ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ文庫 NF 410)
- 早川書房 (2014年6月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150504106
感想・レビュー・書評
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読んでいて楽しくなる内容だった。一つ一つの結論はそこまで変なことを言っているわけではない。しかし、実験により、詳細に状況を設定すると、人間の不思議な性質があらわになって、読者は自らのことを想っているより理解していないことを痛感させられるのだ。
本書は、3つのテーマに分かれている。システム1・システム2の存在、ヒューリスティクス、これらによる自信過剰である。
まず、直観的で速い思考のシステム1と論理的で遅い思考のシステム2を区別したことが本当に感動した。この区別が無かったら、長ったらしい文章を延々と繰り返して、読み続けていたに違いない。著者の意思決定に関する思い分かる。人間は主にシステム1を使うことで、効率良く可能性の高い結論を出す。そこで、結論が得られない場合や注意力を必要とする場合にシステム2を動員する。しかし、システム2は怠け者なので、よほどのことがない限りシステム1で処理されることが大半である。
ヒューリスティクスは、「置き換え思考」と呼ぶものである。複雑な問題を類似する小さな問題に答えを出すことで解決することである。そのため、問題や論点のすり替えが行われても、私たちは中々これに気づくことができないと考える。
これらのシステム1によって、自分で気づかない内に私たちは自信過剰になる。例えば、ある会社が成功したとき、私たちはその理由をずっと前から知っていたように語る。しかし、それは因果関係を見つけようとするシステム1によるものの影響であって、実際は運が良かった(まだ見つかっていない他の要因など)の可能性もあるのだ。
私たちは意思決定のメカニズムをあまり理解していないことに驚かされる。しかし、本書の性質を理解した上で行動しても、決して口にしてはいけないように感じる。なぜなら、本書を読んでいる人の方が割合が少ないし、ほとんどの人はこの事実に気づいていないのだから、説得力がないと言われると思う。個人的に本書を参考に意思決定をするようにしたい。正直、自分の行動を顧みることが難しいと思うが、他人について評価することくらいはできそうな気がする。
システム1:連想マシン(プライミング効果)、認知容易性(連想しやすさ)、因果関係
ヒューリスティクス:アンカリング効果、利用可能性(出現頻度)、平均への回帰
自信過剰:妥当性の錯覚、直観対アルゴリズム詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ほとんどの場合、統計的に正しいものの見方を人間はすることができない。自らの経験などによって条件的反射みたいな形で物事の見方が左右されてしまう。これには大きな理由があって、全部が全部頭を使っていたら疲弊してしまうから。こうならないためにもちゃんと統計を取りましょう。あとは、理由づけを簡単にしないこと。物事を分かった気になってしまう可能性がある。
原因と結果、平均を見つけたくなってしまう直感のシステム1とちゃんと考えるけど怠け者なシステム2があるよってことを理解しよう。 -
「東大生に最も読まれている本」という帯がついていた。なるほど、読めば頭が良くなりそうだ。
内容としては意思決定はどのように行われるか。
自分で考えて決定しているようで、実はそこにはさまざまな要因が左右する。
直感や第一印象で意思決定する「システム1」と熟考の上意思決定する「システム2」の仕組みを誰しもが持っていて日常を過ごしている。
通常瑣末な事は特に考えることなくシステム1で意思決定しスピードある結論を出している。ちょっと考えないといけない事柄はシステム2を使ってじっくり結論を出す。でもシステム2も実はシステム1の影響を受けまくってて、自分で考えて判断してるようで実は違ったりする。
そんなこんな事例や研究がこれでもかと描かれていて、目からウロコだった。
一番感心したのは、プロの株式アナリストの判断と実際の株式の結果の相関関係は0.01%以下だったという事。つまりサイコロ転がした方が勝率高いっていう事実。
確かに頭が少し良くなった気がする。下巻も読もう。 -
ダニエル・カーネマンによる行動経済学の入門書。認知心理学と行動心理学の観点から人間の経済行動の合理性に懐疑を投げかける。
内容は非常に簡潔で理解しやすい。専門的な知識はほとんど必要なく、この一冊で行動経済学をよく理解できる。ただ事例や実験の紹介パートが長く、結論が分かりやすく出されないのである程度こうした論文形式の本に慣れておく必要はある。 -
意志決定のために思考回路には2つあって
システム1:類似性で判断するファスト
システム2:論理的に判断するスロー
が順に起動するという話。
たったこれだけだが事例が多く非常に納得性がある。
以下そのとおりだなと思う抜粋。
・笑顔をつくってみるといい。ほんとうに気分が良くなるから
・飛行機事故は大々的に報道されるので飛行機の安全性を過小評価しがちになる
・「ビジョナリー・カンパニー」での卓越した企業と
ぱっとしない企業の差はかなりの部分が運による
(←これには「身もふたもない」と笑ってしまった) -
社会心理学のゼミ試対策で上だけ読んだが、この本がとても充実していたためこれで良いじゃん?と思ってしまってそのゼミに入るのをやめた。めちゃ面白い…!
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面白かった。今までおかしいな、と思っていたことが晴れる感じ。下巻も楽しみ。
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プライミング、ハロー効果、アンカー。ダニエル・カーネマンは、人間の意思決定が、こうした表面的な観察に容易に影響を受けるシステム1と、それを検証ししようとするシステム2の二つにより成り立っていることを本書で多くの実験事例を挙げて紹介しています。
数少ない目立つ事例や現象は意識に残りやすく、人はその観察事例が少ないことを失念しやすいことから判断にバイアスがかかりやすくなる、ということから母集団の基準率を良く把握することの大切さも説いています。
平均への回帰というコンセプトは特に興味深く読みました。うまくいっているときには、それが永遠に続いて欲しいと誰しも願うものですが、それは全く何の根拠もないこだと。成功している企業や人がどうしてそうなのかを著した本はビジネス書として巷間に溢れていますが、それらが良く売れるのは、システム1が因果関係を探したがる傾向によるもののようです。実際は、運によるところが大きいといいます。