたりと興味深い結果が出ている。このあたりの記述は事情に面白くて唸りながら読んでしまう。

    『永遠に変わらぬ友』
    雛から育てたコクマルガラスについて。鳥が人間を番相手として求愛したり、餌を運んできたり。鳥の集団生活における鳴き声の違い。鳥社会の順位の付け方など。面白いエピソードとして、番だったカラス夫婦のオスにちょっかいを出してくるメスが出てきてしばらくは三角関係を繰り広げ、最終的には夫と愛人が駆け落ち?してしまったんだとか。
    もうこの観察記と文章力には感嘆の声をあげながら読むしかない。

    『ソロモンの指輪』
    動物と人間とのコミュニケーショについて。犬や馬が、相手(人間でも動物でも)のちょっとした仕草や雰囲気で相手の意図を読み取ることができる様子を驚きを持って観察している。さらに言葉を”話す”鳥たちのびっくりするような学習面。怪我をしたオウムが自分が怪我をした理由を人間の言葉で説明した(おそらく助けたらてたときに人間が言った言葉を一度で覚えて発音した)という事例など。動物行動学者は鳥の言語(鳴き声)を理解しているが、カモに向かってガン語を発してしまった!などという、動物学者にはわかるらしい大笑いエピソードとか。

    『ガンの子マルティナ』
    生まれたときにコンラート・ローレンツを見たため、母親と認識したガンのマルティナとの交流と観察の日々。ただただコンラート・ローレンツを慕うマルティナの姿は感動的。

    『なにを飼ったらいいか』
    ペットには何を飼ったら良いのか?というエッセイ。同じ鳥、同じ小動物であっても種類に違ってぜんぜん違うからね!ということを書いている。

    『動物たちをあわれむ』
    動物園や家庭で飼育の動物のことなど。でも家から逃げた動物は、自由になりたいわけではなくて本当に家がわからないんだよ、という事例もある。

    『忠誠は空想ならず』
    ローレンツ夫妻はお互いの飼い犬の事で喧嘩になった。だってコンラートの飼い犬はオオカミ系のシェパードで、妻マルガリータさんの飼い犬はジャッカル系のチャウチャウで、性質がぜんぜん違うんだ。…というわけで犬のことについて色々。なお、夫婦喧嘩は、コンラートの犬の息子が、マルガリータの犬の柵を食い破って結婚したことにより一応解決し、さらなる研究に前向きなコンラート博士でした。

    『動物たちを笑う』
    動物を笑うときは、動物に人間を見るからだよね、というエピソード。

    『モラルと武器』
    非捕食者であるウサギやハトは、喧嘩になったときには相手の毛を毟り皮を剥ぎ弱った相手をさらに押さえつけ完膚なきまでに叩き潰す。捕食者であるカラスやオオカミは決定的な殺し合いになる前に力の差を認識試合紳士的な降参と許容が行われる。
    さて、人間は今後どのような関係を作ってゆくのだろう?ウサギ型だろうか、オオカミ型だろうか。

  • 研究者というのは、こんなにも観察するものなんだなと。
    さまざまな動物と一緒にくらし、自分の快適な生活と引き換えにしてまで観察、研究。それが研究者にとっては喜びなのでしょうかね。ともかく、動物に対する愛情がとても感じられた。私には自分の生活を脅かされてまでの愛情はないから、こうやって本で読ませてもらってありがたいなと思った。
    楽して動物の事を知れるので笑

