奪回 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (455ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150707224

作品紹介・あらすじ

ヨーロッパ最高の女性騎手がイタリアで誘拐され、巨額の身代金が要求された。誘拐対策企業の派遣スタッフであるアンドルーは、父親の要請を受けて即座に現地に飛んだ。狡智たちた犯人の策略に交渉は難航した。六週間後、ようやく身代金受け渡しが終了し、人質は無事救出された。だが数週間後、今後はイギリスでダービー優勝者の馬主の息子がさらわれたのだ。ヨーロッパをまたにかけ、競馬関係者を標的に起こった二つの誘拐。アンドルーは同一犯人の影を感じた…誘拐対策のエキスパートと冷徹や誘拐犯の白熱の頭脳戦を卓抜な着想で描く力作。

感想・レビュー・書評

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  • 競馬シリーズ22作目。

    今回は誘拐がテーマ。
    作者によると実在するらしい組織、
    誘拐を防いだり解決する会社の社員が主人公だ。
    合理的であり我慢強く、誘拐に関する知識も深く、
    動揺する家族に寄り添うが感情に流されることはない。
    そんなアンドルーが、
    イタリア、イギリス、アメリカで誘拐を解決するだけでなく、
    誘拐の被害者の女流騎手に恋愛感情を抱いていくところがポイントか。

    といっても、
    助け出された彼女が当然依存してくるのを利用することなく、
    経験からくる理性的助言で体と心の健康を回復するのを助けていく。
    その知性的で紳士的な態度が素晴らしい。

    元空軍特殊部隊員の同僚トニイとともに、
    子供の誘拐事件を推理し、調査し、救出した場面も良かった。
    愛する者の誘拐という酷い目にあっている家族を何週間もそばで支え、
    かつ情報を収集し、犯人や被害者の居場所を特定するという、
    かなりプロフェッショナルな主人公に、
    舞台も世界をまたにかけ、それぞれの国の警察官も個性的だし、
    最後には危険な目にも遭うし、ロマンスもある。
    なぜこの作品を映画化しないのか、不思議なくらい。

    そう思うのは私だけではなく、
    解説ではキャスティングを妄想していた。
    やはり、そうしたくなるか。
    だが、主人公が「田村正和」なのには異論を唱えたい。

  • 1983年発表の競馬シリーズ第22弾。後にフォーサイスが「ネゴシエイター」でも題材とした誘拐交渉人を主人公とする。
    犠牲/被害を最小限に抑えるべく、如何に行動し解決へと導くか。その心理的な駆け引きが最大の読みどころとなるが、本作のミソは交渉人が誘拐対策企業に勤める派遣スタッフの一人に過ぎないという点にある。通常は防衛策を施すサポートに徹し、不幸にも誘拐となった場合には犯人との交渉、奪回まで責任を負う。要人を対象とする誘拐事件は国内外問わず発生する恐れがあるため、ネットワークを駆使できる専門企業の創出は、リアリティを持たせる上でも不可欠だったのだろう。
    当然、警察や関係者らとの連携/折衝など、瞬時の処理能力と大胆且つ柔軟な交渉術が求められるため、心身共にタフでなければならない。フランシスの着想は当を得ており、これまでのストイックで頑強な精神を持つヒーロー像は、そのまま本作に於いても生彩を放つこととなる。
    卑劣で狡猾な誘拐をテーマとする物語は、やや中弛みはありながらも結末まで緊張感を失うことはない。特に終盤に於ける「逆転劇」は周到で、流石はベテランといったところ。最後の最後で間抜けな失策を犯す誘拐犯の腰砕けぶりには脱力したが。

  •  誘拐犯と戦う特別捜査官が主人公なのだけど、人質の無事を確保することを最優先する姿勢が、心のケアにまで及んでいるところが美しい。それがロマンスに発展していく時の、ゆったりとした流れも自然で、思わずうれしくなってしまう。犯人に対して、「似たものどおし」「裏表」と感じるところも、なんとなく共感できる。

     3カ国にわたる、4回の誘拐事件が起きるのだけど、二つ目の実質的に事件を解決する主人公の同僚が楽しい。フランシスにしては珍しいタイプの人物だけど、プロ意識をこういう風に発展させるとこうなるのだろう。彼が登場する小説をまた読みたいと思う。
    2008/9/7

  • 中期の好評作。
    才能ある女性騎手が誘拐され、誘拐対策担当の専門家・アンドルーが派遣される。
    後に同じ手口での誘拐が発生し…
    スリルあります。

  • よく取材して書き込まれている点は面白いが、逆に言えばそれだけの本にも感じる。さらに訳がいただけない。

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