充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)

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制作 : 古賀林 幸 
  • 早川書房 (2007年5月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (948ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200410

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充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)の感想・レビュー・書評

  • カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』が面白いと話題なので読んでみようかと思ったのだが、そう言えば『充たされざる者』が未読だったのを思い出して、読んでみた。

    時間も空間も歪んだ世界で、登場人物は何重にも重なり、悪夢のような(というか悪夢そのものの)不条理が延々と続くが、個々のエピソードが魅力的でグイグイと読ませる。大きな話の筋は世界的ピアニストのライダーが「町の命運は音楽藝術の解釈次第にかかっている」と信じられている町に招かれて演奏と講演を行うというストーリー。その枝葉として、やがて彼の義父であることが明らかになるポーターのグスタフとその娘ゾフィーとの不条理な関係、その関係と相似する名指揮者グロツキーとその元妻コリンズの関係、その関係と反比例する平凡な(しかし自己欺瞞の権化のような)ホテル支配人ハフマンとその婦人との関係、ライダーの幼少期と重なるゾフィーの息子ボリス、ライダーの青年期と重なるハフマンの息子シュテファンなどが描かれる。場面転換のたびに「あー、そちらに気を取られて本線を外れてはいけない」と思いながらも、話は枝葉から枝葉へと迷い込んでいく。

    長らくカズオ・イシグロで一番好きだったのは『わたしたちが孤児だったころ』だったのだが、『充たされざる者』はそれを上回るかもしれない。願わくば原著で再読してみたいところだが、長いからなぁ…。

  • 「わたしを離さないで」や「日の名残り」路線を期待していた私は思い切り肩透かしを食らいました ^^

    巻き込まれ型のスラプスティックなんですよ~!
    まー作者にしてみれば同じ路線ばかり期待されるのは
    芸域の狭さを言われているようで不本意なのかもしれませんが・・・好きなんですけどー、こういうのも~この路線ならもっと徹底している作家が何人もいるのでイシグロが頑張らなくても・・・
    ポール・ラドニックの「これいただくわ」とか、イーヴリン・ウォーの「大転落/ポール・ペニフェザーの冒険」とか、ヴォネガット辺りがお好きな人にオススメです。

  • 夢オチかとおもいながらよんだ。

  • これまでのイシグロ作品比べて長さ的にも内容的にも格段に読みにくく、つかみにくかったにもかかわらず、読後は本当にいろいろと考えさせられた。読書会があれば参加して見たいと初めて思った作品だった。不毛なコミュニケーション、過度な要求、ゆがんだ空間と時間、それが最後の電気技師で初めて噛み合う。しかし、ライダーは全然完成されていかない。また、本作は無名の登場人物が象徴的な意味を持っているようだ。

  • 長い…!
    読んでる間ずっと不安。
    読み終わってからも不安。なんか。

    だけど最後まで読んでしまったよ。
    そんな小説でしたよ。

    主人公がぐるぐるぐるぐる、ずっとどこからも抜け出せなくって。
    それに苛々苛々うーわーとか思いながら引きずられてしまう。
    しんどい。どんどんすれ違って、また違う問題に絡めとられる。
    非常にしんどい!うん。

    それぞれの登場人物が、
    主人公とところどころ重なっていくのがまたしんどかったよ。

    ぐるぐるした小説でした。長くて不安な小説でした。
    でも最後まできっちり読まされてしまう。

  • 何かを掴もうとして走っても飛んでもあと少しで手が届きそうなのに届かない。手が届く寸前で後ろから足を引っ張られ、新たな面倒事が立ち上がり、そちらに気を取られている間に追い求めてきたものが視界からフェードアウト、結局面倒事は収まらず、疲労困憊したところにまた面倒事・・・振り回されてくたくたになりながら、結局何一つ解決しない。歩いても歩いても辿りつかない恋人の部屋。急いでいるところに追いすがってお茶でも飲んで行けと熱心に誘う幼馴染。始まらない講演会。弾けないピアノ・・・これは間違いなく悪夢の舌触り。正統派英国リアリズムを追究した「日の名残り」でブッカー賞を受賞した後の作品がこれで、イギリスの書評家諸氏は大いに戸惑ったとか。評価もくっきり二分。個人的にはこれ好きでしたけど、賞貰ったりする類のもんではないですね確かに。

  • 丁寧な物言いなのに無遠慮な、愚かしい悩みを延々と聞かされる。昔だったらつまらない、と読めなかっただろう。愚かしい悩みが他人事でなくなってくる歳だから読めたと思う。