  • 非常にユーモアのある、動物に関する本だ。本書は、動物行動学をつくりあげてノーベル賞を受賞したコンラート・ローレンツ氏によって書かれた。
    もっとも有名でおもしろい例は、鳥類の刷りこみだろう。通常、人間を含むほとんどの哺乳類では、性的な愛の対象は遺伝に刻まれており、しかるべき時になれば適切な対象に気づく。しかし、鳥ではまったく違っている。ヒナのときから1羽だけで育てられ、同じ種類の仲間をまったくみたことのない鳥は、自分がどの種類に属しているかをまったく知らない。すなわち、彼らの社会的衝動も性的な愛情も、彼らのごく幼い、刷りこみ可能な時期をともに過ごした動物に向けられてしまう。ニワトリとともに育てたメスのガチョウは、オスのニワトリに夢中で、オスのガチョウの求愛など見向きもしない。ある動物園で巨大なゾウガメの部屋で育てたれたクジャクは、ゾウガメにばかり求愛し、メスクジャクの魅力には盲目になってしまった。著者の家庭で飼っていたカラスは、世話をしていたメイドに恋をした。
    動物の世界には私たちの知らない、おもしろい話がまだまだたくさんあることを教えてくれる良書だ。知的な中高生にぜひ勧めたい。

  •  ”すりこみ”という動物行動生理学の言葉は今では良く耳にする言葉です。生まれてすぐに目にする、耳にする声に反応してついていくこと、動物が生きるために必要な力ですね。

     この概念を提唱したコンラート・ローレンツ博士がアヒルの親代わりになって、一緒に野原を歩いていく姿は何ともほほえましい。

     コロニーをつくる動物の中では、親子で声を聞き分けているそうです(何百も固体がいるのに!)。でも、時として親とはぐれた子供は拒絶されてしまいます。共同で子育てをするクジラ、無くした子供の変わりに子育てをする親など、より複雑な行動もあります。

     本棚の整理をしていて、学生時代に読んだ本書を再読しました。古いハヤカワの単行本の方です。

  • 動物の生態を知りたくなったので読んだ。

    動物行動学入門とあるがほとんどエッセイのような感じでさくさく楽しんで読める。
    コンラート・ローレンツが多種多様な動物たちとともに暮らす中から見える動物たちの生態や行動、その意味するところとは。動物への愛に溢れる1冊。

    普通に哺乳類がメインで出てくるものだと思ってたら、ハイイロガン、アクアリウム、コクマルガラス…といい意味で期待を裏切られた。
    特にトウギョの話が面白く、ついYouTubeで動画を漁ってしまった。
    また、8章の「なにを飼ったらいいか!」はペットに適した動物を紹介してくれる。現在飼われているような金魚、モルモット、インコなどをつまらないやつと言い切ってしまうところが面白い笑
    ただこの本を読んだら安易にペット飼おう!とはなかなか思えないかも。動物には動物の本能と行動があり、共に生活するには人間が合わせなくてはいけない。

    一番最後の「いつかきっと相手の陣営を瞬時にして壊滅しうるような日がやってくる。全人類が二つの陣営に分かたれてしまう日も、やってくるかもしれない。そのときわれわれはどう行動するだろうか。ウサギのようにか、それともオオカミのようにか?人類の運命はこの問いへの答えによって決定される」という言葉が忘れられない。
    人間は相手が降参の態度を見せた時、攻撃しないでいられるのだろうか。

  • 学者として動物に向かう姿勢が好きだ。
    勿論今の研究で違う仮説が立ったもの、解釈違いだと言われていることもある。でもそこを責めるべきものではないと私は思う。
    科学は初めて誰かが何かをやったり言ったりして、それを踏み台に発展する。その初めてをやるのは絶対向い風激しく、手探りで苦しく、誰も正しさを教えてくれないのだ。ローレンツがその意味で今彼を批判する誰よりも素晴らしいのは、火を見るよりも明らかだ。
    私は単純に彼が好きだ。本を読み一層人となりを好きになった。

  • ある時はカラスに足輪をつけるために、祭りで着る悪魔の衣装をまとい、屋根に上がる。
    またある時は、帰巣本能がないのか、街中の適当なところに着陸して自力では帰ることのないワシを連れ戻しに何キロも歩いたり。
    動物行動学者ローレンツの、動物とともに暮らし、発見したことがユーモアを交えて次々と披露される。
    家の中を自由に出入りし、飛び回るコクマルガラスなどから自分の子どもを守るために、自分の子を檻に入れておく!
    夫人も動物嫌いではなかったようだが、そんな暮らしがよくできたなあ、と感心してしまう。

