通り魔 (ハヤカワ・ミステリ文庫 13-2)

  • 早川書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150707521

感想・レビュー・書評

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  • 書店の「出版社在庫僅少本」フェアで発見。
    売り場に’あと○冊!’というのが可視化されていて、購買欲を掻き立てるような一風変わった仕組みだったな、と記憶。


    87分署シリーズの2作目。題材はそのまま「通り魔」であるが、当然、ことはそう簡単には進まない。
    とうとう犯人を追い詰めた?かと思いきや事件はまた別の表情を見せ始める。

    囮捜査の場面は俯瞰視点を取る面白い描写。
    泥酔水兵が現れて一瞬気が緩むが、そこから緊張への転換が実に小気味よい。

    ジョーク飛び交うイメージ通りの’ニューヨーク市警察’の活躍を楽しめる一冊。
    捜査員がたくさん登場するのも、’チームを描く’というのは伝統的に続くアメリカのドラマのスタイルなのだろうか。



    16刷
    2021.8.22

  •  87分署シリーズ2作目。スティーブ・キャレラは出てこなくて、代わりにパトロール警官のバート・クリングが主役を務める。刑事ではないので殺人捜査には加われないのに、知人の依頼で首を突っ込むことになり、思わぬ犯人を突き止めるという筋書き。物語の発端となっている連続通り魔事件と本題の殺人事件は関係を装ってあるだけで、無関係ということはすぐわかる。バートが犯人に思い当たるちょっとした手がかりも、彼がもう少し注意深ければあるいは本職の刑事だったらもっと早く気がついていただろう。限られた登場人物で結末の意外性を出そうとしたらこの程度になってしまうのはやむを得ないところ。それよりも往古の都会的雰囲気と刑事たちの会話など作品全体を覆っている空気そのものが読みどころで、息の長い人気シリーズというのはそういうものだろう。

  • 87分署シリーズ第2作。
    1作目の主人公キャレラは新婚旅行でお休み。
    今回は1作目で人間違いで撃たれたパトロール警官、バート・クリングを中心に話が進んでいく。

    クリングの甘じょっぱい恋の展開が、無残な結末を迎えた被害者の恋と対照的すぎて何だか切なくなった。

    そんな事件の合間合間に入る、マイヤーとテンプルの会話は完全にコント。
    正直通り魔探しよりも、33分署の猫連れ去り事件の方が気になって仕方が無かった。

    本編も面白いのに、田中小実昌さんのあとがきも面白いと言う1粒で2度美味しい本だと思う。

  • 87分署シリーズ第二弾。

  • 87分署シリーズ第二作。クリフォードと自称する通り魔事件が多発する。また、前作、警官嫌いで負傷したパトロール警官のバート・クリングには昔の知人から妻の妹の様子がおかしいので会って欲しいと依頼される。バートはピーターの妻の妹ジェニイと会うが、その後、ジェニイは殺される。クリフォードの犯行はエスカレートし、ジェニイ殺害の容疑もかかった。

    ピーターの妻であり、ジェニイの姉であるモリイの頼みから事件の捜査をしていたバートは、刑事の邪魔をしているとして叱責を受ける。

    一方、通り魔事件を追うハル・ウィリスは女性刑事アイリーン・バークを囮に犯人を追う。そして、通り魔がアイリーンを襲う。そこに駆けつけるウィリス。犯人には逃げられるが遺留物から逮捕に繋がる。

    通り魔クリフォードはジェニイ殺害とは関係がなかった。バートは真相に気付き、ジェニイとピーターが愛人関係であり、子供ができたことをモリイに話すと言われたため殺したのだった。

    ウィリスとアイリーンと通り魔の行動が続けて描かれる部分が最も良い部分だった。囮とそれを追う者、そして囮を守る者それぞれが描かれサスペンスが高まる。

  • マクベイン『87分署シリーズ』の第二作目の主人公は、バート・クリング。
    一作目の『警官嫌い』では少年に肩を撃ち抜かれて病院送りになったクリングが、今回は大活躍をしてみせます。

    タイトル『通り魔』とあるように、今回の事件は不可解な連続通り魔事件---犯行後、「クリフォードはお礼をもうします、マダム」と被害者に言い残し、立ち去る犯人『クリフォード』。そして、捜査を進める中、発生した一件の殺人事件。

