夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫 イ 1-7)
- 早川書房 (2011年2月4日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151200632
感想・レビュー・書評
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文学ラジオ空飛び猫たち第63回。 音楽と才能、人生の夕暮れに直面した人々の姿、夫婦の危機といったことをユーモアたっぷりに描く大人な短編集です。副題は「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」。 この短編集でもカズオ・イシグロ作品に共通して言える、自分は何者かというアイデンティティの問題が含まれていて、短いながらも彼の作品の魅力を味わうことができます。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/63-e1ajupc
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なんかこう切ない雰囲気がとても好き。
イシグロさんって、淡々と進む情景描写に、綺麗な色の哀愁を乗せるのがとても上手な作家なんだと思う。たぶん、情景と感情の絵をいつも思い描いている人。うまく色が溶け合わさせて、読者を癒してくれる。
この本はそれがすごく出てる。
サンマルコでいつかこんな音楽家に会えますように。 -
とてもロマンチックな内容でした。
夕暮れと音楽がテーマになっていますが、人情もののように感じました。
消化不良気味はきっと読み手の想像力を誘うんだろうなあ。
旅に出たくなり、次に読む時は、ジャズやクラシックを聴きながら読みたいです。
見知らぬ土地へ放浪する音楽家たちの、優しい物語です。 -
是非、ジム・ジャームッシュ監督による映像化キボンヌ!な短編5つ。
日常が醸成する(多かれ少なかれの)狂気。これを伝え、あるいは理解させることに特化した言語が音楽だとしたら。
そんなテーマのもとに綴られる、どこか寂しい人たちの優しいストーリー。 -
短編集。笑って、しみじみして、唸って、ため息ついてまた笑って。
一番好きなのは「降っても晴れても」。
どれもラストは僕好みだった。 -
カズオ・イシグロ(1954-)は、『日の名残り』(1989年)で、イギリスで最も権威ある賞「ブッカー賞」を受賞した、世界的作家。長崎県長崎市で、日本人の両親の元に生まれましたが、5歳でイギリスに移住。成人までは日本国籍、その後、イギリスに帰化しています。2010年に映画化された『わたしを離さないで』で、また、2012年4月に、NHKで「カズオ・イシグロを探して」と題したドキュメンタリーが放送され、日本でもより知られるようになりました。
『夜想曲集』(2009年)は、「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」という副題が付いた、初の短編連作集。どの物語も、人生の後半や終盤にある人物が、自らの過去(=夕暮れ)を、ジャズ、クラシック、ポピュラーなどの音楽とともに振り返ります。
この連作短編集を読んで私は、自分が若い頃にこの本に出会ったならば、今とは違い、ストーリーの展開や場面設定の巧妙さにばかり感嘆しただろうと思います。しかし、人生も優に半ばを過ぎ、振り返る時間が堆積した今、私がこの短編集から読み得たのは、感情の渦に巻かれ、愚かしい選択を繰り返してきた人間の、それでも肯定する他ない人生への愛着でした。
いずれにせよ、これが私の人生だった。そしてこれからもそれは同じ――。作家と出身地を同じくする私は、身勝手にも、遠いイギリスからそんな激励をもらった気持ちなのです。(K)
「紫雲国語塾通信〈紫のゆかり〉」2012年1月号より。 -
夜想曲集:音楽とゆうぐれをめぐる五つの物語
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カズオ・イシグロの短編集。音楽、夕暮れ、男と女。間違いなく傑作。
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音楽と色々な人生の黄昏時が淡く書かれてる。説明とか不粋な事は一切しない。イシグロブシ痺れるぜ。
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過ぎ去りし時代の音楽は知らない曲ばかり、YouTubeで探し聴きながら読んだ。格調高い文章は行間に時間の狭間が織り込まれる。情景を空想し登場人物に自分を重ね合わせて読む。すると今日一日疲れた体、心が癒される、不思議な文体である。