予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150503918

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。

    中でも、コンピューターゲームに強い学生に「消える扉ゲーム実験」をした結果が面白かった。
    パソコンに、赤、青、緑の3つの扉が現れる。
    ひとつの部屋に入ったら、クリックするごとにある金額が自分のものになる。
    どの部屋からいくら獲得できるかは入ってクリックしてみないとわからない。
    クリックできる回数は全部で100回。
    画面には現在の獲得金額が表示される。
    最大にお金を稼ぐには、もっとも高い賞金が用意された部屋を見つけて、制限時間内にできるだけ多くクリックすること。
    部屋から部屋へ移動する方が高い賞金の部屋を探すのにいい戦略であるが、お金を稼げたかもしれないクリックの回数を減らしてしまうというデメリットもある。
    そして、1回クリックするごとに他の扉が少しずつ縮んでいき、そのまま放っておくと消えてしまう。

    学生は、他の扉の金額分からないので、消えてしまわないように他の部屋もクリックし、元の大きさに戻す。
    部屋が小さくなる度に部屋を移りクリックする。
    選択肢から選択肢へと飛び回る。

    この行動は不経済で、とてもストレスになる上に、消えない部屋の実験結果に比べると、獲得金額が15%減少した。
    ほんとうは、どの部屋でもいいから選んだ部屋でひたすらクリックしていればもっと賞金を稼ぐ事ができた。

    選択肢が自由で多いが故の難しさ。
    なかなか勉強になりました。
    買い物をする時の商品を選ぶ時も、結構時間をかけて似たような商品で悩んでます。
    確かに、手に入れてしまえばどちらを選んでも大差ないです。
    その選んでいる時間に出来た事を考えると、早く手に入れて活用した方が何倍もお得です。

    他にも興味深い実験がたくさん。
    不合理な行動に、自分もだ!と当てはめて読んでいました。笑
    人間て面白いなぁ。

  • 行動経済学者が明かす、人間の行為はどれだけ合理的ではないか。

    人気の本だけに、さすがに面白かった。

    「はじめに」に筆者が記す以下がこの本のテーマ
    ________________
    この本は、人間の不合理性、つまり、わたしたちがどれほど完璧とははど遠いのかについて描いている。
    (中略)
    わたしたちは不合理なだけではなく、「予想どおりに不合理」だ。つまり、不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される。
    (中略)
    わたしたちの不合理はでたらめでも無分別でもない。規則性があって、何度も繰り返してしまうため、予想もできる。
    _______________

    ■1章 相対性の真相
    相対性はわかりやすい。

    相対性の比較の選択の際、選んでほしい商品より少し劣った方向性が同じおとりを選択肢に含めることで選んでほしい商品が選ばれる。

    「相対性は身のまわりのどこにでもあり、わたしたちはあらゆるものごとを相対性の色メガネで-バラ色だろうがなんだろが-見ていると自覚することだ」

    ■2章 需要と供給の誤謬
    私たちは最初に示された値段にアンカリングされてしまう。

    他人がとった行動によって善し悪しを判断することを「ハーディング」という。
    自分の過去の経験によって判断することを「自己ハーディング」という。

    スターバックスは、ダンキンドーナツのように低価格にアンカリングされなかったのは、入店の経験がほかとはちがったものになるように、高級感を演出するためにできることをすべてやった。

    同じ経験でも恣意的にとらえ方を左右することができた。筆者が朗読に対して聴衆にお金を払うか、お金をもらえるかそれぞれ前提を変えて質問すると、払うか聞かれた側は払うように、もらえると言われた方はもらうように考え出す。

    「消費者が支払ってもいいと考える金額は簡単に操作されてしまう。」
    「ふつうの経済学の枠組みでは、供給と需要の力が互いに独立していると仮定するが、アンカリングの操作は、実際にはふたつが互いに依存していることを示している。」

    ■3章 ゼロコストのコスト
    無料の魅力。
    自分のほんとうに求めているものではなくても、無料になると不合理にも飛びつきたくなる。それは人間が失うことを本質的に恐れるからではないか。

    ■4章 社会規範のコスト
    社会規範と市場規範のバランス。

    プレゼントは社会規範として機能する。経済効果(市場規範)としては効率が悪いものの、社会の潤滑油として機能する。
    市場規範で考えるなら、プレゼントをあげるより、現金を上げた方がよい。

    「企業が社会規範で考えはじめれば、社会規範が忠誠心を育てることに気づくだろう。さらに重要なことに、社会規範は人々を奮起させる」
    「人は給料の為に働くが、そのほかにも仕事から無形の利益を得ている。」

