リスク・リテラシーが身につく統計的思考法―初歩からベイズ推定まで (ハヤカワ文庫 NF 363 〈数理を愉しむ〉シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150503635

作品紹介・あらすじ

専門家の言葉をつい鵜呑みにする前に数字の「ウソ」を見破る技を教えます。現代人の基礎教養である確率・統計を平易に解説。

感想・レビュー・書評

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  • 読み始めて「あぁ・・、意味が分かった」ということがある。
    今の私は統計学の"準"専門家であり、統計データを見るだけで色々と考えが浮かぶくらいだが、高校時代は確率のテストでさんざん赤点を取った。今でも「確率は分からない(;分かったはずのところでも油断で足下をすくわれるし、わかっている範囲の外に理解が自動的に広がっていかない)」と感じ続けている。
    論理記号満載の統計理論もわかりにくく、微積分で記述してあるものをなるべく探して理解する有様だ。
    そんな状態は変わらず頭がスッキリしているわけでもないのに、大学で研究室に入って以降急激に統計に関して「理解できる」という感触(実際に上手く運用できる)を得たのはなぜなのだろうかと思い続けてきた。
    その答えが最初の章で理解できた。

    私が出来ないのは条件付き確率なのだ。
    私の理解は常に直観(感覚)に支えられてきたので、人間の感覚に合わない確率統計的な考え方は理解することが苦手な内容なのだ。
    研究に用いてきた統計学は、まず最初に実際の自分のデータがあり、自然に頻度で考え、その後ノーマライズしているので完全に理解できる感触があったのだ。
    今までのいくつかの書籍にあった「確率は直感的に理解できないものだ」という言葉の意味が本書のおかげでさらに踏み込んで理解できた。

  • HIV検査と乳房X線検査の話。

    HIV検査と乳房X線検査の話がしつこいくらい出てくる。モンティホール問題のような問題が色々出てくる本だと思っていたら、ベイズの定理がメインでしかも何度も出てくるので、自分にはあまり面白いと思えなかった。

  • 〔「数字に弱いあなたの驚くほど危険な生活」(2003年刊)の改題〕【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40239425

  • 本書の単行本を本屋で見かけ、偶然手に取ったのは15年以上前のこと。
    ちょうど父親にガンが見つかり、父に手術の説明を自然頻度を用いてしたのを覚えている。

    昨今の新型コロナ騒動で、「そう言えば昔読んだことがあったな」と思い出したので、久し振りに読み返してみることに。

    ただ、本棚を見ても見つからず。
    そういえば文庫本が出たから買い直そうと手放したような…
    これだから断捨離とかこんまりとかはロクでもないんだよ!

    …と八つ当たりもそこそこに、Amazonで調べてみるとビックリ!
    絶版になった単行本にプレミアがついてる!
    書名を変えた文庫本も絶版となっており、中古しか出回っていない状況。
    値崩れも起きてないので、いよいよ良書を手放してしまったと後悔。

    Amazonで中古の文庫を買ってから、何気なく本棚を見ると…あれ?
    あった…!
    断捨離とかこんまりにビッシャビシャの濡れ衣を着せてしまって申し訳ない、とは露ほども思わず、ただただ胸に去来するのはやっちまった感だけ。
    つくづく人間というのは勝手な生き物です。


    …長い前置きになりました。
    新型コロナによる緊急事態宣言下にある現在、15年以上前に読んだときより本書の内容理解が進むのに驚きました。

    検査結果の偽陽性・偽陰性の説明が面白いように頭に入ってくるだけでなく、気がつくと、本書で繰り返し登場する事例を見ると読み進めるのをとめ、メモ帳に表を書いて楽しく計算している自分がいました。

    「なぜ数学を勉強しないといけないのか?」
    中学生だった自分も思っていたことですし、塾講師をしていた頃には少なくない生徒から言われた定番の問いです。
    今までの自分だったら「別に、銀行強盗に人質にされたとき『この連立方程式を解けた奴から解放してやる!』とかは絶対ないけど、論理的な思考の訓練としては数学が一番最適なんや。目に見えない思考のOSの部分を鍛えるためや」とか、自分自身しっくり来ていない観念的な理由づけでおそらく生徒を煙に巻きながら、自分自身も納得したつもりになっていました。

    が、今ならハッキリ言えます。
    「論理的にものを考える前提として、データや数字を理解できないといけない。
    そのためには確率・統計、引いては数学の素養がないといけないから!」

