- Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
- / ISBN・EAN: 9784151300431
作品紹介・あらすじ
転地療養のため西インド諸島を訪れたマープル。一週間は何事もなく穏やかに過ぎていった。しかし、まもなく彼女を相手に懐古談をしていた少佐が死体となって発見される。以前から少佐は何かを憂いていたようなのだが、いったい何が起こったというのか?美しい風景を舞台に老嬢ミス・マープルが事件の謎に挑む。
感想・レビュー・書評
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ミス・マープルものにしては珍しく西インド諸島が舞台。殺人犯の写真を持つ少佐が亡くなりそこから次々と事件が起こる。真実を知るためマープルが行う聞き込みのやり取りや人物像の反転など、読み応えたくさん。またクリスティーに上手に騙された!
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療養のため西インド諸島のホテルに滞在しているミス・マープル。代り映えのない平穏無事な毎日に少々退屈気味である。そんなある日、滞在客の一人であるパルグレイヴ大佐が、過去に起きた殺人事件の犯人のスナップ写真を彼女に見せようとした矢先、急死する。問題のスナップ写真を手に入れようとしたマープルだが、写真は大佐の持ち物から消えていた。
はたして大佐は殺されたのか、そうだとしたら犯人は誰か?ミス・マープルは持ち前の推理力で事件を解明しようと動き出す。
ミス・マープルシリーズの面白いところは、生まれ育った村をほとんど出たことのない老婦人が驚くべき推理力で警察もお手上げの難事件を解決する爽快感だと思うが、一方で、捜査権限がないため誰かに捜査をお願いしないといけないこと、事件を解決するまでは存在を軽んじられがちだということが残念なポイントだな、と思っていた。そういう意味では、外国人というマイノリティながら逆にそれを生かして捜査するポアロシリーズの方がバランスが良いような気がする。
ただし本書では、ミス・マープルの能力を見抜き、協力してくれる有力者、ラフィール氏が登場する。彼はお金持ちの有力者で気難しい老人だが、ミス・マープルの頼みを聞き、新たな殺人事件を未然に防ぐために彼女に協力するのである。
ラフィール氏の存在により、マープルシリーズの弱点(私が思っているだけかもしれないが)がぐっと軽減され、ミス・マープルが積極的に活躍する本書は、シリーズの中でも躍動感があり、楽しく読むことができた。
ミス・マープルとラフィール氏のコンビはなかなか良かったのだが、二人そろっての活躍はどうも本書だけのようで、ちょっと残念である。-
b-matatabiさん、こんばんは。
ミス・マープルのシリーズ中で私の好きなベスト3に入ります!まだ全部読んでませんので今のところですが...b-matatabiさん、こんばんは。
ミス・マープルのシリーズ中で私の好きなベスト3に入ります!まだ全部読んでませんので今のところですが。
村から離れているマープルも新鮮でしたが、何よりマープルの相棒のラフィール氏。登場した頃は「何て嫌な感じの奴」だったのが、最後犯人を仕留める際の2人の活躍がとてもかっこよくて「なんだか意外にいい人だわ」と評価が反転しました。その意味でも驚く結末の本作は楽しかったです♪2022/06/21 -
この本、面白かったですよね!
私は全体的にはポアロシリーズの方が好きなんですが、『カリブ海の秘密』はお気に入りの一冊です。
やっぱりラフ...この本、面白かったですよね!
私は全体的にはポアロシリーズの方が好きなんですが、『カリブ海の秘密』はお気に入りの一冊です。
やっぱりラフィール氏がいい味出していますよね。
『アガサ・クリスティー完全攻略』によると、『復讐の女神』でラフィール氏が出てくる(残念ながら亡くなっているようですが)みたいですね。
111108さんはもう読みましたか?
私はこれからなので、楽しみです。2022/06/21 -
b-matatabiさんお返事ありがとうございます!
『復讐の女神』読みましたよ!
ラフィール氏、なかなか面白い登場でした。
レビュー楽し...b-matatabiさんお返事ありがとうございます!
『復讐の女神』読みましたよ!