    ■5章 無料のクッキーの力
    クッキーを無料で提供すると、皆、社会規範の重要さを念頭において、1つか2つクッキーをもらうが、有料にした途端、たくさん買う。
    お金を求めることで市場規範を持ち込み、無料のくっき0の時に作用していた作用していた社会規範を追い出してしまった。
    もう一つの実験では金銭をかかわらせず、労力でクッキーをもらるようにしたが、無料と有料の間だった。
    労力を伴う取引が金銭的取引に比べて社会規範を維持できるのだから、どうすれば人々がサービスに対してお金を払う代わりに、自分たちの労力をもっと投資するようになるかを考えるべきだろう。

    ■8章 高価な所有意識

    自分の所有物を過大評価してしまう傾向は、、人の基本的な偏向であり、自分自身に関係のあるものすべてにほれこみ、過度に楽観的になってしまうという、もっと全般的な成功を反映している。

    ■9章 扉をあけておく

    選択の自由の何がこれほどむずかしいのだろう。たとえ大きな犠牲を払ってでも、できるだけ多くの選択の扉をあけておかなければならない気がするのはなぜだろう。

    ■10章 予測の効果
    知識が先か後かで経験が変わる。
    予測とビールの味
    あらかじめバルサミコ酢を入れたビールを飲んでもらう時に、バルサミコ酢が入っていると飲む前に教えるとおいしくないと思う。飲んだ後に教えるとそれほどおいしくないと思わない。

    あるグループにステレオタイプを抱くと、こちらの反応が変わるだけではなく、ステレオタイプ化された人たちのほうも、押し付けられたレッテルに気付けば反応が変わる(心理学のことばで言うと、レッテルに「プライミング」される)

    高級料理を汚い部屋で出してもおいしいと思えない。
    クラッシックのプロの演奏家が朝の出勤時にストリート演奏してもほとんどの人が気付かない。

    肝心なのは、芸術でも文学でも演劇でも建築でも料理でもワインでも、とにかくなんにつけても、それを経験し評価するうえで、期待がどんな役割を果たすのか、ほんとうのところはわかっていない。

    11章 価格の力
    プラセボ効果
    値段が高い薬の方が効果がある

    12章 不信の輪
    「共有地の悲劇」はふたつの競合する人間の理解につきる。一方では、長期的な観点から、個人は共有資源の持続可能性を気にかけている。その個人を含むすべての人が共有資源から利益を得ているからだ。だが、同時に、短期的に見ると、個人は自分の公正な取り分以上とることで、すぐに利益を得る。

    13章 私たちの品性について その1

    世の中には2つの不正がある。
    1つは、強盗を連想させるような不正。
    もう一つは、自分が正直者だと思っている人たちが犯す不正だ。

    あらかじめ十戒を読んでから実験をすると不正が減った。十戒で正直の概念を呼び起こせる。

    14章 私たちの品性について その2
    不正の機会が与えられたとき、得られるものが現金の場合より、代替貨幣の時の方が断然不正が増える。

    15章 ビールと無料のランチ
    独自性要求
    独自性を表現することに関心のある人ほど、テーブルでまだだれも頼んでいないアルコール飲料を選んで、自分がほんとうに個性的だと示そうとする傾向が強い。

  • タイトルにある「行動経済学」という学問は名前の通り経済学を下敷きにしているが、この本は行動経済学のお堅い教科書ではなく読み物として楽しめた。

    伝統的な経済学では、人間は非常に合理的な存在であると考えられてきた。しかし、実際のところわたしたちの意思決定は不合理なところがあるのは誰もが認めるところだろうし、自分もそうだ。しなければいけない電話やメールをいつも先延ばしにしてしまうし、配信サービスなどは無料期間の後で解約すればいいやと思って契約したはずなのに、そうした試しが一度もない。著者はこのような意思決定の不合理さには、一定の法則性があるという。行動経済学は、このような不合理な意思決定の「クセ」を実験を行って明らかにし、これを経済理論に取り入れようという学問である。

    本文でたくさん取り上げられる不合理な行動のほとんどが身に覚えのあるもので、薄々感じてはいたが言葉にすることができなかったことが明快に書かれているので、目の覚める思いだった。ベストセラーになるのもうなずける良書だと思った。この本を読んだからといって合理的な存在になれるわけではないが、自分がいつ不合理な判断をしそうか、どうやったらそれを止められるかを考える契機にすることができるのではないだろうか。

