ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)

  • 566人登録
  • 3.94評価
    • (55)
    • (80)
    • (37)
    • (7)
    • (5)
  • 75レビュー
制作 : 黒原敏行 
  • 早川書房 (2010年5月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200601

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
ベルンハルト シ...
伊坂 幸太郎
冲方 丁
ジェイムズ・P・...
有効な右矢印 無効な右矢印

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)の感想・レビュー・書評

  • 核戦争か何かでの文明崩壊後、分厚い雲に覆われた世界は寒冷化が進行して冬を越せそうにない。
    父親と息子は生きるために、ひたすら南を目指す。

    道中では人間性を失った人工物の数々、奪い合うために殺し合った痕跡、酷いものばかりしか目に映らない。

    「私たちは善い人だ」
    そう諭して、息子が目にしたことのない世界の話をして、先へと進む。


    "私たちは火を運んでいる"という比喩が度々使われる。
    火とはは何かの解釈が解説でも検証されているが、俺はそれを"人間性"だと考える。

    幼い子供は世界を知らない。ゆえに純真無垢な存在だ。しかし、物語の世界では稀有な存在だ。
    人間性を無くした悪ばかりの世界で、善たる子供は人間性という火を運ぶ。
    フッと息を吹きかければ簡単に消えてしまうそれを、喪うことのないよう父親は息子に託す。

    果たして父親は善なのか。息子を守るために他人が死につながる行動をすることもある。
    父親が火を灯し続けていられたのは、息子に自らの火を移すため。
    なれば、ラストシーンで父親はやりきったことになる。

    ひたすらに陰鬱な描写が連続し、ひたすら二人が歩き続けるだけの小説だ。
    緻密に嫌になるほどに文明崩壊後の世界を細かく書くことで、人間性とは何かを問いかける。

  • カートを押す父と息子がひたすら道を歩く。日々の食料を求め。南へ。海へ。
    憩える場所は容易く襲われてしまうから、カートに載せられるだけの荷物に絞りつつ。

    核だか彗星だかの災厄ののち、世界は灰に覆われ。
    荒涼。寒気。木も死に。動物もいない。そこここに炭化した死体。夜は真の闇。
    滅びゆく、というか、すでに滅んだ星で、残された少数の人間は、互いに係らず、助け合わず。互いに脅えあっているのだ。
    人を食べるか食べないか。略奪するかしないか。レイプ。殺人。(を怖れて妻は……。)(マッドマックス。北斗の拳。子連れ狼。バイオレンスジャック。ブラックライダー。)

    ふたりで生き延びるには人を助けてはいられないと父は断言する。
    息子はそれをわかっていてもしかし、それでも助けてあげられないかと問う。
    カタストロフィの後に生まれた子を護るために、父は鬼にもなる。このトーンに変動はない。
    繰り返される「ここで待っていろ。いなくなりはしない」。不安な子供。
    強盗を警戒し、残弾を気にしながら拳銃で倒す。
    しかし時折り心が折れそうになり、もう生きていたくないとも思う。(が、息子に漏らしたりはしない。)
    とはいえ、息子は父がいなければ生きていけない、父は息子がいなければ生きる意味がない。

    筋に大きな劇はない。
    淡々と移動。場所の調査。食べ物の確保。他人への警戒。「善い人々」との出会いを期待しつつ。
    繰り返しの中で一貫するのは、親子の語る「火を運ぶこと」。
    善意。尊厳。善さ。尊さ。人間らしさ。あたたかさ。輝き。その反面、世界を滅ぼした文明でもある。つまりはプロメテウス。

    ロードムービー→ロードノベル→アメリカならではのフロンティアスピリット→ウェスタン。
    カギカッコのない会話・読点が排除された文体から醸されるのは、詩的、象徴的、寓意的、原初的、神話的な描写水準。
    細かいところは描写されるが、全体はまったく靄に包まれたまま。
    だからこそサバイバルという極めてミクロな視点を保ちながらも、抽象的で幻想的な話にも見える。ここにポエジーが生じる。

