浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)

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制作 : 飛田 茂雄 
  • 早川書房 (2006年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200397

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浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)の感想・レビュー・書評

  • 過去と今を行ったり来たりしながらゆるゆると進んでいく物語。
    戦争が終わって世間の価値観は180度と言って良いぐらいに変わり、戦争賛美の絵を描いていたという理由で周囲からの冷たい視線に晒される主人公。
    自分の過去の仕事は間違っていたのだろうかと懸念しながらも、かつて「信念」を持って行動していたことは誇りとして良いはずだと自分に言い聞かせる。いろいろと理由を見つけては自分の過去を正当化したいと思う気持ち…
    私自身がもっと年齢を重ねてから読んだらもっと良く分かるのかもしれないと思いました。

  • 途中で期限来て返しちゃった。
    家の話かと始め思った。
    遠い山並みといい、なんだかすこし引っかかる主役や設定なのはわざとなのか、、、
    時代かな。

    かつて人望がありもてはやされた画家。
    戦後の斜陽。

  • 昭和初期の雰囲気でタルタルと進む(進まない)ようで、
    油断していると、一挙加勢。おっとっと。イシグロの文章はテンポが一定じゃないのです☆

    一見温厚そうなオノが、恩師とぶつかる。長女とぶつかる。

    自分がかくあることを常に自分に言い訳している、このキャラクターがいいですねえ。ちょこっと「充たされざる者」のピアニストを彷彿とさせます。

    まどろこしい当たり障りのないやり取りの応酬。見事です~翻訳モノとは思えないくらい。押し寄せる満足感と勝利感に浸るとこなんか、なかなかヤラしい性格で、結構結構。

  • 戦時中は著名な画家で、尊敬を集めていた小野。
    しかしそれは戦意を鼓舞するための絵であったため、戦後は周囲の目が冷たくなり、引退したあとは弟子や義理の息子にも距離を置かれ、娘の縁談が上手くいかないのも自分のせいかと思うようになります。
    過去の回想と、現在の状況が謎解きのように交互にあらわれ、引き込まれるように読めました。

    戦争の後遺症というものはこういうところにもあるのだと知りました。
    その時はそれが正しいと信じていたのに、戦争が終わったらガラリと価値観が変わり、自分は変わらないのに世間の評価も変わる。それでも自分は自分のやるべきことをやりきったと満足することもできるのかもしれないけれど、もしかしたら自分の成果など他者にとってはどうでもいいことなのかもしれない。寂しさを感じるラストでした。

  • 時代にのみ込まれた画家の話。ある時代に「正」であったことが、時代が転換して「悪」としてとらえられる。歴史の中では往々にして起こりうることだが、それに飲まれた人の心を、繊細に描き出す美しい作品。

  • 期待した方向とは違った結末だったけど解説読んだら読了の満足感増した

  • 戦争中,戦争賛美の画を描いた画家の戦後.歴史の流れで変転する価値観の中で,自己肯定と自己否定に揺れ動く姿が痛々しい.親子なのにもかかわらず,微妙交わらない自分の思いと他人の思い,そして価値観.これはこの作家の大きなテーマの一つだろう.
    戦後の復興過程にある日本が舞台になっているが,日本人からすればあまり現実感のない町.これも「私をはなさないで」などと通じる世界.

  • 日の名残りの前身です。

  • 老齢の主人公小野は、かつて戦時中に戦争を鼓舞し高揚させる絵画を描いていた画家であった。

    正しいと信じて行った事が、時代の流れと共に移り変わる価値観によって無価値な事へと変化した時、人は困惑する。そして人は、かつての自分が誤っていたのだろうかと懸念しながらも、過去の自分を正当化したくなる。

    小野は社会の彼に対する態度の豹変ぶりに困惑しながらも、当時の輝かしい日々の思い出を回想することで自らを慰める。小野の次女のお見合い話の失敗をきっかけに、この二つの狭間で揺れながら老後を過ごし、彼の想いを回想する形で本書は進んでいく。

