長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 7-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (545ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150704513

感想・レビュー・書評

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  • ハードボイルドミステリー小説。
    二転三転する展開と意外性のある結末でミステリー作品としては好みの部類だった。

    が、酒、裏社会、女性とのワンナイト…みたいな描写はカッコ良いんだろうけど個人的にはあまり得意ではない世界観だった。

  • 昔、大型書店でバイトしていた頃、バカ売れしていたレイモンド・チャンドラー。読んでみたいと思っていた元祖ハードボイルドミステリーを初めて手に取った。
    主人公のフィリップ・マーロウがカッコ良すぎ。極上のいい女も登場。ミステリーに引き込まれ面白くて一気読み。どんでん返しもあり、十分に楽しめた。
    大金持ちの妻を撲殺したと言う友達を逃亡させる私立探偵のマーロウ。友達の無実を信じ続ける。次の依頼人は金髪の美しい女。アル中の人気作家である夫が行方不明で探して欲しい、と言う。そして、2つの事件が交差していく。
    マーロウの癖が強い。ストーリーも粗削り。警察は殴りまくりの違法捜査するし、マーロウは隙だらけで普通は逮捕される事案。事件の結末も謎が残る。そして題名通り…長い。
    でも良いんです。空気感が素晴らしいから。秒で別世界に連れて行かれる。マーロウと女達の描き方が美しい。オシャレな会話に痺れた。
    有名なセリフを記しておこう。

    「さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ」
    「ギムレットにはまだ早すぎる」

    本作から来てたのか。
    いろいろな訳者が翻訳されている。今回は、オーソドックスな清水俊二訳を選んだが、読みにくさもあった。次は他の方の訳で読んでみよう。理解も感じ方も違うのだろうなぁ。

  • ロマンティックな男は手ごわかったです。
    わたしの覗いたハードボイルドの世界にあったもの。酒とタバコとコーヒー。皮肉と痩せ我慢の美学に隠れた男の優しさ。忘れてはならないのが美女とのひと時の逢瀬と必ず訪れる別離。
    そして、さよならの向こう側で佇む男の友情。

  • 『大いなる眠り』の感想でも述べたが、私が最初に手に取ったチャンドラー作品がこの『長いお別れ』だった。
    これには理由がある。まず私はハヤカワミステリ文庫版から手をつけていたのだが、チャンドラーの背表紙に付けられた番号が1番であったのが『長いお別れ』だったのだ。順番を意識して読む私は当然刊行された順というのは古い順だろうと思い込んでいたが、それは間違いだった。そして私はいきなりこの名作から手をつけてしまったのだった。

    本作の何がすごいかといえば、『湖中の女』、『かわいい女』とあまり出来のよくない作品が続いた4年後にハードボイルドの、いやアメリカ文学史に残る畢生の名作を書いたということだ。一説によれば、チャンドラーが『湖中の女』の後、ハリウッドの脚本家に転身したのは作家として行き詰まりを感じていたのだという。そのハリウッドで苦い経験をした後、書いた作品『かわいい女』の評判もあまりよくなく、チャンドラー自身でさえ、「一番積極的に嫌っている作品」とまで云っている。そんな低迷を乗り越えて書いた作品が世紀を超え、ミステリのみならずその後の文学界でも多大なる影響を今なお与え、チャンドラーの名声を不朽の物にしたほどの傑作であることを考えると、単純に名作では括れない感慨がある。

    テリー・レノックスという世を儚んだような酔っ払いとの邂逅から物語は始まる。自分から人と関わる事をしないマーロウがなぜか放っておけない男だった。
    この物語はこのテリーとマーロウの奇妙な友情物語と云っていい。
    相変わらずストーリーは寄り道をしながら進むが、各場面に散りばめられたワイズクラックや独り言にはチャンドラーの人生観が他の作品にも増して散りばめられているような気がする。

