ノーベル賞受賞者の精子バンク: 天才の遺伝子は天才を生んだか (ハヤカワ文庫 NF 330)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150503307

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  • ノーベル賞受賞者や優秀な業績を挙げた人達の精子による優秀な子孫を残すために設立されたレポジストリー・フォー・ジャーミナル・チョイスとロバート・グラハムの軌跡を追ったノンフィクション。
    ノーベル賞受賞者の中には、自分の優秀な遺伝子を子孫に残したいと考えた人達が居た。例えば、トランジスタの発明でノーベル賞を受賞したウィリアム・ショックリーは、優生学的な思想の持ち主で、このような試みに賛同し、自身の精子を提供したことで知られている。ロバート・グラハムは割れない眼鏡レンズの発明で財を成した後、この会社を立ち上げ、多くの優秀な人達にアプローチして、「種付け」を行うビジネスを始めた。精子を提供する優秀な男性と優秀な子供が欲しい女性の思惑で多くの子供が生まれたが、その多くは理論通りには行かず、生活環境により普通の子供として育っている。精子バンクとそれを利用して子供を設けた母親について、その後を追跡し、このビジネスのあり方と家庭や子供に関する様々な問題を提起する。ロバート・グラハムの計画は彼の死去とともに終わったが、似たようなビジネスは未だに存在するらしい。
    競馬では、優秀な血統の牡馬を、優秀な牝馬に種付けし優秀な競争馬を生産するのが普通に行われている。しかし、必ずしも人間の思惑通りに行かない事が多い。馬のような種付けの考えを人間に当てはめるのは、倫理上問題があるが、彼はそれを実践しようとした。優秀な子供を遺伝子に求めたくなる気持ちは判らないではないが、子供の頃は天才でも大人になると凡才になる例はいくらでもある。結局、育った環境や教育、本人のやる気等後天的な資質が影響するのは間違い無い。でもこういうビジネスは廃れないだろうなあと思う。子供が優秀でなくても、父がノーベル賞受賞者だったら、「箔」が付くと考える人達も多いと思う。

  • 蠱惑的(こわく)

  • ひょえー

  • IQの高い男性の精子を扱う精子バンクの話は以前「世界まる見え!テレビ特捜部」で見たことがあった。なにぶん子供の頃に見た番組のことなので記憶が曖昧だが、内容はなんとも無邪気なもので、精子ドナーのプロフィールはカタログ化され、まるでカタログショッピングでもするかのように精子が注文できるかのような触れ込みだった、ような気がする。少なくとも、ヒトラー的な優生学の暗い熱情を想起させるようなモノは無かった。単に、顧客の嗜好にマッチするような商品を集めた結果が、IQ130以上のドナーの精子だったという風情。実際、精子バンクの品質競争は商品の性質上そこに帰着せざるを得ないわけで、むべなるかな、といった感もある。しかしながら、本書がフォーカスする「レポジトリー・フォー・ジャーミナル・チョイス」はちょっと違う。レポジトリーはノーベル賞受賞者の「優秀な」遺伝子を世に広げることを目的としていた。そこには、人種改良の意図があった。レポジトリーが為したのは育種学的試みであった。そんな歪んだ精子バンクの末路を描いたのが本書である。精子バンクの子供達と母親のインタビューからなるドキュメンタリは興味深かったが、精子バンクについての総括は予定調和的なもので、一冊の本としてはややまとまりに書ける印象だった。面白そうな題材を扱っているだけに、ちょっぴり残念。

  • 11月23日購入

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