象は忘れない (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300325

作品紹介・あらすじ

推理作家ミセス・オリヴァが名づけ親になったシリヤの結婚のことで、彼女は先方の母親から奇妙な謎を押しつけられた。十数年前のシリヤの両親の心中事件では、男が先に女を撃ったのか、あるいはその逆だったのか?オリヴァから相談を受けたポアロは"象のように"記憶力のよい人々を訪れて、過去の真相を探る。

感想・レビュー・書評

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  • ポアロシリーズあと2冊。小説家が集まる昼食会に出席したオリヴァ夫人。見知らぬ夫人・ミセス・バートン・コックスが話しかけてきた。「あなたが名付け親のシリヤの両親が心中した事件覚えている?母親が父親を殺したのか?それとも父親が母親を殺したのか?」という質問。オリヴァ夫人はポアロに真相を依頼する。オリヴァ夫人、ポアロは関係者に話しを聞く。シリヤの母親は【ミステリーでは禁じ手?】であった、そうきたか!ポアロが登場するラストストーリーで若干納得いかないものの、完成度は高く、楽しめました。次回がラストポアロ(泣)⑤↑

  • この前読んだ『五匹の子豚』同様、過去の事件の真相を探る話。関係者達から話を聞いて解決に導く手口は一緒だが、ポアロの謎解きの鮮やかさは『五匹の〜』の方が上手かったかも。でもこれを1972年に80代で書いてるということがクリスティすごい!

  • 十数年前の両親の心中事件は父が先に母を撃ったのか、それとも逆なのか。
    結婚を控えた娘の義理の母親になる女性から奇妙な依頼を受けた推理小説作家、アリアドニ・オリヴァ夫人。彼女は真実を知るべく旧友のポアロに協力を頼む。

    過去の殺人を洗い出し、真相を突き止める、というストーリーは「五匹の子豚」と類似している。だが「五匹の子豚」は非業の死を遂げた母親が娘に対して無実を訴えていたのに対し、今回の事件では、亡くなった両親は元より当事者は誰も真実が明らかになることを望んでいない。
    すでに埋もれて風化した真実を掘り返す意味はあるのか、というところが「五匹の子豚」との違いである。

    これはクリスティが最後に執筆したポアロシリーズである。あっと驚くストーリー展開もなく、推理小説を推理せずに読む私でも途中でラストがわかるほどである。ただ、ラストのオリヴァ夫人の言葉は、夫人らしいユーモアがありながら、なんだか心にしみる。完全に想像であるが、晩年のクリスティが自身の人生を振り返り、これでよかったのだ、と結論づけたようにも思える。

    年を重ねるごとにくり返し読んでみたい作品である。

  • アガサ・クリスティーの才能が迸る物語。

    小説家のミセス・オリヴァは、とあることから過去の事件について、関わった人たちから当時の話を集めて真相を解明しようとするも手に負えず、友人のエルキュール・ポアロに助けを求める。

    『象は忘れない』のタイトルは、「象は過去のことを忘れないで、いつまでも覚えている」という逸話をもとに、オリヴァが話を聞きに行く相手のことを「象」と呼びだしたことからきている。

    私には、もう一つの逸話「盲人と象」のように触った感触だけで「象」という生き物を語る人たちの情報を、ポアロが丁寧に全体像に置き換えていく状態も指しているように思えた。

    ラストシーン、ミセス・オリヴァの締めくくりの言葉……「象は忘れない、でも、ありがたいことに人間は忘れることができるんです」

    悲しくとも未来に向かって前向きな結末が、心地よい。

  • エルキュール・ポアロシリーズ#36。

    後年多くなってくる「回想の殺人シリーズ」のひとつ。
    12年前の事件を、オリヴァ夫人による、当時を知る人へのインタビューを通して明らかにする。

    「象は忘れない」というのはクリスティーの心を捉えていたらしい逸話で、象はいじわるされたりした記憶をいつまでも忘れない(らしい)ことにちなんでいる。すなわち、人の記憶も、ふとしたきっかけでよみがえるものだ、ということである。