    最終的に次女は伴侶を見つけ、小野も前を向いていこうとぼんやりと思い物語は終わる。

  • 価値観の変化についていけない人もいるし、ついていける人もいる。しかも、これは芸術の分野の変化なので、当の本人たちはさぞ辛かろう。こんな日が遠からずくるのかも、と思う。『わたしを離さないで』の次に読んだので、少しインパクトは薄いけれども、この後じわじわ恐ろしくなって来そうな読後感。やはりこの人のお話は目の付け所が凄い。

  • 第二次世界大戦前後の日本・東京を舞台に、画家の人生を描いた物語。
    「遠い山並みの光」とよく似た雰囲気を感じました。

    戦争によって激変した時代の犠牲者とも言える画家たち。
    主人公は戦前に新しい形の芸術とその社会への影響を求め、師を「浮世の画家」と呼び、袂を分けた画家。そして戦中は名声を得ただけでなく、反体制的な画家仲間や弟子を期せずして困難な立場にも追い込んだ経験を持つ。
    その彼が、戦後は一転して社会から浮いた存在となる。かつての弟子だった画家の中には、彼を批判するものもいるけれど、なにより鮮明になるのは、結局彼は一介の画家に過ぎず、戦争前後の罪を問われるほどの立場でもなく、忘れられている、ということ。そのことが主人公である「わたし」から直接は語られないものの、随所に描かれる。まさに「浮世の画家」となった姿。

    主人公の口からは「信念」という言葉がよく出てくるも、何を示すのかわからないまま、時代に流された人々が容易にそういった言葉を使って、己を奮い立たせていたんだろうな、と思います。
    とても狭い世界に生き、世間を知らぬまま、その世界の名声にすがる、寂しい画家の淡々とした哀しい小説。

  • イシグロが日本を描いた作品は、残念ながらあまり面白いとは思えない。「浮世の画家」も「遠い山並みの光」も、小津映画の雰囲気をそのまま文章にしたにすぎないように思えてしまう。彼は、やはり、ヨーロッパを舞台にした作品を描いてこそ本領発揮という気がする。

  • 過去を回想したときの自負、自信。
    しかし結果として認めざるをえない過ち、悔恨。
    年老いてもなおそれを乗り越えて前を向く清清しさ。
    しかしひょっとするとそれらは全て本人の思い違いかもしれないのだが???

    そんな世界を相変わらず美しい文章でゆったりと、そうかといって飽きさせることは決してなく、楽しく読ませてくれる作品
    設定は全く違うけど、日の名残とかなり似たテーマですね
    ただし日の名残のほうがラストの切れはいいと思う
    本作はラストにかけてちょっと書きすぎじゃないだろうか?
    次女の結婚のくだりをすっぱりと書かなかったように、黒田とのくだりも書かないほうがよかったような
    そういうあいまいな部分を残してくれたほうが本作としては良かったように思う

    遠い山なみの光からずっと、谷崎の細雪を読んでいるような心地よさを感じながら読んだ
    本作については小津の東京物語、笠智衆が随分主人公と重なった
    日本にゆかりがあるとはいえ、日本語は話せないほどに英国人である作者がなぜにこれほど日本的な作品を書けるのか、不思議だ

    作者さんの作品は少ない、コンプリートまでもう少し
    早く読みたいような、とっておきたいような・・・・

  • ーカズオイシグロの著作全てー
    全部読んで、文体の変化を楽しんでほしい

    工学研究科 M2

  • カズオ・イシグロの最後の未読の一冊。きめ細かく丁寧に紡がれる綺麗な文章とノスタルジーは彼ならではであり、情景が浮かぶ。ただその反面、常に一人称で回想する形式を取るので、脱線したり冗長な部分が多かったりする。その余分の積み重ねが全体として見ると実は結構効いてくるんだけど、読んでる最中は時折退屈になる。遠い山なみの光と同様の戦後日本の風景だけど、山なみの方が好きだった。

  • 「私を離さないで」「日の名残り」しか読んだことなかったのでこんな日本を舞台にした小説があるんだとびっくり。でも全然違和感ないし、描きたい人間のかなしさとかは前出2作品とかなり通じるものがあった

