愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)

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制作 : Richard Brautigan  青木 日出夫 
  • 早川書房 (2002年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200212

愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 24時間いつでも本を受取る図書館。
    「自分が気に入った棚ならどこにでも、自由に置くことができる
    どこに本を置こうと違いはない。だれもここには本を調べには来ないし、だれも本を読みには来ないからだ。ここはそういった種類の図書館ではない。」
    そんなサン・フランシスコの片隅にある図書館。鐘が鳴れば朝の3時でも、料理をしていても本を受け取りに出る。
    あるきっかけで図書館員となった「わたし」。
    外には全く出ず、ただひたすら持ち込まれる本を待つ生活なのに、とても居心地が良さそう。
    「本が棚にあるということ、そしてその本が体を横たえている木をいかにも敬っている感じが、わたしは好きだ。」
    本好きにはたまらない楽園?と思いきや、持ち込まれる本は「ホテルでの花の育て方」、少女が書いた「自転車」などなど。書いた本人も見に来ないだろう本の数々。
    この本たちもかなり楽しいんだけど。
    そんな中、「わたし」は本を持ち込んできたヴァイダに出逢い、彼女は図書館の私室に通うようになる。
    わたしと彼女の淡々とした生活に、ある日ボコリと変化が起きる。

    ヴァイダは完璧なルックスで11歳の頃から男性を魅了し続けている。
    自分では望まなくとも男は彼女に見惚れる。
    その描写が皮肉でユーモラス。
    淡々とした二人の淡々とした出来事。
    とても切なくて悲しいはずなのに、薄ら寒いほど淡々と。
    他人からみたら二人の出来事はこんな風に平坦な出来事なのかも。
    他の二人の方が妙にリアルだったのが不思議。
    さて、彼らはこれからどこへいくのだろう。

    それにしても、この図書館、羊男がやあ、って現れそうだった。
    (読んだのは新潮文庫版)

  • ブローティガンの作品の中でも、きっとこの作品を好む方は多いような気がします。
    なんて可愛らしい物語でしょう(^^♪

    主人公は図書館の管理人。外の世界から逃げるように引きこもる31歳の内気な彼。ふと気づけば3年もの間、二十四時間、無休で人々が持ち込む本を優しく献身的に受け入れていきます……。

    印象的なのはこの風変りな図書館。普通の生活をしている老若男女が書いた本を所蔵する。来る日も来る日も、入れかわり立ちかわり、人々は自分が書いた本を持ち込み、登録を済ませ、好きな場所にそっと置いて去っていきます。誰に読まれることもなく決して世に広まることもない、この世でただ一冊の本。その中身は、忘れられない思い出や郷愁なのかもしれない、あるいはめくるめく想いであり、喜びや怒りや孤独であり、はたまた拭い去ることのできない哀しみなのかもしれない。

    行き場のないさまざまな想いを凝縮した本たち。その集積場であり墓場のようなその図書館はとても静かであたたかく、そしてなんとも切なくもの悲しい。「世界の終わり」(村上春樹)のしんと静まりかえる一角獣の頭骨蔵のよう、すべてはうたかたの夢……。

    そんな幻想的な世界に飛び込んできたのは、人間離れした美女のヴァイダ。静謐な彼の生活は一変し、ヴァイダはこれまで彼が見たことも経験したこともないような(現実)世界の冒険へと導いていきます。まるで女神アテネがオデッセウスの冒険を導いていくような愛らしさや爽快感が漂っていて、読みながら思わずにんまりしたり大笑いしたり♪

    原題は「妊娠中絶 歴史的ロマンス1966年」とかなり衝撃的なものでたじろいでしまうのですが、いざ読んでみると、感性豊かな詩人らしいブローティガンの優しさや人間味と人生観が溢れています。読者もそれぞれの想いを巡らせることができそうな素敵な物語だと思います。お薦めです(^^♪

