エデンの東 新訳版 (4) (ハヤカワepi文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200489

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  • ティムシェル-汝意思あらば可能ならん。

    謹厳実直なアダムと、頭はキレるが邪悪な側面しか持たない(人間の善を信じられない)キャシーとの間に生まれた、キャシーに似た見た目だが純真無垢なアロンと、キャシーに似た狡猾さと悪意を持つキャル。ただしキャルは善も抱えており、その狭間に揺れる。
    キャルが一人でケイト(キャシー)の店に行き、「自分の中にある意地悪さは自分のもので、あなたから受け継いだものではない。俺は俺で、あなたはあなただ」と知り、ケイトを恐れなくなるシーンが一番好き。
    アロンは愛を存分に受ける子で、アブラと恋に落ちるが、純粋すぎるあまり描く物語から抜け出せない。アダムはアロンを愛していて、キャルは愛を受けていないと感じていた。
    キャルがアダムに溜めたお金をプレゼントしようとするが善意を踏み躙られた(アダムが不器用がゆえ)ことで憎悪が制御できなくなり、キャルはアロンをケイトの店に連れて行く。そこで母を知ったアロンは怒り狂い、荒れきったあげく軍隊に入り、死んでしまう。アダムの卒中も重なり、キャルは罪の意識に苛まれるが、リーに許しを与えるよう請われたアダムが、遺言でティムシェルと残し永眠するところで話が終わる。

    話を通して、リーがいい味を出している。
    人の心、自由とは何か、壮大に描かれていて、すごく面白かった

  • 人類初の殺人として聖書に書かれるカインとアベルの物語が基礎にあるというので、兄のキャルが成長途中から不穏な存在として配されていた。
    けれど弟のアロンだけが愛され、自身は誰からも疎まれるため、計算高さを磨き、悪を気取るようになっても、キャルは父も弟も召使のリーも家族として愛し続けた。
    その思いは悪一筋だった母キャシーにすら向けられる。
    父とも理解し合い、キャシーにも見様によっては救いが訪れ、大団円に終わるかと思いきや、キャルがよかれと思ってしたことが裏目に出、噴出した彼の悪徳の情がアロンの柔らかな心を射抜いてしまう。
    文学としての重みがありながら娯楽要素にも富む良作。同著者の作品では一番読みやすい。
    聖書の素養があれば、より深く物語に入っていけたのかもしれない。なくても、存分に楽しめたけれど。
    本巻より前の巻で詳述される聖書の用語「ティムシェル」が一番大切な場面で使われるので、その時に書かれた解釈をもっときちんと読んでおけばよかったと後悔。
    図書館に返しちゃったから、読み返せず。さらっと読んでよく覚えていなかった……。難しかったし。

  • 一生大切にしたい本。
    何か辛いことや悲しいことがあった時、そうじゃなくても定期的にこの本を読むと思う。
    1〜4巻、ページを捲る手がなかなか止められなかった。読み終わるのがとても寂しかった。

  • 映画で一度見てはいたが、原作を読んで、より心に残る一冊となった。
    兄弟の葛藤、大人になると言うこと、自己意思による生き方、とても共鳴させられた

  • “いくら弱くても、穢れていても、弟を殺しても、人間には偉大な選択の権利が与えられています。人間は自分の進む道を選び、そこを戦い抜いて、勝利できるのですから。”
    ティムシェル-汝能ふ、という言葉がこの光と影、選択と許しの物語を貫いていく。

    最後、文庫本全4巻にわたるこの大長編を読み上げ本を閉じたとき、私を包んだのは深い祈りの気持ちでした。

  • マイバイブル

  • 聖書の「カインとアベル」を下敷きにした物語の完結編です。

    ティムシェル。
    人は自分の生きる道を自分で選びとり、困難を打ちのめし、勝利を自分の手で得ることができる。
    かつて罪を犯した人間も、血筋の良くない人間も。

    これはものすごい自己責任を伴うことで、自由とは苦難の連続なのかもしれないけれど、その困難に立ち向かっていく力があるのも人間なのかな…って思いました。
    何度も読んでみたくなる本でした。

  • 神はあなたに予言もしていないし、命令もしていない。あなたは自分で、その運命に立ち向かって良い。自分の道を選んで良い。
    「ティムシェル」が僕の大切な言葉になった。

  • とっても感動しました!キャルに幸せな人生を歩んで欲しい。

  • 原罪を背後に厳然と据えながら、人間の美しさ、醜さを徹底的な冷徹さで描いていく。
    あなたは罪を治めなければならない。

    彼はその原罪を許されたのだろうか。

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