予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 早川書房 (2013年8月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150503918
作品紹介・あらすじ
ゆかいな実験が満載の行動経済学ベストセラーが、文庫に! 推薦/大竹文雄大阪大学教授
感想・レビュー・書評
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面白かった。
中でも、コンピューターゲームに強い学生に「消える扉ゲーム実験」をした結果が面白かった。
パソコンに、赤、青、緑の3つの扉が現れる。
ひとつの部屋に入ったら、クリックするごとにある金額が自分のものになる。
どの部屋からいくら獲得できるかは入ってクリックしてみないとわからない。
クリックできる回数は全部で100回。
画面には現在の獲得金額が表示される。
最大にお金を稼ぐには、もっとも高い賞金が用意された部屋を見つけて、制限時間内にできるだけ多くクリックすること。
部屋から部屋へ移動する方が高い賞金の部屋を探すのにいい戦略であるが、お金を稼げたかもしれないクリックの回数を減らしてしまうというデメリットもある。
そして、1回クリックするごとに他の扉が少しずつ縮んでいき、そのまま放っておくと消えてしまう。
学生は、他の扉の金額分からないので、消えてしまわないように他の部屋もクリックし、元の大きさに戻す。
部屋が小さくなる度に部屋を移りクリックする。
選択肢から選択肢へと飛び回る。
この行動は不経済で、とてもストレスになる上に、消えない部屋の実験結果に比べると、獲得金額が15%減少した。
ほんとうは、どの部屋でもいいから選んだ部屋でひたすらクリックしていればもっと賞金を稼ぐ事ができた。
選択肢が自由で多いが故の難しさ。
なかなか勉強になりました。
買い物をする時の商品を選ぶ時も、結構時間をかけて似たような商品で悩んでます。
確かに、手に入れてしまえばどちらを選んでも大差ないです。
その選んでいる時間に出来た事を考えると、早く手に入れて活用した方が何倍もお得です。
他にも興味深い実験がたくさん。
不合理な行動に、自分もだ!と当てはめて読んでいました。笑
人間て面白いなぁ。 -
行動経済学者が明かす、人間の行為はどれだけ合理的ではないか。
人気の本だけに、さすがに面白かった。
「はじめに」に筆者が記す以下がこの本のテーマ
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この本は、人間の不合理性、つまり、わたしたちがどれほど完璧とははど遠いのかについて描いている。
(中略)
わたしたちは不合理なだけではなく、「予想どおりに不合理」だ。つまり、不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される。
(中略)
わたしたちの不合理はでたらめでも無分別でもない。規則性があって、何度も繰り返してしまうため、予想もできる。
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■1章 相対性の真相
相対性はわかりやすい。
相対性の比較の選択の際、選んでほしい商品より少し劣った方向性が同じおとりを選択肢に含めることで選んでほしい商品が選ばれる。
「相対性は身のまわりのどこにでもあり、わたしたちはあらゆるものごとを相対性の色メガネで-バラ色だろうがなんだろが-見ていると自覚することだ」
■2章 需要と供給の誤謬
私たちは最初に示された値段にアンカリングされてしまう。
他人がとった行動によって善し悪しを判断することを「ハーディング」という。
自分の過去の経験によって判断することを「自己ハーディング」という。
スターバックスは、ダンキンドーナツのように低価格にアンカリングされなかったのは、入店の経験がほかとはちがったものになるように、高級感を演出するためにできることをすべてやった。
同じ経験でも恣意的にとらえ方を左右することができた。筆者が朗読に対して聴衆にお金を払うか、お金をもらえるかそれぞれ前提を変えて質問すると、払うか聞かれた側は払うように、もらえると言われた方はもらうように考え出す。
「消費者が支払ってもいいと考える金額は簡単に操作されてしまう。」
「ふつうの経済学の枠組みでは、供給と需要の力が互いに独立していると仮定するが、アンカリングの操作は、実際にはふたつが互いに依存していることを示している。」
■3章 ゼロコストのコスト
無料の魅力。
自分のほんとうに求めているものではなくても、無料になると不合理にも飛びつきたくなる。それは人間が失うことを本質的に恐れるからではないか。
■4章 社会規範のコスト
社会規範と市場規範のバランス。
プレゼントは社会規範として機能する。経済効果(市場規範)としては効率が悪いものの、社会の潤滑油として機能する。
市場規範で考えるなら、プレゼントをあげるより、現金を上げた方がよい。