  • 12/12 読了。
    「これは完全に調和した、みずみずしくも、アメリカそのものの、美しい図書館である」と一行目に書かれているからには、この図書館は"アメリカそのもの"なのであろう。"誰も読まない本"を収容するのだから、"忘れられたアメリカ"あるいは"裏のアメリカ"と言ったほうが正しいかもしれない。(市井の人々のささやかなエピソードが知られざるアメリカを浮かび上がらせる、といえばオースターの『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』を思い出す)
    「今は真夜中で、図書館は夢見る子供のようにこのページの暗黒の中にたっぷりと引きこまれている」と二行目にはある。子供の比喩は"誰も読まない本"を指すと同時に、主人公とヴァイダの子を指し、さらには"忘れられたアメリカの一部"をも指しているのだろう。
    図書館は(及び洞窟)は死んだ子宮であり、それ自体は充足した閉鎖空間だった。だが、Vida(人生)の名を持つ女を引き入れ、図書館で授かった子どもを堕胎するという決断をした時、彼はすでに自ら図書館を捨てていたのだ。これもまた、アメリカのイノセンスをめぐる幻想の物語だったのだ。

  • 人々、とりわけ人生の落伍者と言われるような人々が、自分で書いた本を持って来る静かな図書館。
    そこが始まり。
    この設定と、書かれた本達がとてもいい。
    これだけで、ブローティガンの想像のとんでもない広さにうっとりする。
    人は人生に一冊なら傑作を書ける、というのはラーメンズのコントに出て来たことで(元ネタがあるんだろうか…あるなら知りたい)、それは真理だと私も思うので、敗残者と分類される人々にも確かに残すべきものはあって、それを無条件に受け入れる場所としてこの図書館を描いたのは、ブローティガンの同情と慈愛だったのではないかと思う。
    しかし、そこに出て来るブローティガン自身が、一冊ではなく何冊も持って繰り返し現れ、その度にやつれていくというのを読むと、作家の業を思わずにはいられない。

  • 多分これを書いているのがブローティガンじゃなかったら絶対手にはとらなかったと思う。微妙な邦題とこのカバーじゃ…。己のブローティガン好きを信じて良かった。『西瓜糖の日々』を超える名作じゃないか、これは。村上春樹が影響を受けてるの痛いくらいわかる。誰にも読まれることのない、本が持ちこまれる図書館で働く主人公と彼をそこから連れ出すべく現れたような完璧な容姿のヒロイン。ヒロインが中絶する為、図書館を出た彼らに待ち受ける運命。解説も秀逸。あぁ、とってもいい作品に巡り合えた。2013/182

  • ロード・ムーヴィ的な。ケルアックの「路上」からクープラントの「ジェネレーションX」に連なるまでのアメリカのロードムーヴィー的小説。

  • 人々の想いを綴った本だけを保管する不思議な図書館。そこで働く図書館員と、完璧すぎる容姿に悩む美女の珍道中。引きこもりと妊娠中絶の話だけど、ユーモラスでピースフルでなんとも幸せな読み心地だった。

  • ブローティガンの三作目。図書館員である主人公は、図書館に勤めてから三年間一度も外に出ていない。その図書館は普通の図書館ではなく、一般の人々が書いた著作を持ち込む不思議な図書館であった。そんな主人公の元に顔も身体も完璧な女の子が現れる。 ブローティガンらしく淡々とした小説だった。24時間いつでも著作を持ち込む人々のために生きているような主人公。その終わりも呆気ない。

  • うつくしい人 西加奈子 p64

  • 私には理解不能な世界。不思議すぎてついていけず。

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愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)の作品紹介

ここは人々が一番大切な思いを綴った本だけを保管する珍しい図書館。住み込み館員の私は、もう三年も外に出ていない。そんな私がある夜やって来た完璧すぎる容姿に悩む美女と恋に落ちた。そして彼女の妊娠をきっかけに思わぬ遠出をするはめになる。歩くだけで羨望と嫉妬の視線を集める彼女は行く先々で騒動を起こしてゆく。ようやく旅を終えた私たちの前には新しい世界が開けていた…不器用な男女の風変わりな恋物語。

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