エースのダイヤモンド (ハヤカワ・ミステリ文庫 101-2)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150752026

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  • 私立探偵レッド・ダイアモンドを〝主人公〟とする第2段で1984年発表作。デビュー作「俺はレッド・ダイアモンド」(1983)は、趣向を凝らした設定とノスタルジックなムード全開でハードボイルド・ファンの喝采を浴びた。シリーズのコンセプトは明確で、1930~50年代に活躍した数多のペーパーバック・ヒーローへ熱烈なオマージュを捧げている。同時期には、老人探偵の哀愁を見事に描いたL.A.モースの傑作「オールド・ディック」も話題となっていた。これらのツイストを効かせた懐旧的パロディが、70年代の〝ネオ・ハードボイルド〟以降低迷していた分野を一時的にせよ活気付けたことは間違いない。

    ニューヨークのしがないタクシー運転手サイモン・ジャフィー。彼の宝物は蒐集した大量のパルプマガジンだったが、家のローン返済のために妻が勝手に売り払ってしまう。かつてないほどの精神的打撃を受けたジャフィーは、現実と妄想の境界を彷徨い、遂には憧れのヒーロー「レッド・ダイアモンド」と一体化し、空想の世界へと没入。国際的大悪党ロッコ・リコの悪事から、愛する金髪の美女フィフィを守るために、拳銃片手に颯爽と卑しい街へと飛び出す。
    今回の舞台は欲望が渦巻くラスベガス。カジノ経営者テックスの依頼を受け、街を乗っ取ろうと謀むギャング組織の成敗に動く。刺激的なショウガールに翻弄されつつも、悪党どもを叩きのめし、ダイアモンドは暗黒街を牛耳るリコへと迫る。

    「レッド・ダイアモンド」はマイク・ハマー/スピレインを代表格とする〝通俗ハードボイルド〟のカリカチュアである。〝正統派〟のフィリップ・マーロウ/チャンドラーを真似ても、当然のことさまにならない。その悪例が、格好付けたスタイルだけの探偵スペンサー/パーカーとなるのだが、文句が長くなるので省略する。要は、ハードボイルド小説の主人公の一般的イメージ、非情で暴力的で好色で利己的なタフガイがレッド・ダイアモンドだ。「俺が掟だ」と法を唾棄し、悪人を罰する権利を有することを声高に主張、時には私刑さえ厭わない。マイク・ハマーが圧倒的な人気を誇った理由とは、〝世界の警察官〟としてのアメリカ国家を一介の私立探偵が体現しているからだ。例え、どこまでも独善的で粗暴であろうとも「正義」を行使し、失われたマチズモを臆することなく謳う。男根主義が罷り通った時代の夢物語。完全なる時代錯誤。レッド・ダイアモンドはそれを誇張した姿だ。情報を得るためタクシー運転手に〝化けた〟探偵が、予想外にしっくりする生業に戸惑うシーンなど、可笑しさよりも哀しさが漂う。ただ、馬鹿馬鹿しくも清々しい読後感を残すのは、ハードボイルド小説に対する作者マーク・ショアの愛が満ち溢れているからだろう。

    本作の魅力は、翻訳文庫本表紙を飾る河村要助の絵がすべて伝えている。シリーズの世界観を見事に表現しており、乱暴に述べれば、本編を読む必要さえないぐらいだ。決して悪くはないのだが、第1弾でアイデアは出尽くしており、続編で既に息切れしたという印象。ただ、それでも読まざるを得ない。夢の跡を追い掛ける。これも、ハードボイルド・ファンの哀しいさがだろうか。

  • 暴漢に絡まれるとスイッチが入っちゃって私立探偵レッド・ダイアモンドに変身しちゃうの。面白い。

  • あの、傑作『俺はレッド・ダイアモンド』の第2弾。

    あれ以来、探偵を続けているレッドの元に、今回はカジノ王から依頼が来る。
    ラスヴェガスに不穏な動きがあるという。それを調査して欲しいのだ。
    背後に生涯の敵ロッコの影を見たレッドは早速ヴェガスへと飛ぶのだった……

    やはり、1巻の方が面白いね。イマイチ電波度が足りない。割と普通のハードボイルド探偵小説。
    フィフィ(だと思いこんでる)女が死んじゃうところはよかったけど(笑)

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