ラフィール氏、なかなか面白い登場でした。
レビュー楽しみにしてます♪2022/06/21
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クリスティ作品の中で最も完成度が高く、読んでいて心地よい作品。今作と「復讐の女神」は連作になっている。復讐の女神とは今作中において、大金持ちのラフィールがマープルから夜中に叩き起こされるシーンでマープル自身の形容について冗談の様に言った事なのだが、復讐の女神(メネシス)に似ても似つかない様がずっとラフィールの印象に残ったのだろう。次作のタイトルが「復讐の女神」である事も鳥肌物で、今作の完成度がずば抜けて凄いと感じてしまう要因の一つだ。
更に巻末を見て驚いたが、今作は三部作構成の計画があったという事だ。クリスティが亡くなり実現しなかったという事らしいが英題まで決まっていた様で物凄く残念だ。願わくば今の時代に生きる有名なミステリ作家がタイトルを引き継ぎチャレンジしてほしいが、きっと誰も納得しないんだろうなぁ。
普段はセント・メアリー・ミードから出る事がないマープルだが、甥のレイモンドの愛情により旅行にでている。マープルが何処かに出かける作品は意外に多く実は彼女はとても行動的なのだが、カリブ海はメキシコ湾の辺りの様で数少ないマープルの旅行物だ。ホテルの人達や滞在客は皆んな優しく過ごしやすい環境だが、ある日パルグレイヴ少佐の死亡をきっかけにマープルが疑問をもつ。彼は病死とされていたが、マープルに話しかけていた際にとある事件の犯人の写真を見せびらかそうとした際に、不意に何かに気づき話題を変えていたが、その事を不自然に感じ、マープルができる限りの調査を開始する。
今作の好きな所の一つ目は冒頭に挙げた次作のタイトルを見事に表現している部分なのだが、二つ目は探偵小説にありがちな矛盾を逆手にとっている事だ。そもそも素人探偵に警察が協力する訳が無く、数あるミステリではとにかくこの部分を誤魔化す訳だが、今作ではマープルは孤独を理解し、仲間を巻き込む所から始まり、最初は医者を利用し(彼は利用されたで良いだろう(笑))、その後、大金持ちのラフィールを味方につけ、彼の部下も巻き込み真相を解決している。少なからずマープルは探偵役としては欠点が多い訳だが、今作ではそれが大いなる魅力に変換され、作品の山場を見事に演出している。そして、根本には犯人の意外性や幾つもの殺人、伏線となる語られた過去の事件等は当然のごとく表現されている。
実は落ち着いてみると、クリスティのベストに入る作品なのでは。と今更ながらに思う。読み終えてから次に手に取るのは、言わずもがな、「復讐の女神」だ。 -
ミス・マープルもの。
転地療養の為、西インド諸島のホテルに滞在中のミス・マープル。ある日、同じホテルの滞在客の少佐が死体となって発見されます。
高血圧による死亡として処理されますが、マープルさんはその死を不審に思い、独自に調査を始めます。
ホテルの経営者夫婦や、滞在客たちとの会話から、複雑な人間模様も浮かび上がってきて、もう何が何だか・・・という感じですが、それでも先が気になるのでページを繰る手を止められない私です。
いつものイギリスにいる時とはマープルさんも勝手が違っていたようですが、大金持ちで偏屈なラフィール爺さんがマープルさんの良い聞き手となった事もあり、見事に真相にたどり着くのは毎回ながら感心してしまいます。
因みに、今回舞台となった“西インド諸島”は、お馴染みの南アジアのインドではなく、南北アメリカ大陸に挟まれたカリブ海域にある群島です。カリブ海の島でリゾート療養なんて羨ましいですね。 -
マープルは甥レイモンドの計らいで西インド諸島のホテルに滞在。そこの滞在客の老大佐が死亡。血圧の薬による自然死とされたが、「妻を巧妙にころした夫の写真を持っている」とマープルに話したところで、マープルの肩越しに見た男を見て慌てる。マープルは死に疑問を抱き、得意の聞き込みを始める。
マープルが滞在客やホテル関係者の噂を集め関係を組み立てる様が見事。物語はさくさく進む。登場人物も2組の夫婦、老富豪とその使用人、ホテル経営者夫妻、それらの男女の関係が入り乱れる。そこで読者はあらぬ方向に持っていかれる。犯人は意外だった。鋭い人ならわかるのかも。
今回おもしろいのは、マープルは滞在客の車いすの老富豪を相手にいろいろ推理している事。今までだと偏屈な老富豪が死んで若い家族は解放される、というパターンがけっこうあったが、今回は偏屈ながらもマープルの頭脳を公平に評価する人物として老富豪は登場している。これは執筆時74才となっていた事もあり老人の側に自身がいたこともある、と「アガサ・クリスティー完全攻略」の霜月蒼氏は書いているが、なるほどそうかも。
クリスティの被害者は、自身について、あるいは他人について過去に見知った頃を不用意に周りに言いふらしたために口封じに殺される、というパターンがあるがこれもそうだ。
ホテル滞在中の客が死亡し犯人はその中にというパターンはポアロの「白昼の悪魔」とも同じ。風光明媚なリゾート地での事件で長く滞在、という解放感と非日常がおもしろいのかも。
文中のマープルの名言
「頭がよければ、人なんか殺さなくてもたいていの者は手に入れることができますからね。人殺しなんて愚かなことですよ」
老富豪に対し
「人生ってそれを失いそういなればなるほど、生き甲斐もでてくるし興味も増すものです。若くて力もあり、健康で、洋々たる前途が開けているときは、生きることなんてそれほど重要ではありません。~ でも老人は生きることがいかに大切で興味深いものかということを知っていますわ」(100近い人でも生への執着が強いのが不思議だったがこのセリフでスッキリした)
「自分の墓となる場所を一羽の鵞鳥が歩いている」(わけもなくぞっとする時にいう文句)
「死はしばしば問題の解決になるものですよ」
1964発表
2003.12.15発行 2007.11.30第3刷 図書館 -
クリスティのミスマープルシリーズ。自分の住んでいる小さな村での出来事や人物を当て嵌めて、知らない街での殺人事件を解決に導く、いつもながら胸がスカッとする。
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ミスマープルが躍動している。
リゾートでおきた事件は無事解決。 -
いいねぇ、この不穏な空気のリゾート地!
定番のクリスティーって感じです。
私はポアロ派なのですが
読んだらやっぱりマープルもおもしろい。
捜査権がない老婦人だから
より「聞き込み」重視になるわけね。
被害者の視線の先に殺人者が…って
それなりに推理して読んだけど
見事に手のひらで踊らされました。
どのカップルもそれぞれ怪しいんだもん。 -
この年になってクリスティかと笑われそうだが、旅行中に何か読む本をと思って本棚の中から一冊選んで持っていったところ大層面白かった。本棚にあったので初読ではないはずだが、読んだのは何十年か前で内容は完全に忘れていた。
ここ最近の複雑なトリックとサスペンスが洗練されたエンターテイメントと比較して、クリスティなんて非現実的なプロットと時代がかった謎解き話かと軽く見ていたが、穂井田直実の解説にある通り、年を取って判る面白さというものは確かにある。ミス・マープルの年齢に近くなって、そろそろ老人の生活を復習しておくにはよい年かもしれない。シリーズをもうちょっと読んでみよう。