    「ギムレットにはまだ早すぎるね」
    「さよならを言うことはわずかのあいだ死ぬ事だ」
    「私は未だに警察と上手く付き合う方法を知らない」

    心に残るフレーズの応酬に読書中は美酒を飲むが如く、いい酩酊感を齎してくれた。

    チャンドラーはたった7作の長編しか残していないが、その7作でミステリ史上、永遠に刻まれるキャラクターを2人も創作している。1人は『さらば愛しき女よ』の大鹿マロイ。そしてもう1人が本作に出てくるテリー・レノックスだ。
    大鹿マロイが烈情家ならばレノックスは常に諦観を纏った優男といった感じだ。女性から見れば母性本能をくすぐるタイプなのだろう。どこか危うさを持ち、放っておけない。彼と交わしたギムレットがマーロウをして彼の無実を証明するために街を奔らせる。

    本作は彼ら2人の友情物語に加え、マーロウの恋愛にも言及されている。本作でマーロウは初めて女性に惑わされる。今までどんな美女がベッドに誘っても断固として受け入れなかったマーロウが、思い惑うのだ。
    恐らくマーロウも齢を取り、孤独を感じるようになったのだろう。そして本作では後に妻となるリンダ・ローリングも登場する。

    本書を読むと更に増してハードボイルドというのが雰囲気の文学だというのが解る。論理よりも情感に訴える人々の生き様が頭よりも心に響いてくる。
    酒に関するマーロウの独白もあり、人生における様々なことがここでは述べられている。読む年齢でまた本書から受取る感慨も様々だろう。

    そう、私は本書を読んでギムレットをバーで飲んでやると決意した。しかもバーテンダーがシェイカーで目の前でシェイクしたヤツを。そしてそれを果たした。期待のギムレットは意外に甘かった。多分この本に書かれていたドライなヤツではなく、揶揄されている方のヤツだったのだろう。ただギムレットはチャンドラーのせいで、あまりにもハードボイルドを気取った飲物のように受け取られがちだったので、それ以来飲んでいない。

    そんな影響を与えたこの作品の評価は実は5ツ星ではない。全然足りないのだ、星の数が。
    ×2をして10個星を与えたいくらいだ。
    ミステリと期待して読むよりも、文学として読むことを期待する。そうすれば必ず何かが、貴方のマーロウが心に刻まれるはずだ。

  • 「サヨナラを言うのは少しだけ死ぬことだ」

    世界的名作のハードボイルドミステリー、レイモンド・チャンドラーの「The Long Goodbye」

    偏屈で厭味ったらしくも確固たる自分を持った私立探偵フィリップ・マーロウがとある縁で知り合ったテリーレノックス。
    前半部分でのこの二人の奇妙な友人関係は変わっていてもどこか憧れる魅力がある。
    馴れ合いや依存ではない、ただ夜にバーでギムレットを飲むだけの友人。そんな友人テリーが何か事件に関わった様子でマーロウの元へ現れる。テリーを国外に逃す手伝いをマーロウは引受るが、テリーは逃亡先で自殺してしまう。

    自殺で片付けられた事件だったが、違う事件に関わるうちにマーロウはテリーの死の真相に近づく。

    テリーの死の真相に近づくにつれ、様々な人がマーロウの周りに現れ、その人々と関わる偏屈なマーロウの魅力は言葉では言い表せない。


    そして、事件の真相にたどり着いた時がこの作品の最大の見せ場。トリックだとかの驚きではなく、謎が明かされると同時に広がる全体を包む寂寥感が素晴らしい。

    この作品はミステリーを読む人もそうでない人も是非一度読んでもらいたい。

  • 再読。60年以上前の翻訳なので、使われている日本語が古くて分かりにくいところもあるが、雰囲気がたまらなくよい。

  • チャンドラーの小説は初体験でした。
    登場人物が多いので、多少、混乱しましたが、文章自体は、それほど難しくなく読みやすかったです。
    とはいえ、文章における表現の大人っぽさは充分に感じられる、これがハードボイルドなのだなぁ、と改めて実感させられました。

    ハードボイルドとはいえ、ミステリーとしても本格派で、予想外のラストに驚かされました。
    マーロウとテリー・レノックスの短いながらも、結びつきの強い友情に胸が打たれました。

