ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫 ク 2-2)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200120

作品紹介・あらすじ

戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために-強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。

感想・レビュー・書評

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  • アゴタ・クリストフ『ふたりの証拠』
    『悪童日誌』の続編、第二弾
    『悪童日誌』では語り手が双子兄弟の一人であり、固有名詞は出てこなかった
    『ふたりの証拠』は、三人称で書かれた文であり、いきなり固有名詞が出て来る
    もう冒頭から謎である
    しかし、超ドライだが読みやすい文は変わらない
    主役の双子兄弟の一人リュカは何処へ行ってしまったのか?
    もう一人クラウスはなぜ戻ってきたのか?
    今まで何処で何をしていたのか?
    『悪童日誌』と思われる書物は創作なのか?
    読み進めているとどんどん増える謎
    そしてラストはまたもや衝撃!
    もう第三弾『第三の嘘』は購入済み
    早く読まないとーッ!

  • 『悪童日記』三部作の二作目。

    『悪童日記』の壮絶なラストシーンにおいて別離した双子の二人の運命のその後が描かれる。

    本作では、ハンガリー側(と思われるが固有名詞は出てこない)に残ったリュカのその後が詳細に記述される。

    前作ではあえて固有名詞を全く出していなかったが、本作で初めて双子の名前が「リュカ」と「クラウス」であることが明かされる。

    15歳になったリュカは、一人で淡々と日々を過ごす。彼が街に住むいろいろな人々と交流していく姿が描かれていく。

    実の父親との子供を産み、町から追放された18歳の少女とその生まれつき障害を持った子供との交流や、夫を反体制派だと決めつけられ処刑された女性とのふれあいを通してリュカは成長していく。しかし、リュカは本当の「愛」とは何か分からず、日々思い悩む。

    前作とは違って、「殺し殺される」という日常は無くなるも、町全体が全体主義の暗い雰囲気の中で、誰もがひっそりと生きていかなければならないという非常に辛い息苦しい生活を強いられている。

    本3部作は著者の子供時代からの体験に色濃く影響を受けているのだが、この本を読むと第二次世界大戦終了後から、ハンガリーをはじめとした各東側諸国の生活がどのようなものだったのか何となくイメージできる。
    我々には非常にイメージしがたいその生活ぶり。こういった本を読むことでしか本当のところは分からないのだろう。

    本作のラストではまたショッキングな別れが描かれるが、そもそも、この双子自体が存在していたのかという疑問が残る。これはこの「ふたりの証拠」という題名にも表れているのだろう。

    次作の『第三の嘘』ですべての謎が解き明かされるのだろうか?

  • 前作は双子兄弟の日記として語られ一人は国境を越え離ればなれになった。
    そして1人はこれまで暮らしていた地で生きていく。
    文体は変わるけれど引き続きお話しに引き込まれた。
    物憂げで暗い人物ばかりの登場なのにどことなく悲惨さを感じさせない不思議。
    感情を表さず淡々と語られていくせいか?次がどうしても気になる。

  • 『悪童日記』の続編。生き別れになった双子のひとりのその後を描く。一作目とは違い、情の厚い人柄が随所ににじみ出ている。後半にかけては、やはり、「ん?」と何度も読み返さざるを得ないびっくりする展開が待ち受けていた。次作もつい気になってしまう。

  • アゴタ・クリストフの「悪童日記」の続編。続編であるが、それらは「悪童日記」、本作「ふたりの証拠」、そして「第三の嘘」の三部作になっており、「悪童日記の続編」というよりは、「三部作の第二部」と呼んだ方が良い。
    ハンガリーとドイツの国境とおぼしき街で、祖母と一緒に暮らし育った双子のリュカとクラウス。第一部である「悪童日記」の最後では、クラウスは、国境を越え、育った国境の街を出て行ってしまう。
    本書、第二部では、国境の街に残ったリュカの物語が進行する。第二部の初めの部分でのリュカの年齢は15歳。30歳でリュカも国境の街を出ていき、そして、それから20年後、双子が50歳になった年にクラウスが国境の街に、リュカを訪ねて戻ってくる。第二部を読み終わった読者は、”リュカはどこに行ったのか”、”クラウスはこれまでどのように暮らしていたのか”、”なぜクラウスは国境の街に戻ってきたのか”、”リュカとクラウスは再び会うことが出来るのか”等の疑問を持ったまま、取り残されることになる。
    第三部の「第三の嘘」を読むことでしか、それは解決しない。

  • 悪童日記では感情を持たないのかと思ったけれど、今回は小さなマティアスを慈しむ様子が意外であり救いにも思えた。とはいえみんな闇の中であることは変わらない。タイトルの意味が最後の方でつながったと思ったら、「あれっ?」・・・すぐ次の「第三の嘘」を読みます!

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    双子のひとり、リュカの暮らし

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。

    (ネタバレ)
    祖母のいなくなった家へ戻ったリュカ。15歳。知り合ったのは自らの父との子をもうけてしまったヤスミーヌという女性。その子は不具であったが非常に聡明であった。ヤスミーヌは街へ出ていき、残された子であるマティアスを我が子のように可愛がるリュカ。マティアスはリュカの愛を信じられず自殺。都会へ出ていったとリュカが説明していたヤスミーヌの遺体が見つかり、その次の日からリュカは30歳でいなくなった。
    最後の章では双子のもう一人であるクラウス(CLAUS)が50歳で村へ戻ってくる。


    ⚫︎感想
    「悪童日記」の続編。村に残った方のリュカ(LUCAS)の15〜22.3歳までの話。こちらは第三者視点で描かれる。
    マティアスとのやりとりが中心だが、それでもリュカのクラウスに対する思いは唯一無二である。
    本当にリュカ、クラウスという双子の兄弟が居たのか?同一人物なのか?55歳になって戻ってきたクラウスは、リュカではないのか?
    日記をつける行為はリュカが続けていることがわかる。日記は創作物なのだが、虚偽と真実が入り混じっているのか?謎が残るまま、第三部「第三の嘘」へ。

  • どんどん引き込まれて、あっと言う間に読了。
    第三の嘘も、一緒に買って正解。
    続きが、楽しみ!

  • どんな過酷な状況も、感じるより慣れることで飄々と乗り越えてきた双子の少年。その青年期となる本書ではそれなりに愛情や絶望に囚われる。

    リュカを取り巻く登場人物も多彩で、それぞれがドラマチックだった。
    現状を変えたくても、自分では変えられない、変われない。それゆえに生じる苦しみを何パターンも見せられているような感じだった。

    にしても、ラストは謎過ぎる。
    3作目も近いうちに借りよう。

  • 「ぼくら」だからこそ「悪童日記」が秀逸だったことに気づく。

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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