ガラスの鍵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 6-4)

  • 早川書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150773045

感想・レビュー・書評

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  • ハメットらしい硬質の文体で無駄がなく楽しい。

  • 1931年の小説だけど、今読んでもけっこう新鮮。そうかこういう話だったんだ。
    話の軸は二つで、チンピラたちのなわばり争いと上院議員の息子の死。
    チンピラたちの親分ポール・マドヴィッグが上院議員の娘と結婚しようとするところから二つの軸が重なっていきます。
    主人公はポールの右腕で賭博師のネド・ボーモン。
    で、この人意外と……弱いんですよね。
    深く考えずに動いて窮地に陥ったり、なぐられてへこんじゃったりと、
    想像していたハードボイルドのヒーロー像とはだいぶ違う。
    だからこそかえってリアルで、身近に感じてしまう。
    この小説の特徴はなんといっても心理描写を排した客観描写。
    行動と会話のみで成り立っているのでスピーディーにスラスラ読める。
    ちょっと映画みたいな感じもしました。
    ハメットにおける映画からの(あるいは映画への)影響というのはとっくに論じ尽くされているんだろうけど。
    結末や題名の由来を見ると、非情なようでわりあいセンチメンタル。
    んー、これはひとことではまとめられない小説です。
    「古典はいつでも新しい」というのはたしかに真理。読んでみるもんだ。

    杉江松恋『読み出したら止まらない! 海外ミステリーマストリード100』とその連動企画であるこの記事
    http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/20140501/1398901056
    に背中を押され、読んでみました。
    しかし畠山さんと加藤さんの記事を先に読んでしまったせいで、
    ネドとポールの仲がBLに見えてしまって困る!
    そういう先入観で読むとこの物語もネドとポールと上院議員の娘の三角関係を描いているように見えてきちゃって……ううむ。
    いや、まあ、これがホモソーシャルってやつなんでしょうね。よく知らないけど。
    ガイドブックでは光文社新訳文庫がテキストでしたが、小鷹信光ブランドにひかれハヤカワミステリ文庫で読んでみました。
    小鷹さんの訳はきびきびしていてクール(なんだと思う。正直なところ私には翻訳のよしあしはよくわからない)。
    末尾の小鷹さんの文章は「『ガラスの鍵』についての七つのメモ」という題通り、解説というよりほとんどメモ。そっけないけどそそられる。このメモ自体がハメット的なのかも?

  • いろいろな意味で私にとって凄く良かった一作。
    この人の話は、ミステリーを主軸に読むとがっかりしてしまうと思う。登場人物の姿や行動を見ているのが一番。喧嘩の場面が好き。時折考え込む主人公の姿が好き。
    心理描写を小説でしないとは、なんとメインの武器を使わずに戦うようなものだと思うけど、それでも味があるなんて!
    それこそ映像や絵で表現するほうが合っているのかと思いきや、文字だけでも、巧みな表現が!!
    訳者の小鷹氏の解説も秀逸。
    私はこの作家が好きなのかもしれない。
    大久保康雄訳のもぜひ読みたい!

  • 次の市政の実権を握ろうとするポール・マドヴィック。上院議員の息子テイラー・ヘンリーが殺され、窮地に陥った親友のためにネド・ボーモンが事件の渦中に飛び込んでいく、といった話。
    対抗勢力であるシャド・オローリとの戦いも辞さないボーモンが、ハードボイルドの骨頂をみせる。
    テイラーの娘ジャネットをめぐり、2人は三角関係となり、やがて2人は…。

    マルタの鷹よりは主人公のボーモンに感情移入しやすいため、読みやすいです。
    ハヤカワ文庫本が絶版なので残念なところです。


    「顔から赤みが完全に消えると、“幸運”をの一言だけがかろうじて聞き取れるせりふをつぶやき、ぎこちなく踵を返して戸口に近づき、ドアを開け、開けたドアをそのままにして、おもてに出て行った。
    ジャネット・ヘンリーがネド・ボーモンに目をやった。彼はドアを凝視していた…」

  • ダシール・ハメットの4作目。

    1954年発行版を読む。
    もはや探偵でもない。
    登場人物紹介には「賭博者」とあった主人公ネド。
    そんな単語が当時はあったのだろうか。
    今で言えば、ごろつき。
    いやその表現も古いか。

    ごろつきネドは、
    上院議員も警察も検事も抑え込む街のボスに気に入られている。
    上院議員の選挙を控え、街に緊張感がただよう中、
    ネドは議員の息子の死体を発見する。
    ボスは議員の娘と結婚しようてしている一方、
    ボスの娘は議員の息子と恋仲だった。
    恋愛または結婚がらみの殺人なのか、
    ボスの失墜を狙っている敵対勢力の陰謀か。
    怪文書が飛び交い、
    ネドはボスと仲違いをし敵の手に落ちる。

    登場人物の気持ちが描写されないせいか、
    性格というかキャラクターもつかめないし、
    話の展開も行き当たりばったりで、ついていけない。

    「マルタの鷹」の期待外れとはまた違った肩透かし。
    というよりかは、
    読むたびに、前の作品の方が良かったかもと思わされる不思議。

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著者プロフィール

1894 年アメリカ生まれ。1961 年没。親はポーランド系の移民で農家。フィラデルフィアとボルチモアで育つ。貧しかったので13 歳ぐらいから職を転々としたあと、とくに有名なピンカートン探偵社につとめ後年の推理作家の基盤を作った。両大戦への軍役、1920 年代の「ブラックマスク」への寄稿から始まる人気作家への道、共産主義に共鳴したことによる服役、後年は過度の飲酒や病気等で創作活動が途絶える。推理小説の世界にハードボイルドスタイルを確立した先駆者にして代表的な作家。『血の収穫』『マルタの鷹』他多数。

「2015年 『チューリップ ダシール・ハメット中短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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