日はまた昇る〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫 ヘ 1-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200694

作品紹介・あらすじ

第一次世界大戦後のパリ。芸術家が享楽的な日々を送るこの街で、アメリカ人ジェイク・バーンズは特派員として働いていた。彼は魅惑的な女性ブレットと親しくしていたが、彼女は離婚手続き中で別の男との再婚を控えている。そして夏、ブレットや友人らと赴いたスペイン、パンプローナの牛追い祭り。七日間つづく祭りの狂乱のなかで様々な思いが交錯する-ヘミングウェイの第一長篇にして初期の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 『日はまた昇る』ヘミングウェイ著

    1.購読動機
    筒井康隆さんの『読書の極意と掟』のなかの一冊です。
    筒井康隆さんほどの人が影響を受けた本ならば、ぜひと考え、購読しました。

    2.物語
    ①時代背景と主人公
    時は第一次大戦後です。
    主人公は、アメリカ人、作家としてデビューしたてです。
    彼が友人らとフランス、スペインと休暇を過ごす様子が描かれています。
    ②描写
    フランスの川沿いの風景、カフェ、スペインの熱気、闘牛祭りの興奮の描写は非常にイメージしやすいものです。
    異国の空気を感じとれる文章です。
    ③進行
    一方で、大きな事件や事故は起きることなく、物語は最後まで進行します。
    したがって、読了後に、さて、ヘミングウェイは何を僕たちに伝えたかったのか? と戸惑うことも事実です。

    3.後書きと解釈
    後書きを読むことで解釈が進みます。
    ①ヘミングウェイと主人公
    ヘミングウェイ自身が第一次大戦を経験していること。
    そして、主人公もヘミングウェイと同じく物書きであること。
    さらに、登場人物は実際の人物を参考にしていること。
    ②戦争で秩序が失われた時代。
    生きる価値の再定義がなされた時代。
    その時代に生きたヘミングウェイは、主人公の作家を通じて表現したことは『自らを律すること』とあります。
    ③対比
    物語のなかで、酒に溺れるもの、金にまみれ破産したもの、感情に負けて暴力を振るうもの。
    彼らと主人公を対比させて、主人公で締めるラスト。
    「日はまた昇る」のタイトルになる理由がなんとなくわかりました。

    #読書好きな人と繋がりたい。



  • ヘミングウェイによるロスト・ジェネレーションの代表作品であり、描かれているのが、ロスト・ジェネレーション世代のためなのか登場人物が素面の場面はほとんど見られない。ただ当時の華やかなヨーロッパの社会や闘牛の臨場感の描写が興味深い作品である。

    スペインへの旅はかなり豪華なものであり、男たちは(イギリス出身のマイクを除き)経済的にもかなり裕福のように見える。しかし、彼らの中にも肉体的・精神的な弱さがあり、それがストーリーの中で度々浮き出てくるのも興味深い。

    個人的には、ブレットに好意を抱く2人を冷静な目で見るジェイクに着目したい。彼は他の2人の男性に比べ成熟した雰囲気を醸し出しているように感じる。ブレットも彼に好意を抱いているようであるが、死と隣り合わせである男の魅力は他のどの男性よりも魅力的に映るもので、彼女は闘牛士のロメロに惹かれていく。従軍も闘牛と同様死と隣り合わせであったかもしれないが、それによる魅力は「いまここ」でしか発現しないのだろう。ジェイクが戦争で負った肉体的な傷(それは男性として致命傷である)がある中で、彼女とロメロが結ばれようとしているのを見せつけられるのはなかなか儚いものである。

  • 日もまた昇る。
    THE SUN ALSO RISES

    ストーリーとしては単純ではっきり言って見るところはないと思う。
    何より、主人公がこれほどまでに傍観者であるということが
    物語の展開部にいたっても楽しませてくれない。

    主人公の客体化を徹底してさけていて、
    かつ、内面描写を最小限にとどめたその効果は
    男というジェンダーのつまらなさを際立たせている。

    川釣りや、バスでのワインの飲み方など
    旅情をしのばせる部分ではよくできた観光絵葉書を思わせる
    カットもある。

    タイトルに話しは戻すが
    つまらないものをオブラートに包もうとするその根性が
    さらにいけすかない。

  • 自分が現代の普通の価値観を持った、奔放なタイプでない女性だからか、ブレットが全く気に入らないし、作品としてあまり好きになれなかった。今で言うサークルクラッシャーとも言えるか。振る舞いの奔放さの割にブレットが34歳と年増なのに驚いた。

    物語の語り手がジェイクなので「真に愛するジェイクと結ばれないから男の元を転々とする哀しい女」と読めるらしいが、それにしたってどうせジェイク以外の男たちにも似たようなこと(愛しているのはあなた、みたいな)言ってそうだし、その時どきでブレットにのぼせ上がっている男たちの様にもひいてしまう。

