ユダの窓 (ハヤカワ・ミステリ文庫 6-5)

  • 早川書房
3.95
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本棚登録 : 196
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150704056

感想・レビュー・書評

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  • 王室顧問弁護士H・M(ヘンリー・メリヴェール)卿ものです。
    カー特有の密室不可能犯罪に加えて、法廷ミステリーの醍醐味を感じさせる佳作になっていると思います。

    だが、ふふふ、わかってしまったもんねー。(笑)いや、密室トリックは無論わかるわけがないのですが(笑)、犯人は見当した通りでした!(笑)しかも、やみくもに見当を付けたわけではありませんで、終盤の整理表を待たずして、証人質問の過程でわかっちゃったもんねー。(笑)ははは。

    ということで(笑)、本作は割と論理的にスマートな作りになっていまして、裁判の過程はまどろっこしいのですが、その分、論理性が全面に出ていたともいえます。自分なんかが考えたいくつかの疑問点についても、最後にはそれなりに解答が示されていたので、その辺りも好感がもてました。(笑)
    本作は法廷物ということで杓子定規的な物語の進行がずっと続くわけですが、静かに細かく進む事件の事実確認から、次第にムードを盛り上げていくカーのお手並みはなかなかのもので、中盤あたりで判明する事件の見方の大きな転換まで山を次第に登っていく感覚は、法廷物ならではの醍醐味だったともいえるでしょう。
    そして終盤からは、被告人の有罪無罪を決定づける証明と密室トリックの解明が矢継ぎ早に提示されて、ラストには全体像を明らかにするという、魅せ場が次々と続く構成となっていて、もう読者を釘付けにすること間違いないしのカーの魅力全開の作品でした。
    ただ、本作はクラシカルな推理小説を楽しむというスタンスで臨むべきでして(笑)、解説にもあるように密室のハードルを上げ過ぎているきらいがあって、密室トリック自体は、可もなく不可もなくという感じで細かい部分でどうなのか?というきらいがあり、そこは純粋なミステリーとして楽しむべきでしょう。(笑)それにしても、警察の初動捜査で、犯人も特定されている中でアレを持ち帰るとは・・・、純粋推理には必要な部分であるとはいえ、可笑しかったです。(笑)

    今回は珍しく自分なりの推理で犯人を当ててしまったので、自分に酔いしれた意味も込めて、星5つです。(笑)

  • やるじゃん!
    作者の名前なんていうの?
    カーターディクスンっていうんだ。

    面白いっちゃ面白いけど、これくらいの書ける人、ごまんといるからいつまで通用するかわからないよ?
    ま、頑張って書き続けてよ。




    大変、すみませんでした!

  • あらすじ
    アンズウェルは結婚の許しを乞うため、恋人の父親を訪ねた。すすめられるままに飲み物を口にした彼は、のどに異様な感触を覚え、意識を失ってしまった、そして目を覚まして見た光景は、完全な密室でこと切れている将来の義父の姿だった。当然のごとく彼は殺人の容疑に問われた。しかし、厳しい追及に対し、無実を信じるヘンリー・メリヴェール卿がユダの窓の存在を主張し敢然と立ち上がった!



    密室の帝王こと、ジョン・ディクスン・カーの、カーター・ディクスン名義での傑作です、カーと言えば、密室講義で有名な「三つの棺」や、怪奇趣味バリバリの「火刑法廷」などが有名どころではないかと思いますが、この「ユダの窓」もそれらに負けず劣らず素晴らしい作品だと思います。

    三つの棺って、傑作だとは思うんですけど、読みづらいんですよね、いろいろ複雑だし。火刑法廷も一回読んだきりですけどあんまり印象良くない。でもユダの窓は初読時の印象が最高だった。

    何がいいかっていうと、まず読みやすい。いわゆる法廷ミステリで、初めに被疑者から見た事件の内容が示され、その後二日間にわたる裁判の内容が書かれてるだけ、単純明快でした、あんま考えないでも読めると思います。

    そしてそのストーリー。H・M卿の弁護によって、鉄壁である検察側の主張を切り崩し、状況からして絶対犯人であるとしか思えないアンズウェルの嫌疑がだんだん晴れていく、という構成。最高です。

    それとやっぱりトリック。「ユダの窓」が何なのかをH・M卿が示した時、僕は感動を覚えました。ただ、有名なトリックで現在はかなり使いまわされてるらしいので、途中でわかる人も多いかもしれません。僕は類似作品全然知りませんでしたが。

    とにかくカー読むならとりあえずこれを読むべきだと思います、それくらい好きです。


    ていうかno image のリンクしかなくて悔しいです、アマゾン?仕事しろ。

    (玉津)

  •  1938年に発表されたディクソン・カーの別名義の作品。密室殺人を解くのだが、殺人は1件だけで法廷の場面が延々と続くのは、古きよき時代って感じがする。でも、邦人のこういったのよりよっぽど面白いのだが、私の感覚がへんなのだろうか(?/笑)
     しかし、読みづらかったよ。