    一作目ではスティーブ・キャレラに付いて回っていただけの駆け出し警官だったクリングの成長を、足を使った地道な捜査の足取りと彼の人情深さを伺わせる交流の描写など、見所たっぷりの作品でした。

    今回、作者のマクベインの主眼は、本来の軸である事件の解明というよりも、クリングという人間を描くことにあったのでは…と思えるほど、クリングの性格を巧みな筆致で描写しています。

    物語の途中で出会うクレアという女性。彼はクレアとのデートに備えて、ごく普通の男子がするように身なりを整えます。
    しかし彼は、「彼女はこれから、自分にとってますます大事な人になるだろう。」と考え、靴まで磨こうとする男なのです。

    そして、未だ昔の恋人を忘れられないでいる彼女・クレアが、自分とともに前に進めるようになるまで「ぼくは、ただ暇をつぶしていよう。」と言えるような男なのです。


    バート・クリングというのは、なんと面白い男なのだろう…と思ったものです。


    マイヤー・マイヤー、アイリーン・バーク、ハル・ウィリス。本作より登場する刑事はみな個性的で、愛らしい人ばかりです。

    そして、勿論。

    バート・クリングという人間もその一人なのです。

  • 1956年発表
    原題:The Mugger

  • 翻訳者の田中小実昌は、今から85年前の1925年4月29日に東京で生まれて10年前の2000年に74歳で亡くなった小説家・エッセイスト、そしてミステリー翻訳家。

    一応、直木三十五賞作家でもありますが、そんなことなどまったく知らなくて、または、その存在すら全然知らなくとも、早川書房のポケミスや文庫を中心に、本書のエド・マクベインをはじめとして『死体置場は花ざかり』のカーター・ブラウンや『死の第三ラウンド』のウィリアム・アイリッシュ、そして『銃弾の日』のミッキー・スピレインや『猫は夜中に散歩する』のA・A・フェア、それに『血の収穫』のダシール・ハメットや『湖中の女』のレイモンド・チャンドラー、さらに『憂愁の町』のロス・マクドナルドや『霧の壁』のフレドリック・ブラウンなどなど、おそらく100冊近い主にハードボイルドの翻訳本がありますから、その内の一冊でも手に取ったことがある人は、きっといらっしゃるはずだと思います。

    私は、幸か不幸か、リチャード・マシスンの『地球最後の男・・人類SOS』というハヤカワ・ノヴェルズの一冊をSFとして読んだ小4の時が田中小実昌との最初の出会いだったのですが、まさかこれが、13年後の2007年にウィル・スミス主演で『アイ・アム・レジェンド』として3度目の映画化がなされるとは夢にも思っていませんでした。

    それから、中学生になってポケミスから早川・創元文庫をはじめミステリーの魔境、いや桃源郷に入り込んで、気がつけば彼には随分とその翻訳にお世話になったことを自覚しているとき、同時に映画関連の本も手当たり次第に読むうちに、映画に関するエッセイ『ぼくのシネマ・グラフィティ』や『コミマサ・シネマ・ツアー』にも出会い、両方で田中小実昌という名前を発見して驚き、そして、高校生になってから『ポロポロ』や『アメン父』や『イザベラね』などという、今までの小説観を吹き飛ばされるほどの軽いノリ、もしくは身辺雑記・私小説ふうの記述の奥にある深遠な思惟小説と、まさに正面衝突して、また衝撃を受けるのでした。

  • 先輩から毎月1冊づつお借りしているお楽しみのシリーズ。今月は(笑)『通り魔』です。お借りした物は昭和51年発行の年代物ですがお話は全然古くない!今回も人間ドラマをじっくりと楽しめました。 87分署の刑事たちやアイソラの街の住人の生活が丁寧に書かれ、犯人を追って行くうちにふれあう人達との関係が物語に少しづつ影響を与えていく・・・猟奇殺人や天才捜査官が出てくるわけではありませんが 刑事たちの目を通してアイソラの街の、アメリカの現状が語られていく。面白いです♪ まだまだ続くシリーズなので毎月楽しみでなりません。

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