不可能、不確定、不完全: 「できない」を証明する数学の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫―数理を愉しむシリーズ)

  • 早川書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150503833

作品紹介・あらすじ

数学・物理の世界では、「できない」という否定的な命題の証明が、実は新たな視野を切りひらく不可欠の契機となる。本書は車の修理スケジュール、名刺の並び替え、選挙方式など身近なものから、現代数学、宇宙物理まで幅広く題材をとりあげながら、「ハイゼンベルクの不確定性原理」「ゲーデルの不完全性定理」「アローの不可能性定理」という三大"できない"証明を検証。数式をなるべく排した、平易でユーモラスな解説書。

感想・レビュー・書評

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  • アローの不可能性定理(投票者の選考を満足させる票の集計方法がない。)、ハイゼンベルクの不確定性原理、ゲーデルの不完全性定理

  • 本書の「前置き」に書かれたエピソードが、中学時代に数学パズルクラブの部長だったワタシににヒットした。これが本書を手にした理由。しかしながら…正直に言おう、挫折した。
    著者の言葉によると、数学的な議論についていく気がない読者が途中を読み飛ばしてもいいように書いたし、(微積分を除く)高校までの知識でついていけるはずだ、とのことだったが、とてもとても。数学的理論と物理的理論の違い、数学者達の奇異な人生あたりまでは面白く読めたが、残りのほとんどはお手上げだ。再チャレンジは…多分ないだろう。
    まぁたまにはこんなこともある、ということで。

  • 337円購入2014-03-31

  • これは、数学・物理のみならず、哲学の分野においても解説されることが多い、
    アローの不可能性定理、ハイゼンベルクの不確定性原理、ゲーデルの不完全性定理の詳細と関連性を明らかにする本ではない。

    原題はHOW MATH EXPLAINS THE WORLD。
    複雑で不安定で不可解な現実世界を、数学がどこまで記述できるのか、何が記述できないのかを探ることが主題である。

    例えば普段意識することなく、当たり前のように日常生活で使っている数学も、
    視点をちょっと変えるだけで、今まで見えていなかった世界に没入してしまう。
    世界を限界まで拡大するときに現れる量子力学の通り、世界は離散構造で出来ているとしたら、
    連続的として扱っている数直線とは、物理的には存在しえない概念にしかすぎないのだろうか?

    直定規とコンパスでは作図が不可能な立方体の倍積、円と同じ面積の正方形、角の三等分。
    べき根では特定できない五次方程式の解。
    ペアノの公理による枠組みでは決定不能なグッドスタインの定理。

    かつて現実世界では解決出来ないと思われていた種々の問いも、その枠組を拡張することで乗り越えてきた。
    ならば表題の定理原理についても同じことが出来るかもしれない。

    ゲーデルの不完全線定理によって、証明不可能な命題が存在することが明らかになったが、
    どの命題が証明不可能かを明らかにするものではないし、
    アローの不可能性定理は特定の条件における完全な投票の不可能性を示したが、
    誰もが納得できる選挙が成り立たないことを証明したものではないし、
    ハイゼンベルクの不完全性原理によって、原子の位置と運動量は同時に特定できないことが明らかになったが、
    それは未来予測や量子コンピュータの可能性を否定するものではない。

    人類のこれまでの成果とは、4つのマスを2つのコマで埋めることは不可能だと証明することだった。
    現在明らかになりつつあるのが、コマを半分に割れば4つのマスを埋めることはできるという発見だとすれば、
    これから目指す場所は、実際にコマを半分に割る方法を見つけることだろう。

    数学に縁遠い世界にいると思っている人は、本書に33個以上の式が載っているか確認するところから初めてはどうだろう。
    本に数式を一つ載せると読者が半減するという言葉が真であるか、証明できるかもしれない。

  • 古今東西数学に関するよもやま話が集められている。数式も多数登場するので、苦手な人が読むと退屈に感じるかもしれない。しかもしばしば専門用語も登場するので、数学の初学者が読んでもよく分からない所が多数あるだろう。(そもそも数学の初学者向けの本ではないようだ)

    登場するエピソード自体は興味深いものが多いので、じっくりゆっくり読んでいくのに向いている。興味のあるところだけ拾い読みしていくのも良いと思う。

  • 第一部 宇宙の記述
    第二部 不完全な道具箱
    第三部 ゴルディロックスのジレンマ
    第四部 到達できないユートピア
    面白かったが、だいぶ読むのに時間がかかってしまった。さすがにラノベを読むようなスピードでは理解できない。というわけで第一部から第三部までは記憶の彼方なので、記憶に残っている第四部についてだけ。
    ここでは、選挙を数学の観点から考えている。民主制において採用すべき投票方式を数学の観点で考えると、あちらを立てればこちらが立たずということになる(ケネス・アローの不可能性定理)。なんとなく多数決なら公平で正しいと思っていたが、細かく考えると何が正しいのかわからず、正しいと考えられるすべての条件を満たす投票方式を作ることは理論的に不可能というのが、無知を曝け出すようで恥ずかしいが、新鮮で一つ賢くなった気がした。第4部では、このほかギバード=サタースウェイトの定理(不誠実な投票の可能性を排除する投票方式はない)も紹介されている。知的好奇心をくすぐられる方は是非読んで欲しい。後悔しないと思う。
    数学の知識はさほど必要ではないが、数学にアレルギーのある人には読破は難しいだろう。そういう人は本書を読もうと思わないだろうが。

  • 非常に希望の持てる作品

  • 知的好奇心を刺激するには十分な本だった。しかし、ほんとにガウスのような天才はいるんだなと。(作者が意図的にそうしたように)数式がないのが少々物足りなかったが。

  • 論理命題,公理系の無矛盾と不完全性定理,クラスNPなどなど,副題の通り“「できない」を証明する数学の力”というテーマで,数学教授である筆者が語る.数学だけでなく,それらに深い関わりのある情報工学(計算可能性など)や物理学(量子力学やひも理論など)にまで言及され,近代〜現代までの理学分野の流れが横断できる.ちなみに原題は“HOW MATH EXPLAINS THE WORLD”
    三次方程式の解の公式に関する数学者たちの決闘など,新しい公式や理論においての裏エピソードが詳細に描かれているのが面白かった.
    難点なのは図がほぼないこと.例えば群論でのn次元の説明や,光子の粒子性や波動性の説明などでは図があればもっと分かりやすいと思った.表はあるので図版での予算の問題? また,専門家以外にはなかなか理解の難しい概念は喩えを用いているが,例えばクラスNPは“かみごたえのある問題”という説明だったりと,知っている人にはよく分からない喩え,初学者には分かりやすいとも思えないが…
    数学史・物理学史好き向け

  • わからない、ということを、わかるのに苦労する本。数学の基礎知識は必須。全然一般向けじゃない。

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