  • 時間も歪み、空間も歪み、常にズレがある世界で起きる出来事は、現実なのか主人公ライダーが見ている長い長い悪夢なのか…
    モヤモヤとしたものに包まれているような感覚になりました。
    そして、ここまで登場人物達の言動にイラつかされる小説も珍しい。
    主人公に次々と利己的な頼みごとや相談を持ちかける人、何か起きても永遠と言い訳するだけの人…
    そして何よりライダーの身勝手さ、我儘さにイライラ。
    もう、ライダーに関しては最後の方はイラつきを通り越し「またか」という呆れが勝りましたが。

    でも、どんなにイラっとさせられても、途中で読むのを止めようとは思わない、むしろ早く続きが読みたいと思う小説でした。
    好き嫌いは大きく分かれると思いますが、私は面白かったし読んで良かったです♪

  • 160305 いらいらとわからなさに付き合う根気。しかし最後に感じとれるものがある。もう一度丁寧に読み返せば、もっと納得して感動できると思う。

  • ーカズオイシグロの著作全てー
    全部読んで、文体の変化を楽しんでほしい

    工学研究科 M2

  • 2014.8.7 カズオ・イシグロで唯一読めていないこの作品、この度三度目?の挑戦。

    2014.8.11夕方 家で読んでるとすぐに寝てしまう。まだ290ページ。あんまり手強いので、基本方針として喫茶店で読むことにした。近所の喫茶店との相性はすこぶるいい感じ。

    2014.8.12 自宅安静を言い渡されたため外出できず。そのおかげでちょっとはかどった。P506まで。残り半分きった。ちょっと慣れてきたかも。リズムつかめたかも。一気に読んでしまいたい。

    2014.8.14早朝 昨日300Pちょい読んだので、ようやく読了となる。最後まである意味、裏切らない不条理。物語も半分を過ぎたあたりから、整合性のなさや、登場人物・世界観の歪さがかえって面白く感じられるようになった。このへんで覚めるよなあと思っても、最後まで覚めない夢のような話。保坂さんの『未明の闘争』をちょっと思い出す。カフカっぽい感じなのかな。

  • カフカとかがお好きな方なら、きっとお気に召すに違いない、良い不条理具合(?)です。
    逆に、整合性を求める方には不向きなのかもしれませんが・・・。

    939ページもある大作ですが、不思議と、読んでいてイメージが映像化されて浮かびやすいです。
    どことなく、グリーナウェイの映画を観ているような印象を受けます。

  • 長い。だらだらと長い。結末らしきところも盛り上がりらしきところもなく、イラッとする人のイラッとする行動が延々と続くんだけど、でもこの人の書く会話ってどことなく人間的なおかしみがにじみ出ていて、なんとなくだらだらと読み終えました。
    この感じはThe Office(イギリスのコメディドラマ)に似てるかも。ツボにはまり出すと、それぞれのキャラクターの言動がいちいち笑えますが、そうでないとただの冗長な小説にしか読めないかもしれない…。

  • 2013/04/24 購入
    2013/05/10 読了

  • 「私を離さないで」は良かったが、本作はいまいち。
    文庫で900ページを超える、冗長で、まるで悪夢を見ているような作品。
    このシュールな作品を、どうとらえるかは、ひとそれぞれだが、個人的には時間とお金の無駄。

  • カフカ的不条理世界が展開される大長編。イシグロ作品ではこれが一番好きだな。長いけどねw

  • 最高。イシグロの作品の中で、一番気にいっている。カフカ的だけど、カフカはこんな長編を最後まできっちりと仕上げたりはしないだろう。

  • <ある東欧の町にやってきた世界的ピアニスト、ライダー。
     「木曜の夕べ」で演奏することが決まっている彼の元にさまざまな相談が持ちかけられる・・・。>

    今作でカズオイシグロの長編制覇!!
    900ページ以上の大長編にもかかわらず、なぜか上下巻に分かれておらず文庫本で一冊。
    分厚い本がすきなのですが、正直文庫本でこれは重くて仕方ない・・・
    ちゃんと単行本では上下巻に分かれているのに何故なの?ハヤカワ書房さん。。

    さて感想。

    背表紙の内容紹介を読んだ限り予想していたのは
    「わたしを離さないで」や「わたしたちが孤児だったころ」のような
    “どうすることもできない運命の受容”みたいな結末かと思いましたが全然違いました。

    とにかく不条理な世界の連続。一つ先の扉をくぐればまた新しい不条理な世界。
    そしてその扉は時間と空間を飛び越えることを可能にする。
    読んでいくうちに靄のかかった不思議な世界に迷い込み、
    主人公ライダーとともに、読者もどこからが本当にあったことで、どこまでが本当はなかったことなのか、
    この町の迷路にまよいこみます。

    とにかく全ての人間が言い訳ばかりで少しずつ、何かが欠けている=充たされざる者。
    そしてそれは主人公であるライダーも同様である。

    三谷幸喜曰く
    「フィクションの中で、その場にいないにもかかわらず、一人称で自分が見ていないことの内容を話すことは作法に反する」と述べていたけど、この本の場合、それがさらに靄のかかった世界観を出すのに力を貸しているんだろうな・・・