  • ヘミングウェイってハードボイルド系だし、老人と海もそれほど好きじゃなかったから、そんなに自分には刺さらないかな…とあまり期待せずに読み始めたのだけれど、予想に反して序盤のパリ描写から圧倒的に引き込まれて素晴らしい作品だと感じ、かなり熱中して読んだ。ファンが多いのも頷ける。ブレッドの造詣は今の視点からだと色々指摘はあるかもしれないが、個人的にはかなり魅力的でオーラがある女性人物だと思ったし、こういうキャラクターはなかなかいない。物事を直接語らず食事やらワインやらを粛々と嗜んでいく描写も粋だな〜など感心しっぱなしだった。そしてセリフの鋭さも見事。クリスプな語り口で、寄るべない心の寂しさみたいなものがひしひしと伝わってくる。大久保訳で読みたいところ。

  • 総合研究大学院大学長 長谷川眞理子氏
    いくつもの人生を経験
    2021/4/3付日本経済新聞 朝刊
    自然が大好きな子どもだった。



    3歳から数年間、和歌山県紀伊田辺の祖父母の家で暮らしました。海と川と裏山には、トンボや貝、イソギンチャクといった色々な生き物が当たり前のようにたくさんいて、あの自然の素晴らしさが私の原風景です。

    小学校に入る前に東京に戻りました。少年少女世界文学全集が定期的に家に届くようになり、小学4年生のとき面白くてなめるように何度も読んだのが『ドリトル先生航海記』です。

    ドリトル先生はご存じ動物の言葉が話せる博物学者。行方不明になった世界一の博物学者を探しに仲間と共に航海に出ます。とにかくワクワクし、生き物への興味をかき立てられました。

    博物学者のような職業は今はないですが、昔は西欧文明にとって「前人未踏」の地が世界中にあった。探検に行き、動植物を記載・記述し、採集して持ち帰る。その生活が垣間見えました。商売とは無縁で紳士然として大きな家に住んでおり、子供心に憧れました。

    中学に入ると大人の世界文学全集を買ってもらい、アーネスト・ヘミングウェイやグレアム・グリーンの作品に出合いました。ヘミングウェイは最初に『武器よさらば』そして『誰がために鐘は鳴る』。『日はまた昇る』は大学生になってからですが、あの主人公たちの大人の人間関係はよくわからなかった。これがヨーロッパの大人なんだろうという感じですかね。

    多感な時期にはまったのがサマセット・モームの『人間の絆』。主人公が成長過程で葛藤する姿が我が事のようにうれしく、楽しく、涙しました。

    チャールズ・ダーウィンの『種の起源』『ビーグル号航海記』は最初の頃は全然理解できなかった。すごいことを言っているな、とは思いましたが。

    彼の著作に真剣に向き合ったのは後に同僚らと訳を手がけるようになった時です。ダーウィン流のものの書き方なのですが、文章がくどい、まだるっこしい。すぐ結論を言わず、可能性について、ああだ、こうだという。

    キリスト教の人間観が全世界を支配する時代に挑んだ科学者ですから、慎重居士になるのも無理ないです。

    28歳の時、博士課程を休学し、国際協力事業団(現国際協力機構、JICA)の専門員としてアフリカに行く。

    歩いてキャンプをしながら野生動物を見る国立公園を日本の援助で造る計画に参加しました。場所はタンザニアのタンガニーカ湖のほとり。私からするとまさに「前人未踏」の地です。

    文化の全く違う、しかも年上の人を使ってプロジェクトを遂行しなければなりません。日本からは予定通り進めよとプレッシャーがかかる。くじけそうなとき、心の支えになったのが、「アラビアのロレンス」ことT・E・ロレンスが書いた『知恵の七柱』です。

    第1次大戦下、ロレンスはアラブ軍を率いて立ち上がる。が、命じても部下たちは思うようには動いてくれません。英国の国益とアラブの国益との板挟みにあいながら、自分がちゃんとやり遂げねばならぬという強い意志がとても共感でき、参考になりました。

    研究職のポストがなかった。

    東大理学部の教授から「女は東大で教授になれない」と言われたことがあります。研究を続けようと他大学でポストを探しましたが見つかりません。

    1990年から専修大学法学部で科学を教えることが決まり、最初に手にした本がシモーヌ・ヴェーユの『ヴェーユの哲学講義』。哲学を大学で教えなければならない理由についてのメッセージが強烈でした。若い頃に哲学を学ぶのは、当たり前のことに疑問を持ち、批判精神を養うためである。哲学を科学に置き換えられます。科学の知識ではなく、この思考法を身につけてもらおうと決めました。

