エデンの東 新訳版 (4) (ハヤカワepi文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200489

作品紹介・あらすじ

アロンがアブラと親密になるかたわらで、孤独なキャルは深夜の徘徊を繰りかえしていた。彼は家族の暖かさを求め、父の愛に飢えていた。しかし、アダムは…。やがてキャルは、死んだと聞かされていた母キャシーの生存とその秘密を知る。それは、双子に襲いかかる大きな悲劇の始まりだった。父子の葛藤はなぜ繰り返されるのか?人間の自由な心とは何か?著者自らが最高傑作と認める大河巨篇、ここに堂々完結。(全四巻)。

感想・レビュー・書評

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  • もう何年になるだろう、読みたい、読みたいと思っていた『エデンの東』を読んだ!全四巻。ハヤカワのepi文庫の新訳で、やはり文字が大きいのがありがたい。

     簡単にまとめれば、父と子、兄弟、家族との葛藤。母の存在、悪女。青春の光と影。若さゆえのいらいら。善と悪。暴力と叡智。老いの哀しみ。

     聖書「創世記」の「カインとアベル」の物語が基調にあり、その物語の文がそのまま出てくる。そしてそのわかりかたがこの長い物語の骨子。個人的には人間は「カインの末裔」であるという意味がわかったのが感動だった。

     ケイトすなわちキャシーという毒婦がすごい、だが惹かれてもしまう。この世のわけのわからないとんでもない事件の起こるわけが、少し解ったような気がする。

     リーという中国人の召使がいい、賢い。アブラという乙女が大好きになったのもうなずける。ちょっと「日の名残り」を思い出すが訳者も同じとは...。

     上記の人物は脇役。物語は、トラスク家とハミルトン家の人々の壮大な人間模様。作家スタインベックの自伝的要素も含まれ、圧巻である。

     帯に「この物語であなたは変る」とあり、おおげさなと思えど看板に偽りなし。ひたひたと胸打つ文章に、人間のいとなみの不思議さをあらためて考えさせられる。訳がいいのかもしれない。

  • 米国カリフォルニアを舞台に、19世紀から20世紀前半までの約100年に渡るある一族における各世代の父と子の葛藤を描いたファミリーサーガとして知られるけど、同時に兄弟、親友、そして男と女の間にある葛藤をも描いていて、米国という国の精神のあり方もここにあるのかな、などと読んでいて思った。第4部だけでなく、全部を映像で観てみたいし、その時には映画化ではスルーされたリーのこともしっかり描いてほしいと思ったけど、もうすでに実現してるか、スケールの大きさで実現不可能かのどちらかなんだろうな。

  • スタインベックが自ら最高傑作と認めるトラスク家トハミルトン家の物語、最終巻。
     この巻ではハミルトン家の人はあまりでてこず、アダムとラスクとその息子、アロンとキャルの物語である。キャルは父親の愛を得たくて、ビジネスで成功するが、それでも父に認められない。一方アロンはキリスト教にそまり、あくまで純粋であろうとする。そして自身の純粋でない部分を嫌悪する。そう考えると二人とも、現実は十分恵まれているのに、もっと遠くへ、もっと理想へと突き進もうとする。そしてそれが、悲劇へと繋がっていくという物語である。
     二人の母親のキャシー(ケイト)の悪女ぶりが物語の終焉で発揮されるのかとおもったが、あっさり自殺してしまった。
     今日、スタインベックの怒りのブドウやハツカネズミと人間に比べて、あまり評価が高くないようだが。この作品は父親の愛を得られるかという問題と、アメリカ人が追い求める規範は何かいう二つの問題が扱われいる。
    アロンはキリスト教と無私という崇高な精神に向かい、キャルは現実的にビジネスの成功にむかった。それはどちらも父の望むものではなかった。
     召使のリーが賢く、また生活を楽しむ術をしっており、教養もあって物語を重奏的にしてくれている。
     悪女キャシーの人物がもう少し、悪女なりに魅力があるように描ければ作品の評価も上がった思われる。
     この作品は19世紀末から20世紀初頭の話だが、電話や車、戦争、列車輸送など現在にも通じる時代背景で古さを感じさせない作品であった。

  • 読了
    何か 大きな物語 が 始まりそうで 
    始まらないまま 終わっていく
    それが 人生か...