    さて、ローレンツと言えば刷り込みを見いだしたことで知られている。
    この本の中でも、その話は出てくる。
    動くものなら何でも後追いするか―というと、そんなに簡単なものではないらしい。
    まず、彼らが認識できる高さでないといけない。成人が立った姿勢では、後追いはされないらしい。
    さらに、マガモの場合、母親が出すようなゲッゲッという鳴き声を絶えず出していないといけない。
    ということは、普通の人が普通にしていたら、いくら孵化して初めて見る動くものであっても、まず親鳥の代わりとして刷り込まれることはないということだ。
    ローレンツのような、鳥の知識があって、親鳥の習性を迫真の演技で再現できる人でなくては、ということだろうか。
    最近、刷り込みについての新しい研究で、一度人を追いかけるようになったとしても、自分と同じ鳥の形をしていないと後追いしなくなるという研究も発表されたとか。

    オオカミ系の犬は、たった一人の飼い主にしか懐かないが、ジャッカル系の犬は誰にでも懐きやすいという話も興味深かった。

    考えさせられたのは、最終章の「モラルと武器」。
    オオカミは同族で争っても殺すことまではしない。
    カラスも目を攻撃することはない。
    こういう社会的抑制をもつ動物もあれば、キジバトのように弱い同族を殺すところまで痛めつけるものもいる。
    逃げる速さと攻撃力が弱い動物は、強い相手に服従するポーズをとって命乞いする機制がないのだとか。
    ローレンツは、人間が、今や本来の体以上に発達させてしまった攻撃力に応じた抑制をまだ発達させていない、と危ぶんでいる。
    この論文からおよそ100年。
    まだ状況は大きくは変わっていない。残念ながら。
    どれくらいで人間は過剰な攻撃性を抑制する機制を作り上げることができるのだろうか?

  • コンラート・ローレンツ(1903~1989年)は、オーストリアの動物行動学者。近代動物行動学を確立した人物のひとりといわれ、1973年にノーベル生理学医学賞も受賞している。
    本書は、研究エッセイをまとめたローレンツ博士の代表作のひとつで、1987年に邦訳が出版されている。
    題名は、偽典(旧約聖書の正典・外典に含まれないユダヤ教・キリスト教の文書)のひとつとされる『ソロモン書』に記された、あらゆる動植物の声までも聞く力を与えると言われる「ソロモンの指輪」の伝説を踏まえて、その指輪がなくても多少は動物の気持ちがわかるものだという意味を込めて付けられたのだという。
    本書には、ハイイロガン、コクマルガラス、ワタリガラスをはじめ、数々の動物や昆虫が登場するが、いずれのエッセイにも博士の動物に対する愛情が溢れており、読みながら何度も微笑んでしまう。
    特に、ハイイロガンの子マルティナが、生まれた日から博士を(刷り込みにより)母親と思い、「・・・あわれなヒナは声もかれんばかりに泣きながら、けつまずいたりころんだりして私のあとを追って走ってくる。だがそのすばやさはおどろくほどであり、その決意たるやみまごうべくもない。彼女は私に、白いガチョウではなくてこの私に、自分の母親であってくれと懇願しているのだ。それは石さえ動かしたであろうほど感動的な光景であった。・・・」という有名なエッセイは、何度も読み返してしまう感動的なものである。
    ユーモラスな挿絵も素晴らしい。
    動物(の行動)への興味が格段に高まること間違いなしの、楽しい一冊である。
    (2010年6月了)

  • 動物行動学入門のサブタイトルがついていますが、難解な部分はこれっぽっちもありません。
    ごく当たり前のように動物を友として、彼あるいは彼女たちを(一応の飼育下にはあるものの)尊重し、その行動を観察しながらのエッセイといった内容です。
    ここで「彼あるいは彼女」?擬人化してやがるな…という感想を持たれた方もぜひ一読を。
    とにかく楽しい。全編に生き物に対する著者の大らかな愛が満ち満ちています。
    それに世間一般で持たれている各種動物に対する誤ったイメージを払拭する一助ともなります。
    老若男女を問わずおすすめの一冊です。

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