    実質的にポアロ物として最後に書かれた作品で、ドンデンとか事件と解決の切れ味とか謎解きということよりも、物語としてしみじみしたコクがある。

  • ポアロ
    とにかく登場人物の長台詞が多くて、読むのがつらかった。自分としては苦手な作品。

  • ミセス・オリヴァは昼食会で、彼女が名付け親となった女性シリヤについて不躾な質問を受ける。
    「十数年前に心中したシリヤの両親は、夫が妻を、あるいは妻が夫を、どちらが先に撃ったのか。」
    回答を持たず、またどう処理したものか困惑した夫人は、ポアロに意見を聞きに行く。

    当時は語られることのなかった真実が、ポアロによって現在に紐解かれ、未来に繋がっていく。
    真相は、家族という繭の中で起こり、その繭の中で閉じた切ない物語でしたが、現在の登場人物たちが未来に向かって歩を進めるラストは、清々しさがありました。

  • とある婦人の奇妙な質問から幕を開く本作、作中で描かれる殺人はその質問対象となる1件だけというのに退屈させないのは著者の卓越した構成能力故だろうね


    昔に仲睦まじい夫婦が自殺した。果たして先に銃の引き金を引いたのは父か母かどちらだったのか
    そんな取り留めのない疑問が多くの興味を掻き立て、過去への探求を始めさせるのだから面白い

    十年以上前に終わってしまった事件。センセーショナルであっても迷宮入りではないから現代でもその事件を探り続ける者は居ない
    ならヒントを探る聞き込みは出来ないかと思いきや、意外や意外に覚えている者が居る。勿論、断片的だったり間違っていたり思い込みが多分を締めていたりと事実全てを覚えている者は居ないのだけど、それぞれがそれぞれの尺度で何かしらを覚えている
    そういった好奇心が凝り固まった噂を集める事で過去へ迫っていくわけだ

    思えば探偵役となるオリヴァやポアロだって捜査を始めた理由は好奇心に似た感情
    でも、事件の影を引きずる若いカップルが前面に出てくるに従って、二人の行動理由も変わってくる
    だからこそ、次第に見えてくる事件の光明はその新しい行動理由にリンクしているし、最終的に到達する事件の真相もその類である事に納得できる

    そうして積み上げられた諸々が美しく描かれるクライマックスで真相が明かされた際には思わずうるっと来てしまったよ……

  • 過去に拳銃で心中した夫婦
    自殺か他殺か
    夫が妻を殺したか、妻が夫を殺したか
    妻の双子の姉

    p104
    五匹の子豚
    ハロウィーンパーティ
    マギンティ夫人は死んだ

    p116
    五匹の子豚

    p188
    五匹の子豚

  • 「アガサ・クリスティ」の長篇ミステリー『象は忘れない(原題:Elephants Can Remember)』を読みました。

    『鳩のなかの猫』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。

    -----story-------------
    推理作家「ミセス・オリヴァ」が名づけ親になった「シリヤ」の結婚のことで、彼女は先方の母親から奇妙な謎を押しつけられた。
    十数年前の「シリヤ」の両親の心中事件では、男が先に女を撃ったのか、あるいはその逆だったのか?
    「オリヴァ」から相談を受けた「ポアロ」は“象のように”記憶力のよい人々を訪れて、過去の真相を探る。
    -----------------------

    1972年に刊行された「エルキュール・ポアロ」シリーズ長編第32作目の作品、、、

    『カーテン』が「エルキュール・ポアロ」最後の作品ですが、『カーテン』は1943年に執筆された作品なので、実質上(執筆順)では本作が「ポアロ」最後の作品となります。

    『象は忘れない』という題名は、英語の諺「An elephant never forgets.:象は(恨みを)忘れない(そして必ず報復する)」に由来しているそうです。

