「アガサ・クリスティ」の『複数の時計』を読みました。
『エッジウェア卿の死』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。
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秘書・タイプ引受所から派遣されたタイピストの「シェイラ」は、依頼人の「ミス・ペブマーシュ」の家に向かった。
無数に時計が置いてある奇妙な部屋で待っていると、まもなく柱時計が三時を告げた。
その時、「シェイラ」は恐ろしいものを発見した。
ソファの横に男性の惨殺体が横たわっていたのだ…死体を囲むあまたの時計の謎に、「ポアロ」が挑む。
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一度読むと、ついつい癖になる名探偵「ポアロ」モノ。
1963年に発表された作品なので、前回読んだ『エッジウェア卿の死』から30年後の物語、、、
「ポアロ」は、既に探偵業を引退し隠遁生活を送っており、謎の殺人事件に巻き込まれた「ポアロ」の友人で秘密情報部員の「コリン・ラム」からの相談を受け、真相解明に向け示唆を与える… そんな役どころでした。
「ヘイスティングズ」が登場しないので、少し寂しい感じがしましたね。
本作品は、
■電話で指名を受けて速記者として新月通りに向かった「シェイラ・ウエッブ」が、家主がいない家で男性の死体を発見。
■死体が発見された居間には四つの置時計がおいてあり、それらすべてが四時十三分を指していた。
■家主の「ミリセント・ペブマーシュ」は、「シェイラ・ウエッブ」を呼んでないし、四つの置時計は家のものではないと証言。
という、いかにも興味をそそる事件が発端となっているんですが、、、
「ポアロ」の「実際はすこぶる単純な事件に相違ない」という推理通りの結末を迎えます。
「ポアロ」の鋭い推理で事件は解決に向かうのですが、どんな謎が潜んでいるんだろう… と期待させられた、四時十三分を指していた四つの置時計の真相については、ちょっとガッカリさせられましたね。
第二の殺人事件で、「シェイラ・ウエッブ」の同僚「エドナ・ブレント」が被害者となるのですが、、、
殺される前に残した言葉「あの女のひとののべた通りだったとは、あれがほんとうだったとは、どうも思えないのです」から、「シェイラ・ウエッブ」の上司「K・マーティンデール」が事件に深く関わっていると睨んだのですが、珍しく当たっていましたねぇ。
なんだか嬉しかったな。
トータル的には、「アガサ・クリスティ」にしては、まずまずかな… という感じ。
作品中、「ポアロ」が、「コナン・ドイル」をはじめ、「モーリス・ルブラン」、「ガストン・ルルー」、「ジョン・ディクスン・カー」などミステリー作家たちの作品を批評するシーンがあり、興味深く読みました。
これって、「アガサ・クリスティ」の推理小説論そのものなのかなぁ。
なかなか面白かったです。
≪ちょっとネタバレ!≫
犯行の動機から、「K・マーティンデール」と「ミセス・ブランド」が姉妹だったのには納得ですが、、、
「ミス・ペブマーシュ」と「シェイラ・ウエッブ」が、生き別れとなった母子だったというのは、ちょっとできすぎな感じがしましたね。
そんなに運命的な偶然が重なるとは思えないですもんねぇ。
あと、秘密情報部員の「ハンベリー」の残したメモの秘密については、早い段階から"61"じゃないというのには気付きました。
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ミステリーを読みなれていると、色んな角度から見る癖がついちゃうんでしょうね。