    テレビ朝日・モーニングショーを筆頭に、特にテレ朝・TBS系のニュース番組やワイドショーではインチキ専門家を呼んでデマと大差ない間違いを連日垂れ流し続けています。
    そういうインチキ専門家や、自分たちが今流している報道内容についてろくにリテラシーを持ち合わせていない報道番組の内容を「これは間違いだ!」と見抜けるようになり、インチキ情報に惑わされないためにも、数学は絶対必要だとつくづく思います。
    (学生時代、もっと真剣に数学を勉強してれば良かった…後悔はいつも後からやってきます)

    本書は大きく3部に分かれており、1部ではリスクについての考え方がコンパクトにまとまっています。
    2部では乳がんや前立腺がん、DNA鑑定、再犯可能性、と医療と司法の具体例をとおして1部で見た内容をさらに具体的なケーススタディとして見ていきます。
    3部では数字に弱いとどれだけ騙されるか、そしてモンティ・ホール問題が紹介されており、本書の内容を復習しつつ、数字でかつ具体的にものを考えるとはどういうことかを説明してくれています。

    病気の検査にまつわる偽陽性・偽陰性の話も面白かったのですが、もう一つ面白かったのが訴追者の誤謬に関する話。
    皆さんはこれから紹介する説明の間違いがわかるでしょうか?

    ある殺人事件(ドイツの事件)で、被害者の爪の中に血液が残っており、これが被告人の血液型と一致した。
    裁判で大学講師が、ドイツ人の17.3%がその血液型に一致すると述べた。
    第2の証拠として、被告人のブーツについていた血液があり、これが被害者の女性の血液型と一致した。
    くだんの専門家は、ドイツ人の15.7%がその血液型であると証言した。
    二つの確率を掛け合わせると、この二つが偶然に一致する確率は2.7%と出る。
    したがって、被告人が殺人者である確率は97.3%である、と専門家証人は言った。(文庫244頁を一部簡略化した)

    偶然に一致する確率が2.7%と言われるとほぼ間違いないように思いがちです。
    が、本当にそうなのでしょうか?

    この事件が起きた街に犯人の可能性がある男声が10万人いると仮定する。
    このうち1人が殺人者で、ほぼ確実に両方の証拠と一致する(鑑定の際にサンプルが取り違えられるなどの誤りがないことを前提とする)。
    犯人以外の9万9999人のうち、役2700人(2.7%)もこの二つの証拠と一致する。
    したがって、二つの証拠に一致する被告が殺人者である確率は、専門家証人が述べた97.3%ではなく、2700分の1で、0.1%以下である。(文庫245頁を一部簡略化した)

    2.7%という数字を具体的な数字に置き換えて考えると、97.3%だと思っていたものが0.1%以下だったことがわかります。
    言われれば納得なのですが、確率を自然頻度に置き換えずに考えることがいかに危険かを思い知らされました。

    こんな面白い良書が絶版って、早川書房さん何やってんの!


    以下は本書を読んでいて興味深かったところの抜粋メモ。
    ・フランクリンの法則「死と税金以外に確実なものはない」
    ・リスクを語るときは確率ではなく頻度(自然頻度)。
     ×30% → ○10人のうち3人 + 頻度のもとになる集団の特定
    ・不確実性(事実)←→安心感を得たがっている(心情)
    ・不確実性を伝えると、プラセボ効果が消えてしまう
    ・医師・患者・製薬会社、それぞれにとってリスク・コストとメリットは違う
    ・カント『啓蒙とは何か』→「知る勇気を持て」(Sapere aude)
    ・主観的確率…「手術の成功率は80%です」→根拠も比較対象もない
    ・一度限りの出来事の確率…主観的確率になりやすい
    ・「降水確率30%」とは?…定義があいまいならハッキリしたことはわからない
     ①1日のうち30%の時間、雨が降る
     ②ある範囲の30%に雨が降る
     ③同じような日のうち10日に3日は雨が降る→○
    ・絶対リスク減少率…0.9%ダウン 治療なし(偽薬)で死んだ人々の割合から、治療を受けていて死んだ人々の割合の差し引き
    ・相対リスク減少率…22%ダウン 絶対リスクの減少値を治療なしで死んだ人の数で割ったもの
    ・要治療数(NNT)…111人 一人の命を救うために何人を治療しなければいけないか、という数(=110人には無駄な治療ということ)
     →マスコミが伝えたがるのは「相対リスク減少率」、大きな数字が出るから
    ・条件付確率…偽陽性の問題
    ・(p66)なぜ確率をもとに正しく推論することが容易でないか?
     →不確実性・不完全な情報から推測するという確率論自体が人類史の中では比較的新しいものだから
    ・(p80)陰性・陽性のマトリクス…偽陽性・偽陰性が間違い=問題
     cf.分類性能の指標・まとめ
    ・暴力の予測…今後この犯罪者が再び暴力行為を振るう確率(そんなもん出るのか?)
    ・確率と自然頻度では優位的な差が出る(確率の方が高く出る傾向)
    ・「目盛り効果」…ハッキリした数字がわからないとき、回答欄の目盛りに回答が左右される

