事件の核心 (ハヤカワepi文庫 ク 1-7 グレアム・グリーン・セレクション)

  • 早川書房
3.63
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200335

作品紹介・あらすじ

西アフリカの植民地で警察副署長を務めるスコービーは、芸術家肌で気まぐれな妻ルイーズに手を焼いていた。南に移住したいという妻の願いを叶えるため、彼は地元の悪党に金を借りて費用を作り、彼女を送り出す。間近に迫った彼の引退まで別居生活となるが、それが彼女の希望だった。だが、やもめ暮らしをはじめたスコービーの前に、事故で夫を失った若い女ヘレンが現われ…英文学史上に燦然と輝く恋愛小説の最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 「幸福と愛を混同するのは間違いだ」英文学史に名を刻む恋愛小説の最高傑作とはいえそこに甘さはない。妻と恋人と神との4角関係を描くキリスト教哲学小説の名作。西アフリカの植民地の警察副署長スコービーは南アフリカに移住したいと言う気まぐれな妻のためにシリア人の悪党に金を借りる。妻が発った後、海難事故で夫を失った若い女ヘレンと出会う。
    グリーンの凄さは無駄のない人物描写にある。何かの役割を持って過剰に語ったり作者すら気持を理解できない人形のような人はいない。登場人物はごく自然に登場しその一挙手一投足が適確なジャブのように後々確実に効いてくる。そうそうと言ってるうちに迷路に迷い込み、それでも進むうちに一気に視界が広がりすべて計算されていたことに気づく。戻ってきた妻と理解ある恋人がいる中でスコービーはある決断をする。心の中は永遠に他人にはわからない。ときめきこそが人生の花でありときめきの数だけ罠がある(≧∀≦)しかし果たしてそれは罠なのか。恋人への愛、家族への愛、友への愛、人類への愛、神の愛、違うものなのになぜすべて愛という言葉で表現するのか、それが人類の明日の課題。魂が震える傑作

  • The Heart of the Matter タイトルが期待させる。中味は少し深刻。アフリカ植民地警察の副所長スコービーの生活を中心に描かれてゆく。妻、上司、部下、その他の人々に囲まれて、息の詰まる生活が続く。妻への始めの愛はもうない。しかし妻を傷つけまいと常に気を使い、そのために偽りの言葉を重ねる。この欺瞞と罪の生活から逃れるのは一人になること。妻も同じ思いからか、ついに南アフリカに去ってしまう。妻の重荷から開放されたスコービー。だが、難破船から救助された夫を亡くした16歳の少女に憐れみを抱き、それが愛に変わる。再び妻がいたときと同じ捕らわれの状態になる。妻、愛人、神に対して哀れみと偽りと罪の意識を抱き、そこから逃げようとする。その先にはなにがあるのか・・・。この本が描いたのは愛が生み出す孤独か、罪から逃れようとする人間と神の救いとの相克か、死の平安なのか、最後まで分からなかった。作者の心理描写のうまさに感服する。

  • 【概要・粗筋】
    用心深く不正とは関わりを待たずに警察署副署長としての職務を果たしていたスコービーは、南アフリカに移住したいという妻の願いを叶えるために、悪名高いシリア商人から金を借りて、費用を捻出した。別居生活が始まったある日、スコービーは海難事故で夫を亡くし怪我を負った未亡人ヘレンと出会い、関係を持つ。第二次大戦中の西アフリカのイギリス領
    を舞台に、中年男の愛と哀れみと苦悩を描く恋愛小説。

    【感想】
    『情事の終わり』のように神への愛と人間への愛の葛藤がヒシヒシと伝わってくる。スコービーの情婦ヘレンと同じか、それ以上にカトリック信者の心情というのは私にはわからない。けれども、矛盾する想いを抱え苦悩する姿というのは共感できる。個人的にこの種の葛藤する主人公の物語は好み。

    500頁を超える長編だけれども、最後までスラスラ読み進められ、中だるみなどなかった。スコービーがある決断をしてそれを成し遂げるところから、「事件」後のルイーズとヘレンの様子を描いた最終章のところは特に良かった。特に、最終章のスコービーの望みは叶えられたのか微妙なところが、余韻の残る良い終わり方だ。

  • 2011/1/27購入

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著者プロフィール

Henry Graham Greene (2 October 1904 – 3 April 1991)

「2012年 『なぜ書くか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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