  • この本は、「行動経済学」について書かれた本で、「人間の選択は不合理なものだ!」ということを様々な実験を通じて検証しており、読み物としても、とても面白かったです。
    行動経済学に火をつけたベストセラー本です!
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • 行動経済学は、心理学と経済学をあわせたような学問でとてもおもしろい。様々な実験から、人間はいかに不合理か、操られやすいかということを教えてくれる。自分の思考や行動パターンを見直すきっかけになる本だと思う。

  • 2023/12/22 読破

    まとめ:不合理さの証明と実験結果に合わせた解釈

    ・人間の不合理さと、言語化できない行動を多くの実験結果から証明してくれる
    ・合理的に動くのは経済学、不合理に動くのは行動経済学
    ・まるで自分の行動が見透かされているような、そんなお話しがありました

    読み物として、とても面白かったです。ただ、ページ数の割に、内容が濃いので、読み進めるのが大変でした。読むのに疲れる方は、かいつまんでもいいと思います。

    人の行動原理や人間観察が好きな方は面白いですよ

  • ◯行動経済学の入門の入門といった感じの本。著者の興味深い実験と軽妙な語り口に、経済学?と思わず訝しんでしまうくらいに面白く読める。
    ◯ユーモアさやエピソードから感じる西洋感がなければ、訳出された本であると思わないほど読みやすいのも特徴的。
    ◯肝心な中身についても、幅広く興味を持ってもらい、ここから次につなげる一冊としては学部生向けであり、忙しい社会人でもさらっと読める良い本。

  •  食べ物を分け合う時、最後の1個が残りがちである。このような人間の習性についてまとめた本。行動経済学が元になっているが、堅苦しいものではなく、気軽に読むことができ、面白い。

     個人的に面白いと感じたのは、相対性について、社会規範と市場規範、選択肢が多いほど本来の目的からそれてしまうことの3つである。

     相対性についてー人間は何かを測る時、絶対的な基準を持たない。何かを決めるとき、必ず何かと比較してしまうのである。そのため、選択肢を増やすことで相手をその比較に注力させてしまうのである。

     社会規範と市場規範ー社会規範は思いやりのようにお金が関わらないときの行動、市場規範はお金が関わる時の行動である。これらの規範の切り替えによって、人は動いており、どちらの規範に傾いてるかによって人の行動は変化するのである。

     選択肢が多いほど本来の目的からそれてしまうことー「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざにもある通り、優柔不断なのが人間の常である。これは、より良い可能性を捨て去ることに対する不安からくるものである。しかし、多くの場合はどちらも非常に似通った選択肢であるため、早々に決断したほうが得をするのではないだろうか。

  • 良書!行動経済学おもしろい!無意識だと思っている選択が実は他人に操作されてるってわかる。

  • ●主張の総括(と感じたこと)
     私たち人間は自然物であるため、感覚や思考には、特有の誤差や偏差がある。このため、不合理な行動を規則正しく取ってしまう。
     一方で、規則性がある誤りは予想可能でもある。よって、適切に対処できれば克服できる。


    ●覚えておくこと

    ヒトは…
    ①物事を比較する事で、評価し判断できる。
     余り良くない物も、より悪いものと並ぶと良いものと思ってしまう。比較対象には自分の過去も含み、整合性(時に不要な拘り)を持ってしまう。
    ⇨プレゼンで通したい意見の横には比較例を並べる

    ②ゼロ(無料)は失敗の恐れがないため、過剰に嗜好してしまう。
    ⇨無料の選択肢を見たら警戒する

    ③お金が絡むと、社会規範が市場規範に塗り替えられてしまう。人は社会規範の中の方が安寧に過ごせる。

    ④感情が昂ると、平時には全く取らない行動をしてしまう。これは抗い難い事実。これを避ける方法の一つは、興奮状態に陥る場に近づかないこと。

    ⑤自制に打ち勝つ方法は、やるべき事と、楽しみなことをセットにする事。これにより、進んでやるべきことを選べるようになる
    ⇨ランニング用にオーディブルを備えておく。

    ⑥予測は本文の内容も歪めて認識してしまう。
    ⇨プレゼンの初めに要旨を付ける。予測の間を与えない。

    ⑦現金を盗む等の明確な不正はしないが、ペンを拝借する等のちょっとした不正は簡単に犯してしまう。しかし、直前に道徳心を思い出させる言葉があれば誠実に行動できる。

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