    最後まで、父は絶対に息子に絶望を語らなかった。
    だからこそ保たれた少年の「善さ」。世界の実相を見てしまった上での。
    父は息子の肉体だけでなく魂をも守ろうとした。
    本当に少年の無垢が世界を救うのかもしれない。

    母を思わせる女性に抱き留められる少年の姿は、作者が描かざるを得なかった救い。
    安直でどうかと考えることもできるが、最低限親として、放りっぱなしにはできなかったのでは。

  • 灰ともやに包まれた死に行く世界を旅する親子の物語。

    「この灰ともやに包まれている」という構造は物語自体のものでもある。
    手元ははっきり見える。
    しかし、遠くを見ようとすると途端にはっきりしなくなる。

    たとえば、船からコンロを取り外そうとするシーンがある。
    その行為は非常に細かく描写される。
    しかし、この世界に何が起こったのか、それからどれだけの時間が
    経過したのか、ここはどこなのかについての描写はほとんどない。

    そのため、物語全体を見通すことができない。
    常に目の前のことしかわからない。
    親子も、小説を読んでいる私たちも。

    そして、そこに作者独特の文章構造が加わる。
    いわゆる地の文にそのまま会話文を入れるのだ。
    少し抜粋すると

    足を止めて少年を振り返った。少年は立ち止まって待った。
    もう死ぬと思ってるだろう。
    わかんない。
    死にはしないよ。
    わかった。

    みたいな感じ。

    読んでいると非常に不思議な感覚にとらわれる。
    物語に溶け込んでいく感覚?
    取り込まれていく感覚?
    そして、あの世界はもしかしたら、私たちの世界とそれほど離れた場所に
    あるのではなく、実はすぐそばにあるのではないかと感じさせられる。
    なにしろ、何があったかはわからないのだ。
    「彼」もそのときまでは普通の生活を送っていたはずだ。
    なにかが起こり、彼はあの世界に放り込まれた。
    私たちに同じ事が起きないと言い切れるだろうか。

    具体的に様々な事を描きながら、同時に非常に抽象性の高い幻想的な
    物語になっていると思う。
    面白かったです。

  • 何かが起こって終わりの寸前まで行ってしまった地球上、父と息子が銃を手に山や道路をただひたすらに歩いて生き延びようとする物語。

    私が苦手とする緊急時ならではのヒステリックな愛の要素はなく、驚くほどたんたんと、父として平常を一度も経験したことのない息子をどのように育てるのかという苦労や温かい親子の言葉のやりとりが綴られている。

    「火を運ぶもの」=人間としての大切なもの、を意味していて、それは善意だとか尊厳だとかそういうものだと思うんだけど、こんな緊急時にあんなに良い息子に育ててお父さんあっぱれです。息子がずっと火を手放さないことを祈る。

  • 天災地変か戦争か、全てが失われて
    奪われていく死に絶えた灰色の世界、
    息子にヒトとしての良心、理性や、
    消え行く神の理想や、善き者の側にとどまろうという
    希望を重ね、育み、生きていく父親。
    なによりも、生きていくという希望を棄てず。
    「渚にて」とは違った形で淡々と重ねられる会話で
    歩んで来た道のり、時間とともに少年の成長が感じられる。

    もしかすると新しいものは人以外生み出すことがない世界で
    息子は父の姿を追い、善き者として生きていくことができるのか
    父の希望や理想は、人の理性は生き延びられるのか。
    火を運び続けることができるのだろうか。
    火とは何なのだろう。人間性?希望?理性?
    私にとって、貴方にとって、それは違うものなのかもしれない。

    映画も見てみたい。

  • 2017/08/18/Fri.(ブックオフにて中古で購入)

    2017/08/20/Sun.〜09/07/Thu.