    多くの学びがあった

    人生の早い段階で読むべき

  • ティムシェル-汝意思あらば可能ならん。

    謹厳実直なアダムと、頭はキレるが邪悪な側面しか持たない(人間の善を信じられない)キャシーとの間に生まれた、キャシーに似た見た目だが純真無垢なアロンと、キャシーに似た狡猾さと悪意を持つキャル。ただしキャルは善も抱えており、その狭間に揺れる。
    キャルが一人でケイト(キャシー)の店に行き、「自分の中にある意地悪さは自分のもので、あなたから受け継いだものではない。俺は俺で、あなたはあなただ」と知り、ケイトを恐れなくなるシーンが一番好き。
    アロンは愛を存分に受ける子で、アブラと恋に落ちるが、純粋すぎるあまり描く物語から抜け出せない。アダムはアロンを愛していて、キャルは愛を受けていないと感じていた。
    キャルがアダムに溜めたお金をプレゼントしようとするが善意を踏み躙られた(アダムが不器用がゆえ)ことで憎悪が制御できなくなり、キャルはアロンをケイトの店に連れて行く。そこで母を知ったアロンは怒り狂い、荒れきったあげく軍隊に入り、死んでしまう。アダムの卒中も重なり、キャルは罪の意識に苛まれるが、リーに許しを与えるよう請われたアダムが、遺言でティムシェルと残し永眠するところで話が終わる。

    話を通して、リーがいい味を出している。
    人の心、自由とは何か、壮大に描かれていて、すごく面白かった

  • 人類初の殺人として聖書に書かれるカインとアベルの物語が基礎にあるというので、兄のキャルが成長途中から不穏な存在として配されていた。
    けれど弟のアロンだけが愛され、自身は誰からも疎まれるため、計算高さを磨き、悪を気取るようになっても、キャルは父も弟も召使のリーも家族として愛し続けた。
    その思いは悪一筋だった母キャシーにすら向けられる。
    父とも理解し合い、キャシーにも見様によっては救いが訪れ、大団円に終わるかと思いきや、キャルがよかれと思ってしたことが裏目に出、噴出した彼の悪徳の情がアロンの柔らかな心を射抜いてしまう。
    文学としての重みがありながら娯楽要素にも富む良作。同著者の作品では一番読みやすい。
    聖書の素養があれば、より深く物語に入っていけたのかもしれない。なくても、存分に楽しめたけれど。
    本巻より前の巻で詳述される聖書の用語「ティムシェル」が一番大切な場面で使われるので、その時に書かれた解釈をもっときちんと読んでおけばよかったと後悔。
    図書館に返しちゃったから、読み返せず。さらっと読んでよく覚えていなかった……。難しかったし。

  • 一生大切にしたい本。
    何か辛いことや悲しいことがあった時、そうじゃなくても定期的にこの本を読むと思う。
    1〜4巻、ページを捲る手がなかなか止められなかった。読み終わるのがとても寂しかった。

  • 映画で一度見てはいたが、原作を読んで、より心に残る一冊となった。
    兄弟の葛藤、大人になると言うこと、自己意思による生き方、とても共鳴させられた

  • 原書名:East of Eden

    著者:ジョン・スタインベック(Steinbeck, John, 1902-1968、アメリカ・カリフォルニア州、小説家)
    訳者:土屋政雄(1944-、松本市、翻訳家)

  • “いくら弱くても、穢れていても、弟を殺しても、人間には偉大な選択の権利が与えられています。人間は自分の進む道を選び、そこを戦い抜いて、勝利できるのですから。”
    ティムシェル-汝能ふ、という言葉がこの光と影、選択と許しの物語を貫いていく。

    最後、文庫本全4巻にわたるこの大長編を読み上げ本を閉じたとき、私を包んだのは深い祈りの気持ちでした。

  • キャシーという悪女の凄さ。ティムシェル。最後解き放たれる息子。読みやすいけれど、人間模様が今も昔も複雑なこと、などがずっしりと心に来る。

  • 2014/03
    読みやすい古典。町田樹の曲ってこれ?

