- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150707262
感想・レビュー・書評
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フランシスの作品としては、どちらかというと地味である。スタンダードな犯人捜しミステリなんだけど、その方法が、容疑者たちの心理分析、特に現在の人格がどのように形成されていったかを検証することとなっている。地味ではあるけれど、人間ドラマとして深みがある。
大金持ちの父親がいて、何人もの母、たくさんの兄弟たちがいる。父親と心を通わせることができる唯一の息子である主人公は、義母の一人を殺し、父親の命をねらう犯人を、まさに家族の中から捜さなければならない。財産目当てに父親に媚びを売っているとの蔑み、憎しみ、妬みの渦の中で。
ミステリとしては地味、小説としては深みがある。
エリート階級の多いフランシスの登場人物中でも、この父親はトップクラスだ。海外も含め、華やかな競馬場のシーンは印象的である。激しいお金の使い方も。もっとも、金持ちなのは父親であって、主人公はそれほど注目を集めていないアマチュアの騎士であるが。そのあたりで、妙に親子関係が予定調和しすぎている気がしてならない。もっと葛藤があるんじゃないかな。
また、ちらりと登場する主人公の恋人(愛人?)は強い印象を残すけど、なんだか唐突で、ぽつんと他から切り離されているような感じがして、少し不思議だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フランシスの作品の中でもお気に入りの一冊。
フランシスには珍しく、大家族の中の殺人という古典的ミステリを思わせる設定になっていて、円熟した味わい。
父のマルカムは大金持ちで5回も結婚したいう、エネルギッシュで人を惹きつけるオーラのある男性。
主人公のイアンはアマチュア騎手で、気楽な独身生活を楽しむ物静かな32歳。
5回目の結婚に反対したために、父と疎遠に。
3年後、5番目の妻が何者かに殺され、父も命を狙われて、唯一信頼出来ると感じたイアンに護衛を依頼してきます。
父親と大人になった息子が改めて向き合うという物語にもなっています。
財産を狙う容疑者は、別れた3人の妻、9人もの子供とその配偶者…
警察の捜査は実効が上がらず、度重なる危機にイアンがついに自分だからこそ出来ると家族の性格と心境を調べていくことを決意。
家族の窮境や妄執も鮮やかに描かれていますが、その後にだんだんとそれぞれの心境が変化していくところがとても良くて、何度読んでも心地良いのです。
命を狙われるぐらいなら金を使ってしまおうと考えた父マルカムと凱旋門賞をはじめとする世界の競馬場を回る旅行も、思いっ切り景気が良くて楽しいですよ。 -
2019/12/4読了。アマチュア騎手。イアン.ペンブロックが主人公。『標的』に続いて読了。心理描写と登場人物の人間の葛藤には息を飲む迫力。犯人は?今での作家の冒険シリーズとは別路線の感はあるが堪能した。
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結婚と離婚を繰り返す父親と只今喧嘩中の息子。
フランシスの話にはこのテーマが時々出てくるけど、この話では二人は和解できました。
そのせいか、けっこうお気に入り。