  • 従来の頻度主義統計を勉強してきた者にとって,ベイズ的な考え方はなかなか理解しづらいところ。この本は確率にありがちな0から1の数値で考えるのではなく,具体的な数を明らかにしながら平易に解説してくれているので,わかりやすい。
    ただ,本を読んでわかったつもりになっても,実例に当たってみないとなかなか自分のものにはできない。

  • 【由来】
    ・7/20にお師匠から

    【期待したもの】
    ・統計について、ちょっとは賢くなれるかな。

    【ノート】
    ・お師匠から借りて何と読了まで3ヶ月もかかってしまった。結局は自然頻度で考えれとの本書のコアについて、最初に師匠が解説してくれた時に理解した以上には深められなかったという感じ。

    ・数字に弱く、ましてや統計とか確率になると、もう理解しようという気持ちが最初から萎えるという負け犬根性が身に染み付いている自分だが、そんな自分だからこそ、確率的な表現や考えに対しては、実は常に自然頻度で考えていたことを発見できたのはちょっとした収穫。

  • "HIVの検査結果で陽性とでたとき、HIVに感染している確率は?
    乳ガンの検査で陽性と出たとき、乳ガンである確率は?

    この本は、こうした事例を元に統計の正しい理解を学ぶことができる。そして何よりわかりやすい。

    全ての人が読むべき本だ。

    世にあふれる専門家が示す数字の意味を理解し、だまされないよう行動するために必要なリテラシーが身につく。
    この本に出てくる専門的な用語についても、解説がついているので、理解も進む。

    本書で著者から読者へのアドバイスとしてあげていることをメモしておく。
    1.フランクリンの法則
      「死と税金の他には、確実なものは何もない」
      世の中に絶対というものは、ないということを知っておくことで、専門家のコメントを聴く姿勢が変わる。
    2.リスクに対する無知を克服する
      ・リスクを推計するツールを学ぶこと
      ・リスク推計を邪魔する勢力があることを知る
      この2つで、克服できる。
      また、リスクに対する人間の一般的な傾向も知っておくこと。
      たとえば、人は一度に多くの生命が危険にさらされる状況に恐怖する。長期にわたるものは恐れない。
      具体的には、飛行機事故や原子力災害には恐れるが、自動車事故による死者は飛行機事故や原子力災害以上にいるが、恐れたりしていない。こうした傾向がある。
      未知のものへの恐怖もある。DNA、原子力技術などなど
    3.コミュニケーションと合理的な考え方
      本書でも再三でてくるが、確率を自然頻度に置き換えることで、理解が進む。ベイズの法則に確立を挿入するやり方より、自然頻度に置き換えた方法の方が理解する人が多く、定着率も高いという実験結果もある。自然頻度に置き換えるという方法を覚えれば統計的思考力が誰にでも手に入ることになる。"

  • こういう実生活に潜む確率論の本は面白い。自然に信じていたことがぐらっと揺らぐ感じがいい。
    医療問題やDNA鑑定などに潜む誤謬。
    中心はベイズ推定に代表される事前確率や母数、確実なものは何もないというフランクリンの法則なのだが、確率論で計算するより、自然頻度を使って、判りやすく論ずる。
    学校のテストも、困ったら「数えて」たもんな。
    「相対リスク」の考え方も初めて知ったが、確率が出て来たときには色々と考慮して鵜呑みにしないことが大事。

    それはともかく、これまで読んだ確率論の本で、多分一番「乳房」という単語が踊る内容なのは間違いない。

  • 繰り返しが多すぎて、くどい感じ。

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著者プロフィール

マックス・プランク人間発達研究所所長。アメリカ科学振興協会の行動科学研究賞、ドイツ年間科学書賞をはじめ、数々の賞を受賞。リスクリテラシー研究の国際的リーダー。既刊本は『リスク・リテラシーが身につく統計的思考法』(ハヤカワ文庫)、『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』(インターシフト)。

「2015年 『賢く決めるリスク思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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