  • ティムシェルー汝能ふ。「汝は罪を治むることを能ふ」どんな人生にするかは自分自身で選択する権利がある。 4巻を通じて、いろんな人の「選択」を見ました。切ないけど、力強さを感じる読後感。ティムシェル伝道師、町田樹くんありがとう。

  • マイバイブル

  • 聖書の「カインとアベル」を下敷きにした物語の完結編です。

    ティムシェル。
    人は自分の生きる道を自分で選びとり、困難を打ちのめし、勝利を自分の手で得ることができる。
    かつて罪を犯した人間も、血筋の良くない人間も。

    これはものすごい自己責任を伴うことで、自由とは苦難の連続なのかもしれないけれど、その困難に立ち向かっていく力があるのも人間なのかな…って思いました。
    何度も読んでみたくなる本でした。

  • 町田君のインタビューを聞いた時、こんなにティムシェルの言葉が重要だったなんて思いも寄らなかった。

    主軸はアダムが主人公になって物語は展開するけれど、サム・ハミルトンやキャル、キャシー(ケイト)、リー、アロン、周りの登場人物たちもそれぞれの生き方があって面白い。
    文中に、たまに「私」が出てくると読んでいる目線が少し俯瞰的になって、また登場人物たちが動くと目線が近くなるというか。

    アダムがケイトと別離した後で恋人を作らなかったのは何故だろう。
    佳境でケイトと過ごす時間が生きる時間だ、みたいな描写があったけど。一途に好きだった時にはケイトを見ていなかったのに。子供たちに目がいくようになってから、そういう存在がいても良いのに。やっぱり離婚していない以上、そういう描写は時代背景として出来ないのかな。それとも聖書の内容を理解していれば、アダムという名前からなんとなく分かる部分があるのかもしれないけれど。


    ----------
    『治めよ』ではなく、『治めん(む)』。
    汝治むることを能う。

  • キャシーがなぜああいう最後になったのか、結局疲れてしまったということなんだろうかと思いつつ、そもそもなぜあんな人生を選んだのか、何がそうさせたのか、と思ったり(自分の能はのまま暴走してしまった感じ)だれも彼女を理解して導くことができなかったのが不幸だなと。アランはキャシーを愛していたかもしれないけどキャシーの求める愛ではなかったということかと。キャルはずっと不憫だったけどちゃんと最後アランに許してもらえて、アブラもそばにいてくれて本当によかったよね。ただアロンはかわいそうだった。

  • 古典。でも予想外に面白かった。

    きっかけは、アメリカ文学と言えばフィッツジェラルドとかサリンジャーと思っていたら、何言ってんの、スタインベックなどなどでしょと言ってくれた人がいたため。

    旧約聖書のカインとアベル兄弟の物語をベースにしてるのはよく知られてることだけど、それに著者自身の解釈をしてる。

    汝能う(なんじあたう)。

  • 高校の授業でジェームズ・ディーン主演の映画を見ました。
    あれはほんの一部だったんですね。
    スラスラ読めるし、胸にも響く所は多々あるのですが
    どうしても疑問点が残ってしまい、星は2つです。

    サミュエルとリーは間違い無く魅力的な人物。
    彼らの話している話は非常に面白かった。
    そして、もちろん、この話の核心である「timshel」というヘブライ語。
    この作品は旧約聖書の創世記におけるカインとアベルの確執、
    カインのエデンの東への逃亡の物語を題材としているのですが
    聖書において、神は罪を犯したカインに
    予言したわけでも、命令したわけでもない・・・
    というのが、この作品の言わんとするところです。
    (何を言わんとしているかは伏せておきます。
    正直、その意味には痺れました。)

