- Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200298
作品紹介・あらすじ
戒律を冒した神父はそれでも神聖なのか?酒を手放せず、農家の女と関係を持ち私生児までもうけてしまう通称「ウィスキー坊主」は、教会を悪と信じる警部の執拗な追跡を受け、道なき道を行く必死の逃亡を続けていた。だが、逮捕を焦る警部が、なじみの神父を匿う信心深い村人を見せしめに射殺し始めた時、神父は大きな決断を迫られる-共産主義革命の嵐が吹き荒れる灼熱の1930年代メキシコを舞台にした巨匠の最高傑作。
感想・レビュー・書評
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ホセ神父のように、結婚すれば反逆罪はまぬがれたんだろうけど、そりゃあすぐにすぐそんな相手みつかるかよって話で、国外に逃げた者も大勢いただろう。権力は腐敗するというのがあるが、この追う側の権力は出来立てで理想があり、ちょっとやりすぎだろう。1910年代位のメキシコのキリシタンの弾圧により、村人から親しまれていた司祭が不良坊主になる。それでもやけくそで職務を遂行する。本当は国外に逃げるつもりだったのを呼び止められたのだ。それで追われる身である。追いかける側の警部も、ウイスキー坊主のだらくをたいしただらくとは思っていなくて、それ以前の社会の不正の構図の根絶のためと考えるのだった。この話、結婚すれば反逆罪にはならなくなるというちょっと変わった話である。逃亡の道のりでのひとつひとつのエピソードは、短編としても読めるので、一章一章読んでいくと意外と入ってくる。いい作品だと思う。
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英国を代表する作家、グレアム・グリーンの代表作の一つ。遠藤周作の「沈黙」の元ねたともいえる。1930〜40年代にメキシコで実際に起きた共産革命を背景に、カトリックとしての信仰を捨て切れなかった不良神父と信仰を憎む現実主義者の警部との葛藤を描いている。前半は訳文が読みにくいところがあるが後半はグイグイと引き込まれる。