    施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』の第2巻を読んだ時に興味をもち、ずっと読んでみたいと思ってた一冊。

    暗くて寒い世界。灰と泥にまみれた世界。人を食べるやつもいる。
    なのに、物語には不思議と品格を感じる。
    この読後感を上手に書き表すことはできないけど、他の小説では味わえない余韻に浸れる。

  • 2017/06/29
    順番は逆だが、19XX年の様な時代。何かによって滅びたあとの世界。
    南へと旅する父と子の話。
    今の私達がゼロだとすると、彼らは決してゼロ以上にはならない。
    父のおとぎ話を子が継承する?
    食料があるときにゲットできそうならどうなるか見たかった

  • 傑作だとは思わない。もの凄く心が動かされたわけではない。核戦争後の荒れ果てた世界で、ひたすら南を目指す父子の物語。淡々した描写と父子の詩的な会話が続き、どこに連れてかれるのだろうと不安を感じながら読み進めるも、結局、最期まで何かが解明されるわけではない。ただ印象は非常に強く、夢にまでみてしまった。読後感を述べるのが難しい本は久しぶりである。

  • 荒廃した世界。灰色の世界で夜は暗く寒い。殺人者や略奪者が多く、誰も信用できない。そんな世界を父と子の二人が南へ歩いていく。
    他人を信用しない、慎重な父と、純粋で他人を助けたいと思う子ども。
    どちらの行動、思考にも一理あって考えさせられた。
    ラストが好き。

  • 父と子がカートに荷物を積んで荒廃した世界(「The Walking Dead」みたいな、でもゾンビはでてこないけどね)を生き抜く。
    本を読んでから、映画化になっているのを知ってYouTubeで映画の予告を見た 映像化になってもなかなか良さげな感じ DVDが出てるので機会があれば見てみたい 
    小池昌代さんの解説がすんばらしかった 解説だけ何度も読み返した 読み応えのある解説はうれしいな ☆4.5

  • 過酷な状況の中で人間の持つ「善さ」を体現する子供。ムイシュキン公爵のような無垢な存在。こんな子供は普通にいないが、なぜか実在感が高く、自分の子供とかわらなく感じる。
    なぜラストに、父親が死んだとたんに、救う人間がでてくるのか、しばらく子供が苦悩してから出てきた方が、リアリティもあるし、救う人たちのありがたみもわかるはずなのに。

  • 現代アメリカ文学のロードナラティブ。
    SFとロードの融合は去年見た映画のマッドマックスを彷彿とさせられた。
    この一冊に出会えてよかった。
    作者についてもっと知りたいと思えた。

  • 何らかの大災害によって滅びた後の世界を、父と息子が道に沿って歩いて旅をする話。死者の残していった食料や衣服、死んだ木々や灰の混じった水といった、死んだものたちを親子は糧にして「火を運ぶ」。鳥のように直線距離で進むのではなく、道の上をさまよいながら。
    乾いた文体、カギカッコの付かない詩的な会話文、読点がほぼ排除された地の文、滅びた世界に関する詳細な描写によって、生きることが絶望であるような残酷な世界観にどっぷり浸ることができた。
    私はちょうど「マッドマックス 怒りのデスロード」を見たばかりなので、この本の読後感はその映画を見たときと同じような感覚だった。
    聖書や何らかの比喩には疎いのでそのあたりのメッセージ性は私には分からなかったが、少年の善性に心が潤され、滅びた世界の絶望感も心地が良かった。

  • 廃墟を親子で彷徨い、父親が死に、また子どもが彷徨うという話である。映画化されたとあるが、日本で上映されたであろうか?

  • 二人のセリフは多くを語っていないが、それでこそ文字通りの意味ではなく深みに潜む本心や疑問を考えさせられる。場面設定も多くのことが捨象されている。なぜ世界は荒廃しているのか、母はどうしているのか、向かう先に何があるのか、なぜ二人は生き残っているのか。あらゆることを捨象することで二人の関係性がより浮かび上がり、二人を取り巻く世界が無限に広がる途方もなさを感じさせる。自分は無限に絶望を感じたが。

  • 終末を迎えようとしている世界で、父親と子供が南を目指して進んでいく。ほとんど絶望しかなく、あたたかいのは親子愛だけ。ラストは涙が止まらなかった。それがどういう涙なのかは読んでみてください。いつかくるであろう終末に備えなくてはと思った。今の地球がこうならない保証はない。

