死との約束 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300165

感想・レビュー・書評

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  • 「アガサ・クリスティ」のミステリ長篇『死との約束(原題:Appointment with Death)』を読みました。

    『ポワロの事件簿〈1〉』、『ポワロの事件簿〈2〉』、『ヘラクレスの冒険』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。

    -----story-------------
    「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃ…」エルサレムを訪れていた「ポアロ」が耳にした男女の囁きは闇を漂い、やがて死海の方へ消えていった。
    どうしてこうも犯罪を連想させるものにぶつかるのか?
    「ポアロ」の思いが現実となったように殺人は起こった。
    謎に包まれた死海を舞台に、「ポアロ」の並外れた慧眼が真実を暴く。
    -----------------------

    1938年(昭和13年)に刊行された「アガサ・クリスティ」のミステリ長篇、、、

    以前、映像化作品の『名探偵ポワロ「死との約束」』も観たことがある作品… 4作品連続で「ポワロ」シリーズです。

    「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ。」という男女の囁きは夜のしじまを漂い、闇の中を死海の方へ消えていった、、、

    エルサレムを訪れた最初の夜、ふとこの言葉を耳にした「ポアロ」は、好奇心にかられながらも想った… どうしてこうも、至る所で犯罪にぶつかるんだろう。

    やがて「ポアロ」の予感を裏づけるかのように事件は起った… 当地を訪れていた「ボイントン家」の傍若無人な家長「ボイントン夫人」が死体となって発見されたのだ、、、

    一家の不安を救うべく、「ポアロ」は立ち上った… 謎に包まれた<死海>周辺を舞台に、アンマン警察署長の「カーバリ大佐」からの依頼により「ポアロ」が真相を追及する。


    家族を支配下に置いていた「ボイントン夫人」… 抑圧され束縛されていた「ボイントン家」の長男「レノックス」、その妻「ネイディーン」、次男「レイモンド」、長女「キャロル」に4人に「ボイントン夫人」を殺害する動機と機会があった、、、

    さらに、その4人は、身内の誰かの犯行と感じ、お互いを庇おうという思いから偽りの証言を行ったことから、捜査を混乱させてしまう… でも、「ポアロ」は、偽証を見抜き、一歩ずつ真相に近付きます、、、

    真犯人は家族の外にいたという驚きの展開が愉しめましたね… 冷静で賢い真犯人は、暗示にかかりやすい女性を利用して巧くアリバイ工作をしていたんですねぇ。

    「ボイントン夫人」が、「サラ・キング」に向けて話しかけた(とミスリードさせられていて、実は別な人物に向けられた)「わたしは決して忘れませんよ… どんな行為も、どんな名前も、どんな顔も」という言葉と、殺害された当日の午後に家族を自由な行動を許可するという、いつもとは違う言動を取ったことが真相を推理するヒントになっていましたね、、、

    家族に自由な行動を許可して、誰かを罠にかけて、さらに束縛しようという判断かと思いましたが、まさか、旅行者の中に新しい犠牲者を見つけ、料理すべき魚を捕らえるために邪魔者を一掃したかったなんて… 激しい権力欲、支配欲を持った暴君ですよね。

    同情の余地なしの犯罪だったし、「ボイントン夫人」亡きあとの「ボイントン家」が幸せになるという、読後感が心地良い作品でした。


    以下、主な登場人物です。

    「エルキュール・ポアロ」
     私立探偵

    「ボイントン夫人」
     金持ちの老婦人

    「レノックス・ボイントン」
     ボイントン夫人の長男

    「ネイディーン・ボイントン」
     レノックスの妻

    「レイモンド・ボイントン」
     ボイントン夫人の次男

    「キャロル・ボイントン」
     ボイントン夫人の長女

    「ジネヴラ・ボイントン」
     ボイントン夫人の次女

    「ジェファーソン・コープ」
     アメリカ人、ネイディーンの友人

    「サラ・キング」
     女医

    「テオドール・ジェラール」
     フランス人、心理学者

    「ウエストホルム卿夫人」
     下院議員

    「アマベル・ピアス」
     保母

    「マーモード」
     通訳

    「カーバリ大佐」
     アンマン警察署長、ポアロの旧友

  • 犯行は1件のみで途中やや退屈になるが、怪しい人物が多く誰もが犯人になり得るという点でハラハラさせられた。最後まで読んだ時の衝撃は凄まじい

  • 冒頭に「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」から、最後まで一気読み。犯人が想定外すぎた。