「企業が社会規範で考えはじめれば、社会規範が忠誠心を育てることに気づくだろう。さらに重要なことに、社会規範は人々を奮起させる」
「人は給料の為に働くが、そのほかにも仕事から無形の利益を得ている。」
■5章 無料のクッキーの力
クッキーを無料で提供すると、皆、社会規範の重要さを念頭において、1つか2つクッキーをもらうが、有料にした途端、たくさん買う。
お金を求めることで市場規範を持ち込み、無料のくっき0の時に作用していた作用していた社会規範を追い出してしまった。
もう一つの実験では金銭をかかわらせず、労力でクッキーをもらるようにしたが、無料と有料の間だった。
労力を伴う取引が金銭的取引に比べて社会規範を維持できるのだから、どうすれば人々がサービスに対してお金を払う代わりに、自分たちの労力をもっと投資するようになるかを考えるべきだろう。
■8章 高価な所有意識
自分の所有物を過大評価してしまう傾向は、、人の基本的な偏向であり、自分自身に関係のあるものすべてにほれこみ、過度に楽観的になってしまうという、もっと全般的な成功を反映している。
■9章 扉をあけておく
選択の自由の何がこれほどむずかしいのだろう。たとえ大きな犠牲を払ってでも、できるだけ多くの選択の扉をあけておかなければならない気がするのはなぜだろう。
■10章 予測の効果
知識が先か後かで経験が変わる。
予測とビールの味
あらかじめバルサミコ酢を入れたビールを飲んでもらう時に、バルサミコ酢が入っていると飲む前に教えるとおいしくないと思う。飲んだ後に教えるとそれほどおいしくないと思わない。
あるグループにステレオタイプを抱くと、こちらの反応が変わるだけではなく、ステレオタイプ化された人たちのほうも、押し付けられたレッテルに気付けば反応が変わる(心理学のことばで言うと、レッテルに「プライミング」される)
高級料理を汚い部屋で出してもおいしいと思えない。
クラッシックのプロの演奏家が朝の出勤時にストリート演奏してもほとんどの人が気付かない。
肝心なのは、芸術でも文学でも演劇でも建築でも料理でもワインでも、とにかくなんにつけても、それを経験し評価するうえで、期待がどんな役割を果たすのか、ほんとうのところはわかっていない。
11章 価格の力
プラセボ効果
値段が高い薬の方が効果がある
12章 不信の輪
「共有地の悲劇」はふたつの競合する人間の理解につきる。一方では、長期的な観点から、個人は共有資源の持続可能性を気にかけている。その個人を含むすべての人が共有資源から利益を得ているからだ。だが、同時に、短期的に見ると、個人は自分の公正な取り分以上とることで、すぐに利益を得る。
13章 私たちの品性について その1
世の中には2つの不正がある。
1つは、強盗を連想させるような不正。
もう一つは、自分が正直者だと思っている人たちが犯す不正だ。
あらかじめ十戒を読んでから実験をすると不正が減った。十戒で正直の概念を呼び起こせる。
14章 私たちの品性について その2
不正の機会が与えられたとき、得られるものが現金の場合より、代替貨幣の時の方が断然不正が増える。
15章 ビールと無料のランチ
独自性要求
独自性を表現することに関心のある人ほど、テーブルでまだだれも頼んでいないアルコール飲料を選んで、自分がほんとうに個性的だと示そうとする傾向が強い。 -
タイトルにある「行動経済学」という学問は名前の通り経済学を下敷きにしているが、この本は行動経済学のお堅い教科書ではなく読み物として楽しめた。
伝統的な経済学では、人間は非常に合理的な存在であると考えられてきた。しかし、実際のところわたしたちの意思決定は不合理なところがあるのは誰もが認めるところだろうし、自分もそうだ。しなければいけない電話やメールをいつも先延ばしにしてしまうし、配信サービスなどは無料期間の後で解約すればいいやと思って契約したはずなのに、そうした試しが一度もない。著者はこのような意思決定の不合理さには、一定の法則性があるという。行動経済学は、このような不合理な意思決定の「クセ」を実験を行って明らかにし、これを経済理論に取り入れようという学問である。
本文でたくさん取り上げられる不合理な行動のほとんどが身に覚えのあるもので、薄々感じてはいたが言葉にすることができなかったことが明快に書かれているので、目の覚める思いだった。ベストセラーになるのもうなずける良書だと思った。この本を読んだからといって合理的な存在になれるわけではないが、自分がいつ不合理な判断をしそうか、どうやったらそれを止められるかを考える契機にすることができるのではないだろうか。 -
ちょっと前から積んでたんだけど、ランキング上位に返り咲いた理由とは何なんだろう?(おかげで探しやすかったのですが)
印象的な部分だけかいつまみ。
二章。
筆者が自分の朗読に対して、あるグループでは「お金を払う」、別のグループでは「お金をもらう」をデフォルトの選択肢に設定して実験をした。
アンカリングによって、前者はお金を払い、後者はお金を要求する結果になる。
これ、応用出来ないかなー。
価値があるというアンカリングを上手く出来れば、消極的な気持ちも動かすことが出来るかも?