     ■1. 文学者昼食会
     ■2. 象に関する最初の言及
     第一部 象
     ■3. アリスおばさんの手引き
     ■4. シリヤ
     ■5. 過去の罪は長い影をひく
     ■6. 旧友の回想
     ■7. ふたたび子供部屋に
     ■8. ミセズ・オリヴァの話
     ■9. 象探しの成果
     ■10. デズモンド
     第二部 長い影
     ■11. ギャロウェイ警視とポアロ覚え書を検討する
     ■12. シリヤ,エルキュール・ポアロに会う
     ■13. ミセズ・バートン=コックス
     ■14. ウィロビー医師
     ■15. ヘア・スタイリスト・ビューティシャン,ユージン・アンド・ローズンテル
     ■16. ミスタ・ゴビーの報告
     ■17. ポアロ出発を告げる
     ■18. 間奏曲
     ■19. マディとゼリー
     ■20. 審問廷

    十数年前に起きた心中事件の真相と、心中事件の真相を調べるため「オリヴァ婦人」に近づいた「ミセズ・バートン=コックス」の目的を、「エルキュール・ポアロ」が「オリヴァ婦人」を巧く使いながら、見事に解決する物語、、、

    ちょっともどかしい序盤の展開と、縺れて絡み合った糸がスッキリ解けるような中盤から終盤にかけての展開が、「アガサ・クリスティ」らしい作品でしたね。


    心中したとされる「シリヤ・レイヴンズクロフト」の父親「アリステア」と母親「マーガレット」には、自殺すべき動機が見当たらない… 過去の関係者から聞き取りを進めるうち、当時、「マーガレット」の一卵性双生児の姉「ドロシア」が同居しており、心中の数日前に事故死していることが判明、、、

    「ドロシア」に精神的な疾患があったことや、「マーガレット」との結婚前、「アリステア」と「ドロシア」が恋愛関係にあったことが判明… 「ポアロ」は、様々な証言から真相を推理し、真実に行き着きます。


    一卵性双生児だった「マーガレット」と「ドロシア」の容姿が酷似していたことや、「ドロシア」の過去の奇行、「マーガレット」のカツラが4つも残っていたこと等が、大きなポイントになっていましたね。


    「アリステア」も「マーガレット」も、「ドロシア」を愛していたことから起こった事件、、、

    ちょっと哀しい結末でした。


    ちなみに、、、

    「オリヴァ婦人」って、どこかで見た名前だなぁ… と思っていたら、何作か「ポアロ」と共演しているらしく、そのうち、『死者のあやまち』と『ハロウィーン・パーティ』は既読でしたね。

    どうも、「アガサ・クリスティ」本人がモデルみたいです。





    以下、主な登場人物です。

    「アリアドニ・オリヴァ」
     ポアロとは旧知の女流推理作家

    「ミス・リヴィングストン」
     オリヴァの秘書

    「ミセズ・バートン=コックス」
     未亡人

    「デズモンド」
     バートンの養子

    「シリヤ・レイヴンズクロフト」
     オリヴァの名付け子

    「アリステア・レイヴンズクロフト」
     シリヤの父

    「マーガレット・レイヴンズクロフト」
     シリヤの母

    「ドロシア・ジャロー」
     シリヤの伯母

    「マディ・ルーセル」
     シリヤの家庭教師

    「ゼリー・モーウラ」
     シリヤの家庭教師

    「ジュリア・カーステアズ」
     オリヴァの友人

    「ミセズ・マッチャム」
     オリヴァの友人

    「ミセズ・マーリーン」
     オリヴァの友人

    「ウィロビー」
     医師

    「ミセズ・ローズンテル」
     美容院

    「ミスタ・ゴビー」
     情報屋

    「ギャロウェイ」
     元警視

    「スペンス」
     ポアロとは旧知の元警視

    「エルキュール・ポアロ」
     私立探偵

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