  • 三谷幸喜がアガサ・クリスティーを日本を舞台に翻案してドラマを書いているが、「死との約束」はその第3弾。見ていないのだが「オリエント急行殺人事件」「アクロイド殺し」は読んでいたものの、「死との約束」は未読だったのでこれを機に。しかし三谷さんはヘイスティングズが登場するやつを選ばないですな…(まあ思ったほど出てくる作品少ないんですけど)。
    多分ドラマだとそんな描き方できないのだろうが、プロローグ、第一部、第二部、エピローグと進む中でポアロが主体となって登場するのは二部だけで、他は1シーンずつしか出番がない。
    家庭を支配する「精神的サディスト」ボイントン夫人に束縛されたボイントン家の一族と、その旅行中に出会う人物たちとのやり取り、そして殺人が起こるまでが第一部。しかし海外ミステリって結構皆簡単に恋に落ちちゃうのな。びっくりだよ。あと会話の端々に時代性が垣間見えて興味深い。
    ヒントというか伏線を第一部で大量にぶち込んだところでポアロ登場。
    「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ」
    を直に聞いている(しかもそれを発した人間を第一部で特定している)ポアロだが、名探偵なのでそこに乗ったりはしない(小説っぽい)。真相は二転三転以上に転がり続ける。いや分からないわこれ。
    とはいえ、ちゃんとヒントは提示してあるし、真相を語る前に全てのピースは存在し、しかもポアロは親切にも着目点を途中で提示してくれる。しかし、真相との間に数々の「怪しい事象」が多すぎてこりゃ惑うわ…。ものすごく綺麗に読者の目を欺いてますな。
    心理学的分析に関してはやはり「???」となる部分も少なくない(時代性だろうと思う、E.クイーンを読んでもそうなるときがある)のだが、真相の導き方自体は論理的なので納得感があった。そういう意味では「超フェア」。
    あのエピローグはこの小説だから生きるのだろうなとは思った。むしろこの最後のためだけに謎解きが書かれたんじゃないかと思ってしまう。

  • 冒頭のあの一言が凄く印象的。途中までは長く感じた。解決編とても面白かった。謎解き部分も良いのだけどそれ以上に人間ドラマが濃厚。

  • 心理的な分析が多く残されていて、好奇心をそそられる展開だった。登場人物が美男美女という設定もなんか嬉しい。

    ボイントン夫人からサラに向かって言われたセリフの真意が暴かれた時はドキッとした!
    伏線がかなり念密に描かれていて楽しかった。

  • 第1部で人間関係が描かれ、第2部でポアロが殺人事件を解決する形式の作品です。真相に至るまでの展開が面白くて、かなり満足できる作品でした。
    内容的に面白かっただけに、翻訳の質の低さが残念でした。

  • そして誰もいなくなったでは読んでるうちに誰が誰かわからなくなって混乱してたけどこちらは全員のキャラが濃いのですぐ覚えられた
    おばちゃん殺さんでもみんなで逃げればいいのにと思いながら読んでたけど、まだ逃げたい気持ちに気づいたばかりなら考えが突飛になったり逡巡して諦めたりはあるだろうなってなった
    もしも犯行が行われずにちょっと経ったらみんなで逃げるってパターンも考えられそう

    真犯人が意外すぎてびっくり まだ読んだばかりでなんで?って感じだけど最初から読み直したらまた犯人に対して印象がかわるかも

    しかし犯人を自殺させるように仕向けるのやばいね

  • ドラマ化された原作。脚本の三谷さんが絶賛してたので読みたくなってKindle版ポチッとした。ほぼ会話で進むけど、後半一気に読み進めた。伏線回収、電子書籍だと読み返しが面倒ですね。ポアロの名推理、堪能しました

  • 三谷幸喜が今度のドラマの原作とコラムに書いていた本作はそういえば読んだことなかったなと、本当に久しぶりのアガサ・クリスティ。最近、本を読む気力がなかったのでリハビリにも昔慣れ親しんだクリスティはちょうどいいかと。ほどよい集中力が必要で、脳の中で映像も浮かびやすいクリスティのミステリは疲れている頭と体の癒しにぴったりだと読み終わって感じました。
    クリスティは本当に読者を欺くプロです。最初から読み手の気を逸らすことに全精力を傾けてたということが読み終わってわかるのだけど、完全に術中にハマってます。クリスティのすごいのは何も隠してないこと。逆にそのポイントとなる場面は何度も触れられており、読者はしっかりとそのシーンを覚えているのですが、それがそんなに大事なことだとは気づかずにきてしまい、ポアロの種明かしの場面であっそうだったのかとなるのです。たぶん多くの読者はこの作品を読む前にクリスティの有名な作品を読んでいる可能性が高く、今回はあのパターンに似てるかもなどと思いながら読むため、余計ミスリードされるということすら狙ってるのかもしれません。
    結局、三谷ドラマは見てませんが、日本だったら熊野古道だろうな…という舞台設定は納得。でもエキゾチズムは出ないよね。

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