わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

  • 851人登録
  • 3.69評価
    • (62)
    • (114)
    • (117)
    • (13)
    • (5)
  • 106レビュー
制作 : Kazuo Ishiguro  入江 真佐子 
  • 早川書房 (2006年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (537ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200342

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
遠藤 周作
村上 春樹
ポール・オースタ...
ポール オースタ...
村上 春樹
カズオ イシグロ
有効な右矢印 無効な右矢印

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)の感想・レビュー・書評

  • 主人公であるクリストファーバンクスによって物語が語られていくが、主人公はいつでも未来にたっていて過去のある時点がその時によって語られていく。探偵らしいが、事件そのものが語られることはない。行方不明になった両親の行方を追い、故郷の上海へと渡るが、そこで新たな事実と出会う。その事実は本当にマジで容赦ない。今でもたまに思い出すくらいどうしようもない。わたしを離さないででも思ったが、カズオイシグロ凄すぎる。

  • カズオ・イシグロのわたしたちが孤児だったころを読みました。

    イギリス人のクリストファーは上海の租界で貿易関係の仕事をしていた父と美しい母とともに子供時代を過ごします。
    ところが、父と母は失踪したのか誘拐されたのか突然失踪してしまいます。

    大人になって探偵で名をあげたクリストファーは父と母が失踪した真相を探るため戦争中の上海に戻ってきます。
    そしてそこで明かされた真実は驚くべきものだったのでした。

    カズオ・イシグロの小説は面白いのですが、背景を丹念に描きその積み重ねで事実を語るという手法なので、通勤電車で細切れに読んでいるkonnokの読書法とは相性が悪いなあ、と思ったのでした。

  • 落ち着いた文章で、過去の記憶を美しく語るイシグロ節です。

  • 両親失踪の結末
    子供時代の記憶と現実との乖離

  • 3 行でまとめると:

    - 戦前の上海租界のエキゾチックな雰囲気を味わえる
    - 淡い恋心を含めた主人公の隠微な人間関係描写がキモ
    - 主人公は探偵が職業だけど探偵小説でなく純文学 むしろ探偵ってなんだっけ

  • 一貫して、主人公の語りで綴られるストーリー。

    子供時代を過ごした上海の租界でのキラキラした思い出。
    父と母の失踪。
    大学卒業後の探偵としての成り上がりと、社交界での華麗な日々。
    そして、上海に戻って、父と母の事件を調査する様子。
    哀しい結末。

    ストーリーの流れだけを見ると、冒険小説のようだけど、実は全く違っている。
    予備知識なしで、ワクワクドキドキを期待し読んでいたので、少し戸惑った。

    まず、主人公は、推理をしない。びっくり。
    また、主人公は、人間誰しもがそうであるように、記憶を自分の都合のいいようにつくりかえているようで、ところどころ、後半はかなりの部分に違和感が出てくる。

    幼少時代のオールドチップ論争からはじまり、クン警部の伝説化、自分が名探偵だというのも少し疑わしい気がする。
    極め付けは、両親の誘拐から20年近くたっているにもかかわらず、まだ生きていて同じ場所に幽閉されていると信じきっているところ。
    さらに、その事件の解決が世界を救うことになると、自分だけでなく全ての人が信じていることを信じているところ。
    アキラとの再会。

    これには、孤児という拠り所のない立場の主人公が、自分の内的な世界に居場所を求める悲しさがあった。さらに、フィリップおじさんとのラスト近くの会話で、世界が美しいものではなかった、と知るところは主人公に追い撃ちをかける。

    主人公の世界が崩壊してしまうかと思ったけれど、母親や養子にとった家族の存在が、心をつなぎとめ、その時、孤児ではなくなったのだと感じた。

    結論、なんだかよくわからないけれど、深い余韻が残る作品でした。

  • 3冊目のカズオイシグロ。
    読了後、頭を殴られたような衝撃を受ける。
    小さい頃、失踪した両親を捜す為に探偵になったイギリス人男性が主人公の探偵小説...と思って読んでいた。
    大人になり、イギリスで探偵として成功している現在から、幸せな上海での子供時代を振り返る前半。満たされた、美しい、懐かしい少年時代。優しい両親と、アキラという日本人の男の子との大切な思い出。どこか歪んだ印象を受けるけれど、両親が失踪した事を覗けば、幸せな少年時代。そして、探偵として順調にキャリアをつみ、充実している現在。少々退屈してきた頃に、主人公は両親を捜す為に上海へと旅立つ。
    この辺りから「オヤ?」と思う。
    主人公の語る事と、実際におこっている事との違和感。ドロドロと醜い姿を現そうとする現実を、決して見る様子の無い主人公から、コミカルな印象すら受ける。
    終盤、戦場となっている貧民街に突入しても、その態度は変わらない。倒れている日本兵を、特に根拠もなく幼なじみと決めつける態度。そういえば、何十年も前に失踪した両親が、幽閉されているってどこに根拠が?両親が助け出された後の式典って一体なんなの?
    ...ちょっと気づくのが遅かったかな。このアタリから物語の中の違和感が突然形をなしてきて、ゾクゾクッ鳥肌!
    上海に両親を捜しにきてから先は、一気に読み進めてしまった。少し落ち着いたら再読したい。今度は主人公の言う事は鵜呑みにせずに...。