  • 密室もの、法廷もの。かなり良かった!密室のトリック自体はちょっとしょんぼりもしたけど。

  • H・M卿シリーズです。
    法廷ミステリの傑作です。
    さらに密室ものです。
    法廷、密室の2つを極めた素晴らしく贅沢な作品です。
    この作品の魅力ある密室ですが、あまりにも有名なのでこのトリックだけ知っているという人も多いでしょう。
    法廷において真相が少しずつ解明されていきますが、ここの過程が非常に良く出来ています。

  • 法廷ミステリの傑作。スリリングな展開には隙がなく、もつれた糸を解きほぐす推理のプロセスも見事。「密室」「法廷」の両サブカテゴリで、本作品は頂点を極めたと言っても言い過ぎではないと思う。確かに、密室トリックについては賛否両論あるだろうが、“ユダの窓”という俗語を生み出すほどの、見方を変えれば画期的なトリックであることは間違いない。解説で山口雅也氏が述べているように、カーの魅力はそのストーリー・テリングにあり、必要不可欠なファクターのひとつが密室なのだと思う。そしてその舞台に法廷を選んだことには感服する。手持ちのカードの切り方が絶妙で、読者を飽きさせず、引き返させず、一気にストーリーに引き込む手腕は、天才と言うよりは悪魔的。

  • 1938年発表作で、古典的名作として世評が高い。法廷を舞台に殺人事件の被告が有罪か無罪かを問う論証をメインとし、〝本格物〟の醍醐味を味わうには最良の設定。その分、場景は固定されたままで動的でないのだが、読み手は陪審員の一人として、じっくりと裁判の流れを追うことが可能だ。お家芸である怪奇趣味も一切盛り込んでいない。恐らくカーは、本作にかなりの気合いを入れたのだろう。
    だが、個人的な結論から述べれば、物足りなかった。良くも悪くも本格物の域を出ない。以下に若干の理由を述べる。


    愛憎が絡んだプロットは比較的地味なもので、密室殺人の真相を関係者の証言と証拠物件をもとに解き明かす過程に集中する構成をとっている。フェアプレイに徹するカーは、持てる技巧を存分に発揮してはいるのだが、大逆転劇へと展開する伏線は大人しいもので、ケレン味に欠ける。要は物理的/機械的なトリックに偏重しがちな本格物の粗が際立っていると感じた。真犯人の動機の凡庸さも、そのままパズラーの弱さへと繋がっている。時代背景を考えれば致し方ないことだが、探偵役のみに有益な鍵が見つかるというご都合主義が目立つ。偶然性に頼り過ぎる面もあり、極めて限られた時間内での犯行が、単なる〝素人〟である殺人者に可能であったのか、という疑問も残る。そもそも、こんな七面倒臭い殺害方法を短期間で思い付くだろうか。事件関係者が多数出入りしているはずの部屋(殺人現場)から被害者と容疑者の指紋しか発見されないという不可解な事象も、あっさりと流されていく。本作の〝売り〟となる法廷での駆け引きは、探偵役となる弁護士の一方的展開。終盤に至っては、検察側は審理を投げ出しているほどだ。これでは、スリルなど生まれるはずがない。しかも、常に無罪を主張していた被告が、途中で「私が殺した」という発言をするが、その真意は最後まで曖昧なままとなる。恐らく私の読解力が足りないためか、読み進める中で幾つかの矛盾点があり、緻密さが要求される本格物としては、完成度が低いと感じた。

    〝探偵小説の黄金時代〟を継ぐ本作は、敢えてリアリティを捨てているようだが、不自然な違和感だけが増幅されていった。不可能犯罪の状況を創り出すためだけに〝後付け〟で配置されたかのようなストーリーに加え、感情移入できる魅力的な登場人物が探偵も含めてひとりもいないことも痛い。無論、これは個人的な好みだが。また、キーワードとして序盤から登場する「ユダの窓」についても、その意味自体が種明かしとなるため、探偵は中盤まで引っ張るのだが、勿体ぶる必然性がない。被告人の人生に直結する裁判に対し、弁護士の姿勢は、あまりにも緊張感がなくマイペース過ぎるのである。

    と、ここまで〝カー・マニア〟の反感を買うようなレビューを書いてきたが、これも期待の裏返しである。ミステリ初心者の時に読んだ「三つの棺」(1935)には大いに感動した記憶が残っているため「カーの凄さはこの程度のものではないはずだ」という気持ちがある。
    結局、本作でロジックの快感が得られなかった私は、本格物を楽しめる〝純粋さ〟を失ったということだろう。哀しいが、仕方が無い。

  • 翻訳で法廷モノということで身構えたが、読みやすかったです。仕掛けはあっけないと感じるものだったと感じるし、HM卿がもったいぶってるように感じもしたが、法廷での登場人物たちの動きと徐々に開陳される答えに魅せられた

  • トリックに関しては☆4つ!リアルなトリック崩しはすごかった。

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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