    さて、疑問点とは。
    なぜ、この作品にはどうしても人に愛されない人が登場するのか。
    文章から読み取るに、私にはそれは生まれ持ったものであるように
    思われたのですが、それについて深い掘り下げは無いのです。
    「ただ、生まれた時からこうだった」みたいな感じ。
    愛されたいと渇望し、努力しても、決して報われない。
    チャールズにしろ、キャシーにしろ、もちろんキャルにしろ。
    (キャシーはちょっと違うかな・・・)
    それに対するかのごとく、必ず愛される人が目の前にいる。
    そりゃ、悪くなってもしょうがないよね的な。。。
    人物の内面を描くと言う意味では、あまり優れた作品とは思えない。

    聖書をモチーフとした作品だし、おそらく「timshel」を
    言わんがために書かれた作品なので、
    しょうがないと言えばしょうがないのかもしれない。
    聖書もしくはキリスト教への理解が足りないせいかもしれない。
    それでも、こんなにも重い枷と選択を迫られる、ある意味、
    選ばれた人間と言うのは悲しすぎる気がした。
    キリスト教徒の人だったら、神の業として理解できるのかなぁ。

    読んで損は無いです。
    文庫で4冊ですが時間もかかりません。
    「timshel」の意味を知っただけでも十分、価値はあった。

  • 通勤時間に本が読めるおかげで、文庫4分冊もいいペースで読了できた。

    1巻で、キャサリン(ケイト)という女性の存在が重要な位置を占めている気がする という思いを抱いた。それは全巻を通じて変わらなかった。職業病的な興味を喚起させるキャラである。それがこのように描写できるというのは、やはり当時(今から半世紀ちょい前)のアメリカでは、BPD的な人となりを有する人が目につくところに存在していたということに他ならないだろう。解説によると、スタインベックの2番目の妻がそんなお人柄だったとか。そんな間近にいれば、リアリティをもって描けるかも。

  • 世代は変わっても、変わらないもの。
    時代が変わっても、変わらないもの。
    悲しい性も、逃れたい業も、愛を求め苦しむことも、逃れられない運命がある、ということをずっと考えさせられました。

    愛とお金など、自分が求めていないものは充分にあり、自分が求めているものは手に入りがたいという切ない苦しみ。手にしたと思っても離れていってしまう。輪廻的というか、諸行無常というか、東洋的な思想がものすごく入り込んだ作品でした。

    そのことを引き立たせるためにリー、キャル、サミュエル一家など
    多くの登場人物がトラスク家の人間たちと絡み合ってきますが、
    それぞれがまた個性豊かで魅力的でした。

    何もかもがうまくいく人間なんてきっといなくて、
    誰もがもがいて苦しんで。
    ただ人から見れば些細なことかもしれないけれど、当人にとっては
    もうどうしようもなくしんどいことって、世の中にあふれているんだろうなぁと考えさせられました。

    なんかうまくまとめられませんでしたが、2012年最初の読書は
    ものすごく考えさせられるものになりました。

  • 神はあなたに予言もしていないし、命令もしていない。あなたは自分で、その運命に立ち向かって良い。自分の道を選んで良い。
    「ティムシェル」が僕の大切な言葉になった。

  • アメリカの文豪
    ジョン・スタインベックの著書。

    長編小説の中で
    随所にスタインベックの哲学が
    散りばめられている。

    内容は正直僕には重すぎて、
    読んでいて憂鬱な気分に
    なることが何度もあった。

    これだけの数の登場人物を
    それぞれ人間関係も含め
    とても上手く描いているところは
    さすが文豪と呼ばれることだけある。

    また、少し昔のアメリカの生活環境が
    垣間見れたりするのも良い。

    一番印象に残ったのは、
    第4部冒頭で
    「人は皆幸せになりたいと願うが、
    そこに辿りつくために
    過ちを犯すことがある」
    というようなことをまとめていたところ。

    そして物語でも重要なキーワードである
    「ティムシェル」。

  • キャル(ケイレブ)は密かにケイト(実母キャシー)の店を訪れ、ケイトと対面。ケイトが何かを恐れていることを見抜く。アダムはレタスの冷蔵輸送計画を立ち上げるも失敗。財産を失い、トラスク家は町の失笑を買う。この件で最も傷ついたアロンは、町を出て牧師になることを決意する。