  • 行方不明の両親を捜す男。
    探偵になり、魅惑的な女との絡みが面白かった。瓦礫のなかを捜す場面が思い出されるが、
    途中、これは男の夢の中では?と感じたのは、自分が戦争を経験していないことからくるのだろう。
    家族で住んでいた家は、いまは違う家族が長らく住み続けていた。
    家 という建物の意味以外の大きな価値は、そこを離れてから感じるものかもしれない。

  • モロにセカイ系だったのでバビッた。めちゃめちゃチャレンジングな作家だけど、ラノベまでやってたとは。

  • この本で、本の読み方が一つ身に付いた。書かれていることを全てと思わず、語られていないところにこそ作者の意図があるということ。

  • ああ。静かに感動した。
    語り手の記憶に基づいて進行し、徐々に真相が明らかになる。
    何事よりも自分の「仕事」に徹する様は、「日の名残り」の執事と重なる。

  • カズオ イシグロの小説 私を離さないで が日本でテレビドラマ化されるらしい。そんな事もあって、本棚を覗き、この本を手に取った。

    彼の世界観を語れる程、私は彼の著作を読み込めてはいないかも知れない。しかし、何か共通する底流のようなものが、あるような気がしている。孤児というキーワードは、大人が押し付け抗えない運命により、子供が置かれた状況だ。運命による無力感は、子供だけではなく、戦争状態に置かれた大人、組織の利害の渦中に置かれた大人にも生じる。そう、大人であっても、孤児同様、抗えない運命に左右されるのだ。この事が、日系英国人としての運命を背負ったイシグロの醸す雰囲気の原点なのかも知れない。

    我々は、より大きなものの利害により、自らの選択肢を狭められ、時に選択を強制される。両親の選択、叔父や友の選択。選んでいるようで、実は選ばされている。この物語のどこに救いがあるというのか。いや、あった。物語の最後、彼は自ら孤児を引き取り、暮らしを選ぼうとするのだ。ようやく初めて、タイトルの通り、孤児は過去形になるのである。

  • 孤児は自分の両親がいない世界が、何か悪いものだと思っている。両親が自分のもとへ帰ってくれば世界もっと良くなる、あるいは世界がもっと良くなれば両親は帰ってくる……。その想いを胸に、孤児は大人になっても世界と戦っている。
    もう一度読み返したらもっと理解できるかな。
    イギリス人のクリストファーと日本人のアキラが上海で出会って幼なじみになるという設定も面白いなと思いました。

  • カズオ・イシグロの想像力は現実の枠を超える。そのことは「私を離さないで」を読んでよくわかったのだが、本作でも子供時代の探偵ごっこそのままに探偵になった男が登場する。彼が戦火の上海で20年前に行方不明になった父母を探し始めるに至り、この小説は「私を離さないで」のような妄想を籠めたフィクションなのか、それとも現実の範疇に収まる話なのか、が気になってくる。結果はここには書かないけれども、彼の想像力の巨大さに今回も圧倒されてしまった。その意味で、期待を裏切らない一作だったと言える。

    思えば、カズオ・イシグロ自身が子供時代のごっこ遊びをそのまま頭の中に抱えているのかもしれない。
    「ノスタルジックになるっていうのはすごく大事なことだ。人はノスタルジックになるとき、思い出すんだ。子どもの頃に住んでいた今よりもいい世界を。」
    (444ページ)

  • 上海で暮らし、10歳のある日突然孤児となったクリストファーがロンドンで有名な探偵となり、両親の行方を追う。
    両親がいなくなった時から、まさに孤児のように目の前の厳しい現実と向き合って強く生きてきたクリストファーがたどり着く事実は辛く悲しいものだった。
    しかし、そこには母の長年絶えることのなかった愛情があった。

    母と自分の消えることのない繋がりを見出すことができたクリストファーは、ついに孤児であることをやめることができたのだ。
    切なくて美しい話だった。

  • 両親を幼くして不可解な事件で失い、生まれ育った地から離れ、成長した主人公が探偵として両親の失踪の問題の解決に挑む物語。
    というといかにもなわくわくするストーリーですが、実際はその純粋な志向と相反する華やかで傲慢な世界に身を置き、その中で社会の腐敗の大きさ、戦争の悲壮さを前に無力感を覚え、葛藤しつつも己の生き方を貫くしかない現実を抱える人の物語。

    幸福とか平穏とか、そんなものより、人を生きさせるのは使命でしょう。でも、人はいつまで使命を抱えられるんだろう、と思いました。読んでる人自身が、「わたしたちのような者」だと思い込んでしまう。太宰治みたいな小説。

  • 500頁超をすらすらと読ませるのはすごいし、最後の謎解きもある。ただ、終盤の主人公やそれに応ずる周囲の言動、物語の展開にはやや不自然さを感じる。作者としてはそれも承知の上なのだろうが、何だかすっきりしない。