    学生に科学リテラシーがないと文句を言いながら、自分に社会リテラシーがないことに気づきました。『文明の衝突』(サミュエル・ハンチントン著)や『レクサスとオリーブの木』(トーマス・フリードマン著)などを読むようになり、読書の幅が広がりました。

    本を読むと想像する力のおかげでいくつもの人生を経験できます。若い人にはぜひ読書をしてもらいたいです。

    (聞き手は編集委員 矢野寿彦)

    【私の読書遍歴】

    《座右の書》

    『ドリトル先生航海記』(ヒュー・ロフティング著、井伏鱒二訳、岩波少年文庫)

    《その他愛読書》

    (1)『日はまた昇る』(アーネスト・ヘミングウェイ著、高見浩訳、新潮文庫)
    (2)『情事の終り』(グレアム・グリーン著、上岡伸雄訳、新潮文庫)
    (3)『人間の絆』(全3巻、サマセット・モーム著、行方昭夫訳、岩波文庫)
    (4)『種の起源』(上・下、チャールズ・ダーウィン著、渡辺政隆訳、光文社古典新訳文庫)
    (5)『人間の由来』(上・下、ダーウィン著、講談社学術文庫)は自身が訳した
    (6)『知恵の七柱』(全3巻、T・E・ロレンス著、柏倉俊三訳、平凡社)。現在は全5巻の完全版も
    (7)『指輪物語』(新版、全10巻、J・R・R・トールキン著、瀬田貞二ほか訳、評論社文庫)
    (8)『ヴェーユの哲学講義』(シモーヌ・ヴェーユ著、渡辺一民ほか訳、ちくま学芸文庫)
    はせがわ・まりこ 1952年東京生まれ。理学博士。専門は行動生態学と自然分類学。イェール大客員准教授や早大教授を歴任し、2017年から現職。

  • 主人公ジェイクとブレットのラブストーリーと、あらかじめ知っていたから最後まで読めたが、もし、それを知らなかったら、たぶん途中で読むのを止めていたと思うw
    というのも、極端な話、「朝起きたら、顔を洗って、歯を磨いて、朝飯を食べて。
    朝飯は、何と何で、うまかった。朝飯の後は、仕事に出かけて……」みたいな話なのだ。
    それも、延々(爆)

    正直、第1章は、(ジェイクとブレットのラブストーリーなんだと知っていても)何の話なんだか、さっぱりわからない。
    ただ、わからないながらも、そこは天下のヘミングウェイw
    全然、興味がわかない内容なのに、なぜか読んでいる自分が、自分で不思議だった。

    そんなストーリーも、スペインに行くあたりから、少しずつ面白く(というほど面白くもなかったがw)なりはじめる。
    いや。相変わらず、例の、「朝起きたら、顔を洗って、歯を磨いて、朝飯を食べて…」みたいな話なのだ。
    でも、スペイン旅行や闘牛といったトピック的になってくるせいかのか、そうでないのか?
    なぜか、次第にページをめくる速度が上がってくる。
    ていうか、妙に乾いた光景が浮かんでくる情景描写のせいなのかなー。

    そんな物語は、第二部の終わりで、ちょっとした盛り上がりを見せて。
    第三部で、また、例の「朝起きたら、顔を洗って、歯を磨いて、朝飯を食べて…」みたいな話になる。
    それも、第三部のその描写のダラダラ感は、さらにひどくなるとw
    ただ、そのダラダラ感がひどいがゆえに、あぁー、これは、まさに「ラブストーリー」なんだなーとわかってくるところは、さすがだなー!と思った。
    つまり、例の、「朝起きたら、顔を洗って、歯を磨いて、朝飯を食べて…」は、主人公ジェイクの喪失感が見せる、心象風景なんだろう。
    つまり、ジェイクがブレットを幸せに出来ないために、ブレットは他の男と付き合うしかないという、一種の失恋の後にジェイクが見ている風景の描写(失恋ソングの歌詞によくあるような)なんじゃないだろうか。
    そういう風に見ると、ブレットがいじらくて、哀れで、なにより、堪らなく愛おしくなってきてw
    うわぁ、やるせないけど、そのやるせなさがロマンチックぅ~!みたいな(爆)

    たぶん、そういう小説w

  • なぜアメリカ文学には男を振り回す性悪女が頻出するのかその理由の一端を見た。解説が一番面白かったまである。

    肝心の本編はあまりイントゥーできず。ハッとする表現を拾いながら読んだという感覚。

  • 正直現代と感覚が違いすぎて、よく内容が掴めないという感想を持った。物語としても、単調に書き連ねられていて、あまりよくわからない。

  • なんだろうこの寂しさ。★★★★★最高です。

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著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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