  • 戦争が終わった後の日本の気分を、当事者としての主観と旧世代からの外部の目としての客観との両方から見つめる視点。それはVisitorとして日本を訪れ目撃した作者だから得ることが出来たものなのではないだろうか。
    解説で、日本の映画は小津が好きとあって、納得。

  • 読んでいる間、翻訳者の存在を時々意識させられた。

    最初、時代設定や、戦後になって老境を迎えた芸術家が主人公であることなどから、川端康成の戦後の作品を思い起こしながら読んでいた。
    でも、やっぱり翻訳なんだなあ、と随所で感じた。
    日本人作家なら、こういう言い回しはしないだろうと思われるところもある。
    翻訳であることを主張する文体を敢えて選んでいるのかとも思う。

    一方では、「紀子」「節子」など、人物名がどうして漢字表記なんだろう、と思ったりもしたけれど…それは翻訳者、飛田茂雄さんとイシグロの間で話し合って決めたとのこと。

    戦時中「新日本精神」発揚の運動に深く関与したという主人公なのだけれど、「八紘一宇」とかそういった当時のよく見られる表現が一切なく、なんだか日本の話のような、どこにもない架空の国のような…不思議な感覚になる。

  • 戦前から戦後にかけての時代の移り変わりの中で、小野という一人の画家が、世の変化を憂い、生きていく様を一人称で語った物語。現役の画家時代、遊女や歓楽を描く「浮世」の画家を師に持っていた小野は、一人戦争に傾倒した絵を描くようになる。そのことがきっかけか、娘の縁談が破談になったのでは気に病む。街の様子も、かつての場末の飲み屋のような店はなくなり、再開発の手が伸びていく。だが決して過去への郷愁に浸るのではなく、新しい時代の若者の活力、世の中に希望を見出している。

    カズオ・イシグロを読んでいると思うからか、最初は「イギリスにいる日本人」の話だと思っていた。どうもつじつまが合わないと思ったら、日本の話であった。しかし最後まで読んでも、なぜか日本の風景とは完全に思いきれず、例えば橋のたもとで街を眺めながら語るシーンなど、日本的というよりは、ヨーロッパ的に感じる。国に縛られることのない物語なのだと思う。

  • 太平洋戦争中にアメリカで量産された戦意高揚フィルムにでてくる日本、そんな独特のオリエンタリズムあふれるニッポンがこの小説の舞台。非実在の地名が頻出したり、あずまやの軒に沢山の提灯がつるされいて情緒あふれていたりと、中々日本人には溶け込みにくい世界が描かれる。
    物語の最後近く、小野が長女節子と語り合い、言い争いになる部分で、結局著者は何を仄めかしているのか、読者の想像力が試される小説だ。

  • Kazuo Ishiguro の処世作。終戦直後、今までの価値観が 180度転換するようなFloating World に翻弄された老画家を描く。…のだが、ストーリーはこの老人の一人称で語られるため、翻弄されたと思い込んでいるのは実は本人のみという読みがどこまでも否定できない構造になっている。そして、この「信用できない語り手」の構造はもちろん、『日の名残り』のスティーブンスに継がっていくものだ。(英国側から見たときの)異国趣味と、いかにも英国らしいsarcasm を共に備えた佳作。

  • カズオイシグロっぽい、モヤった感じ。じれったく、どう捉えて良いのか判らない部分も。訳は読みやすい。

  • タイトルの「浮世の画家」には、違和感がぬぐえない。 もっとも、原題が"AN ARTIST OF FLOATING WORLD"なので、このまま直訳すれば浮世絵師なのだろうか。それなら、まだ「浮世の画家」の方がとも思うが。 主題も掴みづらいが、芸術家における日常がテーマなのだろう。 モーツアルトにも太宰にも、日常生活者としての側面はあったのだ。

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浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)の作品紹介

戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野。多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にあったが、終戦を迎えたとたん周囲の目は冷たくなった。弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まない。小野は引退し、屋敷に篭りがちに。自分の画業のせいなのか…。老画家は過去を回想しながら、みずからが貫いてきた信念と新しい価値観のはざまに揺れる-ウィットブレッド賞に輝く著者の出世作。

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