  • 少年時代のパフィンとアキラが一緒に遊ぶシーンの描写は好きだ。でも、物語自体は全てが中途半端な感じ。

  • 新作『忘れられた巨人』に続いて、カズオ・イシグロの旧作『私たちが孤児だたころ』を読む。主な舞台は戦前の上海、数奇な運命を経て探偵になった男を主人公にしたハードボイルドものの体裁を取っている。もちろん素直なエンタテインメントではなく、全てがイシグロらしい「記憶」のドラマとして描かれている。
    しかし話の展開は緩慢で、一体何を描きたい作品なのかよく分からず、530ページの内478ページまでは「こりゃイマイチだな」と思っていた。ところが最後の50ページで激変。長い物語に隠されていた残酷な真実が、堰を切ったように溢れ出す。そこまでが長くて少々イライラさせられただけに、終盤の感動は強烈極まりないものだった。
    そのような構成なので、終盤の展開や作品の核となる事について具体的には語れない。言えるのは、様々な人の様々な「喪失」が描かれているということだ。イシグロと村上春樹は互いに敬愛の念を抱き、共通した作風を自覚しているようだが、村上春樹に似ているという点では、本作はダントツだ。「カズオ・イシグロ版『羊をめぐる冒険』」などという言葉が、ちらりと頭をかすめる。
    『日の名残り』や『わたしを離さないで』ほど完璧な作品ではないにせよ、紛れもない傑作。カズオ・イシグロという素晴らしい作家と同時代に生きられたことを、心から嬉しく思う。

  • アキラとは何だったのか…。読ませるのだが、ひたすら釈然としない思いが残る作品。解説の古川日出男氏、ちょっと絶賛し過ぎじゃないかな。

  • イギリスで高名な探偵として活躍する主人公が、過去の両親誘拐事件の真相を暴くために上海で動き始める。

    自分の記憶と他人からの自己評価の相違で、主人公の洞察力の弱さが垣間見れるので、実はそんなに凄腕の探偵というわけではないのだなと察せられたけど、後半になると本当にそのとおりなグダグダっぷりだった。
    特に両親の幽閉場所に向かっているときには、疲労を考慮したとしても、探偵とは思えないアホ丸出しの言動の数々。どうしたんだクリストファー。

    面白いと感じる部分もあったけど、最後までうまく馴染めなかった。

  • 失踪した両親を探すため、第二次世界大戦前夜の上海の巨大な流れの中で丸腰の主人公の要求が簡単に人を動かすことができる途轍もなさ。
    「呆れる」としか言いようのない都合の良い展開と思えたが、どんな大きな流れでも良し悪しの事象は超個人的な欲望が核心に存在し、力を持つものが機動力を持つのだと分かる気がした。
    (どんな大人物だったとしても、それだって生身の人間なのに、どうして社会はその人物を怖がり、それを覆すことができないんだろう。たとえば、あの国のような指導者についても・・)

    コンプレックスがないと小説は書けないと言うが、カズオ・イシグロの強いコンプレックス(国籍やアイデンティティの問題)をここでも感じる。彼の生い立ちを知らない方がこの小説を楽しめるかも。

    いつもの回想の語り口は昨日のような近接過去でも「今」現在の話としてとらえられない。薄暗闇で手探りしてる表現が時間の感覚を朦朧とさせる。

    無知過ぎた私は、以前、陳舜臣の「阿片戦争」をなぜ中国は麻薬を欲しがったのかと思って読んだら、阿片という悪と戦う話だったのに驚いた。ここでまた「阿片」が出てきてHello againな思いがした。

    中国の「阿片」を考えると闇の深さにのとてつもなさに思い当たる。知らぬが仏。この小説で感じる「呆れ」はそんなところにも通じているのだろう。
    それでも世界を良くしようという人のいることにわたしはときどきびっくりしてしまう。

  • 2012年の春から夏頃に読んでたな。
    初カズオ・イシグロだったが個人的には期待外れだったかな。

  • これを「探偵物語」なんて言わないでほしいなあ。
    主人公が大人になって探偵という職業を選んだ、って
    ミステリじゃないんだから。

    ミステリじゃなくて探偵が出てくる辺り、
    ポール・オースター初期作品を思わせますが
    こちらはニューヨーカーじゃありませんから~

    解説氏も書かれていましたが
    読み終えた途端にもう一度最初から読みたくなる、
    というか読み始めてしまった、ちょこっとだけ・・・
    もうちょっと、出たくない世界でした。

全106件中 1 - 25件を表示

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)の作品紹介

上海の租界に暮らしていたクリストファー・バンクスは十歳で孤児となった。貿易会社勤めの父と反アヘン運動に熱心だった美しい母が相次いで謎の失踪を遂げたのだ。ロンドンに帰され寄宿学校に学んだバンクスは、両親の行方を突き止めるために探偵を志す。やがて幾多の難事件を解決し社交界でも名声を得た彼は、戦火にまみれる上海へと舞い戻るが…現代イギリス最高の作家が渾身の力で描く記憶と過去をめぐる至高の冒険譚。

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)の単行本

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)のKindle版

ツイートする