第三の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-25)

  • 早川書房
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150700256

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  • ※新訳版再読後

    ポアロは決してなんでもお見通しのホームズの様な探偵ではなく、思考の手順や道筋を整理しながら、ジグソーパズルの様に組み合わせていく、とても人間味のある探偵だ。従って、当然、推理の道筋が違っていて軌道修正する事もあるし、事件の連鎖を未然に防げない事もある。しかし最後には真実に行きつき、そしてハッピーエンドで物語は結末する。今回もとある二人の人物が、ポアロの策略によって結ばれる事になる。彼はキューピッド役を務める事がしばしばあり、幾つかの事件の後、ポアロの御節介により幾つかのカップルが誕生している(笑)。これはある意味でポアロシリーズのお約束でもあり、味の濃いミステリー本編を爽やかにするための要素でもある。
     今作はスタートが変わっており、とある若い女性がポアロの探偵事務所を非常識な時間に訪ねて来る。彼女は、「人を殺したかもしれない」と言い放ち、しかしポアロを見たとたん、年寄り過ぎるという理由でいなくなってしまう。ポアロはショックを受けるが、娘については気に掛かり、「死体」の痕跡を探し始める。
     そんな中、オリヴァ夫人の強引な(笑、いつもそうだ。)招待を受け、昨日のショックについて話していると、どうやら娘のきっかけを作ったのはオリヴァの可能性があり、名も知らぬ相談者のきっかけをポアロはつかむ。まだ殺人が起きたかどうかもわからない霞がかった状態から、ポアロは経験により何かの悪意を感じ、それを調査させていく。
     作中、ポアロシリーズ同じみのキャラクターが総出、ジョージ、レモンは両方登場し(珍しい?)情報屋のゴビィなども登場する。主題「第三の女」は、アパートのシェアをするサードガールと文字通り三人目の女性の意味合いもあり面白い。
     レスタリック家を巡る騒動になるが、トリックは再読の為、なんとなく記憶にはあったが、改めて楽しめた。設定が現代と似ている環境下でもありイメージを持ちやすく、読みやすい様に感じた。いつの時代も年寄りは若者を受け付けないらしい。また、今や伝説的なビートルズ等も型破りで受け入れられなかった時代のイギリスを読み取る事ができ、面白い。
     物語冒頭から何を捜査しているのか。がテーマになる訳だが、読者もポアロと同様にこの小説のパターンを見出すまで時間がかかる。オリヴァのとある発言をきっかけに物語が動き始め、いよいよ大詰めか、というところで衝撃的な事実が判明する。過去にない手法だが、ミステリーとしては丁寧で、きちんと作中にヒントが残されている(最後は流石に驚きだが)父親のレスタリックの半生と娘の悲哀がとてもアクセントになっている。
     推理小説としてとても丁寧な構成の作品だが、事件の取っ掛かりがあるまではポアロとオリヴァの冒険譚であり、長く感じてしまうかもしれない。シリーズを読み慣れている人は、ポアロとオリヴァのやり取りを楽しみながら進める事ができるだろう。

  • ポアロを訪ねて若い女ノーマがやってくる。執事のジョージには、自分が殺人を犯してしまったようだと言いながら、ポアロをみると「あまりに年を取りすぎているから」と言い去った。がポアロは何かあると思い調査を始める。そこにあのオリヴァ夫人も登場し、ノーマの周りで実際に人が死んでいたことが分かる。

    第三の女・サードガールとは、最初の部屋の借主が第二、第三のルームメイトを募り部屋代を割り勘することで、ノーマはそのサードガールなのだった。

    若い登場人物の描写が興味深い。ノーマは「つんつるてんのスカート」をはき、デイヴィッドは「孔雀みたいな服をきて」「ビートニックだかビートルズだかしらんが、髪をのばしおって」とくる。そう、発表は1966年、クリスティはビートルズも知っていたのか! 時代はサイケデリックなのだった。

    またノーマの老伯父の言葉に「第一次世界大戦では日本は同盟国だったが、次の戦争では真珠湾を攻撃しくさった! ロシア人と手をつないで戦争をはじめたと思っておったのに、終わってみれば敵同士だ」などという言葉があった。ロシア人の描写は先に読んだサッチャー氏の自伝にもあった。戦前にすでに大人だった人たちの戦後の時代風俗の変化に対する感覚も書かれている。クリスティもこちらだろう。

    5歳の時に去った父が若い妻を伴い戻ったノーマ。15年振りとはいえ、ありうるかなあこの真相。


    1966発表
    1977.9.30発行 1995.12.15第38刷 図書館

  • あいかわらず最初のつかみはうまいねえ。
    ある程度は読めたけど、ちと読みを外されたところもあったな。
    タイトルはよく出来てる。

  • #赤背表紙のクリスティーを再読するプロジェクト 007
    ある朝、突然にポアロのもとに若い女性が訪れて「わたし、殺人したかもしれない・・・」と打ち明けるも、噂に聞いていた名探偵が年寄りだったので、諦めて帰ってしまう。女の言い分にカチンときたポアロが本気になって乗り出していくという話。
    犯罪の構成は面白いが、謎解きのプロセスはちょっと狡い。

  • これにもフラップジャックスはでてこなかったー。何にでてきたのだったっけ?

  • 1966年発表
    原題:Third Girl

  • この最後は分からなかった。後半を過ぎても、どこに向かっているのか分からなかったけど、最後の最後で驚きの結末が明かされる。

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