四章。
無償で手伝ってもらえるようなことに、少しのお金を提示すると、社会規範が市場規範に切り替わり、請け負ってもらえなくなる内容。
意欲に報酬を結び付けると、意欲が削がれてしまうのもこの論理。
だけど、ちょっとしたプレゼントなら社会規範に留められるというのは初めて知った。
九章。
所有を手放すことへの執着。
一つの扉で多くの利益を得るよりも、他の扉を閉じない執着の方が強くなる。
選択肢で迷う時、迷っている時間による損失を考えてみる、というのは面白い。(クレジットカードを氷漬けにするよりも、笑)
十三章。
不正に対して、何も手立てを打たなかったグループと、『十戒』を思い出させ、内容を書かせたグループでは、後者に不正がなかったという実験。
よく道端に警告の看板があるけれど、あれって罰則の金額を書くより、道徳心に訴える文言の方が効果があるんだろうか?
ちょっとした疑問。 -
この本は、「行動経済学」について書かれた本で、「人間の選択は不合理なものだ!」ということを様々な実験を通じて検証しており、読み物としても、とても面白かったです。
行動経済学に火をつけたベストセラー本です!
ぜひぜひ読んでみて下さい。 -
行動経済学は、心理学と経済学をあわせたような学問でとてもおもしろい。様々な実験から、人間はいかに不合理か、操られやすいかということを教えてくれる。自分の思考や行動パターンを見直すきっかけになる本だと思う。
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行動経済学が認知されて久しい。ずっと読みたかった本ではあるが、マーケティングを直接の仕事としていないこともあり、なかなか時間が作れなかった。
この本の価値は「今まで経験上は感じていたけれども、伝統的な経済学では否定されていた点について言語化された仮説を提示した」点、および、「実験の上でその仮説を実証した点」の2点にあるように思う。
経済学と銘打っているが、実質的には心理学である。何が人の心にどういった影響及ぼすかについての考察が深く述べられており、実生活と合わせて考えると納得感が高い。
また、この本の凄いところは、きちんと仮説が実験で実証されていることところにあり、説得力が上げている要因の一つとなっている。
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個人的にも納得感が高かったのは「第12 不信の話」である。
企業広告には嘘が多い、と言うのは今はもう言い過ぎだろうが、ネガティブをポジティブなワードに包んでに誤魔化したり、不利な事は意図的に隠して後でバレたり、というのは往々にして見かけるところである。
実際、値段はそのままでではあるが紙パッケージを小さくした牛乳や、容器を底上げして容量を少なくしたコンビニ弁当の例は論を待たない。
これらは実質値上げであるにもかかわらず、「持ちやすくなって新登場!」「食べやすくなって新登場!」とされ、アピールされているが、ここで騙されるほど顧客はバカでは無い。
一度失った信頼を取り戻すのは非常に難しく、いまでもことあるたびに「同じことをしていないか?」といった疑いが向けられることになった。当然、不信感から顧客離れが発生する。
本書ではそういった「不信を生ませない方法」も留意すべき点の一つとして取り上げられており、この点を他者に伝える上で非常に参考になった。 -
1.行動経済学の第一人者の人なので絶対に読もうと決めてました。
2.本書はファスト&スローのファストの部分、つまり、感情の面で人間がどのような行動をとるかについて述べられている。
人間は基本的には合理的な判断を下すものの、ある状況下では不合理な選択をすることがわかっており、保有効果やアンカリングなどがあげられる。
人間の直感は頼りになるのだが、完璧ではないため、多くのミスをしてしまう。本書では、起こったミスに対して、どのような解釈がされているのかが述べられています。
3.不合理な選択をしてしまうのはある意味人間らしいと思います。人間の不合理さによって商売が成り立つ部分があったり、喜びがあったりします。この時に、自分はどのミスに陥っているのか、このお客さんはどの選択をしてるのかを分析できれば理想的なマーケティング担当や営業担当になると思いました。