    しかしいかんせん長い・・・。
    たぶんこの本からカズオイシグロに入ったら、他の作品読まないだろうな 苦笑

  • 確かに悪夢のように長い。読み終えるという行為そのものを誉めてやりたくなるほどに長い。そしてカタルシスもない。かけらもない。

  • これは長引いた。
    文庫で900ページ超と厚いし、内容はなんとも奇妙な展開が
    延々とくりかえされ、ついていくのは困難。
    作者自ら言っているが、これがかなり実験的な構造なのだ。
    小説というもののあり方を考えさせられた。

  • これはなんというか、ライダーの悪夢を読まされている感じです。
    読みやすい文体ではあるけれど、「ダロウェイ夫人」やマキューアンの「土曜日」を思い出させる実験的な小説。

  • 正直、イシグロのファン以外は読まなくて良いかも。主人公のライダーが周りの人間に翻弄される、夢とも現実ともつかない不思議な小説。これは読者を選びます。イシグロファンの僕は好きですけど、オススメはしません。

  • 語り手ライダーは世界的なピアニストとして、ある小さな街のコンサートに招かれた。
    町の人々は彼の音楽が閉塞感ただようこの街に新たな風を呼び込んでくれると大きな期待を寄せているが、物事は予定通りに進まず、ライダーは混乱の中本番を迎えてしまい……というお話。


    余白の多い独特な語り口で、はじめは困惑させられる作品ですが、物語中盤あたりからこのお話の方向性が掴めてきます。
    そうするともう、読者はこの世界から離れられない。
    私たち誰もが抱える充たされない苦悩を、装飾的な分析を一切せずにここまで真正面から描いた作品は初めてです。


    カズオ・イシグロという作家を理解するのに最も重要な作品であると感じました。

  •  世界的ピアニスト、ライダーはコンサートのためにヨーロッパのとある町にやってきた。
     町の住人は、それぞれに問題をかかえ、その解決をライダーに求める。

     ごついです。
     1000P近くあります。ま、これを上下巻とかに分けなかったハヤカワ文庫は、グットジョブだと思いますよ。

     ライダーは、ホテルのボーダーや支配人に始まって、とにかくありとあらゆる人から相談を持ちかけられたり、依頼をされたりするんだけど、どれも彼を尊敬しているといいながら、とにかく利己的なのだ。多分、本人も気づいていない欺瞞であったり、偽善なんだろう。
     そして、そういうのを延々と読まされるわけだ。

     ライダーじゃないけど、いい加減にしてくれといいたくなるのである。
     
     このどうしもようない不条理な感じが、カフカっぽいといわれてるらしいが、カフカの主人公には確固たる自我があるのに対して、ライダーには自我がない。
     その自我の変容は、まるでコンピューターグラフィックで人の顔が微妙に変っていく様子をみている感覚に近い。
     確かに、他人は自分を映す鏡ではあるけど、本来そこにあるべきゆるぎなさが、ない。

     ピアニストでコンサートのためにやってきたというのに、ライダーがピアノを弾くシーンはとても少ない。
     そのことが、彼のゆらぎの要因なのだろう。
     
     で、読み終わって「タイトル通りだな」と思った次第である。
     充たされない者は、なにがどうあっても、何を手にしても、結局は充たされることはないのだ。その充たされてない所以は、結局自身のせいであると気づかない限り、悪循環は続く。

     …そうか、そういう悪循環の話だったのかと、思う。

  • ついに読み終わった。
    文庫本で935ページ、厚さ3.5センチ。
    その量はともかく、登場人物は緻密でありながら、時間感覚だけが
    奇妙に歪んで話が進行、主人公がどんどん薄らいでいくような
    不思議な感覚・・・。
    「カフカ的」とよく評されている。たしかに出来事の不条理だけは
    たしかにそうかもしれないけれど、自分はほとんどカフカ的とは
    感じなかった。現実の世界なんて、むしろ「これぐらい歪んでいる
    んじゃないか?」そうではないと思い込みたいだけで・・・

    カズオイシグロの最高傑作は、今のところこれではないか?


    2017.10.5追記
    ノーベル文学賞!おめでとうございます!

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充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)に関連する談話室の質問

充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)の作品紹介

世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、日程や演目さえ彼には定かでない。ただ、演奏会は町の「危機」を乗り越えるための最後の望みのようで、一部市民の期待は限りなく高い。ライダーはそれとなく詳細を探るが、奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り…。実験的手法を駆使し、悪夢のような不条理を紡ぐブッカー賞作家の問題作。

充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)のKindle版

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