  • ハードボイルド小説の金字塔的作品。初読は30年以上前ですが、何年か毎に定期的に読んでいる私の愛読書。男の友情の全てがここにあります。

  • 故あって再読。
    何十年ぶりだよ。
    そしてやっぱり感想は変わらず。
    おばちゃん、こんな日常生活に向かない男はイヤダ…。

  • 村上春樹が「ロング・グッドバイ」として、
    この小説を訳したとき、すぐさま買って読んだんだっけ。

    「キャッチャー・イン・ザ・ライ」では
    折々にムンムンと立ち込めてきた村上春樹臭も、
    こっちの翻訳の時は、例え鼻を近付けても、
    嗅ぎ分けることは出来ないという感じで、
    気を散らせずに、のめり込んだ思い出。

    「なんだか、ハードボイルドってのも、悪くないみたい!」と思ったり。

    何度か読み直したいと思っていたのだけれど、
    いかんせん、ハードカバーで厚みがあり
    持ち歩くのにちょっと躊躇していて…、時は流れに流れ…。

    この間、BBの本屋さんに寄って、
    恒例のミステリ棚の念入りチェックしていた時、
    そうだ、文庫で読めば良いんだ!と閃いて(大袈裟!)
    村上訳を買ったのでは芸が無いから、
    その前の清水俊二訳を求めてまいりました。

    そして、ここ二日とちょっとばかり、
    暇さえあれば読み続け(大概は外出持参本は電車内など移動時のみと
    決めているんだけれど、始業前・ランチタイム、などなど
    また自宅へ戻ってからも外出持参本を読んでいた、と言う
    私にしては珍しい行動)

    やっぱり、ハードボイルドって、悪くないみたい!

    いやあ、生半可な気持ちじゃあ無理だし、
    不器用で損する生き方って言うのは承知のつもりだよ…。

    なぜ、人は(私?)、大変に、のけぞるほど綺麗な女の人、
    素敵な男の人が登場すると安心して楽しくなるのでしょうね。
    (その登場人物が幸せか不幸かは、別。
    私が「チボー家の人々」を楽しめず、リタイアした理由は、
    この「素敵な見た目の人が登場しない」と言う部分が大きいのですが…
    くれぐれも私が読んだところまでなので(第一巻です)、
    そのあと出てくるとしたら教えてください…)

    入れ方に凝ったブラックコーヒーとか、こだわりのカクテルとか、
    まず自分のできるところから
    マーロウ君を真似する男性はあとを絶たないとお見受けした。

    村上訳、清水訳を読んで、
    やっぱり私の感想は
    「死が分かつ別れより、悲しい別れと言うものがある」と言うこと。

    私は翻訳小説を読む楽しみのうちの一つに、
    昔の翻訳小説の中のセリフだけにしか出てこない様な言葉使いを面白がる、
    と言うのがありまして、
    今回の清水訳ではそこらへんも存分に楽しめましたぞ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      最近ドラマって殆ど見ないのですが、浅野忠信・主演の「ロング・グッドバイ」は見てみようかなと、、、
      最近ドラマって殆ど見ないのですが、浅野忠信・主演の「ロング・グッドバイ」は見てみようかなと、、、
      2014/03/14
    • 日曜日さん
      私のうちにはテレビが無いので、そのドラマの事、存じませんでした。日本が舞台で成立するのかな??
      私のうちにはテレビが無いので、そのドラマの事、存じませんでした。日本が舞台で成立するのかな??
      2014/03/20
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著者プロフィール

Raymond Chandler
1888年シカゴ生まれの小説家・脚本家。
12歳で英国に渡り帰化。24歳で米国に戻る。作品は多彩なスラングが特徴の一つであるが、彼自身はアメリカン・イングリッシュを外国語のように学んだ、スラングなどを作品に使う場合慎重に吟味なければならなかった、と語っている。なお、米国籍に戻ったのは本作『ザ・ロング・グッドバイ』を発表した後のこと。
1933年にパルプ・マガジン『ブラック・マスク』に「脅迫者は撃たない」を寄稿して作家デビュー。1939年には長編『大いなる眠り』を発表し、私立探偵フィリップ・マーロウを生み出す。翌年には『さらば愛しき女よ』、1942年に『高い窓』、1943年に『湖中の女』、1949年に『かわいい女』、そして、1953年に『ザ・ロング・グッドバイ』を発表する。1958 年刊行の『プレイバック』を含め、長編は全て日本で翻訳されている。1959年、死去。

「2024年 『プレイバック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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