    レタス輸送で失った財産の補填。そして何より、愛する父に認めて貰うため。キャルは野菜の先物取引で得た利益を、父アダムに譲ろうとする。しかし、マネーよりも教養や人格陶冶を重んじるアダムに拒まれる。傷ついたキャルは、無知なアロンをケイトの店へ誘う。

    実母キャシーの正体を知ったアロンは絶望から軍隊へ志願、そして戦死してしまう。アダムは脳卒中で倒れ、刻一刻と死期が迫る。キャルはアダムに己の罪を告白。「汝能(あた)ふ」という言葉を残し、アダム・トラスクは逝った。

  • とっても感動しました!キャルに幸せな人生を歩んで欲しい。

  • 原罪を背後に厳然と据えながら、人間の美しさ、醜さを徹底的な冷徹さで描いていく。
    あなたは罪を治めなければならない。

    彼はその原罪を許されたのだろうか。

  • アダム、アロン、キャル、アブラ、キャシー、リーの人生。
    自分の母親の正体を知ったアロン。アロンにキャシーの正体を知らせたキャル。軍に志願するアロン。キャルの贖罪。

    市川図書館
     2009年10月9日読了

  • この4巻の中で一番分厚い巻である。

    本当に文庫本にしては分厚い。

    読み応えはたっぷりである。

    双子は、大きく成長し、世代の悲しい繰り返しが始まる。

    そして、母親との存在の対峙である。

    父の愛に枯渇するキャル。

    夢見がちなアロン。

    迷える父アダム。

    本当にこの親子は不安定で繊細である。

    話の展開に私は、今回想しているときに思った。

    いとうせいこうの全く関係のないドキュメントといっていい植物について

    書いた文庫本を読んだのだが、植物についてこう説明している。

    「毎日が昨日と違うこと。
     自分を繰り返さぬこと。
     だが、1年を経てまたその差異を保ち、繰り返すこと。」(ボタニカルライフ著いとうせいこう)

    ここに生き物の1つの真実をみることができると思う。

    私たちにこれから起こることは決まっている。

    常に毎日死に向かって直進し、成長し、老いてゆき、死んで行く。

    それは世代間でも同じだし、時代も人種もさらには生き物も星とも一緒なのである。

    だけれども今日も明日も毎日に起こることは違う。

    なのに一様にいきものは皆同じ方向を向いて生きて死ぬのだ。

    ここには、同じような過程をだどるというのに、

    その内容が違うことを指していると思う。

    人間の人生にとって、この内容が大切なのだ。

    ここは繰り返さぬこととあるが、むしろ繰り返すことができない

    である。

    繰り返せることがあるはずがないのだ。

    毎日に何一つとして同じことなどない。

    これをこの物語に当てはめると、双子には大きな悲しみが世代を超え降りかかるが、

    彼らには母がおり、迷ってはいるが父がおり、そしてサムとリーがいてアブラがいるのである。

    アブラは、ライザのような強固さはもっていないが、

    もっと懸命で彼女も少女から女性に成長する過程で現実を得ることになる。

    この力が

    そして、古書店をひらくといいながらも、アダムの家の家族になって、すべてを見守り

    切り盛りしてきたリーの力が

    この悲しみの繰返しを繰り返させない力なのである。

    繰り返すことのない毎日であるからこそ、

    私たちはあの腕を上げる父親の姿の涙し、

    希望を見ることができるのである。

    繰り返されることはないのだ。

    許されてもいいのだ。

    すべては繰り返されるという呪縛。

    その幻が破れ、許され未来に笑うことができることがどれだけ素晴らしいことか。

    私たちは、能ふことができるのだ。

    選ぶことができるのだ。

    こんなちんけな言葉では言い表せないが、汝能ふ(あた)

    ということの人間の根源と言えるような力。

    その人間の大切な本質的な力にこの長く壮絶な物語の中で教えられた。

    今表現できることはこのように、ただただ文字数を連ね、

    言葉をつくすしかない自分が情けないが、

    ぜひ皆様に読んで頂きたい作品である。

    私は人生に衝撃を与えるいい作品に出合ったと今でもこの物語を思い出して

    感動しているのだ。


  • 【09.4.3/図書館】

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