  • 近未来世紀末的な希望のない世界、、、での希望

  • 終末後の世界をただひたすらさまよう、父と息子の親子二人の話。
    その日を生きれるかどうかもわからない日々を送る様子が語られる。親子の会話で成り立っている物語といえる。不思議な話。最後はよかったのか救われたのかよくわからないまま結末となる。

  • 父の視点。息子の視点。2つの視点で感情移入をしながら読んだ。物語が終わった時に感じたのは、一言で言い表すことができない温かなものが、父から子へと間違いなく伝えられたという確信だった。そんなすばらしい場面に立ち会った気にさせられる物語。

  • sfでもなく、細部まで語らずのスタイルがいい。

  • 誰もが、小さなろうそくの灯を懸命に守っていくのだと、信じたい。人それぞれに、火も守り方も違うのだろうけれど。

    荒廃しきった世界を読み進めていくのは辛かった。が、引き込まれていった。

  • 映画化によって話題になっていた2010年に、シンガポールの日本人向け本屋で購入。しかし、途中であまりにも読むのがつらくなって、読み終わったのは2014年・・・と言う感じで随分時間がかかった(あきらかにかかりすぎ)。

    本書の舞台となるのは、おそらく核戦争により人類のほとんどが死滅してしまった後の北米大陸。主人公の男性は息子とともに、「火を届ける」という漠然とした言葉とともに、南の海岸へと向かう。すでに荒廃しきったこの世界では、飲み物や食べ物をめぐって他の人間との争いがあり、人食も行われている。そういった「枯れ切った」世界を主人公と息子はひたすら歩き続ける。

    日本のゲームやファンタジーとともに育った僕は「読み進めれば、この世界がこうなってしまった」理由がわかるのでは、と期待をするのだが、その期待はエンディングまで満たされずに終わる。世界がなぜこうなったかという「大きな物語」にはいっさい触れられず、父親は病死をし、息子は道行く家族に拾われ旅を続ける・・・というのが本書の結末だ。

    カテゴリとしては本書をSFに分類したが、これはかなり強引なカテゴリわけで、実際には「文学」とするのが正しいと思う。宗教的なテーマや訳文越しであっても伝わってくる美しい文章は、読者をまるでその世界で主人公と一緒に旅をしているような気分にさせてくれる。

    一方でSFやミステリのようなカタルシスとは最後まで無縁の作品でもある。映画版は見ていないのだが、精神的に元気なときでないと、とてもではないが見る気にはなれない。そういう意味で読み手を強く選ぶ作品であると思う。

  • 以前、「天地明察」の冲方丁さんがTV番組で紹介していた1冊。SFだと思ってましたが、これは何になるんでしょうか?

     何らかの原因により、消失し灰で覆われた世界を息子と二人、「火」を運びながら何かを求めて旅をします。
    ここで言う「火」とは、心とか魂とか、そう言う感じのもの。太陽も霞んでいる世界は、暗くどこにあるか分からない未来。もうどこにも無いかもしれない希望を探して、息子を守りながら、ひたすら歩き続ける。

    上手く表現出来ませんが、この暗いストーリーがなのに、なぜ惹きこまれるのか・・・不思議です。

    2007年ピュリッツァー賞を受賞した、ベストセラーだそうです。知らなかった。

    暗い絶望の中で、自分を貶める事無く、諦めない。

    このレビューを書く事で、この本の良さが整理出来た気がします。

  • 絶望の世界ですが、最後の最後に希望はやはりそこにあるんだなと感じさせてくれた本でした。暗い話なので、読み進めるのは結構大変でしたが。。。

全75件中 1 - 25件を表示

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)に関連する談話室の質問

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)に関連するまとめ

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)の作品紹介

空には暗雲がたれこめ、気温は下がりつづける。目前には、植物も死に絶え、降り積もる灰に覆われて廃墟と化した世界。そのなかを父と子は、南への道をたどる。掠奪や殺人をためらわない人間たちの手から逃れ、わずかに残った食物を探し、お互いのみを生きるよすがとして-。世界は本当に終わってしまったのか?現代文学の巨匠が、荒れ果てた大陸を漂流する父子の旅路を描きあげた渾身の長篇。ピュリッツァー賞受賞作。

ツイートする